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至誠一貫

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第一部
第二章 ~幽州戦記~
  九 ~軍師たち~

 
前書き
2017/8/20 全面改訂 

 
 翌朝。
 昨日と何も変わる事なく、調練が始まった。

「張遼、どうだ? 我が軍の者どもは?」
「せやなぁ。関羽もやけど、趙雲もどないしたん? 昨日よりもえらい動きが軽いで?」

 星には無茶をするな、と言っておいたのだが。
 身体はまだ辛かろうに、それを感じさせない程、精力的に動き回っているようだ。

「おお、やっておるな」

 杖を突きながら、丁原が姿を見せた。

「丁原殿。お加減は宜しいのですか?」
「ああ。あれ如きで寝込む程、ヤワな鍛え方はしておらんよ」

 そうは言うものの、やはり顔色は優れぬように見受けられる。

「あまりご無理をなさらぬよう。董卓殿や呂布殿が悲しみますぞ?」
「ふふふ、ワシも老いたものよ。皆に心配ばかりかけておるわ」

 自嘲気味に言い放つと、

「ご忠告、痛み入る。せいぜい、気をつけるとしようかの」
「……は。ところで、丁原殿」
「何かな?」
「一つ、伺いたいのですが」
「うむ」
「董卓殿とは、どのような関係でござるか? 董卓殿はおじ様、と呼んでいたようですが」
「月から、聞いておらぬのか?」
「はい。何分、董卓殿とゆっくり話が出来たのも昨日が初めてでした」
「そうか。……土方殿、月が并州刺史、というのはご存じかな?」
「はい」
「実はの。并州刺史はつい最近交代になったのじゃ、ワシにな。月は中郎将に任じられた。まだ、都からの沙汰が来たばかりじゃがのう」
「それで、でござるか。お二人ともに并州刺史、と耳にしておりました故」
「もともと、幼き頃より月の父とワシは交流があってな。血のつながりはないが、ああしてワシの事をおじ、と慕ってくれておるのじゃ」
「なるほど、合点が参りました。では、呂布殿は?」
「奴は西方の出じゃが、あの通り心優しき性格をしておる。本来、戦には向かぬ性分……しかし、武以外に糧を得る術を知らんのじゃ」
「…………」
「それで、武を極める事を思い立ったようじゃ。もともと、天賦の才があったのであろう。文字通り、武の達人になった。そんな次第でな」
「槍術、弓術にも通じているとか」
「本当に貴殿は、よくご存じじゃのう。無論、剣を取らせても超一流。そして、体術にも通じておる。恋が得手とせぬのは、氣ぐらいではないかな?」
「まさに、無双ですな」
「うむ。……だからこそ、ワシは恋の行く末が心配でならぬのじゃ。実の娘でこそないが、ワシは娘同然に思っているからの」
「……無双が故、他者に利用される。ですな?」
「然様。あれはあまりにも純粋じゃ。この乱世で、己の才覚のみで生き抜く事は出来まい」
「…………」
「そして、その力を恐れるあまり、生かしておけぬ、と企む輩も出よう。そうなれば、恋は望むと望まざると、戦うのみ。その末路は……いずれにせよ、救われぬものとなるじゃろう」

