俺が愛した幻想郷
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俺は愛せる? 幻想郷...
甘い香りは理解力を活性化させる
第二十七話 俺の大好きな香り
前書き
そう、私が書きたかったのはこう言う話なんだ!
なんだこの前のバッドエンドはっ!
私と言えば主人公補正ガン済みの甘ったるい恋愛物語だろうが!
おっと、皆様どうも、コーラよりライムコーラ派のうp主妹紅です。
前書きでネタバレもあれなんで細かいことは伝えないですが、私の過去作のような仕上がりに戻りました。
体調も元に戻ったのでしょうか。
何はともあれ、傷が浅くてよかったです。
本編、どぞ
最悪の目覚めだ。
昨日泣きまくった所為か、目蓋が腫れて上手く開かない。
一層の事このままもう一度目を閉じて寝てしまおうか… なんで起きたくないのだろう。眠くはないし、身体がダルいわけでもない… 精神的な問題なのだろう。さしずめ、
魔理沙に会いたくない。
とかそんなことだろう。
重い気持ちを抑えて布団から身体を起こそうとする。すると、俺の直ぐ真隣… つまりは同じ布団に何か当たるものがあった。
暖かい、柔らかい、いい匂いのする物体だ…
なんで俺の布団にいるんだよ…
ああ、ツッコミを入れる気力さえ俺にはそこされていない。直ぐに、ここから立ち去ろう。
行動とは裏腹に、また目から溢れそうになる液体を拭って魔理沙に布団をかけてから部屋を出た。
「琥珀? ご飯は食べないの?」
部屋を出ると真っ先に、そんな甘ったるい声が聞こえてきた。よく鼻を鳴らしてみれば、食欲を唆るいい匂いがしてくる。
霊夢が朝ごはんを作ったのだろう。頂きたいところではあるが… 今の俺にそんな余裕はなかった。
「ごめん…」
とだけ一言残し、家を出た。
霊夢は俺の心情を理解してくれたのか、将又聞こえていなかったのか、俺を引き止めることはしなかった。
本当にごめん。
■■■
神社にかけ立てて置いた自分のマウンテンバイクを押して昨日の朝に通った道を歩いていた。跨ってペダルを漕ぐ気力さえない。今、運転したらいつ事故に遭ってもおかしくない。それくらい気が滅入っているのだ。
特に何をすることもなく、帰って部屋の中でゴロゴロしようかなと思いながら歩くこと数分。
「浮かない面してどうした、そこの道行く少年」
聞き覚えのある、透き通った綺麗な声が聞こえた。声から察するに、何やら楽しそうだった。古き親友に話しかけるような口振りで声の持ち主は続けた。
「それ、乗らないの? 昨日は楽しそうに乗っていたけれど」
ああ、マウンテンバイクのことだろう。
「…なんか、あったんだな…?」
声の持ち主…… ルーミアは俯いた俺の顔を覗き込んでそう言った。
俺と同じくらいの背丈を持つ彼女は、中腰になり、また続けた。
「お前がどんなやつかはまだ全部は把握してない。けれど、お前は笑っていた方がいい。そうだな、私が幼女だったときのお前の顔なんて最高だったぞ」
真面目な口調で言うものの、最後の言葉だけはユーモアな口振りだった。俺を少しでも笑わせようと、ツッコミを入れさせようと思ったのだろう。
「へへへ… ごめん。気の利いたことは言えないらしい…」
ここまでしてもらって無言はできない。なんでもいいから、と考えた結果のセリフだ。苦笑いでも…いいだろうか。
「何があったかはわからない… 力不足ですまない…」
「ルーミアに何かしてもらうほど何かしてあげた覚えはないよ…」
「いいや、"友人"が気分を悪くしているのに何もしないなんて馬鹿げているだろう?」
友人…か。
「優しいんだな、ルーミアは」
「私の知っているお前は私より優しいと思っていたんだが」
「生憎、俺はそんなに優しくないよ」
目を逸らしてそう言う俺から何か感じ取ったのか、ルーミアは鋭い考察力を持って問い詰めてきた。
「さては琥珀、誰かを傷つけたりしたか?」
ふっ、と鼻で笑い、若干呆れたように、
「ルーミアはなんでも知ってるな…」
「なんでもは知らないぞ、知ってることだけだ」
ん…?
