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真田十勇士

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巻ノ三十 昌幸の智略その二

「我等だけが知っているな」
「ですか、では」
「うむ、主な家臣達は既にそれぞれの場所に配した」
 上田の城や各砦にだ。
「そして我等三人はじゃ」
「ここにいてですか」
「そのうえで」
「全体の采配にあたるが」 
 それと共にというのだ。
「必要に応じてな」
「この城から出てですな」
「戦うのですな」
「そうするぞ、敵は強い」
 このこともだ、昌幸はわかっていた。
「油断は出来ぬぞ」
「では父上」
 また幸村が言って来た。
「徳川家の軍勢が上田に入りましたら早速」
「攻めていくぞ」
「そうしていきますな」
「御主はまずはじゃ」
 幸村に言うのだった。
「御主の軍勢を率いてじゃ」
「そのうえで」
「敵を山と山の間に誘い出すのじゃ」
「そして、ですな」
「徳川家の軍勢を山から攻める」
 上田の山々からというのだ。
「そう誘え、乗らなければじゃ」
「我等の誘いに」
「それはそれで攻め方がある」
「敵の後ろをですな」
「御主の家臣達に攻めさせよ」
 その十人の家臣達にというのだ。
「よいな」
「わかり申した、では」
「そして御主もじゃ」
 信之にも言うのだった。
「よいな」
「はい、それがしもまた」
「御主にも忍としての技を叩き込んだ」
 嫡男である彼にもというのだ。
「文武だけでなくな」
「だからこそ」
「御主も忍としても働くのじゃ」
「わかりました」
「無論わしもじゃ」
 昌幸自身もというのだ。
「必要とあらばな」
「忍としてですか」
「父上も」
「当然じゃ。家の危機ならばじゃ」
 真田家のだ、まさにそれは今だからというのだ。
「わしも自らな」
「忍としても戦われる」
「そうされますか」
「うむ、真田の忍の力を見せる」
 まさにそれをというのだ。
「そして戦うぞ」
「徳川家の軍勢と」
「そうされますか」
「危機となれば使う」
 昌幸自身の忍術をというのだ。
「そして生き残る、しかしな」
「しかし?」
「しかしとは」
「この忍術、四郎様の為にも使えたがのう」 
 勝頼のことをだ、昌幸はここで苦い顔で言うのだった。
「あの方が上田まで来られていれば」
「父上は忍術も使われて」
「四郎様をお護り出来ましたか」
「確かにあの時織田家は強かった」
 まさに天下を握らんまでにだ、信長は他を圧していた。それ故に武田家にしても滅ぼすことが出来たのだ。
 だが、だ。昌幸はその織田家にしても言うのだ。 
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