 丁原は、大きくため息をつく。

「ワシはもう長くない。後事は月に託すつもりじゃ」
「しかし、丁原殿。董卓殿は権力に固執せぬ、との事でござった。とは申せ、呂布殿ほどの猛者を手元に置いては諸侯の警戒心を呼び起こすには十分かと」
「……やはり貴殿、並の男ではないな。ワシは、それも懸念しておる。……あのような、清らかな心を持つ娘達が、このような魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世に生きなければならぬ、とは何とも不条理な限りじゃ」
「然様ですな。世の乱れようから見て、朝廷の有様も大凡(おおよそ)、推察がつき申す」
「のう、土方殿」
「……は」
「貴殿、このまま義勇軍にて終わるつもりかな?」
「……さて。先の事はわかりませぬ。今の拙者は、あまりにも微力でござれば」
「今は、な。だが、既に貴殿の功は、並々ならぬものじゃ。田舎の県令や県長程度であれば、確実に任じられる程度には、な」
「拙者には、それが妥当かどうかすらもわかりませぬ」
「考えてみればわかる事じゃ。やれ将軍だ、刺史だ、という者どもが挙って賊討伐に動いておるのじゃ。なのに、何故にここまで手間取る?」
「……思いの外、賊の数が多いからでは?」
「そうじゃ。それに、官軍の弱体ぶりもある。貴殿も見たであろう、朱儁将軍麾下の有様を」
「はっ。……正直、想像以上でした」
「あれが、今の官軍そのものよ。己の利と権力のみに汲々とし、民の暮らしや国の行く末など、顧みる事のない輩ばかりじゃ」

 よほど、腹に据えかねているのか。
 丁原の憤りは、相当なものだ。

「世はますます、麻の如く乱れよう。黄巾党どもを全て討ち果たした、としてもじゃ」
「丁原殿……」
「だが、苦しむのはいつも民じゃ。その負の連鎖は、誰かが断ち切らねばなるまい。例えば、貴殿などがな」
「拙者に、朝廷を打倒せよ。……そう仰せられるか?」
「そうではない。無論、それも一つの道ではあるが……それは力で奪い取った権力に過ぎぬ。それがどうなるか、歴史が示していよう」
「難しき命題にござるな」
「うむ。じゃが、ワシは貴殿ならばあるいは、と思っておるのじゃ。……万が一あらば、月と恋の事も、頼みたい」
「……拙者を、何故そこまで買って下さる?」
「さて、の。年を取ると、いろいろと見えてくるものがある。貴殿の事も、その一つじゃて……ゴホッ、ゴホッ!」

 また、丁原は激しく咳き込み始めた。

「む、これはいかぬ。丁原殿、お休み下され」
「ゴホッ、ゴホッ。……いつもの発作じゃ、気になさるな」
「しかし……」
「じきに収まる」

 やはり、無理にでも休ませた方が良い。

「さ、我が天幕をお使い下され」
「……済まぬな。造作をかける」



 夜になった。
 丁原は体調が思わしくなく、そのまま臥せっている。
 それ以外の全員が、董卓の天幕へと集まった。

「今後の方針についてだけど。ボクと郭嘉、程立で話し合った結果よ」

 そう言って、賈駆は卓上に竹簡を広げる。
 この付近の地図のようだ。
 ふむ、なかなかに精密なもののようだな。

「月が率いる官軍二万に、丁原軍が七千。そして、土方軍だけど……」

 こちらを見た賈駆に、愛紗と星が、頷き返した。

「はい。予定ではもう一日、調練に費やす予定でしたが。思いの外捗り、今日で一通りの選抜が終わりました」
「もともとの兵と併せ、都合六千。無論、さらなる調練は必要ですが、戦力として目処は立った、そう言えますぞ」
「併せて三万三千ですねー。糧秣を考えると、妥当な数だと思います」
「それに、将の頭数も十分です。一気に戦略上の要衝を狙うべき、そう思います」

 稟も風も、言葉に自信が滲み出ている。
 賈駆とのやりとり、しっかりと生きたようだな。

「それで、どこを狙う?」
「ええ、候補はいくつかあるわ。一つがここ、冀州の広宗。敵総大将の張角が立てこもっているって噂よ」
「現在は、盧植将軍が包囲を目指しているとか。従って、広宗を狙うのなら、共同作戦となるでしょう」
「他には?」
「ちょっと遠くなってしまいますけど、豫州にいる波才軍でしょうねー。黄巾党の中でも、最大の戦闘力を持っているみたいです」
「そちらは皇甫嵩将軍と……曹操殿が、対峙しておられるとか」

