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美人秘書

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第二章

「それでなのよ」
「インスタントラーメンも食べていて」
「詳しいのね」
「意外なことだけれど」
「面白い人ね」
 こう話すのだった、そして実際にだった。
 玲子は普通にだ、予定がない時は会社の食堂に出て来てだった。ざるそばだの鯖味噌定食だのを食べている。
 その彼女にだ、女子社員達は問うのだった。
「あの、お蕎麦とかお好きななですね」
「あと鯖味噌定食とかも」
「和食もですか」
「お好きですか」
「はい」
 そうだと答える玲子だった、微笑んで。
「今日の幸運を呼ぶ食事と聞いたので今日はこれを」
「ざるそばですか」
「それを召し上がられますか」
「そうします」
 こう言ってだ、そのざるそばをだ。
 つゆに生姜と唐辛子、それに関西らしく鶉の卵も入れてだった。そのうえでつるつると食べるのだった。その他にも。
 社長にだ、午後にこんなことを言うこともあった。
「社長、今日の夜ですが」
「予定はないよ、今夜は」
「はい、ですから」
 それで、とだ。玲子は雄太郎に言った。
「甲子園一塁側のチケットを用意しておきました」
「あっ、いいね」
 実は雄太郎は阪神ファンである、それも熱狂的なまでの。阪神が勝つとその次の日は飯が最高に美味い程だ。
「チケット取っていてくれたんだ」
「今日は予定がないので一週間前から」
「用意しておいてくれていたんだ」
「そうです、そして私は」
「玲子君は?」
「三塁側にいますので」
 微笑んでだ、玲子は雄太郎に答えた。
「何かあればご連絡して下さい」
「そういえば今は交流戦で」
「私はファイターズファンなので」
「ああ、今日の相手は日本ハムだったんだ」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「何かありましたら」
「携帯かスマートフォンで連絡したら」
「来ます」
「じゃあね」
「はい、それでは」 
 玲子は雄太郎にぺこりと頭を下げてだった、その日の夜は。
 雄太郎の前にだ、甲子園球場の前で集合をした。だが。
 玲子はファイターズの法被に帽子にメガホンとフル装備だった、雄太郎は姿の玲子を見て目を丸くして言った。
「本格的だね」
「ファイターズを愛していますので」
「そうだったんだ」
「御覧下さい」
 玲子はくるりと一回転してだった、そのうえで。
 雄太郎にその背中を見せた、そこには背番号があったが。
「中田選手ですが」
「六番だね」
「応援しています」
 実際にというのだ。
「今日は打ちますので覚悟して下さい」
「ううん、勝ちたいけれどね」
「これ以上ホークスと差が開くとまずいので」
「今二位だったね、ファイターズ」
「今年のソフトバンクは強いです」
 玲子はこのことはにこりともせずに言った。
「ですから今日勝ってです」
「ソフトバンクの差を縮めるんだね」
「悔しいことにソフトバンクは福岡で巨人を成敗しました」
 全人類共通の敵にして日本球界を蝕んでいる諸悪の根源、まさに邪悪の象徴にして戦後日本の病理を表した存在である巨人をだ。 
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