Deathberry and Deathgame
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Chapter 1. 『ゲームの中に入ってみたいと思ったことは?』
Episode 1. Blue boa is comin'
前書き
初めまして。
目の熊と申します。
宜しくお願い致します。
「――クソッ。初っ端からキツ過ぎんだろ、このゲーム……!」
俺は森の空き地の中心で剣を片手に悪態をついていた。周囲には青々とした木々が生い茂り、木漏れ日がスポットライトのように降り注ぎ、無数の木の葉の作った影を鮮烈に切り裂いている。さっきまでは「すげーリアル」と呑気に眺めていられたが、今はそれどころではない。
今、俺の目の前には一頭のバカデカいイノシシがいる。外見的にはデカさ以外は毛色が青いくらいしか特徴のない、唯のイノシシなんだが、
「……体長五メートル、体高ニメートルって、序盤に出てきていい図体のモンスターじゃねえだろ! しかもレベル八って、明らかにパワーバランスおかしいだろうが!!」
そのデカさとレベルが問題だった。
◆
「………………」
年の瀬迫る十一月五日、午後八時四十分。
空座町、クロサキ医院二階。
俺は自分の部屋で、それと向き合っていた。開封したばかりで黒々としたメタリックな輝きを放つそれは、バイクのヘルメットのような形状をしている。見た目に反して意外と重くはなく、ベッドの上に置いておいても殆ど沈み込むようなことはなかった。
そして、それを包んでいたパッケージには『ナーヴギア』の文字。
「……なんつーモンを受験生に寄越してくれてんだよ、あのオッサン」
そう、現在受験勉強真っただ中のはずの俺は、紆余曲折の末にこの最新ゲーム機を手に入れてしまった。しかも、ご丁寧にソフト付きで。
もちろん、価格十二万もするクソ高いゲームを買う余裕は、受ける大学の偏差値的にも金銭的にもない。にも関わらず、コイツが俺の手元に来てしまったのは、今日のなんでも屋のバイトの依頼主から強引に押し付けられたからだった。
依頼内容はよくある「落し物を探してほしい」というもので、散々探し回った挙句、隣町の公園のベンチの下から見つけ出すことができた。そこまでは良かったんだが、依頼主のオッサンは滂沱の涙を流しながら俺に何度も感謝の言葉を述べ、報酬金と一緒にツテで手に入れたとかいうナーヴギアを俺にくれた。強引に渡されたため受け取り拒否は失敗し、じゃあネットオークションにでも流して金に換えようと思ったのだが、
「お客さんのご厚意でいただいたモン、売っ払ったらどうなるか…………わかるよなあ、一護ちゃーん?」
報酬金の万札を握り締めコワい笑顔を浮かべた店長の言葉により、実現はしなかった。
で、そのまま家まで持って帰り、つい勢いで開封してしまったところで我に返って今に至ったんだが……ぶっちゃけ言って、一回やってみたい。コレが発表されてから毎日テレビでやってたし、付いてきたソフトも話題のアクションモノだ。
その名も、
「Sword Art Online……」
だ。
このソフトは今までありきたりなスポーツゲームが主流だったナーブギアのキラータイトル的な存在で、近接武器を駆使してモンスター共を倒しダンジョンの攻略を目指すアクションVRMMOだ、とテレビでやっていた。戦闘以外にも鍛冶とか服飾なんかの職業で商売したり、釣りや料理みたいな趣味を楽しんで普通に生活したりもできるらしい。
グラフィックとかもスゲーきれいで、映像で見た限りじゃ現実と大差ないくらいにリアルにできてる。草原や密林、大山脈から大海原なんていう自然の景色から、石畳の迷宮とかの人工物までも、現実世界に劣らないようなレベルで作られているみたいだった。
しかも、だ。このゲーム、魔法とかのよくある「必中の遠距離攻撃」が存在しないらしくて、武器はほとんど接近戦用。で、その武器ごとに必殺技(確かソードスキル)がいくつも設定されてて、それに応じた予備動作をとれば、身体が勝手に動いて技を繰り出してくれるんだとか。
月牙天衝に似た技があったらもちろん面白いが、やろうと思えばいろんな技を習得できるってのは惹かれるものがあった。白哉みたいにポンポン技を出せるのは、正直憧れる……俺なんていっくら修行しても月牙天衝しか習得できてねえし。やっぱ必殺技は男のロマンだろ。あぁ、『終景・白帝剣』的な大技を出せたらカッコイイだろうなぁ……。
……って、ヤバイ。なんかすっげえこのゲームやりたくなってきた。
「……確か、正式サービス開始は明日だったよな」
カレンダーを見て、今後の受験勉強の予定をチェックする。今まで予定通りに進めてきたし、一応余裕を持って計画したから一日潰してもどうってことはない、ハズだ、多分、きっと。
明日のサービス開始から晩飯の午後七時までの間だけ、気晴らしにちょろっと体験するだけでいい。もし面白くなきゃ押入れに突っ込めばいいし、面白けりゃコレで遊ぶことを目標にして受験勉強のモチベーションを上げりゃあいいんだ。大丈夫、全く、問題ない……ないんだ!
