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ウイングマン バルーンプラス編

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6 ガ―ディングポイントを描く

1.
翌日、休みだというのにアオイは午前中にちゃんと起き、健太の家に向かった。
勝手知ったる、健太の親への挨拶もそこそこに健太の部屋のある2階に向かった。
「勉強頑張ってる?」
いきなり部屋に入って来られた健太は、少し迷惑そうな顔をした。
健太は早朝からちゃんと起きて、絶賛受験勉強の真っ最中だった。
「アオイさん、なんか用?」
ちょうど調子が乗ってきたところに水が差された格好だ。
「ちょっとドリムノートを貸してほしいんだけど」
アオイは直球のお願いに、健太は一瞬躊躇した。
今までアオイがドリムノートを貸してほしいと言ったことはなかった。
「なんでドリムノートを?」
一瞬、アオイに化けた敵かもしれない、と考え、一応、質問をしてみたのだ。
「ちょっと勉強をしようと思って。健坊、いろいろ必殺技とか考えたんじゃないかと思って、それは知っておいた方がいいでしょ?」
その答えにアオイっぽくはないと思ったが、健太には納得できるものだった。
確かに勉強は必要だ。受験勉強に必死になっている今の自分には身に染みる言葉だった。
アオイは別にして、美紅ならそう言うアイデアが思いついてもおかしくない。
ウイングガールズの中で、そういう話になったのかもしれない。
「そうだよね、確かに知っておいてもらった方がいい!」
それにアオイの様子を見てても変わったところはない。
敵ならこんなまどろっこしいことはしないと健太は考えた。
「はい。結構、いろいろ書いたからな~。読み応えあるよ、きっと」
アオイが差し出した手にドリムノートをポンと乗せた。。
考えてみるとリメルはもういないのだ。
ライエルが狙ってくるならドリムノートではなく、自分の命のはずだ。
「あ、ありがとう」
意外にも健太がドリムノートをあっさり渡したので、アオイの方が驚いた。
「いいの? 私が敵が化けてるとか考えないの?」
そのアオイの表情に健太は受けた。
「そんなのわかるよ、アオイさんが本物かどうかなんて」
健太がなんとなく言ったその言葉にアオイは顔を赤くした。
なんだか恥ずかしくなったアオイは、ドリムノートを受け取るとすぐに部屋を出ていった。
そっけない態度だったが、なんだかうれしそううに鼻歌を歌っていた。
しかし、健太はそんなことも気にならなかった。
頭の中は勉強のことでいっぱいだった。
すぐに机に向かって受験勉強を再開した。



ドリムノートを手にしたアオイはスキップをしながら家に戻った。
部屋に戻ると、ベッドに寝転びながら、パラパラと中を見始めた。
知らない武器や秘密がこれでもかと描かれていた。
「やっぱり健坊の想像力はすごいわね」
描かれている情報にアオイは感心しきりだった。
しかし、これだけ書き込まれていれば、新たにガ―ディングシステムを書き加えたところで、気づかれないような気がした。
「自分で言い出しておいてなんだけど、確かに私たちも勉強した方がいいかもしれないわね。でも、健坊が成績が悪い理由がよ~く分かったわ」
そう言って一度、ドリムノートを閉じた。
「ドリムノートを前にウイングマンのことばっかり考えていたのね」




