大蛇
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6部分:第六章
第六章
「本当にね」
「しかし今は大丈夫じゃ」
博士は半ば水平線になっている行く先の河を見ながら述べた。
「前には何もないぞ」
「流木とか蛇もですか」
「その蛇もおらん」
それもだというのである。これはいささか残念そうである。
「残念なことにのう」
「肝心のそれはいないですか」
「イルカか、あれは」
ふと右手に河の中に何かピンク色のものは見えていた。
「どうやら」
「カワイルカですね」
そのイルカが何かはパンチョも知っていた。アマゾンカワイルカである。アマゾンにはそうしたカワイルカもいるのである。まさに海の如くである。
「それはいるんですね」
「おるぞ。あちらの岸には」
望遠鏡も出して周りを見ている。左手の岸に見えたものは。
「鰐が呑気に寝ておるわ」
「あっちには鰐ですか」
「うむ、偉そうに寝ておる」
ジャングルの側に岸辺に群れで陸にあがって寝ている鰐達を見ての言葉だ。朝の淡い日差しの中で今は平和に寝ているのである。
「それだけじゃよ」
「猿や鳥の声を聞いてものどかではありますね」
「そうじゃな。さて、さらに先を進むぞ」
「ええ、それじゃあ」
後ろにいるドウモトの弟が応えてきた。彼もまた上に出ていたのである。
「速度あげますね」
「うむ」
こうしてさらに先に進む一行だった。そして昼前にだった。
四人全員で外に出ていた。そのうえで辺りを見回していた。ここでドウモトが博士とパンチョに対して言ってきたのであった。
「この辺りはですね」
「そのアナコンダが出るのじゃな」
「いえ、それよりもまずいのが出るんですよ」
こう話すのだった。
「河賊がね。出て来るんですよ」
「その連中がか」
「この辺りで」
「やばい奴等でしてね」
言う中でその手にライフルを持ってきている。弟も同じである。
「何人も殺してますし」
「人殺しまでするんですか」
「はい」
まさにその通りだとパンチョに答えたのはドウモト弟だった。兄より少し若い顔つきだがその顔は実に兄によく似ているものである。
「取るものは全部取って人は皆殺しです」
「最悪じゃな」
博士はそれを聞いて顔を顰めさせずにはいられなかった。
「それはまた」
「ですから注意して下さいよ」
ドウモトの言葉も警戒していた。
「何時出て来るかわかりませんからね」
「ふむ、賊退治となるとさらにじゃな」
「冒険に相応しいっていうんですね」
「左様」
まさにその通りだとパンチョに答える博士であった。
「このドン=キホーテの冒険にじゃ」
「まあ武勲にはなりますね」
そこが実際のドン=キホーテとは違うと言いはするパンチョではあった。
「そこのところは」
「そうじゃな。さて」
博士もまた銃をその手に持っていた。そのうえで言う。
「槍ではなく銃じゃが」
「やりますか」
「うむ」
こう言い合ってだった。その緊張の中で周囲を見回しているとだた。パンチョが気付いたのである。
「あれっ、あそこに」
「どうしました?」
「いえ、あそこにですよ」
こうドウモト弟に応える。見れば右手にだった。
「何か大きなのが浮かんでません?」
「むっ、そうじゃな」
博士もそれに気付いた。
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