リアルアカウント ~another story~
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account 2 ゲームの始まり
前書き
~一言~
うむうむ。思ったよりもストックが溜まってたらしく、区切りも良かったので さっさと投稿できてて良かったです。
最近、よく読むようになった漫画で、これは……、本当に簡単に人が死んじゃうヤツです。最終的にはどうなるか、それは判らないですが。基本的にハッピーエンド派であるじーくwは、……人選はしますが、特に気に入ったキャラは ムザムザ死なせたく無いんです・・・・・・、でも話内容的には 難しいですが……。
では、頑張ります!
あれから、一日経った―――
琴美には随分と心配をかけたと思う。
それはそうだ。突然 目の前で倒れたのだから。……家族が、倒れた事に動揺しない人なんて、1人もいないだろう。少なくとも自分達はそうだ。
「おにい、ちゃん……だいじょうぶ? ほんとに、今日位は……がっこ……」
少し、涙目で語りかけてくる琴美。そんな妹を見て すべき行動、する行動は変わらない。
――いつも、変わらない。
「……大丈夫、安心して」
それは笑顔で、頭を撫でてあげる事。
歳を重ねれば、そう言う行為は煩わしさを覚え、思春期にもなれば、嫌悪を覚えるだろう。だけど、これもシスコンだと世間では思われるかもしれないだろう。だけど、以前でもあった様に、圭は守らなければならないから。
――もう、必要ない。
自分自身がそう想える瞬間まで。……新たに守ってくれる人が現れるまで。
それに、その事は 琴美自身も知っているのだから。
「あはは。それで、今日は晩御飯、何にする? たまには作るよ」
「っ……、う、うん。そ、そうね……」
琴美は目元を拭い、そして安心してもらう様に、自分も安心できる様に、必死に笑顔を作って、話す。
「まーぼーどうふ、かな? たまには、中華も、ね?」
「あはははっ。琴美は麻婆、大好きだもんね? 確かに たまには~ だけど、基本麻婆、だもんね~?」
「も、もうっ、他にもすきなの、あるもんっ! その……、ら、らーめんとか」
「あははは。何だかぎこちないよ?」
「もうっ! おにいちゃんっ!」
限りなく笑顔で。笑顔の朝。笑顔から始まって、笑顔で終わる。何不自由ない暮らしをして行こう、と決めたから。
だから、それは今日も同じだ。
笑顔で学校へと向こうと準備をし、出て行く時だ。
「あっ、琴美……、ちょっと良いかな?」
「ん? どうしたの?」
圭は、玄関口で腰を下ろし、靴を履いている。だから、琴美の顔は見ない。見ない状態で。
「今日、僕が買い物行って、帰ってくるから。……今日は、今日だけは 早く家に帰ってて貰えない……、かな?」
少し、その言葉の中には 何か切実なものが、いつもの兄ではなかった。先程までの笑顔の兄じゃなかった。
そして、表情を見なくても判る。凄く、心配をしていること。そして、その理由も――。
「うんっ、りょーかいっ。ちゃんと買ってきてね? メール、するからね!」
「……うん。任せて。学校終わるのが、17時、だから―――」
頭の中で、情報を整理する。
「B店、だね。うん。今日は水曜日だし、それに ちょっと学校が遅れて、店につくのが遅れたら、万々歳。18時を超えたら、更に半額シールで……」
「おー、流石主夫だねー……、私もそこまで覚えてなかったかもだよ……、何時も通り、A店で済ませるトコ、だった」
「あー、ダメだよ? 《水曜日はB店》 テストにも出るから、宜しく!」
「あはははっ!」
何度目、だろう。
また、笑う事が出来た。……昨日、兄が倒れて あんなに泣いたのに。もう、涙よりも笑みの方が多くなった。
「じゃあ、行ってきます」
「うん。行って―――」
この時、何かを 琴美は感じた。
玄関の扉を開けて、朝日の光に包まれる兄。だと言うのに、朝の光の中だと言うのに、――何か、恐ろしさを、感じた。
「ん? どうした?」
光を背に振り返る兄。
なんで、こんなに震えるのかが判らない。でも、兄は笑顔のままだった。
「う、ううん。……私、早く帰ってくる、家で待ってるから――だから、何時も通り、一緒にご飯、食べようね……? 成るべく、早く帰ってきて、ね?」
「ああ。勿論。勿論だよ」
そう言うと、兄はゆっくりと手を上げて、朝日。不気味な程、光に包まれた外へと出て行った。
――おにい、ちゃん。
得もせぬ不安が 身体中に襲ってきた。
何が、何が襲ってきているのか、口では説明出来ないけれど、何か 恐ろしい何かが起ころうとしている事は、本能的に判った。高所恐怖症の人が、高い所に来てしまうと、恐怖が倍増する様に、矛盾しているかもしれない。判っていないのに、本能的に、得体の知れない何かが、判った。
――ふふふ。ヤルナ。オレが見定メタ 男ノ 親族ダカラ 出来タノカナ?
