魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
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第1章:平穏にさよなら
第19話「模擬戦」
前書き
第1章は25話ぐらいには終わらせるつもりです。(終わらせられるとは言っていない。)
=緋雪side=
「...それで、最初は誰が行くの?」
いつの間にか模擬戦を行う事になり、私がそう言う。
「かやのひめさんはしばらく回復に徹して、僕はその供給源だから...。」
「...私、か。」
お兄ちゃんが勝手にクロノさんと決めた事なのに、私が一番最初か...。
「あ、じゃあ、私が相手をするよ。」
「司さん?」
誰が相手になるのか聞こうとしたら、司さんが立候補した。
「いいのか?」
クロノさんが司さんにそう聞く。
「うん。...あの時の決着もつけておきたいし...ね?」
「(...あぁ、そういう...。)」
私が暴走した時の決着をここでつけたいって訳ね。....望む所。
「お兄ちゃんは渡さないからね?」
「まだそのネタ引っ張ってたの!?」
いや...いつか司さんがお兄ちゃんの事を好きになるかもしれないじゃん。
「...いいから準備を済ませてくれ...。」
「ご、ごめん...。ほら、早く行くよ。」
クロノさんに催促されたので、私も司さんについて行って模擬戦をする場所に行く。
『準備はいいか?』
「『私は大丈夫だよ。』」
「『私もオッケーです。』」
司さんとある程度間合いを離した状態でバリアジャケットを纏って対峙する。
『では...始め!』
「「っ....!」」
あの時と同じように、私と司さんは同時に間合いを詰める。
ギィイン!
「っ....せやっ!」
「っ、くっ...!」
大剣状に構成した魔力の剣を、司さんは受け流して、蹴りでカウンターをしてくる。それを私は予め大剣から離しておいた手で防ぐ。
「.....シュート!」
「っ...!くっ...!」
何かの素振りを見せたかと思ったら、いきなり背後から魔力弾が襲い掛かってくる。咄嗟に防御魔法で防ぐが、隙が出来てしまう。
「貫け、“魔穿突”!」
「ぐっ....!....なっ!?」
バキィイン!
魔力を持った刺突を剣で防ぐも、そのまま剣を破壊されてしまう。咄嗟に後ろに跳んでそのまま直撃するのは避けたけど、魔力の剣が破壊されたのには動揺してしまった。
「結構、慣れてきたのに...!」
「....滅せよ、悪なる者を...。」
ふと司さんを見ると、何かを詠唱している。嫌な予感がする....。
〈っ、下です!お嬢様!〉
「しまっ...!?」
「“セイント・エクスプロージョン”!」
いきなり足元に巨大な白い魔法陣が展開される。反射的に飛び上がったけど、範囲が広い...間に合わない...!
ドォオオオオオン!!
「....やった....?」
「“ロートシュトース”!」
「っ!?ぐっ...!」
油断して隙があった司さんに、横から貫通力の高いレーザーのような射撃魔法をぶつける。ギリギリで防御魔法を張られて威力を軽減させられたけど、これで明確なダメージが入った。
「(上手く、凌げた...!)」
さっきの魔法をどうやって躱したかというと、そこまで複雑じゃない。ただ、私の目の前の空間を爆発させて、範囲外まで無理矢理私を押しやっただけだ。
「“ロートクーゲル”、シュペルフォイアーディプロイメント...フォイアー!!」
さらに追撃として、魔力弾をこれでもかという程展開し、それらを全て放つ。
「くっ....断て!いかなる侵攻さえも!“スペース・カットオフ”!」
またもや大きな魔法陣が展開され、それに全ての魔力弾が防がれる。
〈『今のは空間を一時的に遮断する事による魔法です。...司様、なかなかの大魔法の使い手ですね...。』〉
「『空間を遮断って...チートじゃない?』」
一時的って訳だから、燃費とか時間制限とかあるだろうけどさ。
「“セイントレイン”!」
「っ!危なっ!?」
私の上から魔力弾が雨のように繰り出される。それを私は駆け抜けるように何とか躱す。
「捕らえよ!戒めの鎖!」
「っ....!薙ぎ払え、“レーヴァテイン”!」
躱した所を予測していたのか、鎖状の拘束魔法が迫ってくる。レーヴァテインで強引に薙ぎ払う事で、それを回避する。
「“カゴメカゴメ”!」
即座にレーヴァテインをそのまま地面に刺し、巨大な魔法陣を展開し、黄緑の魔力弾で鳥籠のように司さんを囲んでいく。
「これは.....!」
「いっけぇ!」
大きな魔力弾を適当に放ち、それでカゴメカゴメを動かして攻撃する。...まぁ、フランのカゴメカゴメそのまんまの攻撃だ。
「避けづらいけど...遅い!」
そう言って司さんは槍を地面に刺し、足音に魔法陣を展開する。
「さぁ、悪しき干渉を打ち消せ...“聖撃”!!」
カッ―――!!
