ソードアート・オンライン~隻腕の大剣使い~
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第8話思い出の丘へ
「なんであんなこと言うのかな?」
宿の前でロザリアと別れてから数分後、宿の食堂でシリカがそう言った。
「君はMMOは《ソードアート・オンライン》が初めて?」
「はい」
やっぱりそうだったか。初めてのMMOがこんなデスゲームだとそりゃあ混乱するし不利だわな。年齢制限もあるし。
「どんなオンラインゲームでも、人格が変わるプレイヤーは多い。中には進んで悪人を演じる奴もいる。オレたちのカーソルは緑色だろ?だが、犯罪を行うとカーソルはオレンジに変化する。その中でもプレイヤーキル・・・いわゆる、殺人を犯した者はレッドプレイヤーと呼ばれる」
「!?人殺しなんて・・・!」
そりゃあ驚くよな、ゲームオーバー=現実で死ぬこのデスゲームで自分から殺しをやっている連中がいるんだから。
「従来のゲームなら、悪を気取って楽しむこともできた。でも、《ソードアート・オンライン》は訳が違う」
「!」
「このゲームは遊びじゃないんだ・・・!」
無意識に拳に力が入る。あの日を思い出したからだ。生きて帰すことが出来なかった友達とのーーー死別を。
「・・・ライリュウさん」
「!・・・ゴメン」
シリカに変な心配させちゃったな。オレが暗い顔してどうする。
「・・・ライリュウさんは良い人です!あたしを助けてくれたもん!」
「!」
シリカはオレを励まそうと思ったのか、身を乗り出してオレの手を握った。良い人ってーーーそう見えるのか?自分じゃよく解らない。でも、なんか嬉しいな。
「・・・オレが慰められちゃったな。ありがとう、シリカ」
オレは素直にお礼を言った。でもそのシリカは自分が何をしているのか気づいたように顔が真っ赤に染まった。
「あぁぁぁぁ!あれー?チーズケーキ遅いなー!すみませーん!デザートまだなんですけどー?」
いつまで経ってもこないチーズケーキを最速しだした。照れ隠しなのがすごい解る。やっぱり年端もいかない少女なんだなーーー
シリカside
「・・・はぁぁ」
二時間ぐらい前にあたしの親友、フェザーリドラのピナがあたしを庇って死んだ。その時はもう終わったと思った。でも、今あたしは生きている。ライリュウさん、彼が助けてくれたから。彼はピナの心が残っていれば蘇生が出来ると言った。ーーーピナが生き返る。それを聞いた時、希望が見えた。でも使い魔蘇生用アイテム《プネウマの花》があるのは第47層、あたしのレベルじゃあとレベル10は足りない。しかも蘇生が可能なのは死んでから3日以内。どんなにレベル上げを頑張っても間に合わなくなる。彼は明日、あたしをプネウマの花のところまで連れてってくれると言った。でもあたしはつい彼を疑ってしまった。他の男性にストーカーのようにまとわりつかれたり、たまにシステム上の結婚の申し出までされていく内にあたしは男性に恐怖心を抱くようになった。一瞬彼もそうなのかと思ってしまったけど、彼もこの世界で友達を失っていた。それを話してくれた彼の顔は嘘をついていない、そう思えた。それにあたしが妹さんに似ているなんて言われて、笑うなと言われたのについ笑ってしまった。彼は悪い人じゃない。そう確信した。
今は宿屋のあたしの部屋のベッドで服を脱ぎ下着になって寝転がった。
ーーーもうちょっとお話ししたいなんて言ったら、笑われちゃうかな?
そう考えていたら、あたしの部屋のドアをノックする音がした。誰だろう?
「シリカ。まだ起きてる?」
「え!?ライリュウさん!?」
ドアの向こうにいるのは命の恩人、ライリュウさんだった。どうしたんだろう?こんな時間にーーー
「47層の説明忘れてたんだけど・・・明日にする?」
「大丈夫です!あたしも聞きたいと思ってたところで・・・」
ドアノブに手を掛けようとした時に自分が下着だけだったことを思い出した。このままじゃ恥ずかしくてドアを開けられない/////////
「あの!ちょっと着替えてもいいですか?」
「?わかった・・・」
とりあえずこう言っておけば着替えられる!少し待たせちゃうけど下着のまま出るよりはまだ良い。最もシステムウィンドウで装備変更すればすぐに着替えられる訳なんだけどーーー
ライリュウside
47層の説明をシリカにするのを忘れてたことに気付いてシリカの部屋の前に来たのだがーーー着替えると言うのでドアの前でこのまま待つことになった。さっきまでフィールドで着ていた装備だから部屋着にでも着替えるのだろう。まあ装備変更すればあとはシステムが勝手にやってくれる訳だしそこまで待つことはないだろう。
「お待たせしました!どうぞ!」
「あぁ、お邪魔しまーす」
どうやらもう着替え終わったようだ。シリカはベッドの上に座って何故か顔を赤くしている。宿とはいえ男が自分の部屋に入る訳だから当然といえば当然か?
