IFのIFストーリー
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転生の果てに
俺は血を吐いていた。何故か、というと簡単である。腹を貫かれたから。別に避けることは至極簡単で、それどころか防ぎ、相手を殺すこともできた。だけどしなかった。それは俺が俺自身に許されないと言い聞かせてきたから。親友を殺し、仲間を謀り、そして裏切った。そのうえ、亡命した仲間も殺した。俺はもう戻れる場所はない。後悔もない。何故なら殺した親友を生き返らせたから。そして思うだろう。「なら帰れるだろう?」と。
だがそれは叶わない。死者を蘇らせると言う冒涜にはそれ相応の対価を求められるからだ。つまり、死ぬ。
だけど、それでいいのだ。俺は元々存在する筈がない存在。これで仲間達も元通りの道を進む。
ああ、どんどん感覚が無くなってきた。耳も遠くなり始めた。自分がどんどん何処かに沈んでいく感覚。気持ち悪くはなく、むしろ心地よい。だけど微かに感じる。誰かが呼んでいる。だけどもう間に合わない。死神が俺を地獄の底に連れて行っている。だが最後なら、もう愛する人とも会えないのなら。少し旅立つのを伸ばして別れを言おう。
そうして、俺を呼ぶ声を手繰り寄せるー
ー何処かー
強くふる雨が、まるで彼に対して泣いているように感じた。私に抱き抱えられている彼はそこら辺の軍人より屈強な肉体で、普段は抱く事など出来ないほど重かった。たけど今はこうして抱きしめなければ何処かへいってしまうような、そこまで軽く感じた。そして本当に二度と会えなくなってしまう。自分が彼を殺さんと手に持った槍で貫いたために。
いや、この言い方はおかしかった。彼は私の槍を弾き、逆に私を殺せた筈なのだ。だがあえて受け入れた。まるで私に殺されるために。真実はわからない。唯一の彼ももう行ってしまう。でも、どうすることも出来ない。
そして死にかけなのに彼は両手を組み、祈るように握りしめた。そして、
「・・・外道・・・輪廻・・転生の・術・・」
と、途切れ途切れの声で、血を吐きながら祈るように言った。
「・・・こ・・れで、元・・どお・・りに・・」
そういうと、糸の切れた人形のように手を離した。
そして学園から連絡が入る。
「み、皆さん!織斑くんが、織斑くんが生き返りました!」
最初、私は耳を疑った。織斑くんが生き返った⁉︎何故?答えは簡単に出てきた。まるで目の前で死んでいく彼。いつも飄々としていて、危険なときはいつも守ってくれた。彼がいるとなんとかしてくれると思ってしまうほど、実際学園を守り、みんなを守ってくれた。そんな彼がやったのだと。どうやったのかはわからない。だけど確信はあった。
「泰人くん!泰人くん!・・・泰人!」
私は必死に叫び、彼を呼ぶ。今となってはなんで叫んでいたのか。彼を責めたかったのか、助けたかったのか。多分両方だろう。
そして叫んでいた私は怒っていたのか、悲しんでいたのか、寂しかったのか、苦しかったのか、嗚咽混じりに彼を呼んでいた。
そんな私を慰めるかの様に彼が手を伸ばし、話す。
「刀・・・奈さ・・ん。し・・んぱ・・い、しな・・いで。これ・・で元・・通・・りだか・・ら」
と言いながら私の涙を手で拭き取る。
「なにが、元通りなのよ!全然戻って無いわよ!貴方が・・・いないじゃない!」
そうやって泣く私に、にっこりと笑った彼はそっと私を手で引き寄せ、キスした。
数秒後、また彼は話す。
「すま・・ない。もう、いか・・・なきゃ、ごめ・・ん。愛・・して・・・たよ」
そういって私の顔に添えていた手が地面に落ちる。
「待って!・・・まってよ・・・お願いだから、目を開けてよ・・・!私を置いていかないで・・・!」
彼は動かない。もう間に合わない。私は最初のファーストキスを奪って、そのまま何処かへ行った彼の魂の抜け殻を抱きながら、喉が張り裂けんほど泣き続けた。
ー?ー
「ーい」
誰かが何か言っている。正直もうどうでも良かったので俺はそのまま目を瞑っている。
まて、目を瞑って?では開けることもできるのか?
そう自問自答して目を開けると、強烈な光が差し込んできた。
「ーーーっ!」
最初は開けれなかったが時間をかけて少しずつ目を開けた。ここは俺が転生したときにいた、白い部屋。そんなことよりも俺は何故ここにいるのか分からなかった。と、そこに
「おー!やっと起きたか」
と少し向こうに新聞を折りたたみ膝を払って立ち上がる老人。
「・・・」
「ほら、なにか言ってみぃ。ほら」
と言っているが俺は喋る気は無かった。それよりも何故またここにいなければいけないのか!と言う怒りだけが静かに胸の中で渦巻いていた。
「お、何か言いたそうな顔をしておるぞ少年」
「なぜ、俺はここにいる」
「なぜ、なぜと言われればのぉ・・・お主が死んだからかの?」
「・・・生きてればいずれ死ぬ」
「ははは!ある意味では会ってるが、ある意味では間違っておる」
「・・・?」
「そりゃ生きてれば寿命で死ぬのが生き物じゃ、だがお主は心が死んでおる。正確には封じ込めとる、と言った方が正しいかの」
「・・・違う」
「人間必ず生きたいと思うのが人間じゃ。だがお主は死にたいと、いや、消えたいと思っておる様じゃな?」
「・・・違」
「違わん!」
否定しようとした俺に向かってはっきりと否定を否定する老人。
「おお、すまんすまん。何故ここにお主とわしが入るかと言うと。簡単には贖罪じゃな」
「贖罪?」
「そうじゃ、お主は罪を償わんとのぅ」
と髭をさする老人。
「・・・また、あの世界に戻るのか?それとも地獄で永遠に苦しめと?」
「ふふふ。残念だが全て外れている。別にわしらはお主達の思っているものではない」
「?」
「簡単にいうと、わしらはお主らで言う「概念」と呼ばれるものかの。故に地獄も天国も存在せん」
と喋る老人を見ながら俺は黙る。
「それにの、お主が居た世界には戻れんのじゃよ」
「・・・そうか」
と一言呟いた俺の顔をみてフォッフォッフォッと笑う老人。
「そこでじゃ。お前さんには別の世界に行ってもらう」
「別の世界?」
「そうじゃ。どんな世界かは言わん。というより言っても分からんじゃろう」
「・・・そこで何をしろと?」
「・・・それも言えん。と言うか探せ。さすれば、自ずと償う罪も分かるかも知れんしのう。じゃ、そろそろ時間じゃ」
「いや、探せって言われても、てか時間とかここにー」
「3・2・1・ポチッとな」
「ちょっ!ってうわあああああ!」
と老人がポケットから出したボタンのおかげで、俺がいた所?に穴が開き、俺は真っ逆さまに落ちて行った。
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