魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル
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DUEL8 ブラックサレナとユリ
前書き
今回、ある方から提案されたオリキャラを出してみようと思います。
本格的に出てくるのは次の話からですがどうかよろしくお願いします。
『…………』
寂れた廃工場の中。倒れた不良を見ながらオレンジ色の髪の男が1人見下ろす。その後脇に掛けた中学の学ランを広い、埃を掃った。
『この………覚えてろ………俺の兄貴がお前を………ふごっ!?』
話し途中で足で止めを刺す。男は完全に気を失った。
『何が兄貴だ………』
少年はつまらなそうに吐き捨てる。
『………退屈だ』
反抗期で父親と上手くいかず、荒れる日々。母親は少年が9歳の頃亡くなり、2人の双子の妹と共に過ごす男だったが、その内、父親と衝突するようになり、今に至る。
『………帰るか』
最近では妹にまで色々と言われ、帰る足取りが重い。本人もこんな事やるつもりは無かったが、降りかかる火の粉を掃っている内に不良の間では有名になり、今では高校生の不良までもが喧嘩を吹っかけてくる。
少年は小さい頃空手をやっており、運動神経も良かったため、例え年上だろうと敵無しであった。
『ほう………不良に中学生が囲まれていたのを遠目に見たから様子を見て来れば………まさか立っているのが中学生の方とはな………』
入口の方に1人の女性が立っていた。ピンク色のポニーテールの女性で、その立ち姿はとても凛々しい。学校帰りなのか、近くの高校の制服に身を包み、肩には竹刀を入れた袋を持っている。
『何だあんた………?』
『恐らく被害者だろうが、流石にやり過ぎではないか?年下にここまで徹底的にやられれば、こいつ等はもっと人数を増やして報復にやってくると思うぞ?』
そう、今までもそうやってやって来ては返り討ちにしてきた。これからも変わる事はないだろう。
『だったらまた来ればいい、また返り討ちにする』
『………なるほど、どうやら満足できて無いらしいな。血に飢えた獣の様だ』
『喧嘩売ってるのか?』
『そんなつもりはないが、強いて言えば少しばかり人生の年上である私からのアドバイスだ。………ただもし不完全燃焼なら相手をしようか?』
そう言って竹刀を取り出す。
『私は剣士なのでな。竹刀を使う事は許してもらうぞ?』
『構わねえよ………』
誰でも良かった。竹刀は木刀を持った相手とも戦った事のある少年にとって脅威でもない。
『女だろうと容赦はしないぞ』
『ふっ、果たしていつまでそんな口を聞けるかな?』
『なら見せてやる!!』
そして男が動き出す。これが黒崎一心と八神シグナムの最初の出会いだった………
「また懐かしい夢を見たな………」
時間は朝の5時。めざまし時計が鳴るよりも早く起きれた。
「さて、準備するか………」
寝巻きからジャージに着替え、自分の部屋を出て一階の洗面台へ向かう。まだ家族の皆は誰も起きておらず、静かなリビングに1人だ。
「………よし!!」
顔を洗ったり、寝癖を直したりして、準備を終え家を出てその前で軽く準備運動をする。
「行くか!!」
そして黒崎一心は走り始めた………
「おはようございます、シグナムさん」
「ああ、おはよう」
走り始めて20分ほど。一心は少し大きめの公園へたどり着いた。中ではピンク色の髪の女性が入念に体操をしていた。
「ちょっと遅れましたか?」
「いや、私も着いたばかりだ。だからまだストレッチ中だ」
足を開き、身体を前に伸ばし大きく身体を反らす。
「……っ!?」
その度に強調される胸と、身体を伸ばした際にちらりと見えた肌の白さに一心は目のやり場に困るが本人は全く気にしていない。
「さて、一心は既に身体は温まっているようだし、早速始めるか?」