 曹操の名を口にするとき、やや躊躇いがあったな。
 無理もない。
 私という存在がなければ、稟は曹操の麾下として智を振るっていたに相違ないのだからな。

「それから、南陽の張曼成。もっと遠くなるわね。ここは、孫堅が中心となって攻め立てている筈よ」

 曹操に孫堅、皇甫嵩、朱儁……そして、ここにいる董卓。
 名のある諸侯や将軍は、ほぼ出揃ったか。
 ……いや、まだいるな。

「冀州と言えば、袁紹が拠点にしているのではないか?」
「ああ、あのバカの事?」

 賈駆は、明らかに蔑むような口調だ。

「詠ちゃん。ここにいないからって、失礼だよ?」
「だって、仕方ないじゃない。名門の出、ってのを鼻にかけるばかりで、何も出来ない奴だもの」
「そうなのか、風?」
「はいー、賈駆さんの言う通りですね。袁家と言えば、四代に渡って三公を輩出した程の名家なのですが」
「……同じく袁一族の袁術共々、お世辞にも優秀、とは言い難いですね」
「郭嘉。はっきり言った方がいいわよ、どっちも超のつくバカだって」

 もともとキツい性格なのやも知れぬが、賈駆の評価はかなり手厳しい。

「それにね、袁紹は冀州じゃなく、洛陽にいるわよ。袁術もね」
「む? ならば何故、黄巾党との戦いに出てこないのだ?」
「言ったでしょ、バカだって。バカのくせに、権勢欲だけは強いのよ、あいつらは」

 やれやれ、相当な言われようだが。
 しかし、賈駆の性格は別として、彼女程の軍師が、言われもなく他者を誹謗中傷するとも思えぬ。
 稟と風の分析も合わせると、愚物という評価は、正しいのだろう。

「それで、どこと戦うのだ? 我が武、見せてやるぞ!」
「落ち着くのだ、華雄」
「張飛の言う通りや。ええか、ウチらは合同で初めてさっき言った連中と戦えるんやで?」
「……お前、そのまま戦えば、死ぬ」
「ぐっ。……わかっている、だから鍛え直しているところだ、自分自身をな」

 そんなやりとりを聞きながら、私は地図に見入っていた。

「ご主人様? 何か、気がかりでも?」
「……うむ。ここにいる黄巾党だが」

 と、地図の一点を示した。

「そこは、白波賊が本拠としていますねー」
「白波賊?」
「ええ。黄巾党の一派なのですが、他の黄巾党とはあまり連携していないようです。規模も、二万程度とか」
「だから、要衝を狙う、という戦略からすれば外れているのよ」
「しかし、二万と言えども大軍。万が一、我が軍の背後を突かれたら危ういのではないか?」
「では、歳三様は、白波賊が他の黄巾党と連携する可能性がある、と?」
「そうだ。今までになかったから、と可能性を排除するのは危険であろう。要衝を落とすのはもちろん重要だが、戦力がまとまれば多様な戦術が展開可能となろう。それよりは、各個撃破を目指すべき、私はそう考えるが」
「考え過ぎって気もするけど……」

 賈駆は、やや不服そうに言う。
 軍師として、様々な検討を重ねた結果に横やりを入れられたのだから、当然の反応ではあるのだが。

「ですが、お兄さんの言う事にも一理あると思うのですよ」
「ええ、可能性は排除すべきではない……。歳三様の、仰る通りかと」
「では、それも含めてもう暫く検討する、という事にしましょう。丁原おじ様にも、そう伝えておきます」

 董卓がそう締めくくり、軍議は終わった。

「あ、土方はん。ちょっとええか?」

 と、張遼が声をかけてきた。

「どうした?」
「アンタに、ちょっと聞きたい事があるんや。一緒に来てくれへんか?」
「構わんが。すぐにか?」
「手間は取らせへんって。な?」
「わかった。では、参ろう」

