SAO〜裏と 表と 猟犬と 鼠
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第8話 想い
前書き
今回完全にアルゴのお話になります。
会話等と少ないですが、原作にはない、アルゴの乙女っぷりをとくとご覧あれ
です(σ・∀・)σ
「チッ...デタラメすぎるな。partyが一転、地獄への片道切符だ。huhu...ha...Shit...」
持ち主を失った刀剣類が累々と転がっている。
そして、忌々しき細剣が。
「クッ...奴...まだこんな...力を...」
「クソッ!クソッ!あの女ァァ!」
最後の地獄の時間は、数多くの手勢を失う事になった。
そして、露見してしまう。自分達の存在が...。
『レッドギルド 笑う棺桶の名が』
自分達の名が...。
森を疾走する。
先に行った仲間の元へ。
プレイヤーネーム[オオミネ]
先の戦闘に対する犠牲は0。
ほぼ奇跡と言っていい俺の帰還。
だがそれも今や危ういところである。
とある、少女によって殺される確率が高い...いち早く謝るために、俺は森を疾走する。
既に疲れてはいるものの。そんな事で歩みを止めれば、距離が離れる。
遅ければ遅いほど、あいつは怒るだろう。日に油どころか大量の爆薬を投げ込む勢いで、キレるだろう。
泣きながら太陽に向かって走りたいところだが、堪える。
そして、あいつの姿が見えた。前に味方はいない...。つまり...味方に見られないように始末するつもりだろう。先の戦いよりも、恐ろしい...だが、ここであいつから逃げるわけには行かない。プライドなど、投げ捨てたい所だが...。
「アリー...」
ピクリ...と、反応し、すごい勢いでこちらへ向かってくる。
「死んだな...」
だが、来たのは武器による攻撃ではなく、柔らかく心地のいい衝撃だった。
「このバカ!本当に...本当に...心配したゾ...」
またもや啜り泣き始める。仕方なく...頭を撫でてやる。
「本当に悪かった...だが...アリーには返し切れない借りが出来たな...。済まなかった...。ありがとう...」
「借りなんか...要らねぇヨ...。ただ...もうあんな事はするナ...。お前が横にいないと...寂しいんダ...。お前があの時...横たわってた時...何も考えられなかっタ...。心臓が...止まったかと思っタ...。」
泣きながら...震えながら...喋るアリーに、初めてドキっとしたかも知れない。
「俺は、この先恐らく危険な事だろうが、無茶だろうが、懲りずに飛び込むだろうな。仲間が危険な目に合えば、助けに向かう。敵が来れば、戦う。だが、2度と...1人で終わらせようなんてしない。泣いてくれる...奴がいるからな。」
「死なないで...。」
「俺は死なねぇよ。お前こそ、俺の横から動くなよ。お前の後ろを守るのは俺だ。俺の後ろはお前が守ってくれ。2度と同じ過ちは侵さない。唯一無二のパートナー...だろ?」
「あぁ...。」
「帰ろうか。今日は本部じゃなく、俺の家に帰るか。本部には明日顔を出す。」
そっと離して歩を進める。
落ち着いたのか、横を歩くアリーが、口を開く。
「今日は...オレっちも行ク。」
「何処に?」
「お前と一緒に居ル。」
「なんだよ急に」
「別に...いいダロ...。」
「そうかい。」
そして、並んで歩く2人の背で太陽が沈み始める。
横にいる男に、ドキドキする。こんな感情、この世界では無縁だと思っていたのに。思えば、どんなに危険でも、この男は、自分を守ってくれた。安全マージンが足りないにも関わらず、前線の情報収集に行った時も、ラストアタックは譲ってくれたし、危険な時、身を呈して守ってくれたのもこの男だ。
思えば、守られてばかりだ。そう言えば、初めて会ったときから、この男のことで後悔したことはない。最初は、使えるヤツ...次は、変なヤツ。その次は...いいヤツ。そして、カッコイイヤツ。最後は........。
横にいるヤツは、あんな事があった後なのに、殺されかけた後だというのに、仏頂面で、まるで、不貞腐れながら歩いている様な顔をしながら横を歩いている。
思えば、人を率いる事の出来るカリスマ性。戦場を見極める眼。正しい戦略を導く頭脳。ほかの追随を許さない動体視力と反射神経。顔は、まるでファッション雑誌のモデルをしているかのように整っている。思えば非の打ち所がないヤツだ。
「どうした?」
「何でもナイ...」
少し声を掛けられるとドキッとする。真っ赤な夕日で気付かれないだろうが、顔が暑い。赤いのだろう。
小さな気遣いも出来る。