とりあえず視界に映った丸いテーブルを部屋の真ん中に運ぶ。そしてそのテーブルの上に丸い小箱型のアイテムを置いてーーーよし、準備完了っと。
「じゃあ始めるぞ?」
「は、はい!お願いします!」
それじゃあーーー説明開始。
「ライリュウさん、そのアイテムは?」
「ミラージュスフィアっていうんだ。これを使えば今までマッピングしたフィールドを確認出来るんだ」
シリカがオレの出したアイテム、ミラージュスフィアを見て質問をしてきたので、オレはミラージュスフィアの蓋の紫色のボタンを押してそう返した。
すると蓋が浮かび一筋の光が伸び、その光が丸い球体状になった。
「わぁ、キレ~!」
やっぱり女の子はキラキラした物が好きなのか、ミラージュスフィアの光にシリカは見とれていた。
とりあえず光の地図を操作してーーー
「ここが47層の主街区、オレのログハウスがあるのがここだ。こっちが思い出の丘。で、この道を通るんだけど・・・ん?」
ここまで話しておかしな気配を感じた。オレの索敵スキルが間違っていなければーーー
「ライリュウs「シッ!」?」
シリカがオレの名前を呼ぼうとしたところを止めさせる。オレは足音をたてないように急いでドアに近づきーーー開いた。
「誰だ!?」
オレがドアを開けた時にはーーー誰もいなかった。逃げ足の速い奴め。
「なん・・・ですか?」
「聞かれてたな・・・盗み聞きとは良い趣味してんじゃねぇか」
「でも、ノックなしだとドア越しの声は・・・」
確かにノックなしだと普通はドア越しの声は聞こえない。ーーー普通はな。
「聞き耳スキルが高い場合はさほど問題なく聞こえるよ。そんなの上げてる奴、そうそういないけど」
「なんで立ち聞きなんか?」
ーーーちゃんと言わなきゃダメか。
「シリカ、今からオレの言うことを理解してくれ。もしかしたら、命に関わるかもしれない」
「え?どういうことですか?」
今度はこっちの説明をしなくちゃな。
******
「・・・わかりました。あたしもピナの蘇生を手伝っていただいてますから、あたしもお手伝いします!」
「ありがとう・・・必ず守るから」
******
翌日、2024年2月24日・第47層、フローリア
転移門の光が消えて目を開くと、そこに見えたのはーーー
「わぁ!夢の国みたい!」
目の前に広がる花畑。隣のシリカが声をあげるには充分だった。
「この層はフラワーガーデンと呼ばれていて、フロア全体が花畑なんだ」
オレがこの層の説明をしているとシリカがすぐそこの青い花を見に行った。確かにこんなに綺麗な花畑があればはしゃぐのは無理ないな。ミラもこんな感じだったし。
「ん?」
シリカの視線が花壇の花からここにいるプレイヤーたちの方を向いた。その瞬間シリカの顔が真っ赤に染まった。ーーーあぁ、そういうことか。
「この層、あんまり花が綺麗なもんだからカップルたちのデートスポットになっちまったんだよな」
「そう・・・みたいですね//////」
シリカも同意見のようだな。とにかく出発ーーーの前に、
「シリカ、出発する前に家に寄ってもいいか?妹に頼みたいことがあって・・・」
「?はい、わかりました」
******
「ただいま。帰ったぞ」
「お帰りなさい。・・・ん?お兄ちゃん、その子は?」
「えっと、突然お邪魔してすみません。あたしシリカっていいます。昨日の夜、ライリュウさんに命を助けていただきました」
「え?お兄ちゃんが?」
帰ってきてミラが顔を出した時、オレの隣にいるシリカに視線が移った。シリカは自己紹介をしてオレが命を助けたと言うとミラはオレを見て少し驚いていた。その時のことを説明したら納得してくれた。
「そっか・・・友達の使い魔を蘇生させるためにここに。でもお兄ちゃん。それは少し危険じゃない?いくら同意してくれたとしても・・・」
「それはわかってる。先に奴らを投獄した方がいいのは確かだ。でもピナの蘇生は時間が限られてる。彼にはちょっと悪いけど、オレは可能性を捨てたくない」
元々のオレの目的はまだチャンスはたくさんある。でもピナは3日過ぎればもう間に合わなくなる。だったらーーー少し抵抗あるけど、花を手に入れて決着を着ける。
「はぁ、やめる気はないんでしょ?だったらちゃんとシリカちゃんを守ってあげて。それで?あたしに顔を出したのは何か頼みがあったんでしょ?」
「さすが、話が早くて助かる。・・・これを持ってあとで合流してくれ。頼むぞ」
オレの考えていることはお見通しみたいだ。オレはある物をミラに預け、シリカと共に思い出の丘に向けて足を進めた。
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