魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第1章:平穏にさよなら
第16話「大苦戦」
前書き
明けましておめでとうございます。新年初の更新です。
盗賊グループの名前が思いつかない...。テキトーでいいですかね?
=優輝side=
〈マスターの魔力ではおそらくどう足掻いても多勢に無勢です。〉
「『分かってる!そのための魔法があるんだろ?』」
リヒトの忠告を受けながら、僕は奴らの下へと跳ぶ。
「バカめ!正面から突っ込んでくるとはな!」
そう言いながら、奴らの一人が魔力弾を撃ってくる。
「っ、邪魔!」
剣型になっているリヒトで、魔力弾を斬り伏せる。リヒトはアームドデバイスで頑丈だから、魔力を込めなくとも魔力弾を斬れる。
「(創造開始。)」
―――構成術式、解明。
―――魔力波長、解明。
―――波長・術式、変換。
―――魔力吸収、完了。
「リヒト!」
〈身体強化ですね。〉
斬った魔力弾の魔力を吸収し、それをそのまま身体強化に回す。
「ぜぁっ!」
「ふん。」
ギィイン!
足元に魔力を固め、それを足場に思いっきりリヒトを振るも、防御魔法に防がれる。
「創造開始!」
しかし、その防御魔法の術式を解析し、切り裂く。当然、防御魔法の魔力も吸収しておく。
「なっ!?」
「堕ちろっ!」
油断して隙を晒したところを容赦なく叩き落すようにリヒトをぶつける。
「まず、一人!」
そのままもう一人に斬りかかる。
「くっ、舐めやがって!」
ようやく僕をちゃんとした敵と認識したのか、周りの奴らも魔力弾を撃ってくる。
さすがに数が多いのでリヒトで斬り伏せる事はできない。
「なら....!」
薄く魔力を放出し、魔力弾の術式を解析する。
「そらっ!」
魔力弾の軌道を読んで、当たりそうな魔力弾のみ術式を弄って逸らす。
「『リヒト、大気中に散らばった魔力でいくつ魔力弾が生成できる?』」
〈一つがギリギリです。それ以上は威力がなくなります。〉
「十分!」
砂をかき集めるようなイメージで大気中の魔力で魔力弾を作る。
「ハッ、魔力弾一つで何ができる!」
「こうするん...だよ!」
奴らの一人に斬りかかる。防御魔法に防がれるが...。
ギギィイン!
「ぬぅっ!?」
「変則型二刀流、味わえ!」
魔力弾を剣の形に変え、それを操りながら二刀流で攻める。
「....ふん。どうってことないな。」
「っ...!くっ...!」
正面と真後ろからの同時攻撃を仕掛けたりするが、やはり手練れらしく、あっさり対処される。攻撃力に欠けるか...!
「ほらよ!」
「くっ....!っ、がぁっ!?」
魔力弾を躱そうと、体を動かした瞬間、下から飛んできた砲撃魔法に掠り、ダメージを受けてしまう。
「あの程度で仕留めれたとでも思ったか?」
「ぐっ...はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
まずいな...。僕は防護服があまり頑丈じゃないから、掠っただけで相当ダメージを喰らってる...。奴らは、一人も倒せていないし...。
「(だけど、辺りに魔力が溜まっている...。これなら!)」
思考中に迫ってきていた魔力弾を蹴り、その反動で地面に向かって跳ぶ。
「(波長、解析。同調、把握。)...大気魔力、固定!!」
「ぐぅぅっ....!?」
空間が固定されたかのように、奴らの動きが止まる。
「っ.....!」
ただし、大気中の魔力を固定するという荒業だ。リヒトを介してさえ、膨大な情報量が頭を巡り、脳が焼き切れるような痛みが走る。大気中の魔力を集めるならまだしも、完全に固定するのは骨が折れる...!
「っ...緋雪...攻撃、してくれ...!」
「わ、分かった!」
他の三人を防御魔法で護っていた緋雪が、魔力弾を大量に放つスターボウブレイクで攻撃をする。これなら...!
〈ダメです!魔力を固定していたので、大した威力が...!〉
「しまっ...!?」
そうだった...!大気中の魔力を固定しているという事は、固定している場所そのものが防御魔法に近い存在になる。それじゃあ、あまりダメージが...!
「よくもやりやがったなぁあああ!!」
「くっ....!」
一人が緋雪の魔法で発生した煙幕から飛び出してくる。とにかく迎え撃とうと、僕が剣を構えなおした瞬間....
バチィイッ!!
「がぁっ!!?」
「....えっ?」
いきなり閃光が走り、襲い掛かってきた男が倒れる。
「あ、あんた、そんな事もできるのね...。」
「くぅ....これくらいなら。でも、お腹空く....。」
ふと後ろを見れば、見覚えのない巫女服姿の少女が、掌から電気を迸らせた状態で立っており、それをかやのひめさんが驚いた表情で見つめていた。
「(...よく見れば、狐の耳と尻尾?...まさか、久遠か?)」
見れば子狐の姿がない。...まぁ、強いのなら逆に助かるからいいんだが。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんだけじゃ、さすがに勝てないよ...。」
「...分かってる。だけど....。」
悔しそうにしているかやのひめさん。ボロボロで、既に生きているのかも分からない薔薇姫さん。...会って一日どころか数時間も経っていないけど、酷い目に遭っている二人を僕は見過ごせないし、奴らは許せない。
...偽善者だと言われるような行為だろう。魔力どころか多勢に無勢だ。こんなのは勇敢や蛮勇を通り越して愚かの一言でしかない。
「...でも、目の前で今まさに困っている人を放っておける程、腐った性根は持ってないんだよ...!」
「お兄ちゃん....。」
変にトリッキーな動きをしても圧倒的物量で正面から叩き潰されるだけだ。なら、応用を利かせる程度で、錯乱しながら一点突破、一撃でなくても必殺で行く!!
