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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第2章:異分子の排除
  第14話「代表決定戦まで・中」

 
前書き
原作未読でアニメと二次小説の知識だけなので、結構おかしい場所があると思います。(今更)
アニメなどとではセリフを言う人物が違ったりしますが、それは千冬の洗脳が解けた事や、束たちの状況によるバタフライ効果的なものだという設定です。

 

 


       =桜side=



  翌朝、俺たちは朝食を取りに食堂に来ていた。

「....へぇ、結構美味いじゃん。」

  母さんとはまた違った美味さだな。

「さすがIS学園ですね。食事も美味しい。」

「私は秋兄の料理の方が好みかなー?」

  ちなみに、マドカちゃんとユーリちゃんも一緒に食事を取っている。
  周りの女子から“先越された...!”とか言われてるけど....まぁ、いいか。

「...それにしても、どうしてこんな隅の方に?...いえ、私としてもあまり目立たなくて気が楽なんですけど....。」

「あー...まぁ、単純に近くにいたら絡まれるだろうから。」

  疑問をぶつけてくるユーリちゃんに、ある方向にいる奴を示す。

「...織斑一夏さん...ですね。なるほど...。」

「ま、それはそうとさっさと食っておかないと千冬にどやされるぞ。」

「あ、はい。」

  そう言ってユーリちゃんも食べるペースを上げる。

「...織斑先生の事、呼び捨てで呼んで大丈夫なんですか?」

「ん?まぁ、個人的な会話だし、本人には聞かれて....たっぽいな。」

「えっ?....あ。」

  俺の後ろにいつの間にか千冬が立っていた。

「....次はないぞ?」

「....へーい。」

  運が良かったのか、注意だけで済んだようだ。

「じゃ、さっさと食うか。」

  違う場所に行った千冬が早く食べるように催促していたので、さっさと平らげる。

「...ごちそうさまでしたっと。食器とトレイを返したら、さっさと教室に行った方がいいかもな。これは。」

「...そうですね。」

  千冬の事だし、遅刻した奴にはとんでもない罰が下りそうだ。

「じゃあ、マドカちゃん、ユーリちゃん、お先に。」

「はい。また休み時間...には会えなさそうなので、放課後にです。」

  休み時間は未だに俺たちを見に来る女子達がいるため、会えないと判断したみたいだ。...まぁ、俺も同じこと思ってたし、あながち間違いじゃなさそうだけどな。







     ―――キーンコーンカーンコーン

「んん゛。」

  チャイムが鳴り、千冬が咳払いをした事により、それまで会話をしていた生徒たちが一気に静かになる。

「織斑。お前のISだが、準備に時間がかかるぞ。」

「へっ?」

「予備の機体がない。だから、学園で専用機を用意するそうだ。」

  千冬のその言葉に、女子達がざわめく。...まぁ、ただでさえ数の少ないISの、さらに専用機を用意されるんだ。ざわめくのも当然だな。

「(....というか、アイツ、専用機が貰えるのが分かったような顔をしてるな...。)」

  ...あの女性(おそらく神様)に貰った知識に、奴の言う“原作”を照らし合わせると...なるほど。“原作”でも同じような展開で貰ってるって事か。

「せんせーい!篠咲君達は訓練機なんですか?」

「いや、篠咲達は既に専用機を持っている。」

  一人の生徒の質問に千冬が答える。...一応、待機状態のISを俺も秋十君も見せておく。ちなみに俺のはペンダント、秋十君はミサンガの形の待機状態だ。

「..と、言う事は...クラスに専用機持ちが四人!?」

「すごーい!」

  俺たちが専用機持ちだと示すと、さらにざわつく。

「それを聞いて安心しましたわ!」

  ...あ、オルコットが織斑の前に立ってなんか言ってる。

「クラス代表の決定戦!私と貴方では勝負は見えていますけど、さすがに私が専用機、貴方が訓練機では、フェアではありませんものねぇ?」

「(...俺は別に訓練機でもいいけど。)」

  というか、俺たちとも戦うの忘れてね?眼中になしか?

「お前も、専用機ってのを持っt―――」

     ―――スパァアン!

