真田十勇士
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巻ノ三十 昌幸の智略その七
「これでよいな」
「うむ、この山は見晴らしがよい」
「ここを抑えられはまずかった」
「敵の手に落ちれば危うかったです」
穴山と由利、それに伊佐も応えた。
「守りきって何より」
「まだ戦は続くにしても」
「よかったです」
「そうじゃな、ではここの守りは兵達に任せ」
そしてとだ、猿飛は笑って言った。
「次の場所に向かおう」
「ではな」
「そしてまた戦おうぞ」
「我等も」
こう話してだ、そしてだった。
四人もまた別の場所に向かったのだった。
谷ではだ、望月がだった。
跳び駆けつつだ、徳川の兵達の間を動いて回り。
その拳と蹴りで倒していた、急所を的確にだった。
打っていた、それで徳川の兵達は倒れていた。
「こやつ素手だというのに」
「何という強さじゃ」
「素手で我等を倒すとは」
「一撃でか」
「これは鬼か」
「武器を持っている彼等を倒すとは」
「武器を持つことも出来るが」
望月は構えながらだ、自分の前にいる足軽達に笑って言った。
「こうして戦うのがわしは一番よいのじゃ」
「柔術も使う」
「この武術は強いぞ」
「こいつは厄介じゃ」
「何人がかりで倒せるのか」
「わしを倒したければ千人じゃ」
一騎当千だとだ、望月は自分から言った。
「それで来るのじゃ」
「わしもじゃ」
清海は金棒を右手に持ってだった、そして。
その金棒を竜巻の様に振り回してだった、徳川の兵達を吹き飛ばしてだった。そのうえで豪快に笑っていた。
「どうした、もう来ぬのか」
「こいつも強いぞ」
「鬼の如き強さじゃ」
「鉄砲も弓矢もかわすし」
「どうにもならぬ」
「そうじゃ、わしを倒す場合もじゃ」
望月と同じくというのだ。
「千人持って来るのじゃ」
「こいつも強い」
「しかもな」
「もう一人おるぞ」
筧は印を結ぶとだ、周りにだった。
無数の雷を出して兵達を撃った、そして言うのだった。
「この術ならば何人でも相手が出来る」
「雷の術か」
「それを使うか」
「この男は妖術使いか」
「それとも仙術か南蛮の魔術か」
「どれも入れておる、それだけに強い」
非常にというのだ。
「簡単にはやられぬ」
「こいつも強い」
「この谷から先に進めぬ」
「この三人がいる限り」
「一歩も進めぬではないか」
徳川の兵達は顔を歪めさせた、幾ら鉄砲や弓矢を使ってもだ。
三人はかわしそれぞれの戦いで倒す、そして遂にだった。
徳川の軍勢は谷から退散した、清海はそれを見て言った。
「これでよいな」
「うむ、谷は守った」
「この谷はな」
望月と筧も応えた。
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