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真田十勇士

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巻ノ二十五 小田原城その十二

「中心にはありません」
「むっ、そういえば」
「鎌倉はそうじゃな」
「うむ、東国ではとりわけ大きな街じゃが」
「しかしな」
「関東の中心にはないな」
 幸村の家臣達も僧侶の言葉を聞いてそのことに気付いた。
「相模自体がな」
「関東全体から見て少し離れじゃ」
「行き来は少し難しい」
「関東に出るのもな」
「はい、やはり関東全体に出られる場所は」
 そこはというと。
「武蔵なのです」
「江戸のある」
「はい、あの地です」 
 まさにというのだ。
「あの地です」
「その為ですか」
「是非貴殿には江戸まで行って欲しいのです」
「そして見聞を広めよと」
「貴殿ならばと思いまして」
「拙者の顔相を見て」
「貴殿は大きなことをされます」
 幸村のその顔を見ての言葉だ。
「それも天下に害を為すものではなく」
「よいものだと」
「ですから」
 それで、というのだ。
「江戸まで行かれて下さい」
「さすれば」
 幸村は僧侶の言葉に頷いた、そしてだった。
 家臣達にだ、あらためて言った。
「ではな」
「はい、江戸にですな」
「行きますか」
「武蔵のあの場所に」
「そうしようぞ、では御坊」
 再び僧侶に顔を向けて彼にも話した。
「我等は江戸に向かいます」
「それでは」
 僧侶も頷いてだ、そしてだった。 
 幸村達は僧侶と分かれてだ、そのうえで。
 江戸に向かった、僧侶はその彼等を見送ってから小田原に入った。そうしてその小田原のある寺に入ると。
 若い僧侶達にだ、こんなことを言われた。
「よくここまで来られました」
「また何の御用でしょうか」
「実はな」 
 僧侶は彼等にも温和な笑顔で述べた。
「これから武蔵から駿河に行ってな」
「あの国にですか」
「行かれるのですか」
「そこで徳川殿にお会いしようと思っておる」
「徳川家康殿にですか」
「あの方に」
「そしてあの方が噂通りのよき方なら」
 それならというのだ。
「あの方にお仕えしたいと思っておる」
「徳川殿に」
「そうお考えですか」
「星が面白いことを教えておる」
 僧侶は今度は星の話をした。
「徳川殿が将星になられておる」
「徳川殿の星がですか」
「将星になられている」
「これまではそうではなかったというのに」
「ここで、ですか」
「どうやらじゃ」
 家康、彼はというのだ。 
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