「っ....嘘...!?」
一瞬、光に目が眩み、光が晴れたところには、カゴメカゴメの弾幕が全て打ち消されていた。
「“スターボウブレイク”!」
とりあえず、目暗ましの弾幕を放つ。...どうせ防がれるか躱されるだろうけど。
「(でも、隙としては十分...!)」
その間に、魔法陣を展開し、魔法を発動させる。
「“フォーオブアカインド”!」
四人に分身して、皆でレーヴァテインを持つ。
「「「「これで終わりだよ!」」」」
「くっ...さすがに、四人はきつい...!」
やっぱり弾幕を凌ぎ切っていた司さんに、連携攻撃を仕掛ける。
「...でも、こっちも“仕込み”は完了してるんだよね。」
「えっ...?」
突如、私を囲う様に展開される多数の巨大魔法陣。
「広域殲滅魔法、“満ちる極光”!!」
「シャル!多重障壁展開!間に合わせて!」
〈分かりました!〉
私を囲う様に二重、三重の障壁が張られていく。...そして、視界が光に包まれる。
魔法が発動するまで張れた障壁は10枚...これで防げなかったら...!
=優輝side=
「....で、自爆したと。」
「うぅ...そうなるね...。ケホッ、ケホッ。」
砂埃にまみれた状態で涙目になっている緋雪。司さんも同じ感じだ。
「ツェアシュテールングの威力を極限まで上げて、相殺を試みようとしたら、威力が強すぎてそのまま自爆からの相打ち...か。」
「あはは...結界が壊れなくてよかったよ...。」
ちなみに結界を維持していたユーノ・スクライアは余程の衝撃だったのか、疲労でへたり込んでいる。...非殺傷設定じゃなかったら死んでたぞ...。
「...訓練場が壊れたらどうするつもりだったんだ...。」
「ごめんなさーい...。」
クロノさんも溜め息を吐いている。...結界が壊れなくてよかった...。
「しかし...司と互角の強さか...。」
「今回は経験の差で勝ちかけたけど、次からはそうとは限らないかもね...。」
自爆の威力も相当だったからな。
「...さて、次は僕だけど...。」
相手は誰になるのかな?
