大海原の魔女
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四話 ごめんなさい
前書き
今回 中盤からギャグが多くなります。ご注意ください。
「あの、なぜ池へ来たのですか?」
私が頼んだのは聖水の作り方のはずだが…
「いいから黙って見てな…」
そう言うとお祖母様は池に手をかざした。
すると・・・
水面が盛り上がり、そして水球となって宙に浮かびあがった…
心なしかそれは蒼く輝いて見える。
「吸血鬼などの怪異が流水を嫌うと言われるのはなぜか?
アジアでは心身を清めるのに沐浴や水垢離をするのもなぜか?
その理由は、水に宿る力にあるのさ。
この世に存在する全ての物には秘められた力が存在する。
それは物質ごとに著しく異なり、使い方もまた違っている。
そして、水に宿っているのは浄化の力。怪異にとっては毒そのものだ。」
そういいながらお祖母様は水球をバケツに入れた。
「聖水とは、こうやって‘‘力”を濃縮しただけのただの水さ。特殊な薬品など入っていないんだ。」
なるほど・・・「ところで、どうやって‘‘力”を濃縮するのですか?」
「魔力で操作するだけさ。と言っても簡単じゃない。
魔力操作を極める必要があるのさ…
こんなふうにね。」
お祖母様は空へと浮かび上がった、
それも箒も使わずに。
◇ ◆ ◇
Q.なんでウィッチは空を飛ぶとき箒に乗るのか?
A.箒の‘‘力”を利用して、魔力を上手くコントロールするためである。
魔法の発動自体に箒は必要ない。
だが、実際に飛行を行うには緻密な魔力操作が出来なければならない。なので半人前の者が空を飛ぶには、箒が不可欠なのだ。
逆に言えば、箒無しで飛べることは魔力のコントロールが完璧な証だという。
もっとも、アニメや漫画のように一週間やそこらで習得できるものではなかった。
「そりゃあ、簡単に飛べるようになるなら箒はいらないよな。 」 …当たり前か。
あの日から一ヶ月以上経ったが、まだ飛ぶことはできていなかった。
橋から空中へ身を投じたり(もちろん川に落ちた),瞑想したりしているのだけどなぁ…
◇ ◆ ◇
エレン 7歳 秋
今の修行法に限界を感じ 悩みに悩み抜いた結果
彼女がたどり着いた結果(さき)は これだった
「 I can fly!!! 」 『むちゃするです』
自分自身を育ててくれた今の家族への大きな恩
それを返すには立ち止まっていられないと 思い立ったのが
上空25メートル 箒からの飛び降り
魔力を整え
自己暗示し
祈り
願い
飛び降りる!!!
ーーーーーーー
普通の人間は10mの高さから落ちても死ぬことがある。
だが身体強化とシールドが使えるウィッチなら、この高さから落ちても大ケガはしない。
ところで、着地地点に何か存在していたら、一体どんなことになるだろうか?
先述の通りウィッチが死ぬことはない。
だが下にいたのが、人間だったならば・・・・
◇ ◆ ◇
「エレン姉さんは、どこにいったのかしら?」 私、クリスティは一番上の姉さんを探しています。
誕生日に貰った自転車の整備を、手伝ってもらいたかったのだけど。
「あら?」 地面に影が映っている。どうやら箒で飛んでいたようですね。
見上げてみると、見えたのは
「 I can fly!!! 」 と叫びながら飛び降りる姉さんの姿でした。
その瞬間 「何してるんですかー!?」と叫びながら、思わず飛び出してしまいました…着地地点へ。
・・・・・後から考えると姉さんも私も冷静ではなかったのでしょう…そのせいで、フェイ姉さんの災能(誤字に非ず)を目覚めさせてしまうなんて。
◇ ◆ ◇
「何してるんですかー!?」
それはこっちのセリフだ!!
落ちている途中で飛ぶことが出来なかったら、妹が『タルタルステーキ』になってしまう!
魔力を限界まで発揮し、飛行魔法を発動する。
‘‘失敗”はしなかったようで、速度が落ちていく…しかし、このままでは衝突が避けられない。確実に怪我をさせてしまう。
ならば 飛行を‘‘諦め”、
・・・「 I can glide!!! 」 ‘‘滑空”する!
私はクリスティの頭スレスレを飛び越し、
「あぁあっ!?」 数十mを飛んだところで木にぶつかり、意識を失った…
◇◇◇◇◇◇◇
「知ってる天井だ。」
目が覚めたら自室のベッドの上だった。 だれかが運んでくれたのかな?
「エレン姉さん、起きたのですか。」
横を見ると、クリスティがチェアに座っていた。
「クリスティが運んでくれたのか?」
「はい、でもお母さんたちと一緒にでしたが。」
…「そうか、ありがとう。」
「いえいえ・・・ところで、なんであんな危険なことをしていたのですか?」
「えーと、それはだな…ところでなぜクリスティはあそこに飛び込んできたんだ?」
「私は姉さんを受け止めようと咄嗟に…って 話をはぐらかさないで話してください!さもないと・・・」
「さもないと?」
「『 I can fly !!!』と叫んでいたことを言いふらします。」
…Oh no!