「は、はい!!」
そう言われ、一心は慌てて近くのベンチに立て掛けてあるスポーツチャンバラ用の刀を手に取った。
「ルールはいつも通り、剣道と同じで、決められた方の負け。それでいいな?」
「了解です」
とは言ったが、このルールは2人だけのもので、実質剣道からかけ離れたルールとなっている。
簡単に言えばチャンバラだ。いかに相手を制するか、それを競い合うのだ。
「ではいくぞ!!」
そう叫ぶと同時にシグナムは一心に斬りかかった。上からの袈裟斬りに一心はしっかり見極め、刀で受け止める。
「ふっ!!」
シグナムは何度も同じように斬りかかる。単調に思えて、隙の無いシグナムの攻撃に受け止め耐えるしか出来なかった。
「どうした、守るだけか?」
「まさか!!」
受け止める瞬間、一心は前に踏み出した。単調なタイミングで斬りかかっていたシグナムのリズムが崩れ、力が弱まる。
「よしっ!!」
その隙を一心は見逃さなかった。
シグナムの刀を受け流し、体勢を崩したところを狙う。
これが一心の考えた作戦だった。
……だが、
「甘いよ一心」
シグナムはその先を読んでいた。受け流した筈が、シグナムの体勢は崩れていない。
「だが、まだだ!!」
受け流しに失敗したものの攻守変更が出来た事により今度は一心が攻める。
「こんなものか?」
「まだまだ!!」
朝から2人の対決は白熱していた………
「ふぅ……いい汗かいた」
水道で豪快に頭を洗い、タオルで拭く。水で艶が出たピンクの髪はとても色っぽく見える。………が一心はそれを楽しむ余裕は無かった。
「はぁ…はぁ………」
やっと息は整い、立ち上がる。
「まだ無駄な動きが多い。だからそこまで疲労が出るんだ」
「分かってますよ………」
一心自身も分かっている。一応初めた頃から比べたら見違えるほど上達しているのだ。
「くそっ……」
「ふふ、まあ最初と比べたら随分と成長したんだ。私を倒すのにはまだまだだが、いずれ追いつく日が来るだろう」
「いずれ……か」
その言葉が一心には1番悔しかった。
最初こそ、何としても勝ちたいから、次第にこの人の隣に立ちたいと気持ちが変わっていた。
凛々しく、美しく、そして何よりも強いこの女性に………
そして一心は1つ心に決めていた。それは………
『シグナムさんに勝ち、認めてもらえたら告白する』
しかしその道のりはまだまだ遠い………
「そう言えば明日から入学式か?」
「はい。明日から高校デビューっす」
「確か……」
「天央付属高等学校です」
「ジリリリリリリリリ!」
「………」
「ジリリリリリリリリ!!」
「………んっ」
「ジ、ジリリリリリリリリ!!!」
「うるせえ!!」
耳に直接聞こえる叫び声のような声をきき、怒鳴りながら起き上がる。
「はぁはぁ………おはようマスター………」
声の正体は黒いゴジックドレスを着た銀髪のツインテールの女の子だ。しかし大きさは焔より少し背が低い。
「俺、確か目覚ましよろしくって言ったよな?」
「?だから目覚まし」
「誰も直接言えなんて言ってねえよ!!」
と怒るも、本人はごめんなさいと舌を出してテヘペロと謝った。
絶対悪いと思ってないだろうが、朝っぱらこれ以上怒る気になれないので諦めた。
「ユリ、マスター起きた?」
「私の目覚ましパワーでね!!」
「?まあいいわ、王様がご飯できたって」
「分かった、準備していく」
「了解」
返事を聞いた焔は下へと降りていく。
「あっ、待ってよ焔〜!!」
その後をユリが追いかけれ行った。
「………あいつすっかり馴染んだな」
「それじゃあまたホルダーを預かるよ。今回は前もって準備していたから2時間くらいで作業を終えられるかな」
ヴィータとの戦いの後、帰宅し食事を済ませた後だ。
「前もって準備していたってどういう事ですか?」
「ごめんね零治君。実は焔を造った時に既にユリの存在がある事は知っていたんだ。だけど驚くかと思って内緒にしていたんだよ」