 ふと、視線を感じた。
 ……稟か。

「稟。どうかしたのか?」
「……あ、い、いえっ! 何でもありません」

 妙に慌てているようだが。

「話があるのなら後で聞こう。済まんな」
「い、いえ……」
「土方はん。行くで?」

 張遼が、私の腕を引っ張る。
 その弾みで……胸に、腕が当たってしまう。

「む。こ、これは……済まん」
「ん? ああ、気にせんかてええって。ウチ……」
「最後が聞き取れなかったが、何だ?」
「何でもあらへんって。さ、こっちや」

 あれだけ明瞭に話す張遼にしては、珍しい事だが。
 稟の様子も気になるが、今は張遼の用件が先だな。



 数刻ほど話し込んで、私は自分の天幕へと戻った。
 しかし、馬具の話とはな。
 私のいた世界では、蹄鉄に鐙、鞍、そして手綱は当たり前だった。
 だが、この世界にはそのいずれも、存在しない。
 裸馬をあれだけ自在に操る馬術は大したものだが、同時に馬を乗りこなせる人間の絶対数が少ないのも、また頷ける話だ。
 馬そのものが稀少で高価、という事を差し引いても、これでは騎馬隊の編成にはかなりの労力が必要となろう。
 ある程度、思い描ける物を作らせてみるか……。

「歳三様」

 呼びかけに、思考を中断する。

「稟か。入れ」
「はい」

 何やら、思い詰めた様子だが。

「さっき、私に話があったようだな。その事か」
「……はい」

 稟は、顔を上げた。

「歳三様。歳三様は、愛紗と……。星にも、寵愛を賜りましたか?」
「その事か。……そうだ、星も抱いた」
「やはり、そうでしたか。今日の星は、いつになく活き活きとしていましたから」
「だが、私は無理強いはしておらぬぞ?」
「当然です。歳三様がそのような御方でない事ぐらい、皆わかっております」
「もし、それが気に入らぬのならそう申せ。だがな稟、愛紗も星も、私は等しく愛するつもりだ」
「……卑怯です、歳三様は」
「そうかな?」
「そうです。そのように仰せられては、私は何も申し上げられません」

 そう言って、頬を赤らめる稟。
 誤魔化すつもりなのか、しきりに眼鏡を持ち上げている。

「愛紗は、脆さが消え、自覚が芽生えてきました。星も、一騎駆けに拘る武人としてでなく、将として動こうという様子が窺えました。……どちらも、歳三様の寵愛がきっかけなのは、疑いようがありません」
「私は、その一助に過ぎぬよ。もともと、あの二人は優秀な将の素質がある」
「それはわかります。……ならば、わ、私も……」

 稟は、更に真っ赤になる。

「私は、ご承知の通り、思考が先行してしまう事が多々あります。……その、艶事の話にしても」
「止めておけ。また、鼻血が止まらなくなるぞ?」
「い、いえ! 艶本は確かに読んでいますが……。それも、想像の域を出ていません」
「ふむ」
「……その克服もあります。ですが、私は、私の至らなさを打破したいのです」
「稟が至らぬ?……戯れは止せ」
「戯れではありません。先ほどの軍議もそうです」
「稟達の提言は的確であった、そう思うが?」
「ですが、白波賊の事は全く抜けておりました。……歳三様が仰せの通り、可能性は排除すべきではない。軍略を練る上での基本中の基本を、私は見落としていました。軍師として、恥ずべき事です」
「気に病む事はないぞ、稟。私とて、お前達の提言があればこそ、その可能性に至ったまでだ」
「……お優しいのですね、歳三様は」
「フッ、私がか? これでも、鬼呼ばわりされていたのだぞ?」