「...俺が行く。」
「(織崎か...。)」
織崎は王牙と違って強い。...いや、僕からすれば王牙も充分強いけどさ。
...まぁ、僕が転生者じゃないか見極めるつもりなのだろうけど。実際、緋雪の魔法を見て転生者だと断定してたし。
「『リヒト、“アレ”は大丈夫?』」
〈『はい。二発だけ、装填されたままです。』〉
二発だけ...か。まぁ、作る暇がなかったしなぁ...。作り方もまだ知らないし。
「...じゃ、行くか。」
「頑張ってね、お兄ちゃん。」
「おう、任せろ。」
緋雪に格好悪い所は見せられないしな。
『では...始め!』
「........。」
クロノさんの合図によって、模擬戦が開始されるが、織崎は構えすらしない。
「(...先攻は譲るってか?)」
まぁ、以前に視た特典からすると、その余裕も分かるけど。
「魔力が少ないからって、その余裕は命取りだぞ。」
小手調べとして弓状にしたリヒトで矢の形の魔力弾は放つ。
しかし、その魔力弾はあっさりと織崎の体に弾かれ、霧散する。
「そうか?そのつもりはなかったんだけどな。」
「(嘘つけ。思考ではそう思ってなくても、心の奥底ではそう思ってるんだよ。)」
多分、構えがないのが構えなつもりなのだろうけど、そんなの特殊な武術を極限まで極めた者がする事だ。達人ですらないのに、構えがないなんて余裕からとしか考えられん。
「(“十二の試練”...火力不足な僕の天敵だな。)」
さっきの攻撃は織崎の特典である宝具に無効化された。
Fateではなくリリカルなのはの世界だからか、Aランク以上の攻撃ではなく、一定以上の威力の攻撃なら効くようになっているが、それ以外はFateとなんら変わりないため、火力不足が難点な僕の天敵となっている。
....まぁ、今回は模擬戦だから、その防御力以外は関係ないんだけどね。
「『リヒト、攻撃の瞬間の一点だけに魔力による威力の底上げ、可能だな?』」
〈『当然です。朝飯前ですよ。そんな事。』〉
いや、魔法の練習の時、結構難しい技術って言ってたよな?
「オッケー、なら...行くぞ!」
「っ....!」
リヒトを刀に変え、突撃する。
...イメージするのは、恭也さんの動き...!
「(恭也さんの技術は最近分かったけど、おそらくは一刀ではなく二刀での技術...!だから、模倣してもあまり効果はない。だったら、参考にする!)」
適度に魔力で身体強化をし、踏み出す際に魔力を爆発させる事で、高速移動を可能とする。それを利用し、一気に攻撃をする...!
「くっ...!」
「せやぁっ!」
織崎は自身のデバイス“アロンダイト”で僕の斬撃を防ぐ。
やっぱり、剣の技術はそこまで高くないのか、僕の剣戟を上手く防げていない。僕が魔力を使った複雑な動きから攻撃してるのもあるのだろうけど。
「ここだっ!」
「ぐっ....!?」
一瞬の隙を突き、剣を弾いて一撃を入れる。
「ふっ!」
「っ、これでも効かないか!」
しかし、その攻撃を無視して反撃をしてきたので、僕はそれを躱す。
しっかりと魔力も込めた鋭い一撃だった。しかし、それでも織崎は僕の攻撃を防いだ。
「くそ....!」
もう一度斬りかかり、何度か攻防を繰り広げた後、鍔迫り合いになる。
「はぁあっ!」
「くっ...!」
薙ぎ払われるように力負けする。織崎もちゃっかり身体強化してるな...!
「(貫通力を...高く...!)」
薙ぎ払われる際、僕からも飛び退き、空中でもう一度弓を引き絞る。
ただ一閃、疾く、貫ける一撃を放つように魔力を鋭く集束する...!
「貫け!“ロイヒテンファルケン”!!」
光の速さの如く駆けたその一閃は、その速さによって不意を突かれた織崎を貫いた。
「がっ....!?」
「(効いた!)」
ようやく織崎の防御力を貫く事ができた。
「『リヒト、今の威力と“アレ”とは...。』」
〈『本来の威力なら、今の方が上回ります。ですが、今のマスターの場合はそちらの方が上です。恐らく普通に通用するでしょう。』〉
「『わかった。..貴重な一撃だ。しっかり決めないとな。』」
〈『はい。』〉
切り札になるであろう攻撃よりも、威力は低い。だからか、織崎もすぐに立つ。
「まさか、俺の防御力を貫くとはな...。」
「言ったよな、命取りだって。...今のでどれほどの威力なら通用するか分かった!」
またもや織崎に接近戦を仕掛ける。
「ぐっ...!?なに...!?」
「はっ...!」
何回かの剣戟の後、一撃決まる。完全に体勢を崩したのでもう一度斬ろうとするが...。
「ぐっ...!?(防御魔法か...!)」
「っ...シュート!」
「くっ......!」
今まで使ってなかったからか、失念していた防御魔法に防がれる。
織崎はその隙に紺色の魔力弾で攻撃してくる。僕はそれをリヒトで受け止め、それと同時に後ろに跳んで間合いもついでに取る。
「はぁあっ!」
「っ、まず...っ!」
さすがに攻撃に回る織崎。咄嗟にリヒトを双剣に変え、迎え撃つ。
「ぐぅうう....っ!」
「中々やるな。こっちからも行くぞ。」
重すぎる攻撃に苦悶の声を上げる。くそ...!織崎の特典はFateのヘラクレスとランスロットの宝具だけなはずだが、多少なりともステータスにも影響してるのか...!?