2.
昼過ぎにアオイの家に、美紅と桃子がやってきた。
この日は父は出かけていて、家にアオイしかいない。多少、はしゃいでも気にする人はいなかった。

2人はすぐに2階のアオイの部屋へ通された。
「じゃあ、早速、描いちゃおうか」
ドリムノートを手渡された桃子はアオイに言われるまま、アイテムのデザインを描こうとした。
そこを美紅が制した。
「ちょっと待って。いきなり描いちゃっても大丈夫かな?」
今まで人のノートに落書きをしたこともないのだから、慎重になるべきだと考えた。
それに、人のものに勝手に書き込むなんて、美紅のモラルからは憚られることだった。
しかし、敵のことを考えるとやらないわけにはいかない。
昨日みたいな目には二度と遭わないためだ
ただ、やらなければいけないのなら、最小限にとどめるべきだと考えたのだった。
「確かに、それはそうね」
アオイもその意見には納得だった。
勝手に書き込むのだから、ということもあるけれど、なるべく目立たないようにしなければ健太に気づかれてしまう、危険性が高くなるということの方が大きかった。
気づかれたら、どうして急にそんなことを考えたのか。当然、聞かれるだろう。
そうなったら、最悪、昨日の戦いのことを知られてしまうかもしれない。
それは最悪だ。
「それに、どういう風に発動でするのかも事前にチェックしときたいし」

アオイは、桃子が描いたデザイン画を見た。
「じゃあ、このデザインをちょっと試してみよっか」
桃子と美紅は顔を見合わせた。
アオイの発言の真意がよくわからなかったのだ。しかし、2人の表情に気づいていないのか話は続けた。
「まず、女の子の絵を描いたあと、胸の部分は書かないで、パンツのところだけ描いてみて」
アオイが提案したのは、つまりこういうことだった。
消しゴムがないから、ドリムノートに描き込んでから直すことはできない。
ミスしても修正ができるように、最初から描き込まないようにした方がいい。
書き込むことは少しだけにしてどういう風に実現するか試しながら、ドリムノートに書き込もうという提案だった。
「え?」
美紅は思わず顔を赤らめた。
ただでさえガ―ディングポイントの格好には抵抗があった。
それを胸を書き込まないということは……
つまりトップレスになるということだった。
「私もドリムノートをちゃんと使ったことがないのよね。健坊の言われるがままに文字を書き込んだことはあるんだけど、自分の願望を書き込んで実現させた経験はないのよ」

アオイにそう言われて初めて気づいた。
確かにドリムノートは書いたことが実現する。
それはウイングマンや自分たちのコスチュームで実証済みだ。
しかし、それは健太だからなのかもしれないのだ。
あのとてつもない想像力の塊の健太だからこそ、できただけだとしたら、それは大変なことになるのだ。
テストもしないでいきなり実践でガ―ディングポイントをやってみて、発動しなかったら、また昨日の二の舞だ。
「幸い、ここには私たち3人しかいないわけだし、別に恥ずかしがることもないでしょ?」
桃子もテストには前向きだった。
美紅も納得した。
この3人なら女の子同士だし、昨日を含め、今まで何度も裸を見たことも見られたこともある。今更恥ずかしがる必要は確かになかった。
「う、うん……」
美紅も深くうなづいた。
別に率先してというわけではなかったが、やはりテストをしないことの方が危険だと考えた。



桃子がまず、ドリムノートを開いた。
そして、描けそうな場所を見つけてから、ドリムペンを手にした。
描く場所に決めたのは、自分のコスチュームが描かれているページだった。
美紅のページでもよかったのだが美紅の方がウイングガールズとしての初期設定ということなのだろうかいろいろと書き込みも多かったので、書き込めるスペースも限られていた。
すでに書かれてある自分のページの下に、小さく下だけ描きこまれた女の子の絵を描いた。
そして、その隣に、今度は美紅がアオイに言われた通りに書き込んだ。
「ガ―ディングポイントと予め叫んでおけば、裸になったとき、ガ―ディングポイントが発動し、大事なところを隠してくれる」

アオイは美紅から受け取ると、ページをパラパラとめくってみた。
健太がもともと書き込んでいる量が多かったせいか、書き込み自体はほとんど目立たなかった。
「これなら健坊にはバレないね」
そう言ってパタンとドリムノートを閉じた。
「じゃあ、試してみようか」
アオイは立ち上がると美紅と桃子に言った。
「2人とも変身して」
美紅と桃子はバッジを取り出すと胸に付けた。
すると光を放ち、2人はウイングガールズのコスチュームに変身した。
「アオイさんは?」
アオイが変身しなかったのは2人のコスチュームを消す役目をするのが自分だからだ。
「私がディメンションパワーで2人の服を異次元に移動させるのよ。そすれば、2人は裸になるでしょ。その時にガ―ディングポイントが発動すれば成功ってことよ」
そう言ってアオイはにこっと笑った。
この方法はかつてザシーバにされたのと同じ方法だ。