「そうだったんですか………じゃあ焔も」
「当然よ。だけどもう現れるとは思っていなかったわ。それに1番最後だと思ってたし………」
「最後?」
「あっ、ううん、何でもない、何でもない!!」
どうやら焔は隠し事は苦手のようだ。
(最低後1回別のフォームがあるって事だよな……お願いだから普通の奴を………)
そう願わずにはいられなかった。
「それで今度はどんなタイプなの?」
「私が代わりに説明するわ。博士は作業に大変だろうし」
キリエの問いに焔が代わりに答えた。確かに焔なら問題はないだろい。
「焔頼む」
「分かったわ。………じゃあ先ずは、あの子の名前はユリ「ちょっと待て!!」何よ?」
「あいつの名前ってクロユリじゃないのか!?」
「?何その変な名前?」
「あいつが名乗ったんだぞ!!何か漆黒がどうとか堕天使がどうとか……」
「あの子、カッコいいと思ったフレーズは直ぐに名前にしたりするのよ」
成る程、面倒なのがよく分かった。
「レヴィに似てる様だな」
「ボク?ボクは別に名前なんて………うん、付けてるや」
身に覚えがあったのか、苦笑いしながらレヴィが答えた。
「それで性能面ではどうなのですか?」
シュテルは直接見ていたというのもあり、気になるのはやはりブラックサレナの能力の様だ。
「タイプ的には探索タイプよ。硬い守りで攻撃を防ぎながら相手を探す。これが基本スタイルよ。………ただ探索能力に関しては対した能力はないから、やっぱり突出してるのは守りね。あの分厚い装甲にフィールド、ましてや転移まで出来てしまうからセイグリッドよりも固いと思うわ」
「それは………凄いわね」
「バランス崩壊してませんか………?」
キリエやアミタの言う通り、改めて聞くとなんとも恐ろしい性能だ。
「それがそうでもないの。実はブラックサレナは防御面も攻撃面も充実してるけど、機動力がイマイチ。突貫力はあるけど、急な動きには付いて行けないわ。そこをどうカバーするかが使い手の技量にかかるんだけど………」
「おい、そんな残念そうな目で見るな。俺だって成長してるっての!!」
「更に、ブラックサレナは直ぐにガス欠になり易いわ。元々ブラックサレナはマスター自身の魔力を使えず、ブラックサレナ自身の魔力を使って戦うの」
「そうなのか!?」
「何でマスターが驚くのよ……まさかユリから聞いてないの!?」
「『頭で考えるな、感じろ』って言われたが?」
「あのおバカ………」
と焔が呆れた顔で呟いた。何だか焔の事がユリの姉に見えてきた。
「他に何か無いの?」
「後、ブラックサレナ換装し、一度魔力切れ、もしくはダメージによって換装を解除された場合、そのデュエル中の再換装は出来ないわ」
「使用は1戦闘1度切りと言うことか……」
「魔力切れであれば、一応自動回復するから使用出来るかも知れないけど………魔力が満タンにならないと再展開できない上、回復スピードも通常の2倍以上かかるから相当時間が必要になるわ。あっ、途中で換装を解除した場合は再展開可能よ。その代わり魔力は回復しないけど」
「うん?うんん!?」
レヴィの頭は既にパンク寸前だ。かく言う俺も辛うじて付いていくのに精一杯だが………
「レイ、まとめてみよ」
「えっ!?俺!?ユーリ頼む!!」
「えっ!?あっ、はい」
そう言って無言でずっと書いていたメモを見直すユーリ。とても勤勉で良い子だ。
「レイのカードですよ?」
「うっ!?分かったよ、えっと………」
ディアの無茶振りに文句を言いたいが、シュテルの言う通り俺のカードなので渋々話をまとめてみた。
「ブラックサレナは索敵、防御を目的としたカード。強固であり、攻撃力もあるが燃費が悪い。更に魔力回復が低いので、ガス欠になり易い。一度魔力切れやダメージで換装が解けたらそのゲーム中は再展開出来ない。なお出来ないこともないが、オススメしない。………こんなもんか?」