「くそっ...!」
ギィイン!
織崎の攻撃を利用して、また後ろに下がる。
「“シャープスラッシュ”!」
「創造開始...!」
飛ばされた魔力の刃を受け止める。
ギャリギャリと耳障りな音を間近で聞きつつも、魔法の術式を解析してその魔力を吸収する...!
「なに...!?」
「“ドルヒボーレンベシースング”!!」
その魔力をそのまま魔力弾に変換し、貫通するのに長けた砲撃魔法を放つ。
「っ...プロテクション!」
咄嗟に織崎は防御魔法を使い、防ごうとする。
「ぐっ....!?」
「おまけ....だっ!」
あっさりと防御魔法を貫き、織崎は怯む。さらにそこへ、僕はロイヒテンファルケンをもう一度放つ。しかし、効きはしたものの、剣で少し逸らされてしまった。
「(防御が固いと言っても、ダメージは攻撃力-防御力にはなってないみたいだな。防御さえ貫けたら、そのまま大ダメージになるのか...。)」
今までの通用した攻撃からの織崎の反応を見ると、そんな感じがした。
「(...大気中の魔力で創れるものは威力を考慮すると、多くて五つ...いや、三つか。僕自身の魔力は一応残っているから、“アレ”も含めて攻撃が通用するのは多くて七回...か。)」
一回分は他の回数分の攻撃を当てるために使うだろうから、実質六回か。
「(恭也さんが使っていたあの技...あれを使えば隙を作れるだろう。)」
長く思考してしまった。実際にはあまり時間は経っていないが、織崎が体勢を完全に立て直すほどには考え込んでいたようだ。
「行くぞ...っ!?」
駆けだそうとした瞬間、手足が動かせなくなる。...バインドか...!
「だが、甘い...!」
即座に術式を解析、魔力を吸収してバインドを解く。
「なっ...!?」
「創造開始...!」
大気中の魔力を利用し、三つの剣を創る。もちろん、織崎の防御を貫けるように強固に魔力を凝縮して...だ。
「投影魔術...!」
「...フォイアー!」
やっぱりと言うべきか、投影魔術と勘違いされる。
それはともかく、剣を自在に操るように織崎に向ける。
「(一つは牽制。もう一つは攻撃。そしてあと一つは隙を突くように...!)」
「くっ....!厄介な...!」
避ける、弾く、受け流す。そうして僕の攻撃を凌ぐ織崎。
「このっ...!はぁあああ!!」
しかし、さすがに対処できるのか、一瞬の隙を突いて僕に攻撃してくる。僕を攻撃すれば制御も乱れると判断したのだろう。
「だが、それは悪手だ。」
「っ...!?しまっ...!?」
しっかりと魔力で身体強化し、織崎の攻撃を真正面から受け止める。...そう、“受け止める”事によって、足止めをした。
背後から高速で剣が飛来する。
「っ....!」
何とか上に跳ぶ事で剣を避ける。もちろん、僕には当たらない軌道だから、剣はそのまま僕の横を通り過ぎる。
「二つだけ....!?」
そう、飛んできたのは二つの剣だけ。なら、もう一つは?