だが確かに自分でも、あのときの私はどうにかしていたと思う…いくら焦っていたからってアレは恥ずかしすぎる。
「分かったから!今から話すよ…」・・・
・・・「姉さんってたまに頭がショートしますね。ガツン、て叩いた方が良いのでは?」
「…I'm sorry.」 ゴメンなさい。
・・・・・・・・・
「お姉さま、起きたのですね!!」
部屋に駆け込んできたフェイは、そのまま抱きついてきた。
「もう心配したんですよ!このまま目を覚まさなかったらどうしようかと…あっ、でもそれなら私がずっと面倒をみて…ってすみません、もっと喜ばないといけませんよね!」
地味に傷に響いているんだな、これが。
でも、心配してくれるのはありがたい。
「そういえば私、ライスプディングを作ってきたんですよ!さあ、食べてください!」
ライスプディングか、前世の日本では苦手な人が多かったがなぜだろうな?ぼたもちだって米と甘いあんこの組み合わせで、学校給食ではご飯と牛乳を一緒に食べるのに。
「・・ないで・・さい…」
ルナがヨロヨロと部屋に入ってきた。おい、怪我人の私より顔色が悪くないか?
「そのプディングをた…ぁぁ・・・」
「ちょっと!?」クリスティが倒れるルナを慌てて支える。
「これが、運命なんて……受け入れられません・・・とめられなくて…ごめんなさい・・・・・」
「ルッ、ルナァァァァァァァ!!?」
…返事がない、意識を失ったようだ…一体どうして?
「フェイは、ルナに何があったかわかるか?」
「分かりません、先ほどまで料理を手伝ってもらったですけど…」
「悪いがプディングを見せてくれるか?」「あっ、はい!」
・・・見た目はベイクドタイプのプディングだな。チーズのような臭いがするせいでグラタンやシェパーズパイに見えるが、不味そうにも見えない。
一口食べてみる。
「…そうそうRice Puddingは、このくらいの辛さがちょうどいいネー! ってなんでカレーの味がするのデスカー!?」
「…エレン姉さん、口調が。」
あれおかしいな、したがもつれて
・・・・・・・「ぐふっ!」
「お、お姉さまー!!」
そのあと一晩中寝込んでいたらしい。
ーーーーーーーーー
フェイは俗にいう『料理の天災』のようだ。
みんなで協力して、改善させようとしたのだが…
「ジャガイモを生のままサラダに入れるな、普通の人間は腹を壊すぞ!」
「フェイ姉さん、ルバーブの葉は有毒だから取り除いてください…」
「あの、モルトビネガーを入れすぎじゃないでしょうか?」
「ひえぇぇ〜!!?」
『だめだこりゃ』
肝油のせいで舌がおかしくなってしまったのだろうか?
なかなか上手くいかなかった。
◇◆◇◆◇◆◇
あれからさらに二ヶ月・・・
あの事件の際にコツがつかめたのか、たどたどしくも飛べるようになった。
「‘‘本当に” 三ヶ月で飛べるようになるとはね…」木陰からお祖母様が姿を現す。
「お祖母様!?見ていたのですか?」
「ああ…それだけ飛べれば十分さ、ついてきな。」
一緒に池に来た。
「手を水面にかざして、そしてこの前見せたようにやってごらん。」
目を瞑り、心を落ち着かせる。
・・・かすかにだが、水にある‘‘力”を感じ取れた。
磯の魚を底引き網で一網打尽にするようなイメージで、
‘‘ソレ”を集め、 濃縮し、 水ごと引き寄せる!
ーーーポチャンーーー
結局、私が引き寄せられたのは小さな水球。だけど…
「随分と小さいね。だが、確実な進歩だよ。」
それでもお祖母様は褒めてくれた。
・・・・・・・・・
お祖母様が倒れたのは、その翌日のことだった……
後書き
それにしてもこの主人公、焦ってばかりである。
設定
聖水…作者が なぜネウロイが水を嫌うか考えた結果、登場した代物。
教会でも手に入るが、大部分は怪異に効果がないニセモノである。
作るのに大量の魔力と高い技術を必要とするため、作れる者はほとんどいない。
ネウロイが登場しても、量産出来なかったので戦局に影響しなかったが…
ライスプディング…欧米ではポピュラーなデザートで、風邪や胃腸が弱っているときにも食べる
粥のように鍋で煮込むタイプと、グラタンみたいに焼くタイプがある。
シェパーズパイ…羊肉とジャガイモで作るグラタンに似た料理で、‘‘パイ”とはいうがパイ生地は使わない。
生のジャガイモ…生食可能な種類もあるらしいが、20世紀前半には品種自体存在していないだろう。
某アニメでは登場人物が生で食べていた気がするが、あれはたぶん幻覚である。
しばらく更新が不定期になると思います。まだ四話しか投稿してないのに。
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