「それだけ分かってれば大丈夫よ。全く、本当なら本人が話すべきなのに………」
だが仮にユリに話をされたら絶対に理解出来ない姿が容易に想像できる。
「レイ、レイ!!ブラックサレナってロボットなんでしょ!!かっこいい?かっこいい!?」
「レヴィ、少し落ち着け………まあカッコいいと思うよ。俺も結構気に入ったから」
「本当!?じゃあユリが来たら早速デュエルしよ!!」
「………考えとく」
そう言うが、レヴィに続き、ディアも興味がある顔でこちらを見ており、これは断れなさそうだ。
(ボロ雑巾の様に絞られるんだろうな………)
「お待たせ、終わったよ」
「やっぱり外は素晴らしい!!あっ、焔こんにちは。相変わらずペタンコだね!!」
と焔にいきなり毒を吐く少女。
焔と同じ人形の様な大きさで、黒のゴジックドレス。銀色のツインテールで色白の肌と、焔以上に人形の外見だ。
「相変わらずってどういう事よ!!これは私が望んだわけじゃ無く、元々………」
「うん、ちゃんと設定通りになって良かった」
「設定通り………?まさかあなた、私が知らない内に!!」
「隙だらけな焔が悪いんだよ〜!!」
と言い残し、焔から逃げようとするユリ。
しかしそれを俺はしっかりと片手で捕まえた。
「あれ?マスターどうしたの?」
「ユリ………」
「えっ?違うよ〜!今の私は闇に染まった月の使者クロ……」
「歯食い縛れえええ!!」
「ふぇ?えええええっあぶっ!?」
俺は怒りを全て込め、ユリをメンコの様に地面に叩きつける様に投げた。
「………えっ!?零治君何してるの!?」
「少し制裁を………おい、立てポンコツ。まだまだ話はこれからだぞ?」
「いや、ちょっと落ち着こう!!」
俺の言動を聞いてキリエが慌てて止めた。
「そうですよマスター………」
「うん、焔ちゃんも止めて……」
「先ずは紐で吊るしてサンドバックにしましょう」
「いや、違うでしょ!!零治君も紐探さなくて良いから!!」
アミタが一生懸命2人をなだめる。
「………何があったのだ?」
「………まあ想像は出来ますが、正直くだらないです」
「でもあれだけ怒ってるのよ?」
キリエの視線の先の零治は紐の次に鎖を準備していた。
「鎖はもっとダメです!!」と一生懸命止めてるが聞き耳を持たない。
「まあまあ2人とも落ち着こう」
そこで現れたのがグランツ博士だ。流石に博士の前で暴れる事は出来ず、渋々手を止めた。
「ありがとう博士!!」
「ユリ、君もちゃんと謝るべきだよ。特に零治君は何も分からない状態で戦って苦労しただろうし」
「ごめんねマスター!!」
博士に言われ謝るがどうしても軽く感じる。
「ちょっと私は!?」
まだ謝られていない、焔が怒りを露わにして騒ぐ。
「ユリ」
「………ごめんなさい」
グランツ博士に言われると何故か素直にちゃんと深く頭を下げて謝った。
「何で博士に言われると素直に聞くのよ………」
「俺が聞いた時こんな素直な反応一度も無かったぞ………」
ユリの変わりように俺と焔はイマイチ納得いかないが、ちゃんと言ってるのでこれ以上は何も言えなかった。
「いやぁ………扱いが早苗君みたいで懐かしいね。早苗君もこんな風に周りを振り回してたからね。いつも私ともう1人の同僚が怒る雅也を制してたよ」
「母さんのキャラがどんどん崩壊していく………」
「いや、悪いイメージが強いだろうけど、早苗君はいい子だよ。天真爛漫で、いつも明るくて、私達もいつも笑顔にしてくれたよ。雅也に恋して彼に対してのちょっかいが強くなったけどそれも見てて初々しかったよ」
「そうですか………」
「ユリは母さんに似てるのかな………?」
「まあ早苗君が造ったようだし、似てるかもしれないね。私も懐かしく感じたし。だからあまり無下に扱わないようにね」
「………はい」
とは言え、ユリはニヤニヤと「そうだ、そうだ」と言ってる様子を見るとどうしても考えてしまう。
