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冬虫夏花

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2部分:第二章


第二章

「皆元気?」
「いつもながらあんたは」
「夏には変わるわね」
「全く」
「そうかしら」
 彼女は冬に一緒に遊んだクラスメイトの呆れた声に応える。彼女達もその格好は夏に相応しいものだが彼女程ではない。全く違っていたのだ。
「ねえ真紀」
「あんた夏は何でそんなのなのよ」
「冬と全然違うじゃない」
「そうそう」
 ここで彼女の名前が言われる。安座間真紀というのである。これが彼女の名前だ。
「夏になったら全然」
「何でそこまで変わるのよ」
「夏大好きだからよ」
 真紀は明るい声で話すのだった。話しながら自分の席に座る。そのうえで皆に話す。
「それはね」
「夏大好きって」
「それでも服装とか全然違うし」
「冬なんか凄かったのに」
「ねえ」
 そして冬の彼女の話をするのだった。
「コートなんかあんなに分厚くて」
「しかもセーターまで来て」
「カイロまでべたべた貼ってたじゃない」
「だから。冬は苦手なのよ」
 真紀は困った顔で彼女達に返す。見れば皆真紀の後ろに集まっている。そのうえで皆であれこれと話をしているのである。如何にも女子高生らしい話のやり取りをだ。
「私沖縄生まれだし」
「沖縄ねえ」
「沖縄ってそんなに暑いの」
「それで冬は暖かいの」
「それと比べたらここは地獄よ」
 彼女はその冬の寒さを地獄までと言うのである。
「何なのよ、この冬の寒さは」
「夏の暑さは平気なの」
「それは」
「ええ、平気よ」
 それはいいのだという。今のこの季節はである。
「それはね。全然平気よ」
「私達には辛いけれど」
「結構ね」
「ねえ」
「それでだけれど」
 その困った顔になっている彼女達にさらに言うのであった。
「いいかしら」
「いいかしらって何が?」
「何かあるの?」
「泳ぎに行かない?」
「泳ぎって?」
「そう、海によ」
 楽しそうに笑って皆に言うのである。
「どうかな、今度の日曜」
「海ねえ」
「確かに最近暑くなってきたし」
「海開きになったし」
 皆そのこと自体には賛成はした。
「けれど。どうなのよ」
「あんたは」
「私はって?」
「水着とか持ってるの?」
「それあるの?」
「あるわよ」
 それはあるというのである。それもはっきりと。
「この前の休みの時にもう買ったから」
「やれやれ、何かもう最初から決めていたのね」
「とっくになの」
「まあね」
 それを否定しない彼女だった。
 
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