大蛇
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2部分:第二章
第二章
「それはもう」
「ではよいのう」
博士はここで結論を出してみせた。
「行くぞ。アマゾンにじゃ」
「行くんですか」
「だから何で嫌そうな顔になったのじゃ」
先程のことを問うたのだった。
「何でじゃ、また」
「ですから。アマゾンですよ」
パンチャはまた嫌そうな顔になって博士に話した。
「ピラニアはいるしジャガーはいるし鰐はいるしサンゴヘビはいるし」
「色々おるのう」
「殆ど地獄ですよ」
今度はたまりかねた顔になっての言葉だった。
「もう。まさに魔界じゃないですか」
「安心せい、密林の奥深くに入るのには慣れておる」
しかし博士はこうパンチャに返すのだった。平然とした顔で。
「もう十回や二十回では利かん位にじゃ」
「学生時代から行かれてるんですよね」
「そうじゃ。何も恐れることはない」
博士のその言葉は続く。
「あそこにいる動物は全部わかっておる」
「それで大丈夫なんですか」
「君も数え切れぬ程行っておるではないか」
「それはそうですけれどね」
パンチャもそれは否定しなかった。実際彼も学生時代からアマゾンには足繁く通っているのである。アマゾンには慣れてはいるのだ。
「ですけれど」
「何が嫌なのじゃ?」
「あの、今度ですね」
彼は自分のことを話してきた。
「うちの子がサッカーの試合に出るんですよ」
「それへの応援にでも行くつもりかのう」
「デビュー戦なんですよ」
そうだというのである。
「ようやく。それに出なくてどうするんですか」
「そういえば君の息子さんは高校生じゃったな」
「はい」
にこにこと話すパンチャだった。実に上機嫌な顔で。
「もうね。今から楽しみで」
「それではじゃ」
それを聞いた博士は。こう彼に告げた。
「試合を終えた息子さんに君の手柄話を土産にするのじゃ」
「あの、何でそうなるんですか?」
今の博士の言葉に思わず突っ込み返してしまった。
「何でそうなるんですか?行けってことですか」
「そうじゃ」
まさにそうだというのだった。
「よいな。それで」
「はいって言うと思ってるんですか?」
「ボーナスが出るぞ」
右手のフォークでパンチャを指差しての言葉だった。
「ちゃんとな」
「ボーナスですか」
「そうじゃ」
それだと言うのである。
「論文を書いたらじゃ。大学から出るぞ」
「本当ですか?それ」
ボーナスと聞いて目を光らせたパンチャであった。まるで宝物を見つけた少年の様である。
「ボーナスって」
「うむ。わしからそう話しておく」
そうだという博士であった。
「これでどうじゃ?」
「わかりました」
今度はすぐに返答した彼であった。
「行きましょう」
「そう言うと思っておったぞ」
満足気に言う博士であった。ステーキを食べる顔がさらに明るくなっていく。
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