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プレゼントも困りもの

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2部分:第二章


第二章

「だから。それはね」
「お菓子を食べ過ぎるのはよくない」
「そういうことなのね」
「つまりは」
「そうなのよ。どうしたものかしら」
 腕を組んで困った顔での言葉だった。
「全く。どうなのかしら」
「ああ、それだったらね」
「もう前に出るしかないでしょ」
「それしかね」
「前に!?」
 それを言われてまずはきょとんとした顔になる彼女だった。
 それでだ。皆に条件反射的に問い返したのだった。
「あの、それって」
「だから。前によ」
「前に出たらいいじゃない」
「それでね」
 クラスメイト達はまた言ってきた。
「一気にね。どうかしら」
「出たら」
「どう?」
「だから。前に出るって何?」
 優子はその言葉自体がよくわからなかったのだ。
「前にって」
「だからすぐにわかるって」
「ちょっと考えたらね」
「考えたら」
「自分と周りを少し見る」
 一人はかなり具体的なヒントを出してきた。
「それでわかるわよ」
「自分と周りをね」
「すぐにわかるけれどね」
「ねえ」
「そうよね」
 皆で話すのだった。彼等もだ。
「まあ今の優子には少し難しいかしら」
「落ち着けてないから」
「落ち着くことができればわかるけれどね」
「それだけでね」
「どういうことなのよ」
 周りの言葉に首を傾げさせるばかりの優子だった。そしてその彼女のところにだ。今その彼がやって来たのだった。
 おずおずとした感じの少年である。茶色の髪を伸ばしそれが顔にかなりかかっている。黒い目がやや横に切れておりそれはよく見れば二重である。唇は桃色で笑った形になっている。色は白くまるで女の子の様子だ。眉は決して太くはないが黒々としている。青いブレザーと灰色系のズボンを着ている。ネクタイは紅色だ。背は優子と比べて優に二十センチは高い。その彼が両手に何かを持ってやって来たのである。
「おはよう、大石君」
「康史君いらっしゃい」
 女の子達は笑顔でその彼を迎えた。
「どうしたの?一体」
「何かあったの?」
「うん、実はね」
 手にあるのは箱だった。それを自分の前に両手で大事そうに持ちながら。おずおずとして優子の前に来るのだった。
 そしてそれを彼女の前に出してだ。こう言うのであった。
「ええと、蓮美さん」
「どうしたの?」
「僕のクラスで食べていたけれどね。余ってね」
「余ったって?」
「ドーナツなんだ」
 こう言うのであった。
「ドーナツだけれど」
「ドーナツって?」
「うん、これ」
 康史が出してきたのはミスタードーナツの箱だった。横に細長い。それを見ただけでわからずにはいられないものであった。
 周りの女の子達はその箱を見てだ。くすくすと笑うのであった。
「今日はドーナツ」
「昨日は月餅でその前はお饅頭だったし」
「日本中国、そしてアメリカ」
「考えてるわね」
「よかったらだけれど」
「私に?」
「あの」
 見れば康史の顔は真っ赤になっている。まるで信号の様である。その真っ赤になった顔でさらに言うのであった。言わずにはいられないといったようにだ。
「皆で。こっちのクラスでね」
「有り難う」
「悪いわね」
 優子が言う前に周りが言ってきた。
 
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