「っつぅ~....!?」

  織斑が何か言おうとした瞬間、オルコットの頭に出席簿が振り下ろされた。

「オルコット、授業中に堂々と立ち歩くな。」

「す、すいません....。」

  千冬に注意され、すごすごと戻っていくオルコット。...まぁ、当然だわな。

「....織斑は専用機についてあまり分かってないようだから、授業の一環としてついでに説明してやろう。...山田先生がな。」

「えっ!?わ、私がですか!?」

  ....千冬の奴、自分がそこまで説明が得意ではないから押し付けたな?

「....篠咲兄。言いたい事があるのならばはっきり言え。」

「言いたい事なんてありませんよー。」

  思いっきり感づかれていたので誤魔化す。...相変わらず直感が半端ねえな。

「えっと...専用機というのは、ほとんどの場合が各国の代表候補生に与えられるもので、全世界にも467機しかないISで専用機を持っているという事は...簡単に言えばエリートさんですね。」

  とりあえず説明を始める山田先生。...織斑にも分かるように簡単に説明してるな。

「....467機....たったの?」

「ISに使われている“コア”という技術は、一切開示されておらず、現在世界中にある467機のコアは篠ノ之束博士が作成したものなんです。」

  また“原作”とやらの展開と違ったのか、織斑は複雑な顔を一瞬見せた。
  そんな織斑に気付かずに山田先生は説明を続ける。

「(本当の所は俺と束と千冬のためだけのコアを合わせて470個だけどな。)」

  山田先生の説明を聞きながら、そんなどうでもいいことを考える俺。
  ちなみに、俺と束と千冬のはプロトタイプ(と言う名の完成品)だが、俺と同じ最終世代の夢追や番外世代のエグザミアは束がどこからか入手した既存のコアらしい。
  新しくコアを創るのは、ISがちゃんと宇宙進出のために使われるようになってからだって束は言ってたしな。相変わらずこれ以上はコアを創らないのだろう。

「ISのコアは完全なブラックボックスなんです。篠ノ之博士以外は誰もコアを創れないんです。」

「(....すまん、俺も創れるんだが...。)」

  言ったら騒ぎになる...もしくは言っても信じられないので言わないが。

「しかし、篠ノ之博士は一定数以上のコアを創る事を拒絶しているんです。国家、企業、組織機関では割り振られたコアを使用して研究、開発訓練を行うしかない状況なんです。」

「本来ならば、専用機は国家、あるいは企業に所属した人間にしか与えられない。....が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意される。理解できたか?」

「な、なんとなく...。」

  オルコットは国家、俺たちは企業だな。...というか、男性操縦者のデータ収集って悪く言えばモルモットじゃ....。...まぁ、仕方ないか。





  この後、篠ノ之が束の妹だというのが判明して一悶着あったが、千冬が無理矢理場を収めた。...発端も千冬があっさり妹だとばらしたからだけどな。







「.....はぁ....。」

「ユーリちゃん、元気ないな。」

  食堂にて、昨日と同じ面子で食事しているとユーリちゃんが溜め息を吐いた。

「...ユーリ、件の子の事を随分と気に掛けてたから...。」

「いざ自分と同じような劣等感で苛まれている人を見ると、どうも引きずってしまうみたいで....。...どうにか、したいんですけど...。」

  好きにしていいと言っても、何をすればいいのか分からないのだろう。

「.....一人では、いつか潰れる。」

「えっ....?」

  唐突に呟いた俺の言葉に、ユーリちゃんが顔を上げる。

「...どんなに心が強くても、どんなに天才的な頭脳や能力を持っていても、一人だったらいつか潰れてしまう。」

「桜さん...?」

「....まぁ、一人だけで頑張るなって事だ。」

  遠回し且つ、意味が分かりにくい言葉だったけど、ユーリちゃんは今ので自分がどうしたいのか気づけたみたいだ。

「...ありがとうございます。桜さん。」

「ん。後はユーリちゃん次第だ。」

「はい!」

  そうこうしている内に昼休みの時間も残り少ない。さっさと昼食を食べてしまおう。







       =ユーリside=



「一人では...いつか潰れる。」

  放課後。桜さんが昼休みに言っていた事を反芻する。

「...私も、秋十さんも、一人で頑張ろうとして、挫けかけた。...天災である束さんも、一人では宇宙進出を成し遂げられない...。」

  そう。結局人間は一人では全てこなせる訳ではない。
  それどころか、一歩間違えれば二度と復帰できないような、とんでもない心の傷を負うかもしれない。....私や秋十さんが、そうなりかけたように。