「とにかく、明日はコイツをやってみるぞ……そうと決まりゃ、さっさと課題を片付けちまうか!」
そう自分に言い聞かせて、俺は勉強机に戻り、ノートを広げた。残ってる課題は英語の文法だけだ。イヤホンを耳に押し込んで音楽を流し、テキストの演習問題を解き始める。
シャーペンを紙面に走らせ、英単語を書き込んでいく俺の心は、久しぶりに期待で高ぶっていた。
◆
翌日の午後、SAOにログインした俺は、とりあえず適当に剣を買ってからアチコチ見て歩いた。最初にいた『はじまりの街』の主住区はよくファンタジー映画で見るような綺麗な中世ヨーロッパ風の街並みだったし、NPCも人間と区別がつかないくらいリアルだった。街の外に出てみれば、見渡す限りの青空に大草原。周囲には鬱蒼とした森が広がっているのが見えた。
見るもの聞くものに驚きながらとりあえず街のすぐ近くにあった森林に入ってぶらぶら歩き回り、そういえば街の外ってモンスターとか出るんだよな、と思い出した瞬間、コイツが森の奥からのっそりと姿を現した。『メガフレンジーボア』と表示されたソイツは俺を見るなり突進の構えに入り、大慌てで回避した俺は体勢を立て直し、こうして森の中の小さな空き地で相対することになった。
「ブギイイイィィッ!!」
「アッブね!」
岩鷲のペットのイノシシ並の速度で繰り出された突進を真横に跳んで躱す。すれ違いざまに胴に斬りつけるが、ごく小さな赤いラインが刻まれただけで、体力は碌に減っちゃいない。
轟音と共に大木をへし折って止まった靑イノシシに接近し、今度は後ろ足を切断するつもりで深く斬り込んだが、刃が浅いところで止まってしまった。跳ね上がった後ろ足をのけぞって避け、もう一度距離を取る。
「やっぱ、斬撃の火力が足りねえか。こうなりゃ、スキルってのを試すしかねえ。確か……こうか?」
一応基本的なスキルの予備動作は覚えてきた。俺が持ってる片手用直剣で最初から使えるのは、水平斬り《ホリゾンタル》、斬り下ろし《バーチカル》、袈裟斬り《スラント》の三つ。とりあえずはその中の《バーチカル》を試すために、右手に持った片手剣を思いっきり振りかぶる。靑イノシシも俺の構えに反応したかのように、再度突進の気配を見せた。
さあ来やがれ、そのブッサイクな面を叩っ斬ってやる!