その時、何かが聞こえた気がした。
――そうダ、今日 起コル。
――楽シイ、ゲームガ、始マルぞ。
――だが、安心、シロ。オマエハ、オマエタチは、大丈夫ダ。本当に―――運ガ 良イ。
「っっ!?」
琴美は、思わず顔を上げた。
何か、声が聞こえて来たから。
そして、この時、判った。
昨日、兄が話していたのは 他の誰かの事じゃない。……兄自身の事だったと言う事に。
その後 滞りなく学校も終わりを告げた。
何時も通りの学校、授業、周囲の皆。何も変わらない。何時も通り、皆はケータイとにらめっこだ。
――フォロアーが増えた。
――ゲームのスコアが上がった。
――新作ゲーム、配信された。
本当に毎日、飽きないな、と 表面上は 圭は思う。だけど、ちゃんと付き合いをしなければ、ならない。と言う義務感も出てきている。妹に心配をかけたくない、と言う事もだ。
以前、友達がいない事を少なからず心配されてしまったから。
だから、嫌悪さえ覚えていたケータイを、徐に取り出し 殆ど使ってない、機能さえさせていなかった《リアアカ》を立ち上げた。
「あっ 圭クン、珍しいねー。ケータイ触ってるなんて、初めてみたよ」
隣に座って 下校前に明日の準備をしていた女の子が話しかけてきた。
それが、始まりだった。
「へぇ、ひょっとして、リアアカ するのか?」
「あー、さては ずっとしてて、黙ってたのか? なんだよ、連れないな~」
比較的、友達に近い。授業のやり取り程度を話をしていた同級生達が 話けてきたのだ。
クラスの人数を考えたら 微々たる数、僅か3人程度だったけど、今は、これで良いと思った。
――変わらなければいけない、から。
「あ……、う、うん。ちょっと、ね。始めたばかりだから、まだ 綺麗に0が並んでるけど……」
「あはは。最初はそんなものだよ」
「そりゃそうだ。そっから、広がっていくんだぜ? それがSNSってもんだよ。色んな趣味を共有出来たり、たのしーよ」
「あはは……、うん。苦手、苦手、って言ってたら ずっと苦手……、のまま、だから。 少しは、頑張らないと……だから」
愛想笑いだとは思う。だけど、少しでも笑顔を見せる事が出来たら、家族ででも そうだった。少しでもつながっていければ良い。
家族に、妹に心配をかけたくない、と言う義務感が彼を動かした。昨日、倒れてしまった事で、更に心配をかけてしまったから……。と言う理由が一番大きいだろう。
「なら、フォロアーになるよ? がっこで、初めて見た記念にっ!!」
「あはは……、ナニソレ?」
嬉しい申し出、だった。少ないけど そこからどんどん広げていけば良いと想っていたから。 だが、そんな時だ。
ケータイが震えた。マナーモードにしていたから。
「っと……、そうだった」
圭はゆっくりと立ち上がる。
「ごめん。今日は 色々と頼まれてるんだった。また――明日じゃ、ダメかな?」
「う、ううん? 大丈夫、大丈夫。じゃあ、また明日ね? その間に、ちゃーんとマイページ、しっかりと記入しておいて? 見やすくなるからさ??」
「あー、う、うん。善処するよ……」
そう言い終えると、通学カバンを肩に下げ、教室から出て行った。
「んっんーー?? な~~んか、妖しくない? ユリ?」
「ふぇっ? な、何が??」
残った教室では、いつの間にか 圭に話しかけていた女の子。いきなり フォロアーになろうとしていた、彼女を囲んでいた。
「そーそー、幾らリアアカ初心者でも、ちょ~~っと 優しすぎるよーな、気がするんだよね~」
「そうだね……、確かに。だって、それ以前にもず~~っと、彼の方見てたもんね?」
「ぁぅ……」
一気に顔を赤らめてしまう少女。
その後は、言及を必死に躱そう、躱そうとして、ドツボにどんどん嵌っていくのだった。
そして、帰り道。
「あはは……、琴美もリアアカ、してたんだね。やっぱり 僕とは違うみたい……」
学校での着信。それは、リアアカからだった。《つぶやき》《会話》に、妹からの発言があったのだ。
――祝♪ リアアカ開始、ヽ(*´∀`)ノオメデト─ッ♪
との事だった。
「琴美は、やっぱり強いよ。僕なんかよりもずっとずっと、しっかりして……。これじゃ どっちが歳上か。兄なのか、姉なのか……」
苦笑いをしつつ、デパートへと向かっていった。
そして、しっかりとB店で 今日の献立の買い物を済ませ、帰路に着く。
「うーん。やっぱり18時以降の半額シールは無理だったけど、うん。節約は出来たね。うんうん♪」
ほくほく、とさせながら 家に到着した。
「おかえり~、お兄ちゃん! 下準備、出来てるよー」
「うん。ただいま。……あはは」
「ん? どうしたの??」
「いーや、何でもないよ。……一緒に準備しよう」
「うん!」
傍から見れば、新婚さん、いらっしゃい! 状態だが 誓っていうが、間違った方向へは進んでいないし、進まないだろうと、熱弁をしておこう。あくまで親愛なのである。
