食事の秘密
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7部分:第七章
第七章
「ではどうされますか」
「どうされるかとは」
「そのお刺身を注文されますか」
冷静な顔でシュナイダーに問うてきた。
「そうされますか」
「ううむ、そうだな」
問われて考える顔になってだ。それから答えるのだった。
「ではそれとだ」
「はい、それですね」
「他に何かいいものはあるか」
「お豆腐に湯葉はどうでしょうか」
「豆腐?確か大豆の加工品だな」
「はい、湯葉も同じです」
「身体によくて美味と聞いている。それではだ」
どうするか。彼はまた決めたのだった。
「その二つも貰おう」
「わかりました」
「そして他に勧めるものはあるか」
「天麩羅ですね。それとお味噌汁と」
「味噌スープか」
「それです。それもどうですか」
「わかった。ではそれも貰おう」
シュナイダーはすぐに頷く。そうして白米も頼んだ。そのうえで和食を食べてみるのだった。そしてその味はどうかというとだった。
「うっ、これは」
まずは刺身を食べた。それは。
醤油に漬けるがそこには緑っぽい色の香辛料もあった。その瞬時に来る辛さにまずは戸惑った。鼻につんとくるその感覚にだ。
涙が出そうになる。しかしそれは一瞬だった。
それが終わってからだ。味わったものは。
「何と、日本人はこんなものを食べているのか」
「はい、そうです」
「素晴しい」
感嘆の言葉だった。そのぷりぷりとした感触と新鮮な味覚にだ。彼ははじめて味わうものを楽しむことになった。
天麩羅のかりっとした歯ざわりとそしてその中にある海老や烏賊、茄子もだった。その味もまた食べると忘れられないものがあった。
豆腐の柔らかさも湯葉も上品さもだ。彼は目を見張りながら味わった。そしてであった。
味噌汁はだ。飲んでから言うのだった。
「あっさりとしていてしかも味わいが深いな」
「御気に召されましたか」
「うむ」
その通りだと店員に答える。そして言うのだった。
「中のこの黒いものは」
「若布です」
「若布?」
「海草です」
店員はそれだというのだ。
「それなのですが」
「そうか、これもいいな」
他には四角く小さく切った豆腐もある。しかし今はそれよりも若布だった。
若布のその適度に固く弾力のある歯ざわりに彼は素晴しいものを感じていた。その感じるものをそのままに話す彼であった。
「日本人は海草まで食べるのか」
「ドイツではないんですね」
「そうだ、ない」
そもそも海草を食べることすら知らなかったのである。
「だが食べてみればだ」
「御気に召されましたか」
「素晴しい」
実際にそうだというのであった。
「いや、何もかもが」
「御飯はどうでしょうか」
「ライスはドイツでも食べるがだ」
だが野菜としてだ。主食としてではない。
それを食べるとだった。この味もまた。
「主食として食べるとやはり違うな」
「左様ですか」
「うむ、違う」
このこともわかった。
「しかも柔らかくてだ。いい御飯だな」
「ササニシキです」
「ササニシキ?」
「日本で開発されたお米です」
店員はシュナイダーにこのことも話した。
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