「どんなに優秀でも、一人だとできない事があるんですよね...。」

  生徒会長である楯無さんだって、一人でなんでもできるわけではない。
  ...だから、簪さんも無理して一人で頑張らないようにしないと...。

「(そのためにも...。)」

  専用機の作成を、手伝いたい。その一心で、私は整備室の扉を開けました。



「....あなたは....。」

「...簪さんの、お手伝いに来ました。」

  整備室に入り、少し奥の方に行くと、簪さんはいました。

「...必要ない。これは、私だけで....。」

「ずっとそうだと、いつか潰れますよ?」

「っ....。」

  動かしていた手が止まる。

「いつまでも一人で頑張って、無理していたら、いつか取り返しのつかない心の傷を負いますよ?」

「....それでも、一人で完成させなきゃ...!」

「...生徒会長は、一人で専用機を完成させた訳じゃありません。」

  私の言葉に、目を見開く簪さん。

「調べた限り、細かい所は他の人達も手伝っていました。だから、無理に一人で完成させる必要はありませんよ。」

「....あなたに...あなたに、何が分かるの!?」

  諭すように言っていたのがまずかったのか、簪さんは大きな声で私にそう言ってきました。

「ずっとお姉ちゃんに劣って、そのせいでいくら私が頑張ってもお姉ちゃんの妹としか見られなくて!誰も“更識簪”という一個人として見てくれない...だから!私はお姉ちゃんを超えようと一人ででも専用機を完成させようとしてるのに....!」

「......。」

「恵まれた立場にいるあなたに、私の気持ちなんて...!」

  “分かる訳ない”そう言おうとした簪さんを、優しく抱擁します。

「っ.....!?」

「...分かりますよ。...私も、優秀な姉がいたのが原因で、家に捨てられた程ですから...。」

「えっ....!?」

  私の言葉に、驚く簪さん。

「...エーベルヴァイン。聞いた事ありませんか?」

「....ドイツの、有名な家系...だよね?」

「はい。...ただ、実力主義なせいで、私は捨てられました。」

「っ.....。」

  ...尤も、今では桜さん達に出会えてむしろ良かったんですけどね。

「優秀な姉がいる事による劣等感。...私にも、分かります。」

「だったら....。」

「....だからって、意地を張り続ける事はありません。」

  ...私の場合は、意地を張る事なんで、家名以外になかったほどですし...。

「全体で劣っているとしても、長所で超えればいいんです。」

  私も解析関連は桜さんも唸らせる程でしたからね。...これだけはエーベルヴァインの誰よりも優れていると自負しています。

「....私に、お姉ちゃんに勝てるような長所なんて...。」

「.....“めげずに努力する”....それこそが長所だと思いますよ?」

「え....?」

  簪さんは確かに意地を張ってるだけでした。...ですが、それもれっきとした“努力”の一つです。
  努力は必ず力になる。...秋十さんもそう言ってましたから。

「簪さんも努力...してましたよね?」

「...うん。お姉ちゃんに、追いつきたかったから...。」

「なぜ、努力をしたのですか?追いつきたいという理由などではなく、何を補うためで...。」

「それ..は....。」

  私の言葉に少し考え込む簪さん。

「....足りない才能を、補うため....。」

「..そうです。その時点で、簪さんは“努力”という点でお姉さんよりも優れています。...優秀なら、努力する事もありませんから...。」

「......!」

  ハッとした顔をする簪さん。...盲点だったのでしょう。

「努力というのは、すればするほど力になります。才能がない故に、それを補うために必死に同じ事を反復する...。その分、才能にも勝る程の力になる事もありますから...。」

「.....。」

「私にも、まさにその通りの人物がいますから。」

  秋十さんが本当にいい例です。

「それに、簪さんに意地があったように、お姉さんにも意地があったのだと思います。」

「えっ?」

「....更識の家は、対暗部の組織である故に、様々な裏の人間から警戒...もしくは狙われたりします。姉妹であり姉である生徒会長はもし簪さんが狙われた時を警戒して、常に優秀であろうとしてるのでしょうから。」