「...計算通り。」
「っ、ぐぁああっ!?」
当然、避けた先を狙う。
飛び上がった所をバインドで足止め。そして、剣で攻撃。簡易的だが、計算通りだ。
「むっ....?」
吹き飛ばされながらも、織崎から魔法を使った気配がする。
何をしたかと思ったら、またもや僕がバインドで拘束された。
「この程度...!なっ...!?」
また解析で解こうとしたら、さらにいくつものバインドで拘束される。
「(飽くまで時間稼ぎをするつもりか...!)」
まずい...非常にまずい。バインド自体は時間は少しかかるが、解けるだろう。問題はそこじゃない。少しの時間、その間に僕の魔力じゃ防げない攻撃をしてくるに違いない。だとしたら、それを喰らう前に何とかしなければ...!
「(後...少し...!)」
バインドは既に半分以上解析して解除した。だけど、間に合わない...!
「これで、終わりだ!“ブレイブバスター”!!」
紺色の光の奔流が迫ってくる。バインドは解け切っていない。回避は不可能...!
―――ならば、回避せずに正面から打ち砕けばいい。
「“カートリッジ・リボルバー”、フォイア!!」
「なっ..!?がぁあっ!?」
放たれた弾丸は、砲撃魔法を貫き、織崎に直撃した。
何をしたかといえば...タネを明かせば簡単な事だ。
まず、リヒトを持っている左手に掛けられているバインドだけを集中して解除し、リヒトが使えるようにする。そして、即座に形態を変えて“切り札”を使って砲撃魔法の術式の基点を貫いてそのまま織崎を攻撃しただけの事だ。
砲撃魔法も基点を破壊したから僕に届く前に爆発して掻き消えている。
「(カートリッジをそのまま弾薬として使う形態...さすがの威力だ...。)」
今のリヒトはライフル銃のように長い形のリボルバーの形になっている。カートリッジは弾丸の形をしており、本来は魔力を増強するためだが、この形態ならそのまま銃の弾丸として使える。
確か、名前は...カノーネフォームだったな。
砲撃魔法を風穴を開けるかのように貫通し、さらに織崎の防御力をも貫通した。
古代ベルカの技術...流石だ。
〈『本来は魔力を増強するためのものですので、それをさらに応用した形です。威力は今のように保証できますが、多用は控えてください。子供の体であるマスターには負担が大きすぎます。』〉
「『分かってる。今も痛みと痺れがでかい。』」
尤も、この戦いでは後一回しか使えないけどな。カートリッジ自体がないし。
「カートリッジ...だと...!?」
「おいおい...僕がベルカ式を使ってたのは分かっているはずなんだから、使ってもおかしくはないだろうに...。」
いや、銃の弾として扱ってる事に驚いているのか。
...しっかし、なかなかにタフだな...。
「そろそろ体の負担がきついな...。終わらせる...!」
僕がそう言うと、織崎も気を引き締めてこちらを見てくる。
「(間合いはさっきの一撃で結構離れている。...一気に決める!)」
地面が凹む勢いで踏み込み、突っ込む。
「負けて堪るか!」
織崎も砲撃魔法と射撃魔法を併用して攻撃してくる。砲撃魔法は簡単に躱せるが、射撃魔法はそう簡単にはいかない。...だけど。
―――導王流とは、人を導くための武術。
「この程度の障害...!」
―――人を導くには、矢面に立たなければならない。
魔力弾を、全て魔力を纏わせた拳で受け流すように弾く。
―――だから、導王流はその際に現れる全ての障害を...
「嘘..だろ...!?」
「どうってこと、ない!!」
―――受け流し、弾き、跳ね除ける。
あっという間に、魔力弾の雨を掻い潜り、織崎の懐に入り込む。
「フッ...!!」
「くっ...!」
掌底を一撃。衝撃を徹すように放ったが、いまいち効果がない。
だけど、その攻撃に意識を向けさせただけで十分...!