想えば想う程、胸の鼓動が、顔の赤みが、止まらなくなってくる。行くと言ってしまった以上、コイツの家に行くのだが。大丈夫だろうか。変なところはないか。自然と自身の格好を気にしてしまう。
少し、イタズラしてやろう。
「んあ?何しや...まぁ、いいか。」
この男、絶対鈍感だ。
今しているのは腕に腕を回し、まるで聖夜を共にする恋人の様にしているのだが。反応は薄い。
と言うか...ここまで反応が薄いとどうすればいいかわからなくなる。
離そう...としても、何故か安心してしまい離せない。終いにはこの状態が安定してしまい、くっつきながら歩くことになった。
腕は...思ったより太い。弓道をしていたのだから当たり前か。
そして、そのまま街に付いてしまった。
恐らく市場に向かっているであろう。マーケットのある方向に歩みを進める。フードは外してしまっているせいか、素顔はわかる人間が見ればバレる。
だが、いつの間にか右手を握られ、左手はこの男の脇。
バレませんように...そんな願掛けをして、マーケットに向かうのであった。
市場に着くと、中層でありながら人でごった返している。
まだ28層なのだから...当たり前か。
見れば、顧客の姿がチラホラ...顔見せはしてないため、バレないだろうが。商会のマントを着ている時点でバレてるかもしれない。
珍しく横の男は武器屋防具屋装飾屋に目もくれず、食材選びに没頭している。野菜を購入した後、肉屋に向けて歩みを進めるが、その足取りが若干装飾屋に向いている。
この男...と思ったが、店につくと、確かに、可愛い...キレイ...高い...と来た。
ボーッと見ていると、1組のイヤリング型の装飾品を見つけた。得に特殊効果もない。俊敏値が少し上がる程度の物だが、まるでダイヤでも嵌め込んだかのような綺麗な石。その周りはシンプルに銀と細かい装飾が施されている。
セット3万コル...。
意外と高かった。確かに商会トップたるオレっちと、ミネ。稼ぎは多いし、プレイヤーホームを買っても余る程ある。ただ、そこまで買う必要のない装飾品しかも高いと来た。これでは、誰も買わないだろう。
案の定。すぐにその装飾屋を出て肉屋に向かう。そこで事務長のケビンが通りかかる。
サッと顔を伏せ、すぐに通り過ぎていく。
今度こそ肉屋に向かおうとしたが...。
「あれ?ミネか?久しぶりだな。最近見ないから心配したぜ?」
「ん?あぁ誰かと思えばキリトか。こりゃまたなんでこの階層に?」
「あぁ、お前の所で情報収集。流石にアルゴに毎回頼むのもあれだしな。これからはそっちも使うことにした。」
「なるほど...。あれ?お前誰と腕組んでんだ?」
「あ?あぁ...。おい。別に知り合いだからいいだろう。人見知りでもあるまいし。」
チョチョイとつつかれてミネの背中から追い出される。
「ん?あぁお前彼女?嫁?お前...呑気にィィッッ...ア...ア...アルゴ?」
「んあぁ。少し訳ありだ。」
「あのアルゴがねぇ...。ミネも、意外だったよ。そのカップリング」
「やれやれ...何誤解してやがる」
「誤解しようがないだろ?ま、お幸せに〜。俺は退散するわ」
カップル...。少し、妄想してしまったが、許して欲しい。オレっちだって年若い女だ。それくらい...。でもキー坊がそう見るということは...周りから...。
そこからは、頭が混乱しててあまり覚えていない。ただ、ミネの家の前まできて、声を掛けられ正気に戻る。
「流石に入りずらい。ほら、あまり見れるもんじゃないが...な。」
峯の家は現実世界のアパートタイプ。2LDKの4階。
防衛面で言えば、低いより高い方が有利...とでも考えているのだろう。ミネらしい。
「えっと...あぁ...お邪魔するゾ」
「はいよ」
カチャリとルームキーが開かれ、ランプが付く。
男の割に几帳面なのか綺麗な室内。
リビングには、持ち込みの書類だろうか。綺麗に並べられ、机に置かれている。
マントを脱ぎ、普段着に着替えるミネ。スウェットの様なものに、白いロングTシャツ。少し長めの髪をかきあげつつ。だるそうに台所に向かうミネ。
「いつまで突っ立ってんだよ。脱げ。」
ドキッ...とする。て言うか脱げって...言葉足らずにも程がある。
「ニャハハハ...」
「紅茶でいいか?飯も作るし、ま、のんびりしてくれ。なんなら風呂入るか?そこの扉の先にあるからな」
風呂入るか?と、聞くあたり恐らく普通に女性だから...だろうが、脱げの後に風呂入るか?とは、この男、鈍感すぎる。
「な、なら先に風呂行ってくゾ。の...覗くなヨ?」
「いいから行ってこい」
まるで、興味無い...とでも言いたいのか。