  ....私の場合、母様以外、誰も守ってくれませんでしたけどね...。

「あ....。」

「護るべき妹だからこそ、護れるように優秀になろうと、意地になってたんでしょう...。」

「....そう、なのかな....。」

  ....本当の所は私にはわかりませんけどね。

「....でも、それでも、私はお姉ちゃんを超えたい。守ってもらってばかりは嫌。」

「...そういうと思いましたよ。...ですが、一人で何もかもやろうとしないでくださいね?」

「.....うん。」

  本当に分かってくれたのでしょうか?...少し不安です。

「...かつて生徒会長が専用機を完成させた時、手伝っていた人はダメな部分がないか細かい所を手伝っていたと聞きます。...私もそれぐらいは手伝いますよ?」

「......ありがとう。」

  早速、簪さんを手伝います。データ関連を見せてもらえたので、そこからこのままだと危険な部分を割り出したりとしていきました。







       =桜side=



「簪さん、ここが少し...。」

「あ、ホントだ。...ありがとう。」

「いえいえ。」

  耳を澄ますと聞こえてくる二人の会話を聞き、俺は整備室を後にする。

「(...ユーリちゃんにも友達が出来てなによりだな。)」

  人見知りな性格とかもあって密かに心配していたが...杞憂に終わってよかった。

「....ところで、そろそろ出てきたら?」

  適当に歩き続け、校庭の一角に差し掛かった所で、物陰に向かってそう言う。

「...バレていたのね...。」

「ま、素人にゃ気づけなかったろうがな。千冬辺りなら普通に気づくだろうが。」

  出てきたのは水色の髪で先が少しはねている女子生徒。扇で口元を隠しており、その扇に“お見事”と書かれている。

「織斑先生を呼び捨てするなんてね...。」

「そりゃ、同い年だしな。...で、何の用だ?生徒会長。」

  そう、その女子生徒は更識楯無。生徒会長であり、ユーリちゃんと話していた更識簪の姉だ。

「今話題の男性操縦者の一人を見に来た...ではダメかしら?」

「当たり前だろう。見に来たのなら隠れる必要はないし、今みたいに警戒心を強められてちゃな。」

「.....。」

  気づかれていたと言わんばかりに、扇を畳む更識楯無。

「...いきなり現れた会社、ワールド・レボリューション。そしてそこに所属している二名の男性操縦者。さらには私達“更識”についても知っている。...なのに、情報がほとんど掴めないという異質さを調べに来たのよ。」

「...だろうな。」

  怪しまれるなんてわかりきった事だ。

「この際だから、単刀直入に言うわ。あなた達の目的は何かしら?ただ偶然見つけた男性操縦者二名を保護するためだけに会社を立ち上げたとは思えないわ。...それほどまでにワールド・レボリューションは優れている。」

「目的...目的ねぇ....。」

  話すべきか話さないべきか...。こいつの性格によるな。

「...今は明かすつもりはないな。」

「....ま、当然ね。そう簡単に目的をばらす方がおかしいわね。」

  ...ふむ、相手にどう出られても対処できるようにはしてるみたいだな...。

「...でも、実際に姿を見て気づけた事もあるわ。」

「ほう...?」

「“篠咲桜”という人物はいくら調べても何も分からなかったけど、あなたの容姿と桜という名前から、約17年前のとある事故が出て来たわ。」

  ...確か、それは俺が事故に遭った...。

「事故に遭ったのは神咲桜。当時6歳で、轢かれそうになった友人を助けようとして代わりに自分が...というのが普通で知れる情報ね。」

「普通...と言う事は他の事も知ってると?」

「ええ。...その事故にあった少年を、助けられた少女...篠ノ之束がどこかへ隠したらしいという真実をね。結局、行方不明扱いだったらしいけど...。そこの所どうなのかしら?」

  閉じていた扇を再び開き、口元を隠しつつ俺にそう言う。

「...さぁな。俺は知らんよ。本人にでも聞けば分かるだろうが....。」

「世界的に指名手配されて行方不明な篠ノ之博士に?無茶を言うのね。」

「だろうな。」

  実際は会社で今まさに俺たちの様子を見てるだろうけど。

「...それにしても、気がかりな事があるのよね。...その少年、神咲桜は篠ノ之束の容姿とそっくりだったらしいのよ。さらには頭脳や身体能力も。当時の近所の人達も双子だと思ってる程に。...実際は違うのだけどね。」

