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ぶそうぐらし!

作者:かやちゃ
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第10話「ちょうたつ」

 
前書き
今回で原作一巻分を終わらせ...れたらよかったなぁ....。(遠い目)
次回にはさすがに終わらせられます。
 

 


       =遼side=



「...そろそろ由紀にとっちゃ、放課後になる時間だな。」

「そうだな。」

  部室で、俺と胡桃で会話する。悠里は今は屋上だ。

「...っと、言ってる傍から。」

     ―――ガラッ

「やっほー、あ、くるみちゃん、遼君。」

「よう由紀。」

  由紀が扉を開けて入ってくる。

「あれ?なぜここでシャベル...?」

「ん?」

  由紀が胡桃が座っているパイプ椅子に立てかけてあるシャベルを見つけてそう言う。

「ふふーん、知らないなぁ?第一次大戦の塹壕戦で最も人を殺した武器は―――」

「くるみちゃんはホントにシャベル好きだねぇ。」

「―――って、聞けよ!?」

  胡桃の豆知識を無視してシャベルを持つ由紀。...って、おい。振り回すな。危ないぞ。

「あ、聞いて聞いて!今日すっごく危なかったんだ!」

「はぁ?どうしたのさ。」

「部活忘れてうっかり家に帰るとこだった。」

「危ねぇな!?」

  由紀の言葉に思わず胡桃が突っ込む。...まぁ、バリケードがあるから大丈夫だっただろ。

「うん。めぐねえに言われて気付いた。」

「めぐねえ様々だな。学園生活部が家に帰っちゃダメだろ。」

「だね!」

「...そう言えば、先生は今どこにいるんだ?一緒じゃないみたいだが。」

  普段は由紀と一緒にいる先生が今はいないので聞いてみる。

「めぐねえは職員室に行ったよ。なんでも、少し見ておきたい物があるんだって。」

「そうなのか。」

  大方、ちょっとした見回りだろう。最近は俺と胡桃と先生で不定期にバリケード近くに見回りをしに行ったりする。...先生は危険がないだけで倒す事もできないけどな。

「あ、何食べてるの?」

「乾パン。食う?」

「頂戴!」

  由紀がそう言い、乾パンを食べる。俺と胡桃も同じようにつまむ。

「乾パンってなんかサバイバルって味がするよね!」

「わくわくするよな。」

「...正確には、非常食だけどな。」

  ポリポリと食べながら俺たちはそんな事を言う。

「りーさんは?」

「部長は屋上。園芸部のお手伝い。」

「私達も行ってみよっか。」

「いいぜ。」

  そう言って胡桃はシャベルを手に取ってから立ち上がる。

「あー、俺はやらなくちゃいけない事があるから無理だわ。」

「え?そうなの?」

  ちなみにやらなくちゃいけない事とは玄関のバリケードの強化だ。

「じゃ、また後でな。」

  そう言って俺は一階へと向かう。





「...今日はこれぐらいでいいか。」

  奴らを遮るように打ち付けた机の板を見て俺はそう言う。

「...そろそろ材料も尽きてきたな...。」

  机の板自体は結構あったが、既にだいぶ使っている。...おかげで余程じゃない限り壊れなさそうになってきたけど。

「さて、戻るか。」

  だいぶ時間を使ったし、俺は部室に戻る事にする。



「ふぃー...って由紀!?なんでびしょ濡れ!?」

  部室前まで戻ってくると、ちょうど由紀が戻ってきた。...なぜがびしょ濡れで。

「これ?屋上で水遊び。」

「それで風邪引くから着替えてこいって言われたのか。」

「えへー、よくわかったね。その通りだよ。」

  屋上で何やってんだか...。

「俺は部室にいるから、早く着替えてこいよー。」

「はーい。」

  由紀は返事をして放送室(寝室)へと入っていく。

「...まったく。」

  能天気だなぁ...。俺たちは現実に苦しめられているというのに。

「...ま、由紀がああしているからこそ、俺たちはこの現実と戦える。」

  助け、助けられる。由紀は支えられているように見えて俺たちの心を支えてくれている。
  ただ、それだけの事だ。