「それでね、お兄ちゃん……、その……」
「うん? どうしたの?」
準備も終えて、一緒に夕食をとっている時だ。
琴美は、昨日の話と、今朝の出来事 それを話そうと思った。白昼夢を見た、なんて 話しても普通は中々信じられるものじゃない。だけど、今だったら……、と思えたのだ。
だけど……、得体の知れない不安が琴美を襲っていたから……。
「ん、んーん。何でもないよ?? あ、そ、そーだ。ついに、お兄ちゃんも本格的に、リアアカ、始めたんだね?? 私のメッセージ、みてくれた? 既読にはなってたけど」
「あ、うん。勿論だよ。あははは……、まだまだ、初心者だから、判らない所が多いけど」
「だよねー。うん、あ、1だけ注意事項! 《既読スルー》って判る?」
琴美は、指を立てて、説明を開始した。まるで、その姿は、宛ら教師の様だ。
「ん? 既読する? それ、文法、おかしくない? だって、既読って、そのまま《既に読んだ》っていう意味だから、それだったら、《既読にする》が正しいと思うんだけど」
大真面目で返す圭。
こちらも、まるで教師の様に琴美にいう。
それを訊いて、琴美は がくっ! と膝を落とした。そして小声で『流石初心者だね……』と呟き、笑いをみせながら答える。
「違う違う、既読《スルー》。《する》じゃなく、《スルー》。ほら、マックのドライブスルーとか、そんな感じの意味のヤツだよ。スルー、世間では若者言葉で定着して……」
「あー、成る程ね。うん。それなら判るよ。流石に。そっちだったの……」
途中まで訊いてよく判ったから、慌ててそう返していた。
若者言葉を判ってない、つまり ジジくさい、と思われるのは 流石に心外だから。多分、それを見越してだろう、琴美は笑っていた。
「ぷっ、あははは! もう無理じゃないかなー? みーんな リアアカ、してるんだから」
「あー、まぁ……そうだよね。うん。ちょっと 今更な弁解だったよ」
「んーん。でも、ちょっとごめんね。お兄ちゃんが リアアカに、SNSに手を出してくれて、ちょっと 嬉しかったから……」
「…………」
「それに私も、同じ、だよ。先輩ぶってるけどー、これ、始めたの最近だから。私もお兄ちゃんに心配をかけたくないからね」
苦笑いをしながら そう言う琴美。少し沈黙した後 圭は 苦笑いをした。
「なーんだ。知らないのは琴美も同じだったんだ」
「んー、でも お兄ちゃんよりは先輩なのは 事実だからね~、何でも訊いてよね?」
「あ、うん。……で、既読スルーは、そのまんまの意味なの?」
「そうだったね。うんうん。そーだよ。それは色々と不味い事があってねー」
その後は、色々と説明を受けた。
リアアカ、いや SNSで、タブー視されている事を幾つかご教授して貰った。
ほんとに、どっちが上なのか、判ったものじゃない。
「え、えっと……、これがプロフィール設定、だから 自己紹介する、って事だよね?」
「そーそー、最初は 最低限で良いから、今のままでも、って思うけど……、うん 本格的に始めるなら、良いかな」
色々と説明を受けて、最終的に。
《石巻 琴美さんが あなたをフォローしました。 現在のフォロアー1人》
初めて繋がったSNSの輪は、妹からだった。
これまでも、これからも変わらない。
「あ、うん。じゃあ オレもしておかないと、ね。えーっと……」
「あ、フォローはね」
琴美は、リアアカを一先ず一度、落として、圭のケータイを見ながら説明をつづけた。
琴美に対してのフォローも滞りなく完了する。
「うんうん。私も 始まりはお兄ちゃんが良かったから、お兄ちゃんだけだよ。まだ、私もど初心者!」
「えー、もう随分といると思ったんだけど? 物凄く、流暢だったからさ?」
「そんな事ないよー。ただ、色々と小耳に挟んだりするだけだから。ほら、しょーこみせようか? っとと、ログアウトしたばかりだったんだ」
琴美がもう一度、ログインをしようとした時だ。
―――カタ、カタカタカタカタカタ……………………。
何かが、聞こえた。確かに、この耳に。
―――カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ。
――― タンッ! 完成だ。 ゲームの、始まりだ。
「な、なに? 今の……??」
「っっ」
それは、自分にだけじゃない。
妹にも、琴美にも聞こえていた。
「お、お兄ちゃん……っ」
今朝感じた恐怖とは また何か違う恐怖。それも異形な何かを感じた。反射的に、琴美は、圭に抱きついた。
――― サァ、 ハジマルゾ。 ハジマル。 フフフ、ハハハハハハハハハ!!!!
『イッツ、ゲームタイム』
その言葉は、また 先程とは違う物。
まるで、自分のなかに、誰かが、複数の別人が入り込んだ様な気分だった。
そして、再び――、光に包まれたのだった。
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