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真田十勇士

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巻ノ二十四 鎌倉その三

「西国全ての力を相手にするとなるとな」
「勝てませぬな」
「流石に」
「箱根も越えられますし」
「箱根は確かに険しかったですが」
 家臣達も言う、実際に箱根を越えてきたが故に。
「しかしです」
「兵で越えられるだけです」
「時はかかろうとも」
「あそこに関や砦を築こうとも」
「幾ら険しかろうが大軍は通られる」
 幸村はここでも言い切った。
「あれだけの要害でもな」
「逆に言えば越えられる場所ですな、箱根は」
「険しいことは険しいですが」
「軍勢が越えられる場所」
「それが出来ますな」
「川もあったが」
 幸村は今度は川のことを話した。
「大井川がな」
「我等の時は雨が降っておらず」
「やすやすと越えられましたな」
「何でも雨が降ると水かさが凄いそうですが」
「それでも晴れている時は渡れる」
 自分達が渡った時の様にというのだ。
「軍勢もな、空はいつも雨が降る訳ではない」
「ですな、では」
「箱根八里も大井川も越えられる」
「そして東国にも入られる」
「甲斐からも入られますし」
「そして上杉殿はどうやら羽柴家と手を結ばれるそうだが」 
 真田家もまた手を結ぼうとしているその上杉家だ、幸村は越後のこの家のことについても家臣達に話したのだ。
「上杉殿も上野から入られる」
「では」
「羽柴殿は東国を攻められる際は、ですか」
「三つの道を通りそのうえで」
「一気に攻められますか」
「間違いなくな」
 そうしてくるとだ、幸村はその目を強く光らせて言うのだった。
「それではな」
「如何に北条殿といえど」
「瞬く間にですか」
「攻められていきますか」
「そうなる、そして」 
 幸村はさらに言った。
「小田原城じゃが」
「我等が次に行く、ですな」
「その城にもですか」
「迫られるであろう」
 そのすぐ傍にというのだ。
「そして囲まれる」
「それからは」
「どうなりますか」
「いつも言っておるが陥ちぬ城はない」
 ここでもだ、幸村は己の持論を述べた。
「決してな」
「ではあの城も、ですか」
「小田原城も」
「攻め落とせることが出来る」
「そうなのですね」
「そうじゃ、しかし羽柴殿がどうして攻めるかはじゃ」
 それはというと。
「わからぬ」
「ですか」
「そのことはですか」
「まずは小田原に行こうぞ」 
 そこにというのだ。
「そしてあの城をな」
「実際にですな」
「観る」
「そうしますか」
「そうしようぞ」
 実際にとだ、こう話してだった。 
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