「.....肝試し?」

  由紀が水遊びをしてから二日後、いきなり由紀が肝試しをやろうと言い出した。

「よくない?夜の学校でハラハラドキドキだよ!」

「いきなり何を言い出すかと思えば...。」

「あれ?くるみちゃん、もしかしてお化け苦手?」

  ププーッと胡桃を指差して笑う由紀。

「ちげーよ!」

「大丈夫だよ!私と特訓すればお化けなんて...。」

「おーまーえーなー!」

  由紀の襟首を持ち上げて怒る胡桃。...制服が伸びるぞ...。

「あら、いいじゃない。」

「っ!?」

「でしょ!」

  悠里がいいといった事に胡桃は驚く。当然だ。由紀を危険に晒すかもしれないからな。

「そうと決まったら準備ね。」

「手伝うよ!」

「由紀ちゃんはめぐねえに伝えておいてくれる?私達は私達で準備するから。」

「わかったー!」

  由紀は元気よく返事をし、今は見回りをしている先生の所へ走っていった。

「...いいのか?」

「由紀ちゃんの事?大丈夫よ。そうよね?」

「...まぁ、二階までなら壊滅させておいたはずだからな...。」

  だが、確実ではない。もしかしたら見落としている。もしくはまた昇ってきている奴がいるかもしれない。

「...とりあえず、気を付ければ大丈夫よ。」

「そうだといいんだが...。」

  皆やはり由紀が心配なんだな。





  そして夜になり....。

「きっもだっめし♪きっもだっめし♪」

「ちょっとは緊張しろよ。」

  ルンルン気分で歩く由紀に胡桃が突っ込む。

「由紀ちゃんは怖くないの?」

「うーん、本当のお化けに会ったら怖いかな。でも学校でしょ?何も出てこないって。」

  悠里の問いに由紀はそう答える。

「ええ。...この時間、学校には誰もいないわ...。」

「う....。」

「だからね、誰もいないはずだけどもしいたら....。」

「い、いる訳ないじゃん...。」

  雰囲気を出して言う悠里に、胡桃も由紀も怖がる。

「知ってるか?幽霊ってのは音に集まったりするんだぜ?」

  俺も悠里に合わせてそう言ってからラジカセにスイッチを入れる。

「じゃあ、付けちゃダメじゃん!」

「そうだな。だから、これはここに置いてあっちの階段から行こうか。」

「遼君頭いい!」

  そういう訳なので、反対側の階段に移動する。



「皆、集まってるわね。」

「はーい。」

  反対側には先生が待機していた。ちょうど見回りも終わったのだろう。

「じゃあ、俺はここでお別れだな。」

「え?どうして?」

「見回りの交代。もしくは肝試しの驚かし役かな?」

  模造刀を担ぎながらそう言う。

「えー?遼君も肝試ししようよー。」

「俺だってするさ。なにせ、俺は単独行動だぜ?」

「あー...確かに。」

  そういう訳で俺は由紀たちと別行動をする。

「(もちろん、今のは建前だけどな。)」

  本当の理由は、先生に代わって俺が見回りに行き、肝試しのルートに奴らがいないか探すためだ。

「....あ、肝試しのルート、俺知らねえや。」

  ...まぁ、片っ端から見て行くか。





「...あれ?遼君?」

「お?由紀たちも来たのか。」

  すれ違いで今まで会わなかったが、図書室前で由紀たちと合流した。

「遼君もこの中に用?」

「まあな。ちょうどここを見ようと思ってたんだ。」

  胡桃とアイコンタクトを取り、俺は中の捜索に移る。

「く、暗いね。電気つかないかな...。」

「それじゃあ肝試しじゃないだろ。あ、足元気を付けろよ。」

「うん...。」

  さすがに真っ暗は怖いのか、由紀の声が震えてる。

「あ、先行ってて。あたし、このへん見てるから。」

「俺も一応見回りだからな、適当に回ってくる。」

  俺と胡桃で奴らへの対処を担う。
  由紀は悠里と一緒に行動し、先生は先生で適当な本を探すつもりらしい。

「(さすがに残っていないと思うが....。)」

  俺が探しているのは本ではなく当然奴らだ。
  二階はほとんど安全になったとはいえ、絶対ではないからな。

「っ....!(気配...!)」

  角を曲がり、確認する。

「....いない....か。」

  気のせいだったか?

