| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

サラファン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「あんたをまた見ているみたいだよ」
「成長していてっていうのね」
「そうだよ、あんたもね」
 娘にもだ、婆さんは優しい笑顔で言う。
「あんなのだったんだよ」
「私が子供の頃はね」
 笑ってだ、娘は婆さんにこう返した。
「もっとお転婆だったわよ」
「あんたは元気だったからね」
「そう、体操をしてね」
「あんた身体柔らかいからね」
「選手にはなれなかったけれど」
 オリンピック等に出る様なだ。
「それでもね」
「あんたはよく身体動かしてたね」
「ええ、けれどね」
「エリザベータは遊ぶのは好きだけれど」
「スポーツはね」
 そちらはだった。
「あまりしないのよね」
「どっちかっていうと勉強が得意ね」
「そうだね」
「それでよね」
 娘は母に問うた。
「あの娘になのね」
「服を全部あげるけれど」
「サラファンも」
「そう、あげるよ」
「そうするのね」
「あんたにあげたけれど」
 今も安楽椅子に座ってだ、婆さんは普通の椅子に座っている娘に言った。
「あんたはね」
「どうもね」
 微妙な顔になってだ、エカテリーナは婆さんに言った。
「ああいった服はね」
「好みじゃないんだね」
「そう、だからね」
「一回着てだったね」
「お母さんに返したのよ」
「そうだったね」
 昔、その時を懐かしみながらの返事だった。
「あんたは」
「悪いけれどね」
「いいよ、服は好きなものを着るものだよ」
「だからなの」
「あんたが着たくないならね」
 それならというのだ。
「それでいいんだよ」
「そうなのね」
「それであの娘が好きだったら」
 そのサラファンをというのだ。
「あの娘にあげるよ」
「そうするのね」
「その時はね」
 まさにというのだ。
「あの娘がにあってたらね」
「余計にいいのね」
「そう思ってるよ」
 こう言うのだった、そして。
 二人でだ、今度はこんな話をした。
「今日の晩御飯な何だい?」
「ボルシチとね」
 エカテリーナは婆さんに答えた。
「ジャガイモのサラダにね」
「いいねえ」
「鶏肉を焼くわ」
「お祖父さんの好きなものだね」
「だからね」
 それでというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