  “不思議♪”と書かれた扇を見せるように広げる。

「何が言いたい?」

「もし、その神咲桜が篠ノ之束によって行方不明になったのは嘘で、彼女の治療によって生き永らえていたら?そして、その人物が今のこの世界を変えようとしているのなら?」

「.......。」

「....ねぇ、そこの所、どう思うかしら?その神咲桜と共通点が多すぎる篠咲桜さん?」

  確信めいた笑みを扇で隠しながら俺にそう言う。

「....ったく、さすがは更識家当主と言った所か?限りある情報の中から推測してここまで嗅ぎつけるだなんて...。」

「あら?貴方が思ってる程、更識は弱くはないわよ?」

  大人しく同一人物だと認める俺に、生徒会長はそう言う。

「いや、更識を舐めていた訳ではないさ。...ただ、妹の事となるとてんでダメになる姉だったからな。少々油断してた。」

「っ....!」

  図星を突かれたように動揺する生徒会長。

「俺をこうやって尾行しようと思ったのも、妹を見ていた時に俺やユーリちゃんが来たからだろう?...おまけに、つい言ってしまった言葉で妹を傷つけて、何とか仲直りしようと悩んでいたのに、ユーリちゃんがあっさり慰めてしまったのがショックだったみたいだし。」

「なっ....なんでそこまで知ってるの!?」

「えっ、マジだったのかよ...。」

「うっ....。」

  ほとんど憶測だったんだがな...。全部正しいみたいだ。

「そ、そんな事より!これで貴方が“神咲桜”だという事が分かったわね。」

  気を取り直してそう言う生徒会長。

「うん...まぁ...認めたからなぁ....。」

「....あの、そんな憐れむような目で見ないでくれる?」

  おっと。生徒会長が残念なシスコンだと分かってしまったからか、そんな感じの視線を向けていたようだ。

「...ま、それだけの情報でここまで予想できた褒美をあげよう。」

「っ...。」

  改めて生徒会長は真剣な顔で向き直る。

「そう警戒する事はない。俺の目的の一部を教えるだけさ。」

「....全部は教えないのね。」

「全部教えなくてもその内わかるだろう?」

  生徒会長なら、目的の半分を達成する時には全て分かっているだろう。

「俺の...俺たちの目的は、決して生徒会長のようなまとm....まとも?な人間には手を出すような事じゃない。...それだけだ。」

「ちょっと待って。今“まとも”の所で言い淀んだわよね?それって私がまともじゃないとでも言いたいの?そうなんでしょ!?」

  やっべ、全然締まらねぇ...。いや、今のは俺の所為だけどさ。

「じゃあな。早い事妹と仲直りしろよ。」

「っ、大きなお世話よ。」

「....中には、決して相容れない姉妹もいるんだからな....。」

「えっ....。」

  そう言って生徒会長と別れる。

「....さて、秋十君の所へ戻りますかね。」

  手を出さなくてもいいだろうけど、一応代表決定戦まで鍛えないとな。

「.....安心しろ千冬。お前は仲直りできる。」

「...やはり、分かっていたか。」

  物陰から千冬が出てくる。

「教師として盗み聞きはダメだと思うが...。まぁ、いいか。俺が言っていたのはユーリちゃんの事だ。第一、お前らは姉妹じゃないだろ。」

「そうなんだがな...。いざ家族関係の話になるとな...。」

「ま、そこはお前自身の問題だ。俺は手出ししないぞ。」

  そう言って秋十君がいるであろう場所へと向かう。

「分かってる。...決心がついたら機会を見て話しに行くつもりだ。」

「そうか。じゃ、またな。織斑先生。」

「....やはり、お前に先生と呼ばれると違和感しかない。」

「ほっとけ。」

  俺も呼ぶ際に違和感だらけだ。







 
 

 
後書き
今回はここまでです。
いやぁ、代表決定戦まで長いですね。オリジナルの展開を挟むと。
この小説は福音戦までなので、早めに更識姉妹を仲直りさせておきます。...まぁ、今の所まだですけど...。
他の二次小説で見られるアンチキャラの噛ませっぷりが表現しにくいですね...。そういう描写、向いてないのかと思えてきました。まぁ、それでも精一杯やっていくつもりですけど。

次回はアニメとかとほぼ同じように進みます。書く事もあまりないので。
 
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