「はっ!」
「うおっ!?」
掌底をした手で脇腹を持ち、足払いで転倒させる。もちろん、ただ転倒させるだけではなく、地面に叩き付けるように。
そして、すぐさま上に跳び上がり、リヒトをカノーネフォームに変える。
「やば....!なっ!?」
僕が銃口を向けているのに気付いた織崎は、何とか弾丸を避けるために動こうとするが、仕掛けておいたバインドに引っかかり、動きが一瞬止まる。
「“チェック”、だ...フォイア!!」
カートリッジが弾として織崎に迫る。これが決まれば....。
「“無毀なる湖光”ぉっ!!」
―――ガ、ギィイイイン!!
「(弾かれた!?)」
無毀なる湖光...そうか!ステータス強化...!それで無理矢理弾いたのか...!
「これで...終わりだ!」
僕の攻撃を弾いた後、すぐに僕に向かって斬りかかってくる。
まずい...!今ので決まると思っていたから、弾かれるなんて想定していなかった...!
―――...と、織崎は思っているのだろう。
「っ...!?幻影...だと!?」
織崎の攻撃が空振りする。まぁ、僕だと思っていたものが、ただの幻影だったのだから、当然だろう。
...なら、僕はどこにいるのかって?
「織崎が後半で魔法を多く使ってくれたおかげで助かったよ...。」
「上...!?」
そう。僕はこの訓練場の天井近くに浮かんでいる。
―――左手にリヒト。右手にとある本を持って。
「僕が“チェック”と言ったため、さっきのがトドメの一撃だと勘違い...。...うん。僕の想定通りに勘違いしてくれたね。...まぁ、そうじゃなくてもそこまで変わらなかっただろうけど。」
チェスで言う“チェック”と“チェックメイト”は似ているようで違う。“チェック”は将棋でいう“王手”だ。まだ“詰み”にはなっていない。
さっきの“チェック”も同じだ。“チェックメイト”ではない。
それを織崎は“チェックメイト”と同じだと思い込み、攻撃を凌いで反撃に出て意表を突いた気分になっていたのだろう。
「くそ!...なっ!?」
「あ、言い忘れてたけど、そこには多数のバインドが...って、もうかかってるか。」
ストラグルバインド、レストリクトロック、クリスタルケージ。複数の拘束魔法で織崎を止める。結構な魔力を使ったため、大気中の魔力も枯渇して、既に一つの魔法と飛行魔法の分の魔力しかなくなっているが...これでいい。
「はずせない...!?」
「凄く複雑な術式で設置したからね。簡単に解かれちゃ困るよ。」
織崎に聞こえるようにそう言いながら、本のページを捲る。
〈マスター。“グリモワール”に記されている魔法は確かに強力です。ですが、制御が困難な事を、忘れないでください。〉
「分かってる。飛行魔法はリヒトが制御してて、僕は“この魔法”の制御に集中するから。」
〈分かりました。〉
この本...グリモワールは、リヒトに収納されていたベルカ戦乱期にあった魔法のほぼ全ての術式が記載されている本らしい。空想の魔導書みたいなものかな?デバイスじゃなくて。
「じゃ、行くよ。」
手を掲げ、そこへ紅色の槍の形になるように魔力が集束する。
...そう。今から放つ魔法は、絶対必中の逸話を持つグングニル...それを模倣した魔法。
どこかの世界ではとある吸血鬼が使用する技の一つでもある。
「“スピア・ザ・グングニル”...!!」
大きな槍となったそれを、織崎に向けて放つ。
飛行魔法の分以外の全ての魔力を凝縮・集束させた魔法だ。織崎の防御など、容易く貫く!