「………マスター」
「うん?」
「よろしくね」
「………まあよろしく」
その後、何だかんだ馴染んだユリ。特にレヴィと気が合うのかよく楽しそうに2人で話している。
「いけー」
「やれー!!」
日曜の朝、特撮を見て盛り上がっている一同。レヴィやユリ、ユーリが好きなのは分かるが、シュテルやディアもちゃんと欠かさず見てるのだ。
「マスター、コーヒーのお替わりは?」
「ああ、じゃあ頂くよ」
そう言うと焔がコップを持っていきコーヒーを注いでくれる。この部屋にあるコーヒーメーカーはカプセルタイプの物なので、カプセルを変えれば様々なコーヒーを飲めるし、コップさえ選べばこうやって焔も入れられるのだ。
「はい」
「サンキュー」
何だかんだ特撮は子供の頃以来で更にあまり見れなかったので俺も楽しんでいたりする。それは年上のアミタとキリエも一緒のようで、何気にこの場に全員集まっているのだ。
「さて、今日はどうするかな………」
明日は学校と言う事で特に予定も無く、何も無ければブレイブデュエルで自分磨きをしようかと思っていたが………
「そう言えばよくディアが教えてくれた商店街に行ってなかったな………」
海鳴市の街はあらかた回っていたが、ディアが最初に説明してくれた商店街にはまだ一度も足を運んだ事が無かった。
「ディア、今日っていつも行く商店街に行くのか?」
「ああ、明日学校が始まるからいつもより少し多めに買い物しようと思っているが………」
「俺も付いて行っていいか?そう言えば商店街に行った事なかったからさ」
「それは助かる。今日誰かに手伝ってもらうつもりだったからな」
「へぇ………」
着いた商店街はショッピングモールほどでは無いものの、人が多く居た。
昔ながらとは言わないが、綺麗な道に小商店が並ぶ様に店が続いている。比較的新しい事が客を減らさずに済んでいる要因なのかもしれない。
「予想外か?」
「えっ、あ、いや………」
「我も初めて来たときは驚いた。近くにショッピングモールがあるのだ。だからもっと静かと思っていたが、地元の人やこだわりの品を求めてやってくるのだ」
「その内の1人がディアか」
「ああ。ここの野菜も肉も魚も新鮮だからな」
なるほど、それが大きな要因のようだ。ショッピングモールが安く量なら、こっちは質とこだわり。
「さて、今日はどんな物が………」
そう言いながらディアが店の売り物を確認する。その目は熟練された主婦の様だった。
そんなディアを遠目に周りを見てみる。
「うん………?」
様々なお店が並ぶその中で不自然な点があった。何故かコンビニ前を人が避けて歩いている様に見える。
確かに商店街の中にコンビニがある事に少し違和感を覚えるが、それでもおかしいと言うほどではない。
「あいつ等は………」
その中で更に異質な光景があった。
「ははは!!それでよ………」
コンビニの前の駐車場に複数のガラの悪い男達が居た。輪になり、周りにゴミを散らかし、大きな声で騒ぎながら屯っている。
「あいつ等のせいか………」
よく見てみると通行人はその光景を見て、避けながら歩いている。中のコンビニの人も困った様子だ。
「さて、どうするか………」
流石に見過ごせないとも思うが、お世話になっている以上、迷惑を掛けたくない。
「取り敢えず警察に連絡して後は………ってディア!?」
つかつかと堂々と歩いていき、ガラの悪い男達の前に行く。
「あん?何だねーちゃん、俺達に何か用か?おっ、もしかして遊びの誘いか?だが俺達相手だと火傷じゃ済まねえぜ?」
「なあなあ、ちょっとガキだけど結構可愛くね?」
「俺普通に好みだわ………」
「俺はもっとスタイルある方がいいけどなぁ………」
「俺は全然OKだぜ!!」
と5人組の男がゲラゲラと笑いながら話す。
「何を勘違いしている。貴様等の笑い声や所業がこの商店街の人達の迷惑だ。何処か違うところへ行け」
「あん?ねーちゃん、誰に口開いてんだ?」