「………………って、あれ?」
発動しない。ウンともスンともいわない。
「なんだよ! 構えりゃ自動で発動すんじゃねえのかよ!」
「ブギイッ!」
「ぐうっ!?」
ミスった。
靑イノシシの突進を避けきれず、俺は十メートル程思いっきりふっ飛ばされた。どうにか剣の腹でガードはしたが、それでもレベル1の俺には大ダメージだ。ちらっと見た視界の端の体力ゲージは、もう残り二割を下回っている。
トドメと言わんばかりに付き出された牙の一撃を剣で受け流して地面を転がり、奴の間合いから抜け出す。
「チッ、何なんだよ……アレか? 技名でも叫べってのか!?」
いや叫んでもどうせ発動しねえんだろうけど。ジャスティスハチマキ的に考えて。
しょうもない考えを頭から追い出しながら、怒り狂ったイノシシの突進をひたすら躱しつ梳ける。どうせ当たって死んでもすぐ復活するんだろうが、レベル差の暴力に屈したみたいでなんかムカつく。どうにかしてスキルを発動させてダメージを与えていかねえと……。
「ブッギイイィィッ!!」
「また突進かよ、いい加減しつこ……ヤベッ!?」
惰性で避けようとした俺は、左右に避けられるスペースがないことに気づいた。しかも、イノシシが繰り出したのはもう何度目かもわからないくらいに見た突進ではなく、牙に青白い光を灯した状態での飛びかかり。突進みたいに飛び越えて回避するわけにはいかない。無駄に大きな図体が俺目掛けて急速に落下してくる。
ヤバい、このままじゃ死ぬ。コイツを何とかしなきゃ、絶対に死ぬ。
何とかして、コイツと斬らなきゃダメだ。
――例えば、そう、月牙で斬り飛ばすとか。
そう思った瞬間、身体が反射で動いた。左足を引き下げ、剣を身体の脇に構え、腰を沈める。
切っ先に力を集中させ、視線が相手を捉えた瞬間に、
「月牙天しょ――うおぅっ!?」
斬撃を飛ばす――つもりで振り抜こうとした瞬間に、身体が勝手に動いた。ギュキュイーン、という効果音と共に腕が高速で旋回し、青白い光を帯びた刃が空を裂く。
咄嗟に地面を踏みしめた直後、イノシシの腹に蒼白の一撃が直撃。重い衝撃が全身に圧し掛かってきたが、そのまま押し切り、イノシシを弾き返した。視界の端に見えた敵の体力ゲージは僅かに、でも確かに減っていた。
発動したのは偶々っぽいが、間違いない。今のは《ホリゾンタル》だ。
俺は今、確かにソードスキルを発動できたんだ。
その感覚が消えない間に、俺の足は地面を蹴っていた。体勢を立て直すイノシシとの距離を詰め、剣は上段に構える。ついさっき試した《バーチカル》の構えだ。
一度目は失敗した。けど、一発成功した今なら……!
「絶対、撃てるっ!!」
果たして、スキルは発動した。眩いオレンジのライトエフェクトを帯びた剣が、振り返った直後のイノシシの顔面を両断した。苦悶の絶叫を上げるイノシシにダッシュの勢いそのままに飛び膝蹴りを叩き込み、もう一度『ホリゾンタル』を撃ち込んでふっ飛ばした。
「……何となくわかったぜ。要は、月牙と同じ要領ってことだ」
分かればどうってことはない。要するに、斬月を振るう時と同じようにやればいいんだ。
考えて見りゃそうだ。斬月をただ振るだけでは月牙を打てないように、普通に剣を構えただけでスキルが発動するわけがない。それで発動しちまってたら、普通に剣を振ってる最中に構えが一致してしまった瞬間、勝手にスキルが暴発するだろう。それじゃ戦闘にならない。
このゲームの中でスキルを使うのにも、斬る意識、スキルを放つという自分の中のイメージが要るんだ。斬月でも「月牙天衝を撃つ」という意志が要ったのと同じこと。仮想だろうが現実だろうが、大切なのは剣を振るい、技を行使し、敵を倒すという自分の意志、もっと強い言い方をすれば『覚悟』が必要なんだ。
「ったく、ここがゲームの世界だからって正直なめてたな。こっちでも戦いのコツは変わんねえってことが、よーく分かった。
おい、イノシシ野郎」
