未来から過去へ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
1
幾重にも分かれた外史が突如として集束し、ひとつの外史を生み出した。
その外史は未来と過去が繋がりひとつの外史となる。
それは本来ならばあり得ない事。
だが、多くの外史で望まれた願いが、世界の理をねじ曲げ、形を成したのだった。
「う~ん……」
「とうさま起きて!」
何時ものように布団を被り二度寝に入った青年に対して、その布団を引き剥がすように揺り動かす。
「もう少し寝かせてくれ」
そんな行為に対して青年が取った行動は、布団を頭まで被り直して亀のように閉じ籠ることだった。
「そんなものでは起きないんじゃないか?」
「あー! 愛がパパの布団に潜り込んでる!」
「ずるいじょ!」
二度寝をしたいところではあったが、こうまで周囲で騒がれては眠るに眠れない。
そのため、青年───北郷一刀は目を擦りながら起き上った。
上体を起こした一刀の目の前には、3歳~5歳くらいの子供たちが一刀の寝ている布団を取り囲むようにして集まっている。
そんな子供たちは好き放題にやりたいことをやっていた。
布団で綱引きをしたり、部屋の中で好き勝手に暴れ回ったり、期待するような目で一刀を見ていたり、一部の子は一刀の布団の中に潜り込んだりと色々だ。
一刀はその子供たちに見覚えなど無く、突然の出来事に夢であることを疑い頬をつねる。
しかし、返ってきたのは頬を引っ張ることに伴う痛み。
それをどう勘違いしたのか、目の前にいる子供たちは面白そうに一刀の真似をして頬を引っ張ってみたり、一刀の頬を引っ張ったりしている。
脳に伝えられた痛みに、今見えているものも幻視ではなさそうであることを一刀は悟った。
それを確信に変えるため、恐る恐る一番近くに来ていた子供を抱き寄せる。
「捕まったのだーーー」
「爛々が捕まった!」
「爛々だけずるい!」
「次はわたしーーー」
手に感じる重みは確かに有り、抱き寄せると温もりを感じる。
そして、ここまでくれば、混乱した頭でも周囲の状況を認識し始める。
全く見覚えのない部屋。
子供たち。
一体どんなドッキリなのかと一瞬考えたが、ここまで凝ったことを自宅でされるような覚えも無ければ、家族がそこまでするとも思えない。
一刀は冷静になってここに来るまで自分は何をしていたのかを考え出した。
そんな一刀の事などお構いなしに、抱きかかえていた子供は逃げ去り、次は自分の番とばかりに他の子供たちが押しくらまんじゅうのごとく寄ってくる。
一刀は子供たちに埋もれながら昨日の事を思い出していた。
(昨日は学校に行って───痛っ! 家に帰って───ぐっ! 飯食って────髪引っ張るな! 鍛練して───涎が……)
一刀が考え事をしようとしても周囲の環境がそれを許さない。
子供たちが好き勝手に引っ付いたり暴れまわったりと、まともに考えることの出来ない状況ではどうしようもない事が分かった。
あまりの異常事態に一刀の頭は、ついに我慢の限界を迎える。
「静かにしろ!!」
『!!!』
一刀の急な大声に、それまで楽しそうに遊んでいた子供たちはピタリと止まり、次の瞬間には全員が揃って泣き出した。
流石の一刀も、幼い子供に対していくら混乱しているとは言え、怒鳴ってしまったことに反省し慰め始めるが、一刀の周囲にいる人数があまりにも多い。
必死に泣くのを我慢している子もいるが、その目尻には涙が浮かんでおり、いつ決壊してもおかしくは無かった。
「あー。悪かった。だから泣き止んでくれ」
一人一人抱き締めながら慰めていき、やっと静かになった頃には、一刀の精神と体力は底を突き始めていた。
「疲れた……」
一刀は疲れた身体を休めるためにも壁に寄りかかり、改めて部屋の中を見渡す。
ハッキリと分かっていたことではあるが、この部屋は一刀の部屋ではなかった。
木製の窓から入る光で部屋の全体像が分かるが、肝心な照明の類が一切ない。
そんな部屋の中で分かるのは、和を感じさせる木造の家であり、見た目は一刀の祖父が待つ道場に似ていることくらいだ。
部屋の広さはおおよそで10坪程。天井や壁は板で覆われており、そんな板間の床の中央に、ポツンと布団が敷いてあるだけである。
窓も有るのだが、板を押し上げて開くタイプであり、ガラスなどは一切使われていなかった。
少しの休憩を取り、体力の回復してきた一刀は立ち上がる。そして、近くの窓から外を覗き見た。
窓からの景色は緑一色。外は完全な森の中であり、一刀の見たことのある風景など一切無い。
夢であってくれと願ったところで、現実が変わることはない。部屋の中に視線を戻せば、子供たちが泣き疲れて、いたる所で眠っている。
(これからどうしようか……)
子供たちを極力布団の近くに移動させてから改めて現状の確認をする。
一刀の悩みが解決される目処は全くと言って良いほど立っていなかった。
後書き
愛───恋との子
爛々───鈴々との子
ページ上へ戻る