無性に殴りたくなるが、我慢しておく。
タオルや、その他備品を受け取り、風呂場に向かう。
風呂場に立った時、メッセージが届いた。
From[kirito]
《頑張れ》
あとで殺す...。と心に秘め、メッセージをすぐ様削除して装備、下着を外していく。
そして、オレっちは思いの外広い風呂を堪能した。
風呂から上がってみると、皿を並べ、鍋を持ってテーブルの上に置くミネ。
案外、様になっているな〜と、暫し見つめると、とたんに恥ずかしくなり、目線を落とす。
「何か手伝うことはあるカ?」
「シンクの下にスプーンとフォークがある。取ってくれ」
シンクの下の引き出しを開け、スプーンとフォークをとると、紅茶を啜りながら書類と髪、写真を取り出している。
食事しながら、しかも相手がいるのに仕事とは...ここでまた少し腹が立つが、なんとなく書類の山から分かっていたこと。所詮、予想通り...と言うやつである。
「さて、好きに食え。お変わりならいくらでも。」
シチューとパン、サラダ、そして自作であろうか?パンの付け合せ用のジャムの様なものが置かれている。
「ミネは料理スキル上げているのカ?」
「しているうちに上がった。あまり外で食うのは好きじゃないからな。」
それもそうか。ミネは商会のボスと名も、顔も知れ渡っている。好奇の視線や、情報を売ってくれと来る奴らを食事中一々相手にするのも面倒...と言うことだろう。
「意外か?」
「思ったよりは驚きはねぇヨ。」
そんなたわいない会話をしつつ。シチューを口にする。クリーミーで、安心する、優しい味が口の中に広がる。
下手なレストランよりも美味しい。
当の本人は、カリカリと今回得た情報、重要人物の顔写真を貼り付け、特徴や獲物、名前を書き込んでいる。
食事が終わる頃に、SSと書かれたスタンプを取り出し、ポンッと子気味いい音ともにクルクルとまとめ、仕舞った。どうやらこれ以上仕事をするつもりはないようで、紅茶を啜っている。
そしてふと、ミネが口を開いた。
「今日はありがとな。」
そう呟くと、こちらに小箱を投げてくる。
「なんダ?」
「いいから開けてみろって。」
包みはない、小箱を開いてみると、あの装飾屋にあったイヤリング型の装飾品だった。
「色々あったけど、初めて会ったのがお前でよかった。一年記念的なプレゼントだ。違ったか?」
仏頂面だが、少し心配そうな顔をしている。
こっちは緩む口角を抑えているって言うのに。
「ううん...嬉しいヨ。大事にスル。」
箱をミネに渡す。
「付けてくれるカ?」
一瞬...なんで俺が...って顔をしたが、すぐに後ろに移動する。
さわさわと、戸惑いがない手。
少し...いや、かなり擽ったい。首筋にかかる息も、触れられている耳も。
「......ッッッ...」
「ほら、終わったぞ。」
気付けば、右耳にイヤリングが付いている。いつの間に終わったのやら。しかし、耳元が若干寂しい。
「向こう向け、オレっちが付けてヤル」
「やれやれ...」
何故この男はここまでだるそうに出来るのだろうか。戦場では有り得ないほどだらけている。
慣れていない行動をしたため、少し時間を要したがミネの左耳に無事に付けることが出来た。そして...。
「これは、あの時のお返しダヨ?」
あの時ミネがしてくれた様に、頬に...口付けをする。
一瞬惚けた顔をしたが、すぐに、そうか...とだが仏頂面ではなくなり、少しの笑みを浮かべながら立ち上がる。
「さてと、寝るか。ベッドはこのドアの部屋。俺はソファで寝る。」
ここで、どうしようか迷った...が。
黙って服の裾を掴む。
言葉は...出せなかった。
「んあ...。何でだよ...ったく...。まぁ、今日だけだからな。」
そう言いつつ、手を握って寝室に向かうミネの後ろを歩く。
ダブルベッドではなく、普通にシングルタイプの物だったため、密着しないと狭い。これは予想外だった。どうするか迷ったが、こうなればヤケだ。
ミネの右側に絡みつく。
何故こんなことを...と思ったが、後の祭りだった。
「お休み」
「お休ミ」
最後にミネはオレっちの頭を一撫でして、ランプを消した。最初から最後まで...予想も出来ない事だらけだったが、最後は楽しかった。少し、照れ臭かったが。
いつか、思いを告げよう。
結果がどうであれナ。
ふと、ミネが腕を抜く。そして、オレっちの頭の下に。
オレっちはミネが好きダ。
「ニャハ...」
「フフ...」
後書き
う〜ん...。
どうでしょう?
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