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にぎわいの季節へ

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第二章

「冬はね」
「けれ東京の冬はだよな」
「ええ、秋田よりずっとあったかいから」
 夫にも言っていた、いつも。
「平気だけれどね」
「それでもか」
「春は好きよ」
「そうだよな、じゃあ春になれば」
「春のお料理作るから」
「いや、お花見も行かないか?」
 夫から私に誘ってくれた。
「靖国神社か何処かで」
「靖国、いいわね」
「やっぱり春は桜がないとな」
「ええ、まずはね」
「他にも色々あるけれどな」
「春は桜があって」
 それにとだ、私はお鍋の中のきりたんぽ、大好きなのでお鍋にはいつも入れているそれを食べながら言った。
「その他にもね」
「一杯あるな」
「賑やかになるのよね」
「そうだよな、何かと」
「だから本当に好きなの」
「あとな」
 ここで夫は私にまた言った。
「今は僕達は二人だけれど」
「あら、そういう意味でもなの」
「春になりたいな」
「じゃあ今夜もね」
「ああ、そうしような」
 私達はくすりと笑ってこんな話もした、そして次の年の冬の終わりに男の子を授かった。すると秋田のお祖母ちゃんから祝いの手紙と品が届いた。
 その手紙と品を見つつだ、私は一緒に見ている夫に切り出した。
「ねえ、春にお休み取って」
「秋田にかい?」
「行かない?」
 こう夫に提案した。
「そうしない?」
「いいね」
 夫は笑顔で私の提案に頷いてくれた。
「有給取ってね」
「そうしてね」
「秋田に帰省して」
「お祖母ちゃんに曾孫の顔見せたいわ」
 子供を抱きかかえつつ夫に言った。
「この子をね」
「そうだね、一緒に秋田に帰省して」
「東京からは遠いけれど」
「今は新幹線が通ってるから」
 昔よりはずっと楽だというのだ、そういえばもう何年も秋田に帰っていない。そう思うと余計に都合がいいことだった。
 私は夫、そして子供と一緒に春に秋田に帰った、そして実家にいる両親と地元で働いているお兄ちゃんとも会って。
 お祖母ちゃんにも会った、会ってすぐにだった。
 抱いている子供を見せた、そうしてお祖母ちゃんに言った。 
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