ふっ飛ばした先にあった巨木をへし折って止まったらしいイノシシの鼻っ面に、剣先を真っ直ぐ向ける。憤怒に染まっているはずの奴の目にさっき程の脅威を感じないのは、いきなり強烈な斬撃を叩き込まれてAIのクセに一人前に警戒でもしているのか、それともスキルのコツを掴んだが故の余裕があるからだろうか。
いずれにしろ、やることは変わらない。剣の柄をしっかり握りしめながら、俺は真っ直ぐイノシシのつり上がった目を睨み返す。
「よくも散々いたぶってくれたなオイ。素人相手にケンカ売った罪、てめえの身体でじっくり思い知れ。このクソイノシシ野郎が!!」
剣を脇に構えて、俺は再びイノシシ目掛けて駆けだす。奴もそれに合わせたように、立ち上がって突進の体勢をとった。俺とイノシシ、両方の刃に青白い光が再び灯るのが見える。
森の中の空き地で、剣と牙が轟音と共にぶつかり合った。
◆
十分後。
胴に叩き込んだ一撃で残り一ミリだった体力ゲージがゼロになり、靑イノシシは弱弱しい断末魔と共にポリゴン片となって砕け散った。手元にレベルアップ通知と、経験値やアイテムなどの取得物一覧の二枚のウィンドウが軽やかな音と共に表示され、それでようやく俺は臨戦態勢を解いた。
「……勝った、勝ったぞ。なんでゲームの初陣で、こんなシンドい思いしてんだよチクショー……」
ぶっちゃけ、その辺の虚とやりあうのより大変だった。なにせ、斬魄刀のパワーとか瞬歩の速度で蹂躙することができない状態で剣術のみで戦う必要があったわけで、斬月ありきで戦ってきた俺には只の剣一本で立ち向かえというのは思ったよりも簡単ではなかった。
流石にレベルをガッツリ上げれば死神状態と変わらない感覚で戦えるようにはなるんだろうが、そこまで真剣にやりこむ予定は今のところない。いや、受験が終わったらケイゴ辺りを連れて戦場に繰り出してもいいんだが。それとも久しぶりにたつきとタイマンで殴り合ってもいいか。
とりあえす未来のことは置いといて、目の前に表示されたウィンドウに目を通して見る。
一枚目、レベルアップの通知ウィンドウ。
「えーなになに……レベルアップしました。で、レベルが五になってポイントもいくらか振り分けられる、と……って、レベル五!?」
思わず二度見した。
いや確かにレベル八のモンスター相手にタイマンで勝ちゃそうなるだろうけどよ。しかも良く見れば経験値のゲージっぽいものも既に九割がた埋まっていて、もう少しでレベル六に上がってしまいそうな感じだ。下剋上の旨みってのを実感することしきりだ。
その下には振り分けられるポイントが表示されてて、クリックしてみるとステータス画面が出てきた。そこでポイントを振り分けるみたいだ。考えるのも面倒なので筋力と敏捷性に平等に振っておく。
続いて、二枚目。
「アイテムは……おー、いろいろ出てんな。牙に毛皮に肉……肉って、要するにアレか、牡丹ってヤツか」
何となく気になって、『メガフレンジーボアの肉』の項目をダブルクリックしてみる。
……ドチャッ、という生生しい音とともに、赤黒い肉塊が手元に落っこちてきた。
「………………うわぁ」
思わずガチでひいてしまった。右手を振ってアイテム回収ウィンドウを開き、さっさと放り込んでおく。何だよ、ゲームの中でモンスターの肉って言うから、某モンスター狩りゲーで出てくるみたいな骨付き肉を想像してたわ。フツーの生肉の塊じゃねえか。無駄にリアルで気持ち悪い。頭を振ってグロテスクなビジョンを追い出し、ウィンドウを消去して街を目指して歩き出す。
森から出るとキツめの夕日に一瞬視界が白み、思わず顔をしかめた。この世界には痛覚がないのはさっきの戦闘で知ってはいたが、強烈な日光を見ると目玉の奥がズキズキと痛むような気がして、反射で目を細めてしまった。
眼が明るさに慣れると、目の前には『はじまりの街』を取り囲む真っ白い城壁。地平線の先まで続いている長大な煉瓦作りのその壁が夕焼けの紅に染まっているのはかなり壮観だ。
