夢のような物語に全俺が泣いた
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リリルカ・アーデの思想
私、リリルカ・アーデはサポーターです。
数日前、闘技場で死闘を繰り広げる冒険者の男、ケイ・ウタル様に出会いました。
そしてその日の夜、何時ものようにカヌー達に金銭を巻き上げられた所へ颯爽と現れたケイ様は、あろうことか私の脱団をかけて戦争遊戯を始めた。
そして現在、彼は劣勢になっていて全身から血を流していました。
「―――どうして…」
わからない。
何故そこまでしてリリに構うのかわかりませんでした。
理解できない。頭が理解しようとしない。
心から込み上げてくる知らない感情が涙腺を刺激し、目の前がボヤけていきます。
私は何故泣いているのでしょう?
そして―――
”ズドォンッ”
大地を揺るがすほどの音が響き渡り、慌てて涙をぬぐう。
その爆発の発生地には、血だらけのケイ様を横抱きに担ぐ青年が数人に囲まれて立っていたのでした。
ー
――ユウジside
「よくやったな…」
やっとこさ面倒事を済ませて帰ってきてみれば、ゼウスからケイが戦争遊戯をしていると通達を受け、全速力で駆け付けた。
現場にはケイが槍に貫かれ、倒れていくだけの状態となっていた。
「何だテメェら、横槍か?」
「邪魔してんじゃねぇぞ殺されてぇのか?」
「あーあーあー、わかったわかった。
もうしゃべるな」
しかしケイの傷は酷いにもほどがあるな。
そもそも何で防具装備してないんだ?
「ユウ、頼んだ」
「了解だよ、兄ちゃん」
ユウにケイを預けて再び男達に顔を向ける。
『貴様ら何者だ!ここは戦争遊戯のための神聖な場所だぞ!
何が目的で来たのか知らんが、早々に立ち去れ!』
何を言っているのやら。
「俺はユウジ・アカシ。ラドクリフファミリアの団長である!
貴様らは何時から二人だけだと勘違いしていた?」
「嘘つくんじゃねぇ!」
「残念ながらうそじゃねぇんだわ。
ま、さっさと終わらせようと思うわけで…」
「へへへ…どうせ数人増えただけじゃねぇか…!
お前らぁ!こいつらをなぶり殺せぇ!」
「――各自散開。目の前の敵を倒しつつ、幸子の救出に向かえ」
「「「了解」」」
そして、一方的な殲滅は始まるのだった。
――リリside
「あり得ない…」
そんな言葉しか出なかった。
いきなり現れた人達は、一人を残し、全員がもう一人の方へと走り始めた。
数人しかいないにも関わらず、その存在感が何処までも広がるようで、観客席の人達も威圧されているようでした。
「どっせぇい!」
「「「ぎゃあああ!?」」」
拳一振りで何人ものソーマ・ファミリアが宙を舞う。
まさに一騎当千と言えるその行動は、やがて観客を騒がせ、この戦争遊戯を見ている神でさえも沸き上がる興奮を押さえられないようだった。
「だぁあ!面倒くせぇ!」
「ユウジ、終わった!」
青い服装の人がその場へ現れ、何かを伝えているのが分かる。
そしてユウジと呼ばれた人がニヤリと笑ったかと思うと―――
「ゴッド・ハンド―――」
拳を脇に抱えたかと思うと、その上空に青く輝く物々しい拳が出現して、
「クラッシャァァァァ!」
ソーマ・ファミリアの人員ごと、城を破壊した。
「何なんですか…あの人達は…」
「あはは、凄いでしょ?」
「――え?」
私の言葉に同意した声が聞こえ、振り替えると綺麗な女性が立っていて、リリに笑顔を向けていました。
「君がリリルカちゃんであってるかな?
私はなのは。高…じゃなくて、ナノハ・タカマチだよ」
「えっと…」
また、ソーマ・ファミリアだろうか?
でも、あのファミリアにこんなキレイな人が居ただろうか?
「ああ、混乱しちゃうよね?
私はラドクリフファミリアのメンバーで、あの人たちの仲間。
もうすぐでここは大変なことになっちゃうから、私と一緒にホームに来てほしいんだけど良いかな?」
大変なこととはどういうことなんでしょう?
ともあれ、この人は信用出来るのだろうか?
「うわぁぁあ!?」
「何やってんだアイツ!」
「神殺しだ!逃げろ!」
急に慌ただしくなった会場にはっとなる。
神殺しとは、いったい――
「ふぅ。清掃完了」
「俺がガネーシャだ!貴様、何をしたかわかっているのか!」
見ればあの人の足元には、上半身と下半身が別れた神ソーマだったものが転がっていた。
「何をいっている?俺は罪人を断罪しただけに過ぎないんだが?」
「何が罪人だ!人が神を殺すなど…」
「あってはならないとでも?ふざけるなよガネーシャ。
過去、ふざけたことをやらかして殺された奴は多くいる。
当然の結果だと言えるその行いは、今回のことでも適応されるだろう」
「ソーマが何をしたっちゅーねん!?もうアイツの酒が飲まれへんやないか!」
「流石にやり過ぎと言うものだろう。君には世話になってきたが、こんかいばかりは助力できん」
次々に神々が集まり、あの人を取り囲む。
まさか神の力を解放してしまうのだろうか?
「誰がソーマを殺したんだ?」
「とぼけるつもりか!この会場にいた我々神やその子供たちが見ていたんだ!」
「せや!あんま調子乗っとるならいてかましたるぞコラァ!」
「とぼけるも何も…」
一旦区切り、したいの方へ指を指すユウジ。
「アレがソーマなのか?」
「…は?」
「……誰だこの男は」
え?どういうことなんですか?
よく見ればソーマ様の服装をそのままに、顔だけは別人になっていました。
「神の名を語り、問題を起こしまくる不届きもの。
つまりそう言うことだ。因みに本物は家の団員が救助したよ」
「…バカな、そんなスキルが存在すると言うのか」
「アンタ、性格悪いなぁ?
ウチのアイズたんが気に入っとるのが理解できんわ」
どうやらソーマ様を偽り、操っていたのは最近入団してきた男だったようだ。
そしてその男が断罪されたことによって、実質リリは自由に腰を落ち着けるだろう。
が、しかし。それは絶対にうまくいかない。
何故なら私には、ケイ様達を私の問題に巻き込んだ事実が残っているからだ。
「大丈夫だよ。
ユウジ君は悪いことをしたことはないし、きっとリリルカちゃんにも優しくしてくれる。
だから私達のホームに行こう?」
「………はい」
気づけば会場には誰もいなかった。
先程まで言い合ってたあの人と神様も、騒がしかったはずの会場も今では静まり返っていた。
本当に大丈夫なのかな、と。そう思わずに入られないほどに、今日と言う一日は大変だった。
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