ロックマンゼロ~救世主達~
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第39話 宣戦布告
前書き
ネオ・アルカディアがダークエルフを手に入れ、ルイン達はどう動くのか…
レジスタンスベースに転送されたゼロ、ルイン、ハルピュイアはすぐさまメンテナンスルーム行きとなった。
ゼロとルインはミサイルの爆風をまともに喰らって勢い良く地面に叩きつけられ、特にハルピュイアはパワーアップしたオメガの攻撃をまともに受けたので内部機関に異常が出ているのではと思われたからだ。
一番重傷のハルピュイアが重傷者用のメンテナンスベッドに運ばれ、ルインとゼロはいつものメンテナンスベッドに横にされた。
ハルピュイアがメンテナンスルームに運ばれる時にレジスタンスの中で一悶着あったが、ルインが全員に頭を下げて、頼み込んだことでハルピュイアは治療を受けられた。
しばらくしてゼロとルインのメンテナンスの結果が出たが、どうやらボディはかなりのダメージを受けてはいたが、内部機関に異常はなかった。
しばらくして二人のメンテナンスが終わり、司令室に入るとシエルが駆け寄ってきた。
「ゼロ…ルイン……二人共無事で良かった…」
シエルはゼロの胸に顔を埋めると心底安心したように呟き、心配をかけたと自覚しているゼロはそんなシエルの背中をそっと撫でてやり、ルインは頭を撫でてやった。
「二人共……もう……二度と………あんな無茶……しないでね。お願いよ………。」
シエルはしばらく抱きついてから、ゼロとルインの顔を見た。
「………考えておこう……。」
「うん、心配かけてごめんねシエル。それにしても…ハルピュイアは大丈夫かな…?」
ダークエルフの力で強化されたオメガの攻撃をまともに喰らった上にかなりの勢いで叩きつけられていたのだ。
自分達とは違って重傷者用のメンテナンスベッドに運び込まれていくのを見たため、しばらくは出て来られないだろう。
「ルイン…ハルピュイアの傷は大したことないようだけど…しばらく安静にしないと駄目みたい………。」
「そう…」
自身のDNAデータを宿すハルピュイアを案じるルイン。
これが子供を持つ母親の心境なのだろうか?
「…………本当に………大変なことになってしまったわね……。今、オペレーターさん達に可能な限り、情報を集めてもらってるわ。分析には、時間がかかりそうなの。それまで少し休んでいて…。」
「大丈夫だ」
「私も大丈夫。そんなにヤワじゃないよ」
「そう…分かったわ……」
シエルはゼロとルインの様子に笑顔で頷いたが、次の瞬間にシエルは深刻そうな表情で考え込む。
「…それにしても、ダークエルフのためとは言え…、ネオ・アルカディアが人間たちのいるエリアにミサイルを落とすなんて…」
レプリロイドにとって、人間を傷つける行為は最大の禁忌だ。
エネルギー問題とイレギュラー化したレプリロイドが人間に危害を加えるのを恐れるあまり、無実のレプリロイドまでも大量に処理してまで、人間を過剰に保護してきたネオ・アルカディア。
それなのにダークエルフを手に入れるためにネオ・アルカディアの居住区にミサイルを落とした。
「そうだね、まるで最悪な事態が起きる前触れみたい」
「ベビーエルフとダークエルフがネオ・アルカディアの手に渡った時点で既に最悪の事態だがな…。」
二人の呟きの直後に、短い機械音が司令室に響いた。
「通信回線に強制割り込み……!ネオ・アルカディアからです!!」
ジョーヌの言葉に、その場にいた誰もが驚く。
「繋げろ!!」
間髪入れずにゼロが叫ぶと、正面の大型モニターにコピーエックスの姿が映し出され、そしてコピーエックスの後ろには、バイルが不敵な笑みを湛えながら控えている。
『ギ…ギギッ…聞コえるカい…。レジスタンスの諸君…ソして…Dr.シエル…。』
司令室に響き渡るノイズ混じりの無機質な少年の声。
その無機質さはとてもではないが、心を持つレプリロイドの声とは到底思えず、寧ろレプリロイドの姿をしたメカニロイドと言われた方が納得出来るものであった。
「コピー…エックス……!!」
かつての自分の作品であるコピーエックスとの意外な再会にシエルは驚く。
コピーエックスは、通信に出たゼロとルイン、シエルのみならず、まるでレジスタンスベースにいるレプリロイド全員に語りかけるかのように話し始める。
『ダークエルフは、ついに我々の物とナっタ…。下らない争いは、終わりにしタい…。君達に降伏を呼びカけるこトにしたよ』
「降伏ですって…?」
『君の発明した新エネルギーシステマ・シエルを我々に渡して欲しい。そうすれば、君達イレギュラーの安全は、保証しよう…』
コピーエックスに代わるようにレジスタンスベースに通信を送ったことの要件を伝えるバイル。
「そんな……」
ネオ・アルカディアからの要求に絶句するシエルに対して、バイルは冷笑を浮かべながら更に説明する。