こういう規模の大きさや紅白のコントラストの綺麗さを見ていると、改めてこのゲーム、というか、VRMMOの凄まじさを実感する。俺がいつもやってた鉄拳とかの格ゲーとは別世界みたいだ。さっきの生肉もそうだが、リアルっていうか、もう本物にしか見えない。今日の朝軽く調べた感じでは、脳に電気信号かなんかを送り込んでこういう景観を脳内で形にしているらしいんだが、文系の俺にはイマイチピンとこなかった。石田辺りにでも聞けば解説は聞けそうだが、この時期にそんな話題を振れば呆れた顔をされるのは目に見えてる。あのイラつく面を進んで拝みたいとは思わない。
「……っと、そうだ。時間、ヤベえんじゃねえか?」
視界の端に表示された時計を見ると、時刻は午後五時半前だった。今日の晩飯はいつも通り七時だって遊子は言っていたし、後の時間はアイテムを換金でもして、仮想世界の食事ってのを食ったりして観光でもしてよう。この世界の食事は空腹感を疑似的に満たしているだけらしいから、晩飯前でも問題ないだろう。
別にこのまま森の中でバトルに興じてもいいんだが、これ以上やると止め時を逃してしまいそうだ。これはあくまでも受験勉強の息抜き。惜しくはあるが、これ以上やり込むわけにはいかない。長男がゲームを理由に受験失敗して妹たちに負担が行くなんてことになったら、兄貴失格だしな。
だがまあ、今はまだこの仮想ファンタジー世界を気楽に見て回っていよう。まだ北部の地区なんかは見てないから、そっちで適当なメシ屋を探すか。
考えがまとまったところで、街に向けて一歩踏み出した瞬間、
「……ッ!? 何だ?」
どこからか鳴り響いてきた鐘の音と同時に、身体が青い光に包まれた。かと思ったら次の瞬間には俺は町の広場に居た。
一瞬事態が理解できなかったが、大きな鐘の音が鳴り続け、俺の周りに次々と他の連中が転移してくるのを見て、どうも強制的にここにワープさせられたということに気付いた。
何かイベント的なことでもやるのかと思ったが、別に変わったものは出てこないし、鐘の音以外は聞こえない。
「……なんだが知らねーが、別になんもないなら行っちまっていいか。イベントに参加させられて止め時逃したらイヤだし」
そう独りごちて広場を後にしようとした、その時だった。
「な、何だ……? 空が……!」
誰かがそう呟いたのが聞こえた。
頭上を仰ぐと、今までの夕焼け空が『Warning』『System Announcement』――つまり、警告、システムからの告知、という英語表示に埋め尽くされていくところだった。さらに、空の隙間から血を思わせるドロドロした真紅の流体が零れ出してきた。何とも悪趣味な演出に、俺は少し顔を顰める。
その気味の悪い流体は広場の時計台の傍に寄り集まり、巨大なローブ姿の人型を形成した。陰になっていて顔は見えないが、言いようのない圧力のようなものを感じて、俺は無意識に剣の柄に手をやっていた。
そして、
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
低い男の声が聞こえた。
◆
十一月六日、午後五時三十分。
在り来たりなはずだった初冬の夕方に、俺の、俺たちプレイヤーの運命は、大きく捻じ曲げられた。
VRMMORPG『Sword Art Online』は、この日この時この瞬間から、クリアするまで脱出・蘇生不可能、そしてゲーム内の死が現実の死に直結する、史上最悪のデスゲームとなった。
後書き
お読みいただきありがとうございます。
もし宜しければ感想やご指摘等頂けますと、筆者が欣喜雀躍狂喜乱舞致します。
当面の目標は、ゲームの中なのに月牙を撃とうとしちゃったり、ステ振りをサボっちゃうお茶目な一護君を、デスゲームという名の愛の鞭で改善していくことです。
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