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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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第36話 戦場の記憶

 
前書き
サイバー空間 

 
エックスはサイバー空間を彷徨っていた。

ファントムと再会してから、この世界に迷い込んだ二人を探しながらレジスタンスへの支援のためにサイバー空間とあちらの世界を行き来していたのだが、無理が祟ったのか、以前より体から発せられている光が儚いように見えた。

「(星から生まれた命の輝きも…人を模して造られた機械の叫びも…思想から芽生える争いの炎も…ここにはもう、届かない。静寂に包まれた、電脳の深淵へ溶けていく意識の底から浮かぶ光景は、ゼロ、君とともに戦った百年前の戦場の記憶。聞こえてくるのは、君が百年前に残してくれた最後の言葉。)」

今から百年前の妖精戦争終盤、かつてエックスはゼロと共にダークエルフの力を行使して暴走するオメガと戦った。

“僕は…僕達は…誰かを縛り付けるために戦っているんじゃない。誰かを傷つけるために戦っているんじゃない。ただ…誰とでも手を繋ぎ合わせられる世界を創りたいんだ!!”

オメガの攻撃を何度も受けたことにより、傷だらけになりながらも瞳に宿る光は決して失われず、エックスはXバスターを構え、チャージを終えるのと同時にオメガに向けてダブルチャージショットが放たれた。

“グオオオォォ…”

二発のチャージショットを受け、二人との戦いで少なくないダメージを受けていたこともあり、僅かに仰け反ったオメガを鋭く見据えているのはエックスの親友であるゼロ。

“オメガ…もう一人の俺と戦ってやっと分かった。今までの俺がどんな戦いをしてきたのか。今までの俺の迷いが一体何だったのか。今なら言える。俺の力は破壊するためのものじゃない。友と、友の信じる物を守るための力だ!!”

Zセイバーを抜き放ち、ゼロはエックスの攻撃で怯んでいるオメガにダッシュで距離を詰めて斬り掛かる。

“せいっ!はあっ!とうっ!!”

一撃一撃に全力を注いでいるため、凄まじい威力の斬撃がオメガに叩き込まれて更なるダメージを与えるが、それでもしぶとくオメガは動こうとする。

“消え去れ!俺の悪夢よ!!”

セイバーの刀身が巨大化し、それを大上段で構えるゼロ。

“さようなら、僕の宿命!!”

そして強化アーマーに回されるエネルギーも全てバスターに回すエックス。

この一撃に全てを賭けてエックスのバスターとゼロのセイバーに残されているエネルギーが収束されていき、そしてそれをオメガに向けて繰り出した。

““ファイナルストラーーーイクッ!!!””

エックスとゼロの最大級の一撃がオメガに炸裂した。

今までの比ではない一撃により、オメガは倒すことは出来なかったものの行動不可になり、とある場所に封印されることになる。

オメガを封印し、これで全てが終わって残る問題はダークエルフとDr.バイルのみ…のはずだった。

しかしゼロのオリジナルボディの本来の持ち主であるゼロを危険視する者達によってとある研究所でゼロの封印作業が行われていた。

それを聞きつけたエックスはそれを止めさせようと、研究所に乗り込んだのだが…。

“完全封印までもう時間がありません。既に機能停止が始まっているので満足な会話など出来るかどうか。”

エックスがゼロの封印場所に入ると、ゼロがコードや機械によって体を巻かれているのを見た。

“ゼロ!!”

エックスが叫ぶと少しだけ意識が戻ったゼロはゆっくりと目を開けて顔を上げる。

“エック…ス…か…”

“君は…これでいいのかい!?今までみんなのために戦ってきたというのに!こんなのって!!”

今までゼロは沢山の物を失ってまで戦い続けてきたと言うのに、その果てがこんな仕打ちであるなんて納得出来ずにエックスがゼロに問う。

ゼロは機能停止によって満足に動けなくなりながらもゆっくりと口を動かす。

“俺がいる限り…血塗られた歴史は繰り返される…。”

“そんな…!何言ってるんだゼロ!!”

“俺は…ルインに助けられ…あいつが死んだ時から…いつも考えていた…誰のために…何のために俺達レプリロイドは殺し合わなければならないのかと…。そんな時でも、お前は…あいつの最期の願いを叶えるために…そして、人間達のことを信じ続けていた…。俺は友として…お前を信じている。だからお前の信じる人間達の言葉を…信じたい…。”

〈最終カウントダウン5…4…〉

“止めろ!今すぐ封印を止めてくれ!!”

