星屑の漂流者
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Lost Memories
プロローグ
3 星屑の漂流者
ん……。
ぼやぼやとした視界。目の前にはもやもやがある。
ああそうか、煙だ。なんか良く解らないけど、とりあえず煙が出ている。
どこから? 目の前から。
僕の身体から、いや、違う。
穴ぼこからだ。え、穴ぼこ……?
段々と、意識がはっきりしてきたような、そんな気がする。
伴って明らかになる、流星落下後の風景。
星屑ヶ原。間違いない。その周囲に大して変化は見られないものの、ただ一点だけ、前とは違う場所があった。
ちょっとした、小さな横身長大ぐらいの穴がぽっかり空いていた。あそこ、さっきまで僕が観てた場所だ……。あの女の子と会う前に片付けておいて良かった。
隕石が、衝突したのか。
穴ぼこの正体は、恐らくクレーターだ。
それにしては随分と小さい気もするけれど。
落下地点には何かがあるかもしれない。
何だろう、隕石じゃない何かが、ここにはある気がする。
と、その時だった。
「う……ぁあ、あ……」
ビクッとしてしまうも、それが直ぐに苦しそうなうめき声だと理解する。
その若干高めの声がする場所は……間違いない。あの極小クレーターの中心部だ。
ここは暗い上に遠いため、良く中心を見ることが出来ない。もう少し近づこう。
「あ、だれ、か。だれ……か……ぁ!」
いかにも命を削って出している声だ。
余程のことでなければ、このような絞るような声を出すようなことはないだろう。
「待っててー! 今そっちへ行くから!!」
出来る限り安心を与えてあげた方がいいだろう。だから、走りながら、遠くからでも声をかける。
それに安心したのか、それともそのまま力尽きたのか、その後から声が聞こえることは無かった。
そしてクレーターの付近に到着して、僕は気が付いた。
――デジャヴだ。
そんな気がしたのだ。気にするほどのことでもないけれど、何だか何処かで、同じように、流星を追いかけた経験をしたような気がする。
何だろう。この世界は僕の妄想が生み出した産物とか、そういうパターンのミステリーだろうか。兎に角、何かの関連性か運命が作用しているような気持ちにさせられたのだった。
考えすぎか。
とにかく今は助けないと……。
さっとその小さな穴ぼこに目をやると、おったまげた。
なんと、赤髪の少女が横たわっていた。
その姿は、何だか女子中学生にしては若干派手な、そんな学生服のようなものと短めのスカートを着用していた。
少女は苦しそうに、表情を酷く強張らせていて、こちらも全身が痛くなってくる思いだ。
もっと近づくと、彼女も僕の存在に気が付いたようであった。
僕が手を差し伸べようと近付くと、彼女も必死に力を振り絞って、手を掴もうと必死だった。
「……やっ、と……やっと……会えた……」
彼女は希望に満ち満ちた目をしていた。今にも涙を流しそうな、そんな、とても感極まった表情だった。
それだけ先ほどの流星の衝撃が凄まじかったということなのか。助けが来たことが、どれだけ彼女にとって救いであったのか。それを激しく感じさせられた。
でも、限界だったようだ。彼女は僕の手を掴むことなく、そのまま意識を失ってしまった。
急いで呼吸の有無を確認すると、しっかりと行われていた。
それが判れば話は早い。一刻も早く家へ連れ帰って、治療するんだ。
なあに、問題なしだ。僕は救護に一応自信がある。
彼女に負担をかけないように、あまり体制を崩さないように、そっとお姫様抱っこをした。
「わ、軽い」
少女は想像を絶する軽さだった。まさか痩せ型の人よりも軽いなんて……。
でもおかげで、運ぶのが相当楽になった。運が良かった。
あれ、でもこれだとバッグが持てないや。
どうしようか。今更体勢を変えるのもかえってこの子の負担になるだろうし。
…………。
「父さん……ごめんなさい」
カレイドスコープよりも、この子の命が最優先だった。
どうしてだろう。人間らしい思いかもしれないけれど、それ以上の何かを感じる。
この少女を助けたいと、心からそう思っていた。
僕は星屑ヶ原を急ぎ足で出て行った。
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