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真田十勇士

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巻ノ二十八 屋敷その三

「そうじゃな」
「はい」
「海があると塩が採れまする」
 このことを言ったのは望月である。
「それだけでも違いまする」
「左様、塩も大事じゃ」
「その塩もないので」
「この信濃、上田は辛い」
 幸村は望月に上田は海がなくその為塩も採れないことを話した。
「そのこともな」
「しかしですな」
 根津はその目を鋭くさせていた、そのうえでの言葉だ。
「大殿、若殿が政にも精を出されているので」
「この通りじゃ」
「餓えずまとまっていますか」
「そうなのじゃ」
「飢饉があろうとも」
 こう言ったのは霧隠だ。
「備えもですな」
「用意しておるのじゃ、また新田を開墾して堤も整えておる」 
「橋もかけて」
「村も整えてじゃ」
 そしてというのだ。
「道も町もしかとしてな」
「あと米だけはありませぬな」
 猿飛は田畑を見た、百姓達は田の中で笑顔で働いているが。
 その田畑にだ、米だけでなく。
「麦も野菜、果物も多く」
「色々植えてみているのじゃ」
「売って銭になるものもですな」
「あとあぜ豆や蕎麦もな」
 そうしたものもというのだ。
「植えさせておる」
「米以外に食えるものもですな」
「作らせていますか」
「そして銭になるものも」
「全てですな」
「左様、父上と兄上は作らせておる」
 その百姓達にというのだ。
「民達を豊かにさせておる」
「では餓えぬどころか」
「さらに、ですな」
「豊かにもなりますか」
「そうされておる、とかくな」 
 何はともあれというのだ。
「この上田は政も進めておられてな」
「民はこの通りですか」
「暮らしを楽しんでいますか」
「その暮らしを守ることがじゃ」
 まさにとだ、幸村は強い声で言った。
「我等の務めじゃ」
「ですな、ではです」
「我等はその為に戦いましょう」
「その時に備えましょう」
 家臣達も応えた、幸村は村や町も回ってだった。民達を観て回ることもしていた。それは昌幸と信之も同じでだ。
 政をしていた、それはだった。
 幸村も同じで毎日城にも入ってだ。その父や兄と共に政もしていた。勿論十人も供として日々登城していた。
 その中でだ、彼等は政にも励む幸村を見てまた話すのだった。
「登城され政も行われる」
「殿はまことにご多忙じゃな」
「修行に学問にな」
「毎日大忙しではないか」
「お身体に無理がなければいいが」
「どうなのであろうな」
 そのことが気になりだ、彼等は屋敷で幸村に尋ねた。
「殿、毎日お忙しいですが」
「無理はされていませんか?」
「やはりお身体あってです」
「お身体が疲れていてはなりませぬぞ」
「うむ、だからな」
 それでとだ、幸村は彼等に落ち着いた声で述べた。 
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