「貴様等だ。いい加減不愉快だ。周りの人の迷惑を考えないのか?」
「テメエ………何調子こいてんだ?覚悟出来てんだろうな?」
そう言われてもディアは引かない。………いや、手は僅かながら震えていた。
「全く………」
流石に見ていられなかった。ここでディアを助けなければ何をされたもんか分かったもんじゃない。
「いいぜ、だったらテメエが俺達を楽しませろよ。だったら俺達も………あん?何だテメエ?」
「レイ………」
後ろを向いたディアの顔は少しこわばっていた。
「お前なぁ………動くなら先に言えよ………」
「す、済まない、見ていられなくて………」
「まあディアらしいよ」
頭を撫でてディアを庇う様に立つ。
「テメエ何者だ?俺達の邪魔をする気か?」
「俺達はそのねーちゃんに用があるんだよ!!」
「そのねーちゃんは俺の連れでね。勝手な真似されるのは困るんだよ」
「へぇ………テメエも俺達に文句があるのか?」
そう言うと男達は俺達を逃がさない様に囲むように動き始めた。
「はぁ………悪い事は言わないからこのまま大人しく帰るつもりは無いか?」
「何だ?ここに来てビビったか?」
「帰ってほしいならそのねーちゃんはおいて行きな!!そのねーちゃんと楽しい事をするつもりだからな………」
とニヤニヤと笑う男達。
「レイ………」
不安そうにディアは俺の服をしっかり握った。
「大丈夫だ。俺に任せろ」
「カッコつけてんじゃねえよ!!!」
そう言って正面の男が殴りかかって来た。
「ふべっ!?」
だが、その男の拳は空を切る。その代わり、男は地面に倒れ伏せていた。
「なっ!?」
周りの男達も驚きを隠せないようだ。
まあそれも仕方がない、何せ本当にあっという間の出来事であったから。
「遅えよ………」
俺は向かって来た男の顔を押すようにして地面に倒した。掌底によるカウンターだ。
倒れた男は何をされたかイマイチ分かってないだろう。顔を手で隠されたかと思えば、気が付けば視線の先は空の景色だからだ。
「手加減したんだ、意識はあるだろ?お前らもそろそろ退散した方が良いぞ?さっき警察に連絡しといた。もう直ぐここに警察が来るぞ」
そう言うと流石に警察はたじろぐ男達。
「ふ、ふざけるな!!このままやられて黙ってられるかよ!!」
倒れた男がふらつきながら立ち上がる。
「おい。警察はやべえよ………」
「今日は退散しようぜ………」
「おい、お前等!!」
仲間がどんどん退散していく中、倒れた男だけが1人残っている。
「どうする?やるか?」
「………ちっ、このカリは絶対に返すからな!!覚えてろ!!!」
そんな捨てセリフを残し、男達を追って、去っていった。
「…………」
「おっと、ディア」
膝から崩れ落ちそうになるディアを支える。
「すまん、流石に無理をしたみたいだ」
「全く、意外と無鉄砲なんだな王様」
そう言うと不満そうにそっぽを向くディア。
「………だけどカッコよかったよ。いち早く動いたもんな。他の人じゃ出来ないことだ」
「………我こそ。レイありがとう。おかげで助かった」
笑顔でお礼を言うディア。その笑顔は今までのキリッとしたディアでは無く、優しさの満ちる可愛らしい顔であった。
「………レイ?」
「な、何でも無い!それよりも、この商店街はあんな奴等がいつもいるのか?」
「いいや。………だけど最近よく見るのだ。だから商店街の人達も対応に困っててな。もし警察を呼んで、後日報復があったりしたらと思う者も多いらしい」
「ふぅ~ん………」
最近よく見ると言う言葉に少し引っ掛かりを覚えた零治だが、その答えは出ないまま。
「レイ、お礼として今日の夕飯、レイの好きな物で良いぞ?何が良い?」
「そうだなぁ………」
その後、ディアとの買い物を堪能したのだった………
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