『君が送ってくれたシステマ・シエルの情報を解析した結果…、ダークエルフと組み合わせることにより……莫大なエネルギーを生み出す可能性があることが分かったのだよ。これでエネルギー不足は、一挙に解決。もう、お前達を処分する必要もない……。』
確かにシステマ・シエルはダークエルフの子供であるベビーエルフを研究して生み出された物であるため、それらを組み合わせれば、その可能性は充分にあり得る。
『シエル…君の答エ一つで世界は、平和になルんだよ…』
シエルは目を閉じて考える。
ゼロとルインはシエルを静かに見守っていた。
「……………あなた達は……信用……出来ません………」
シエルはモニターに映るコピーエックスとバイルに告げた。
『…何だっテ?』
「ダークエルフを手に入れるために人間を犠牲にするような……そんな…あなた達は……信用出来ません!システマ・シエルは、渡さない。これは、人とレプリロイドが平和にくらすための物だから!!」
自身の答えが仲間を危険に曝すことはシエルも分かっているだろう。
しかし、だからと言って彼らに従ってしまえば、更なる悲劇が待っているのは間違いないのだ。
ルインとゼロはシエルを支えるように両脇に立ち、シエルはそれに感謝しながらモニターに映るコピーエックスとバイルを見つめる。
『…そレが…答えか…いいだろウ…。エネルギー資源を独占し……ゼロとルインと言う、恐ロシい戦闘力を持つレプリロイドを保有していル……。お前達など、最早たダノ薄汚れたテロリストだ。シエル…人間のお前ガいたかラ今まで、手加減してイタが…イレギュラー共々処分してやる!!』
コピーエックスはそれだけ言うと、通信を切ったのかモニターから映像が消えた。
「通信途絶えました」
ジョーヌが言い終えると同時に、司令室に警報が鳴り響く。
「ネオ・アルカディア軍が各エリアからベースへ向けて侵攻を開始しました。総攻撃を仕掛けてくる模様です」
ルージュが状況を分析して報告する。
そしてゼロとルインがシエルを見遣ると、彼女の体が小刻みに震えていた。
「ゼロ…ルイン…私………」
「お前は自分を信じて戦った。ここからは…俺達の仕事だ…。奴らのいるエリアを教えろ。迎撃する」
「ゼ…ゼロ………」
「一人で何でもかんでも背負い込まないの。エックスもそうだけど、そこがシエルの悪いとこだよ。大丈夫…これぐらいのことなんて慣れっこだから。」
「ネオ・アルカディアの進行ルートをモニターに表示します。」
モニターにネオ・アルカディア軍の進行ルートが表示された。
「ゼロ…ルイン…私…どうしたらいいの…。これ以上、誰も傷つけたり、悲しませたくないのに…私がシステマ・シエルなんて造らなければ…、こんなことにならなかったのかしら…………。」
「気にしないでよ、今のネオ・アルカディアが信用出来ないのは事実なんだから。シエルは正しいことをしたんだよ。」
「ごめんなさい…。ゼロやルインやレジスタンスのみんなが戦ってくれているのに、こんな弱気な発言ばかりして…。」
「気にするな。」
「二人共…。やっぱりレジスタンスの中にはね…、何故ネオ・アルカディアの、しかも、四天王である彼を助けたんだって…言ってくる者もいるけど…、彼は…彼ならきっと、いつか私達のことを理解して…力になってくれるような気がするのよ…」
「うん、そうだね…ハルピュイアもレジスタンスを倒すことを正義とは思っていないって言ってたから…多分、レジスタンスのことは理解してくれてるんだと思う。ただ、今はプライドが邪魔しているだけ。エックスに似て頑固なところはあるけど、あの子はとても優しい子だから…」
「(まあ、エックスやコピーエックス、ルインには優しいんだろうがな)」
ハルピュイアからすればエックスは主であり、父でもあり、ルインは母、コピーエックスは主だ。
エックス達と他の人物に対する態度には決定的なまでの差がある。
「ルイン…何だかお母さんみたいね…。」
「へ!?」
「だって、さっきのルイン。何だか自分の子供を慈しむお母さんのように見えたもの」
「お、お母さんって…あははは…」
「おい…それよりもミッションだ。早く準備をしろ」
照れ笑いを浮かべるルインに対して、ゼロは呆れたように溜め息をしながらモニターを見つめる。
ルインも慌ててモニターを見遣る。
「選択出来るミッションを表示します」
オペレーター達が端末を操作すると、モニターに高エネルギー反応を持つレプリロイドの画像などが表示された。
ボス:アヌビステップ・ネクロマンセス5世
エリア:夕闇の砂漠
ミッション:ネオ・アルカディア軍の迎撃
ボス:ハヌマシーンR
エリア:アナトレーの森
ミッション:ネオ・アルカディア軍の迎撃
ボス:ブリザック・スタグロフR
エリア:氷の前線基地
ミッション:ネオ・アルカディア軍の迎撃
モニターに映っているのは三体共にかつてゼロが倒したレプリロイドであった。
恐らくはコピーエックス同様にバイルが復活させたのだろう。
レジスタンスとネオ・アルカディアの全面対決が始まった。
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