「...その本は、一体...?」
「リヒトの中に入ってただけの魔法が載ってる術式ですよ。それ以外はただの本と同じです。辛うじてマジックアイテムに分類されるんじゃないですかね?」
模擬戦が終わった後、クロノさんに質問される。
...え?結果?勝ったよ。普通に最後の一撃が命中して終わり。ただそれだけ。
「...確かに、載っているのは魔法の術式だけで、本自体には固定化の魔法以外はなにもかかってないな...。」
固定化の魔法とは、劣化や風化を防止するための魔法の事だな。
「...しかし、この本の存在が上層部にばれたら、卒倒するぞ...多分。」
「とんでもない魔法ばかり載ってますからね。」
「まぁ、それの所有者は君...と言うより、君のデバイスになるのか?」
「そうですね。」
僕は借りただけにすぎない。
〈私はマスターの所有物なので、グリモワールもマスターの物ですよ?〉
「...そうなるのか?」
「...まぁ、ロストロギアではないから、君が持っていてくれ。」
クロノさんがそう言うのなら持っておくか。
「しかし...君は魔力ランク詐欺もいい所だな。Bランクでどうやってあそこまであんな大魔法が放てるんだ...。」
「大気中に散らばった魔力を全て再利用していますからね。後は、織崎の魔法の魔力をそのまま吸収したり...。」
「...一度、君の魔導師としての全てを詳しく検査したいよ...。」
いや...なんか頭を悩まさせてすいません...。
「それとあのカートリッジの使い方はなんなんだ?」
「リヒト曰く、ベルカ戦乱時代には一部で使われていた技術だそうです。」
使い方はそのまんまカートリッジを弾丸として使うだけだし。
「古代ベルカ...か。」
「文献か何かに書いてあるかもしれませんよ?この技術は、魔力が少ない者が攻撃力を補うために武器に工夫を加えた事でできた事ですから。」
「魔法で手を加えた訳じゃないのか?」
「一応は...ですけどね。」
銃の構造上、何かしらの術式が必要らしいけど。
「...戦力の増強などにも使えるかもしれないな...。後でユーノに調べてもらうか。」
ぶつぶつと何かを呟くクロノさん。...まぁ、僕には関係ないだろう。
「...他は特にないな。君が僕以上に魔力の使い方が巧いのも分かったし。」
「魔力不足は扱い方で補えってね。以前は操作技術を上げる事しかできませんでしたから。」
そう言って、一度模擬戦に関する話は終わらせる。
「お兄ちゃんさっすがー!」
「神夜君に勝つって...私でも難しいのに...。」
緋雪と司さんが褒めてくれる。
「...あっちは貴方が勝った事が信じられてないみたいだけどね。」
「あー....。」
かやのひめさんの言葉に織崎の方を見ると、原作組+α達が揃って僕を驚愕の目で見ていた。
「神咲さんに至っては、緋雪の戦いの時から放心気味だけど。」
「通りでずっと喋ってなかったのか!?」
クロノさんの言葉に神咲さんを見てみると、本当に放心状態だった。...辛うじて状況を認識してるみたいだけど。...久遠はよくわからないな。子狐状態だし。
「...次は私の番ね。」
かやのひめさんが戦いの準備を始める。...相手は誰だろうか?
「...って、ちょっと待って。まだ弓を創ってないよ。」
「そうだったわ...。危うく、この弓で行く所だったわ...。」
...まだ、かやのひめさんの戦いは少し後になりそうだ...。
後書き
司のシュラインは所謂とらハのリリカルおもちゃ箱でのレイハさんです(つまりチート)。強くイメージした通りの魔法が使えるため、相手からすればなかなかに厄介です。
Aランク以上の攻撃と一定以上の威力の攻撃の違いが少しわかりづらいですが、分かりやすく言えば、Fate設定ならどんなに強い貫通力を持っててもBランクなら無効化されるが、この作品では貫通力さえあれば効くという事です。(つまりランサーのゲイ・ボルクが効く。)
優輝の魔法や緋雪の魔法は、ベルカ式と言う事で、大体がドイツ語訳での適当な言葉を並べています。(一応、効果と合う言葉を選んでいるつもりです。)
本文の文字数、10000文字超えてる...だと...!?((((;゚Д゚))))
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