「....遼君。」

「っ...先生か。」

  後ろから先生に声を掛けられる。

「すぐこっち来て。一人、見つけたわ。」

「っ、分かりました。先生は一応胡桃たちにも伝えておいてください。」

  腰に下げていた模造刀を引き抜き、先生に連れられていく。

「....いた。...先生、後は任せてください。」

「...頼んだわよ。」

  一体、彷徨う様に歩いていた。おそらく、さっきの気配もこいつだろう。

「いつの間に入り込んでいたのやら...。」

  とにかく、近づいて頭に一閃。叩き潰す。

「遼!....やったか?」

「胡桃か。ああ、やっておいた。」

  胡桃と悠里も先生に連れられやってきた。

「....由紀は?」

「由紀ちゃんはこっちよ。」

  先生が先導し、由紀がいる場所へと行く。

  すると、そこには隅っこで蹲っている由紀が....。

「わあっ!?」

  ライトを当てると、吃驚する由紀。

「何やってんだ?」

「皆...あ、めぐねえ!幽霊は!?」

  幽霊?...あぁ、ゾンビを幽霊と誤魔化したのか。

「えっと...実は居眠りしてて残ってた生徒だったみたいで、今帰らしたわ。」

「えっ、そうだったの?」

  幽霊じゃなくてよかったと安堵する由紀。

「...肝試しは楽しかった?」

「うん!来年もやろー!」

「....そうね。」

  来年は本来なら卒業してるというのは言わないでおこう...。

  こうして、少し危なげながらも肝試しは終わった。







「....ん?雨か。」

  玄関のバリケードを強化している時に、雨が降ってきた事に気付く。

「あー..洗濯物...は他の人達に任せるか。」

  というか、洗濯物の大半が女子のだから、俺が行ったらダメだろ。

「.....雨宿りってか?」

  玄関前に奴らが集まってくる。

「バリケードがあるし...多分、大丈夫だろ。」

  とりあえず、部屋に戻るか。





「「「いっただっきまーす。」」」

  皆で昼食である乾パンを食べる。

「ううむ...パサパサする....。」

「非常食だから、消費期限を極限まで伸ばすために徹底的に水分を抜いてあるからな...。」

  パサつくのも仕方がないものだ。乾パンは。

「そのために氷砂糖で唾液を出しやすくしてるのかもな。」

「なるほど...いや、どの道パサパサするだけじゃん...。今回の乾パンは氷砂糖ついてない奴だし...。」

「まあな。」

  ただの乾パンに関する考察をしただけだ。ちなみに今回の乾パンはクッキーに近いもので、バターやジャムとかを付けたりすると美味い。

「...あ、忘れてたけど、由紀。今日は全校停電だからな。」

「そうなの?私停電好きなんだよねー。なんかわくわくするし!」

  悠里から電気が足りてないと聞かされたため、節電するために停電と言う名目で由紀に伝える。...なぜか好評だったが。

「....わくわくするのはいいが、うちの学校のシャワーは電熱式だぞ?」

「えっ!?」

「お湯が出ないのよね。」

「はぅっ....。」

  俺の言葉に驚き、悠里の言葉に落ち込む由紀。

「大丈夫かー?」

  固まってしまった由紀に胡桃が呼びかける。

「...キャンプだよ!」

「「...はっ?」」

  そして、突然立ち上がりそう言い放った由紀に、俺と胡桃はついそんな返事をする。

「ほら、えーと..遠足とかでキャンプをするでしょ?学園生活部だから学校でキャンプするの!」

「...なるほど。キャンプなら電気を使う事もない...か。」

「でも、肝心のテントとかはどうするんだ?」

  部室にあるにはあるのだが、あれは三人しか入れない。

「私は見回りをするから....。」

「...俺もやりたい事がある。」

「...あー、なんか悪いな。気を遣わせて。」

  俺と先生が抜ける事で、とりあえずキャンプをする事に決める。





「じゃあ、私は見回りに行くわね。」

「はい。気を付けて。」

「遼君もね。やりたい事があるとはいえ、危険な事はしないようにね。」

  暗くなった廊下で、先生と別れる。

「....さて、行きますか。」

  一度校長室(俺の寝室)に戻り、いくつかの弾薬とハンドガン二丁、模造刀とナイフ二振り、そしてワクチンをいくつか鞄に詰めて背負う。

「今は雨が降ってるから雨具も必要だな。」

  そう言って俺は購買部まで行き、雨具を拝借する。
  もちろん、購買部に行く際に先生には気づかれないようにしている。

「相変わらず、暗いな...。」

  親父から貰っておいたライト(滅茶苦茶光力が強い)がなかったら不意打ちを受けるぞ、これ。

「....さっさと行こう。」

  もたもたしている暇はない。奴らの生態を知る事もできるけど、できるだけ危険に晒されないようにしないと。

「...今までで分かった奴らの生態は、夜になると家に帰るのか、数が減る。雨が降ると、雨宿りをするのか軒下や室内に入る。...この二つが揃ってる、今は外出に向いていると言えば向いている。」

