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真田十勇士

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巻ノ二十三 箱根八里その二

「駿河で富士を見ましたが」
「あの山か」
「やはり殿はあの山は」
「うむ、何度も見てきた」
 幸村は清海の言葉にすぐに答えた。
「甲斐においてな」
「やはりそうですか」
「あの山は駿河からだけでなくな」
「甲斐からもですな」
「見ることが出来る」
「それで、ですか」
「甲斐におる時にいつも見ていた」
 その甲斐から見た富士を思い出しつつだ、幸村は話した。
「裏から見る富士もよいものだぞ」
「そうですか、では」
「その富士もじゃな」
「機会があれば見たいですな」
「拙者としましては」
 今度は筧が幸村に言って来た。
「富士を見てかつ登りたいです」
「そうしたいか」
「はい、是非」
 こう言うのだった。
「あの山の頂上まで」
「富士は整地です」 
 伊佐がその筧に話した。
「その整地にですね」
「入りな」
「どういった場所か御覧になられたいですか」
「何でも険しい山と聞く」
「そして時折火を噴きます」
「その富士に機会があれば登りな」
 そうしてというのだ。
「どういった場所か見たいのじゃ」
「そう言うとわしもじゃ」
 筧に続いて猿飛も言うのだった。
「一度あの山に登ってみたいと思っておる」
「御主もか」
「うむ、そしてどういった場所か見たいのじゃ」
 こう言うのだった。
「面白いと思ってものは全て見なければ気が済まぬ」
「御主らしいな」
 猿飛が笑って言うとだ、根津が笑って突っ込みを入れた。
「好奇心旺盛なこと猿の如しじゃ」
「だから猿飛なのじゃ」
「その苗字は最初からであろう」
「それでもじゃ、実際に猿の様に動き猿とも話が出来る」
「御主の祖父殿に教えてもらってじゃな」
「そうしたことも出来る」
「確か猿飛大助殿だったな」
 海野がその猿飛の祖父の名前を出した。
「伊予の忍の」
「そうじゃ、わしは祖父様に色々と教えてもらってじゃ」
「忍になったのじゃったな」
「わしにとっては師でもある」
 それが彼の祖父猿飛大助だというのだ。
「何でも教えてもらっては」
「よき師だったのじゃな」
「そうじゃ、今も伊予におるぞ」
「では伊予に行く時があれば」
 穴山が言った言葉だ。
「我等挨拶をせねばならんのう」
「ははは、その時はもてなすぞ」
「そのことも楽しみにしておるぞ」
「海の幸に山の幸にな」
 その両方を出すというのだ。 
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