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剣術

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第五章

「それで剣をお使いになられますか」
「貴殿がそう思うのも当然」
 これがベールの返事だった。
「それを不思議に思うこともな」
「失礼とは存じますが」
「失礼ではない、当然のことだ」
 彼がそう思うことはというのだ。
「余の姿を見ればな」
「そう言って頂けるでござるか」
「だから気にすることはない」
 これはいいというのだ。
「一行にな、ではだ」
「はい、これよりですか」
「この場でいいか」
 この主の間でというのだ。
「余の剣術を見せようか」
「ベール殿がよい場所で」
「ではここでいいな」
 ベールは木久蔵の言葉を聞いてあらためて頷いた、そして。
 すぐにだ、その姿をだった。
 変えた、その蜘蛛と三つの頭を持つ姿からだった。
 すぐに整った西洋の貴族、人間の世界で言うロココ時代の黒を基調とし様々な色の宝石で細部を飾った服を着た老人の男の姿になった。その手には細い剣がある。
 その剣を見てだ、木久蔵は言った。
「フェンシングで使う」
「エペという」
 ベールはその剣の名前を言った。
「この剣はな」
「そうでござるか」
「他にも剣はあるが」
「ベール殿の得意とされる剣はか」
「この剣だ」
 まさにというのだ。
「これを使うことが最も得意だ」
「そしてその剣を使い」
「貴殿に余の剣術を見せよう」
「そうして頂けるでござるか」
「これよりな」
 こう言ってだ、実際にだった。
 ベールはその剣術を木久蔵に見せた。それは地獄の剣豪である彼を以てしてもはじめて見るまでに見事なものだった。 
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