  尤も、前提条件に俺や先生のような体質があるがな。
  他にも、先生や皆に気付かれにくいっていうのもある。

「この絶好のチャンス、このチャンスの内に、“アレ”を学校に持ってこないとな。」

  そのためにも、今は一気に家へと駆ける!

「邪魔だ!」

  二階から飛び降り、近くにいた奴を叩き潰す。
  すぐさま走り出し、一気に家まで行く。





「工藤家は雨宿りの場所じゃないですよっと!!」

  家まで辿り着き、軒下にいたゾンビを一掃する。

「ええっと....車の鍵は....あった。」

  中に入り、ライトで鍵を探し出す。

「ついでに何か持っていくか。まだ何かあったはずだし。」

  手頃な日用品や残っていた非常食を鞄に詰め込み、シャッターが閉じられている頑丈そうなガレージへと向かう。

「....うわーお。こりゃ、頑丈そうだな。」

  銃弾を喰らっても壊れなさそうなジープで、後部座席の方を照らしてみれば、予備のアサルトライフルなどがチラリと見えた。弾薬とかも入ってそうだ。

「よし、じゃあ早速....。」

  エンジンをかけ、ハンドルを握る。...運転経験?ハワイで親父に(ry

「ガソリンは....さすが、親父。満タンとは用意周到な。」

  これなら節約すればなんとかなるだろ。

「じゃあ、学校に向けて出発!」

  アクセルを踏み、奴らを薙ぎ倒しながら学校へと戻る。





「...ここらに停めて....と。」

  鍵を取って車を降りる。止めた場所は玄関から少し離れた場所だ。

「....って、うわ....。」

  玄関から入ろうとして、無理だと悟る。
  ...なにせ、大量の奴らが雨宿りしていたからな。

「....車から二階に上がるか。」

  雨降ってるからさっさと中に入りたいしな。
  そういう訳なので、車によじ登り、さらにそこからジャンプして二階に入る。

「うわ...結構濡れたな....。」

  風邪を引かなければいいのだが....。

「とりあえず、部屋に戻って着替えるか。」

  タオルでしっかり拭いて着替えれば何とかなるだろ。
  そう考えつつ、三階へと上る。

「....遼君?」

「.....あっ....。」

  先生に見つかった。

「そんなに濡れて...どうしたんですか?」

「え、えっと....その.....。」

「さっきは車の音も聞こえましたし....まさか....。」

  俺はすぐさま逃げ出した。

「行かせないわ。」

「先生!?いつの間にそんな反射神経を!?」

  先生の脇を抜けて行こうと思ったら、あっさりと襟首を掴まれる。

「ちゃんと話、聞かせてもらいますね?」

「うっ....はい...。」

  とりあえず着替えさせられてから説教されました。





「...まぁ、今回は許します。」

「うぅ....すいませんでした...。」

  しばらく説教され、ようやく解放される。

「それで、どうして車を持ってきたの?」

「...いつかはこの学校を出るかもしれませんし、なによりも他の生存者を探しに行ったり、物資を調達するには車は最低二台必要でしたから。」

「なるほどね....。」

  問題はガソリンが調達しづらいって事なんだよな...。ガソリンスタンドって電気なしで使えなかったよな...。

「...遼君は本当に色々できますね。銃の扱いや、サバイバルの知識、さらには車の運転まで...。」

「.....親父はいざという時の事とか言っていつも俺や母さんを鍛えてましたからね。...さすがにパンデミックは想定外でしょうけど。」

「想定していたらしていたでおかしいわ...。」

  親父は今頃なにしてるだろうな...。...多分、紛争地帯で無双してるな。軽装備で。

「他の皆は?」

「今頃寝ているわ。バリケードも問題なかったから、私ももうすぐ眠るわ。」

「じゃあ俺も眠ります。おやすみなさい。」

  先生は俺の寝室から出て行き、俺も寝袋に包まって寝た。











       ~おまけ・その頃の...~



「いやぁ!来ないで!」

「誰かー!誰か助けて!!」

「ママー!うわぁああああん!!」

  まずい...!まずいまずいまずい...!!