「ルーミア、君は家で自分の部屋が無くて廊下でお掃除ロボットに挨拶の毎日とかないよな?」
「あるわけないだろう。"猫じゃあるまいし"」
ん… んぅ?
「ストレスでもう一つの人格作ったりしてないよな…?」
「ないよ、どうしたいきなり… "ブラックルーミア"なんて存在するわけないだろう」
「お前確信犯じゃねぇ〜か!!」
ルーミア… お前は博麗ちゃんに似た何かを持っている… 違う者だと思っていたのに… 俺を疲れさせる組だっただなんて…
綺麗なお姉さんを想像していたのにぃ…
「ふふっ、よかったよかった」
いつの間にやら優しく笑みを浮かべているルーミアがいた。
「琥珀が元気になったみたいでよかったよ」
ああ… 俺は元気づけられていたのか。それも自然と… いいや、よくよく考えればバカみたいな話だ。俺が思考停止していただけだな、やられたぜルーミア。
一層、打ち明けるか…
「なぁ、ルーミア… 俺はもっと違う世界にいたんだよ」
「知ってるよ?」
「え…」
「私の嗅覚をナメるなよ。ただ、琥珀は直ぐに幻想郷に慣れる。というか、お前はここにいてこそなんだ、相応しいんだ」
ルーミアの表情は至って真面目だ。
「だから、一つだけ教えてあげよう。幻想郷はな、みんなオープンで愉快なんだ。嫌なことなんて次の日には忘れちゃう。それくらい愉快なところなんだ。むしろ、良いことしか覚えてないで迷惑するくらい」
そうか… 俺は考え過ぎていた。そう言うことなんだ。
「ありがとう、ルーミア。俺の闇は、美味しかったか?」
「皮肉か? 残念ながら、こってり過ぎて私の口には合わなかったけれど」
ははは、とお互いに笑って話を切った。
冗談で言ったのだが、マジで俺の闇を食ったのか…? いや、深く探るのはよそう…
「そうだなぁ〜 これでも持って行ってあげたらどうよ。さっき拾ったんだけど」
「アサガオ…だな」
「私にはよく分からないが… 可愛いお花なら良いんじゃないかな」
ルーミア、本当は詳しいんじゃないか? 俺も俺だけど、アサガオの花言葉は、『はかない恋』『固い絆』『愛情』だぜ…
如何にも、ルーミアは俺にアサガオを渡すと、ウィンクをして去って行った。もう私は用済みだろう、とでも言いたげに。
無意識に…… いいや、本当は頭の中がそれでいっぱいなのかもしれない。だからこそ身体は勝手に…
身体の勢いに任せてマウンテンバイクに跨り、漕ぐ。少し前までの俺よりも事故りそうな荒い運転で、スピードを出して、行き先はただ一つ。
■■■
「何処へお行きですか、魔女様?」
元気を無さそうに箒に跨がろうとしている金髪の白黒の格好をした女の子にそう声をかける。
「そんな顔していたら掴めるものも掴めませんよ?」
ニヤリと笑みを浮かべながらそう言うと、金髪の魔女は箒から降りて俺を見つめた。
真っ直ぐ、俺の目を見ていた。
「…琥珀」
○○○○
彼女は俺の名前を呼び、口パクでそう言った。距離の所為か、彼女の口の動きが曖昧だったのか、なんと言ったのかはわからなかった。だが、四つの言葉なのはわかった。
「なんて言っ………
たんだ、そう言おうとした瞬間。彼女は、魔理沙は歯を見せて笑い……… 物凄い衝撃と共に俺は青空を見ていた。
ああ、この衝撃… 弾幕でも受けたのだろう。そうか、これが… 魔理沙の想い、というわけか。
青空を見飽きてしまったのか、俺は一度目を閉じた。瞬間、何度も嗅いだことのある主張の強くない、俺の"大好きな"甘い香りが鼻腔をくすぐった。
と、ほぼ同時だろう、ボフッと音を立てて柔らかく俺に何かが乗っかる。
無意識に、俺はその何かの後ろに手を回し、引き寄せた。
これで、いいか。魔理沙…?
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