しかし、桃子はそれを許さなかった。
「アオイさん、ずるいですよ~」
桃子はニヤリと不敵な笑みを浮かべると、アオイの服を脱がしにかかったのだ。
「ちょ、ちょっと、桃子ちゃん、何やってんのよ?」
いきなりの桃子の行動に驚いた。
「だって、アオイさんだけ服着てるなんて、ずるいですよ」
美紅も少し微笑んで、静かに頷いた。
「わ、わかったわよ」
確かにアオイも2人を一方的に裸にするのも申し訳ないという気がした。
アオイも観念し、ボタンをはずし上に来ていたシャツを脱ぎ始めた。
そしてブラを胸からはずすと2人の方を向いた。
「じゃあ、いくからね」
胸を隠すことなく、アオイは満面の笑みで2人を見た。
まるで悪戯でも仕掛けるような顔をしていた。
そして、2人にディメンションビームを放った。

2人は一瞬白い光に包まれたかと思うとコスチュームが消滅した。
一瞬全裸になったように見えたが、すぐに股間の辺りが軽く光った。
ガ―ディングポイントの発動だ。
白いパンツのような物体が、美紅と桃子の股間をちゃんと隠していた。
それ以外はどこも隠されていない。桃子の描いた絵の通りの姿だった。
「やった! 成功よ!」
2人の姿を見たアオイはガッツポーズをした。
美紅と桃子はお互いの姿を見合わせた。
パンツ一丁の姿ではあったが、誰の目をきにすることもない。気にする必要はない。かまわずみんなでハイタッチをした。
「やったね!」
かしましい歓喜の声が、そこに広がった。



3.
その頃、健太は、数学の問題集を終えたところだった。
ほっと一息ついたタイミングに、美紅たちの声が聞こえたような気がした。
「あれ? 美紅ちゃん?」
聞き耳を立てるとアオイの声は当然にしても桃子の声も聞こえて。
冷静に考えれば、2人がアオイの家を訪ねても別におかしい話ではない。
詰め込み過ぎで幻聴が聞こえたのかもしれないが、気になって一度勉強の手を休めることにした。
「美紅ちゃんも、アオイさんの家に来るんだったら声ぐらいかけてくれてもいいのに……」
そんな風に思ったが顔を振って、その考えを振り払おうとした。
「いやいや、そしたら気になって余計に勉強に身が入らなくなる……」
でも、気づいてしまったのだ。気にならないわけがない。
3人の気づかいを感じながらも、健太はアオイの部屋の方に目を向けた。
健太の部屋にあるベランダの先には道一本を隔てて、アオイの家がある。
カーテンが開いていれば、部屋で何をやっているかさえ確認できる距離だ。
玄関を出ればその先にアオイの家があり、道を隔てているものの健太の部屋からベランダに出れば、アオイの部屋も見ることができる。
カーテンを閉めていなければ、健太の部屋からも何をやっているかがわかるくらいにははっきりと見ることができた。
健太は気分転換に状況次第では声をかけようと思った。
しかし、窓を開けてベランダに出ることはできなかった。

健太の目に飛び込んできたのは衝撃の光景だったのだ。

美紅、アオイ、桃子の3人がトップレスでハイタッチをしていた姿だった。
アオイは実験の際にカーテンを閉めることを忘れていたのだ。
アオイと桃子の豊満なバストが揺れ、小ぶりながら形のいい美紅のバストもはっきりと見えた。
「う~ん……」
どうしてそういう状況なのか皆目見当もつかなかったが、鼻血を出してぶっ倒れてしまった。
それと同時に、何か事件が起こりそうな予感がした。

もうすぐバレンタインがやってくる。


 
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