 稟は、激しく頭を振る。

「いいえ! それは、本当の歳三様をご存じない輩だからでしょう。……私は、歳三様にお仕えした事が誤りでなかったと、日々思っております」
「曹操に仕えた方が良かった、そう思うやも知れぬぞ?」
「いえ。曹操殿がどのような御仁であろうとも、歳三様以外に私の主は、あり得ません」
「稟」
「……お慕い申し上げております、歳三様。願わくば、私が殻を破る一助に、なって下さいませ」

 稟の眼に、迷いはないようだ。

「言っている意味は、勿論わかっているのだろうな?」
「はい」
「……わかった。ならば、参れ」
「……はい」

 稟の手を取り、寝台へと導いた。
 ……が、布団が何故か、丸まっている。
 そして、何かが蠢いている。

「……何者だ?」

 まさか、刺客か……?
 だが、現れたのは、殺気とは縁遠い存在。

「やれやれ。やっと気づいていただけましたねー」
「ふ、風?」
「稟ちゃんの愛の告白、全て聞かせていただいたのですよ」

 しかし、全く気配を感じさせぬとは。
 私が衰えた、とは……思いたくないな。

「い、一体何ですか、風? 邪魔をするつもりですか?」
「いえいえー、稟ちゃんは本懐を遂げられるのですから。それよりもお兄さん、風は言いましたよね? しつこい、と」
「……覚えておるが」
「なら、愛紗ちゃんと星ちゃんだけでなく、稟ちゃんにも寵愛を賜ろうとするのに、何故風は除け者なのですか?」
「何を言っているのです、風?」
「何度も言いますけど、風はこう見えても大人なのですよ? もし、子供扱いされているのなら不当なのです」
「風。私は、そのようなつもりはない。だが、今この場でお前がここにいる、その説明にはなっていないぞ」
「そうでしょうかー? 風も、お兄さんの事が好きなのです。それでは理由にならないのですか?」

 ジッと、私を見つめる風。
 いつも眠たげな眼が、今日はしっかりと私を射竦めている。

「……風の気持ちは、相わかった。だが、ここまで勇気を振り絞って告白した、稟はどうなる?」
「ですからー。稟ちゃんと一緒に、でいいかと」
「風! あなた、何という事を」
「稟ちゃん、風も真剣なのですよ。もう、待てないのです」

 ……同時に言い寄られた事が、昔なかった訳ではない。
 だが、江戸でも京でも、どちらかが身を引いた事ばかり。
 まさか、両者譲らず、となるとは、な。

「風。稟にも問うたが、何をするのか、よくよくわかっての上、だろうな?」
「はいー。子作りですよね」
「……有り体に言えば、そうだ。稟、良いか?」
「私は……。風は、言い出したら聞かぬ性分です。歳三様に、お任せ致します」
「そうか……。わかった、では二人とも、参れ」
「は、はい……」
「流石はお兄さんです。風は、嬉しいですよ」

 まぁ、これも良かろう。
 女心を無碍にする程、私も無粋にはなれぬからな。



 事が済み、二人は私の腕に、それぞれ抱き付いている。

「稟。どうであった?」
「……はい。やはり、実践する事には、いかなる書も敵わない、と」
「そうですねー。稟ちゃん、鼻血も出てませんしね」
「しかし、風も良く耐えましたね……。かなり、痛みが酷かった筈ですが」
「これも、愛のなせる技でしょうか。勿論、お兄さんだから、ですけどねー」
「……そうか」
「では、このまま寝ますね。お兄さんも、稟ちゃんも、お休みですよ」

 そう言って、風は眼を閉じる。

 ……程なく、安らかな寝息が聞こえてきた。
「ふふっ、無垢な寝顔ですね」
「そうだな。稟の寝顔も、見せて貰えるのだろうな?」
「……歳三様。それは、野暮というものです」
「フッ、野暮か。確かに、風流ではないな」

 返事は、ない。
 稟も、眠りに落ちたようだ。
 ……さて。
 この事、愛紗と星にも、包み隠さず話さねばなるまいな。 
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