〈ギギギ....〉

「邪魔!どいて!」

  目の前のゾンビを吹き飛ばす。今は荷物を近くに置いて武器しか持っていない。
  目指すは立て籠もっていた教室。バリケードは無事だけど、中から叫び声が聞こえる。

     バキィッ!

「っ....!?」

  割れた窓を塞いでいた板を叩き割り、中に入る。
  中の様子は悲惨だった。数人のゾンビ...しかも、元々は立て籠もっていた子ども達がおり、他の人達もほとんどが噛まれた傷を負っていた。

「くっ....!」

  とりあえず、ゾンビと化している人達を潰す。

「(無事な人は....!?)」

  噛まれたらその時点でアウト。全員が噛まれていたのなら、殺すしか....。

「...っと...。」

「......!」

  今は噛まれた人もまだゾンビとなっていないので、辺りを見回していたら誰かに抱き着かれる。

「瑠璃ちゃん....?」

  とにかく、噛まれていないか確認する。
  ....血の痕も、傷もついていない...よかった...無事だった...!

「く、工藤さん....。」

「....他に、噛まれていない子は?」

  まだ生きてはいる先生に聞く。...先生について聞かないのは、既に噛まれている事が分かってしまっているからだ...。

「....いません....。」

「....そう....。」

  だとしたら、もう、瑠璃ちゃん以外は....。

「工藤さん...私は...私達はどうしたら....!」

  もう生きる希望を失くし、絶望に涙を流しながら先生の一人がそう言う。

「.....選んでください。....人間として私に殺されるか、人を襲う化け物として私に殺されるか...。....他に手は、ありません....。」

「っ.......。」

  薬なんて都合のいいものはない。ましてや、バイオハザードのようなものだ。ある方がおかしいと言える。

「.....人間として....最後まで、人間でいさせてください.....!」

「....そう....。」

  その返事を聞き、ゾンビ化しかけている子に歩み寄る。

「....ごめんなさい。」

     ―――ゴシャッ!

  頭をかち割る。...調達先で頑丈な武器(バール)を手に入れていたから、頭を割る事も容易かった。

「....ごめんなさい....。」

     ―――ゴシャッ!

「ごめんなさい....!」

     ―――ゴシャッ!

「ごめんなさい....!!」

  謝りながら、次々と殺していく。誰も泣き叫ばないのは、もう、死ぬのを理解しているからだろうか。絶望して何もする気力がないだろうからか。....私には、分からない。

「.......っ.....!」

「....殺してください...。もう、早くしないと....!」

  悔しさと悲しさに歯を食いしばりながら先生方二人を見る。
  ....先生のその言葉に、もう、歯止めは効かなかった。

「っ...ぁあああああああ!!!!」

     ―――ゴシャッ!!

  一人、先生を殺す。叫びながら武器を振ったためか、潰した音も大きかった。

「っ――――!!!」

  後一人、覚悟を決めた顔で死を待っている先生に近づく。

「ぁああああああ!!!」

「―――...ありがとうございました。工藤香織(くどうかおり)先生...。」

「っ.....!?」

     ―――ゴシャッ!!

  頭を叩き割る瞬間、その言葉を聞いて頭が真っ白になった。

「っ....ぅうううう....!」

  辺りは血と肉片と死体にまみれ、私自身も返り血で血まみれになっていた。
  そんな状況に構わず、私は立ち尽くすように涙を流した。

「........。」

「....瑠璃ちゃん...?」

  俯いた状態の瑠璃ちゃんが、私の服の裾を掴む。

「ごめんね、瑠璃ちゃん....こんなの、見せちゃって....。」

「.....。」

  血まみれの状態だけど、瑠璃ちゃんを抱き、優しく撫でる。

「貴女だけは...貴女だけは、護って見せるから....。」

  もう、誰も犠牲にしたくはない。私が殺した人達のためにも、私はそう誓った。







 
 

 
後書き
るーちゃんの本名ってなんだ...?
...と言う訳なので捏造しました。若狭瑠璃(わかさるり)です。るーちゃんという愛称にできる名前で、適当に思いついた名前にしただけです。
 
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