“いいんだ…エックス…後…半分は…。”

〈1…0!!〉

エックスは親友との永遠の別れに膝を付き、泣いた。

そして妖精戦争から百年の年月が流れ、自身のボディに封じたダークエルフの封印をより堅固な物にするために、自身はネオ・アルカディアを離れた。

そして、混乱を避けるために造られた自身の影と言えるコピーエックスの人間重視の政策により、弾圧されたレプリロイド達と、コピーエックスを製作したシエルが目覚めさせたゼロ。

それを見た時、エックスの心は歓喜に震えた。

親友が戻ってきた。

強制的に目覚めさせられたから以前の記憶は失ってはいるが、ゼロが戻ってきたのだ。

それからは出来るだけ、ゼロ達の力になれるようにネオ・アルカディアのコンピュータに細工や秘密裏に情報を与えるなどして、それは確実に自身の力と命を削る行為ではあったが、エックスはもう構わなかった。

ダークエルフを自身に封印した時点でまともな死に方などしないと確信していたから。

恐らくはサイバーエルフとしての力を使い切り、ひっそりと消えていくのだろうなと思っていたのだが、自身の覚悟を大きく揺らがせる事態が起きたのだ。

ルインが……最初のイレギュラー大戦で自身とゼロを守るために命を散らした仲間…自身にとって何よりも大切な存在が目覚めていたのだ。

彼女と会話を交わし、想いを告げて彼女と結ばれた瞬間、エックスはゼロが封印されてから失ってしまったと思っていた死の恐怖を思い出してしまった。

エルピスにボディを破壊され、死が目前となったことでそれがより顕著になる。

死にたくない…消えたくない…まだ生きていたい…まだ、ルインやゼロと生きていたい。

「エックス様」

二人の捜索を続けてくれていたファントムがエックスの様子に気付いて声をかけた。

「っ…ファントム…」

朦朧としていた意識がファントムの声によって呼び戻されたエックスはハッとなってファントムに振り返る。

「大丈夫ですかエックス様?」

「うん…すまない…みっともない姿を見せてしまった……。」

ゼロがいなくなってからは誰にも見せなかった自身の弱い部分をファントムに見られてしまった。

「失望…したかい?ネオ・アルカディアの統治者が…君達の主がこんなに情けない奴だったなんて…」

「いえ」

「え?」

エックスの言葉をハッキリと否定したファントムにエックスは目を見開いた。

「以前の御身は、いつも諦めたような顔をしていました。」

エックスは一人でいる時、暗い表情をすることが多かった。

いつも物憂げな顔をして何か悩んでいる様子を、ファントムは陰から見ていて知っていた。

しかし今のエックスからは生きたいという気持ちが強いというのが感じられた。

「そう…ルインが生きていたのが分かって、今更死にたくない…消えたくないと思い始めたんだ…。分かる前までは死んでも構わないと思っていたのに…」

「大切な存在がいる時は生きて傍にいたいと願うのは当たり前のことです。御身が望んでいることは当然至極」

「…………ファントム……ありがとう。僕は…生きる。どんなにみっともなくても、最後まで…」

「…エックス様、あやつらを見つけました」

初めて見たエックスの目にファントムは一瞬口元が綻んだが、すぐにいつもの表情に戻ると、エックスにあることを報告する。

「本当かい?」

「ハッ、しかしかなりの傷を負っているようなので、意識が戻るのは当分先かと」

「分かった、案内してくれないかい?」

「御意」

エックスはファントムに案内され、この場から去っていくのであった。 
 

 
後書き
取り敢えず妖精戦争後のロクゼロの人間達について。
レプリロイドは基本的に人間達をどうこう出来ないようなので、バイルの処罰は多分生き残った人間達がしたんでしょうね。
バイルの処罰をオメガと同じように宇宙に追放したのはまあいい。
でも、何でよりによって製作者であるバイルをオメガと一緒にしていたんだよ。
そんなことしたらバイルが何かを仕出かそうとするのが分かるだろうに。
妖精戦争で生き残った人間達はみんなド阿呆か 
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