〈...今回は付き合ってあげます。ただ、無茶はしないでください。〉
「承知の上だ!」
地面を蹴り、一気に空中の奴らの間合いを詰める。
「(生半可に攻めても無駄。だったら、僕だけの技術じゃない。恭也さんや、導王流を...!)」
足元に魔力を固め、それを足場に跳び回る。
「(恭也さんの使っている御神流の技の一つ、あの衝撃がそのまま腕に響いた技。あれはおそらく、衝撃を徹す技なのだろう。なら、僕でも再現自体は...可能!)」
後はそれを魔法に応用するだけ。錯乱するように跳び回り、一人に狙いを付けて...斬る!
「ぐぅ...!?」
「(まだだ!今のは、できていない!)」
杖型のデバイスに防がれたのを認識した瞬間、その場から飛び退き、またもや跳び回る。常に動き、相手に動きを読まれないように絶えず変化させ続けないとな。
「もう...一度ぉっ!!」
今度は正面から突っ込み、防御魔法を張らせた上で斬りかかる。
ガィイイイン!!
「ガァッ....!?」
「(手応えアリ!成功だ...!)」
魔力の衝撃がそのまま防御魔法をすり抜け、相手の腕にダメージを与えたのを確認し、思わず口端が吊りあがる。
「っらぁっ!!」
「ガフッ!?」
ダメージと動揺で隙ができた相手の胸を肘鉄で思いっきりどつく。魔力もしっかりと込めてあるので、ダメージもでかいはずだ。
「っせあっ!」
「ぐっ...!?」
そのままもう片方の手で肩を掴み、倒立するようにして後ろに回り込みながら後頭部に膝蹴りをかます。それでようやく一人を倒す事ができた。
「次...!」
格下の相手に一人とはいえ簡単にやられた事に、ようやく奴らに明確な隙ができる。
「スカーレットアロー!!」
「ぐぁあっ!?」
次の相手に向かおうとした瞬間、下から赤い魔力の矢が飛んできて一人を撃墜する。
「『お兄ちゃん!援護なら任せて!』」
「『緋雪か!?分かった。そっちも狙われるから気を付けて!』」
緋雪の今の魔法なら、防御の上からでも奴らを牽制or撃墜する事はできるからな。
...懸念するのは、かやのひめさんの護りが薄くなる事だが。
「『早速、スターボウブレイクで撹乱してくれ。』」
「『わかったよ。』スターボウブレイク!」
色とりどりの大量の魔力弾が、下から飛んでくる。それを奴らは防ぐか避けるかして凌ぎだす。
「だけどそれは、隙だらけだ!」
魔法の特訓で散々緋雪のスターボウブレイクを見た僕は、すいすいと弾幕の中を跳んでいく。偶に当たりそうになる魔力弾は、事前に察知して逆に僕の魔力へと変換する。
「はぁっ!」
「くそ...うっとうしい!」
避けまわっていた一人に斬りかかり、動きを止めさせる。
「(攻撃自体は防御魔法で受け止めたけど...それは悪手だ!)」
あっという間に防御魔法の波長などを解析し、切り裂く。
「しまっ...!?」
「堕ちろ...!」
緋雪の弾幕に身を晒し、僕の斬撃で無防備になったその体に直接魔力の衝撃を撃ちこむ。
「かはっ....!?」
地味に今までの僕の攻撃の中で一番の威力を発揮したらしく、一撃で倒す。
「つg<ドォオオン!>っ、なんだ!?」
次の相手に移ろうとした瞬間、下から爆音が聞こえてきて動きを止めてしまう。
...見れば、スターボウブレイクの魔力弾が消えている。
「緋雪っ!?」
「隙だらけだ!」
「くっ....!」
おそらく緋雪に向けて魔法が放たれたのだと思い、動揺する。その隙に剣型のデバイスを持った奴に阻まれ、身動きが取れなくなる。
「邪魔を...するな!」
「ぐっ...!?」
恭也さんの剣捌きを見た後であれば、今の相手の剣筋など簡単に見切る事ができる。
あっさりと剣を受け流し、針状にまで鋭く高密度に固めた魔力弾を刺す。
「術式破壊!」
「なっ....!?」
針状にまで鋭くした事でバリアジャケットを貫いたその魔力弾は、魔法術式を破壊するための術式を上手く組み込んである。それが機能すれば、相手の魔法は一時的に全て破却される。
...つまり、バリアジャケットや飛行魔法でさえ消したという事だ。
「緋雪ぃいいい!!」
相手が驚愕している隙に、未だに砂煙が立ち込めている場所へ、僕は跳ぶ。
「っ....!?」
「っぁ...お兄、ちゃん....。」
しかし、時すでに遅く、リーダー格の男...他の奴らよりもガタイの良い男が、緋雪の頭を鷲掴みにした状態...つまり、人質にとっていた。
「....雑魚の割には随分とやってくれたなぁ?」
「くそ...お前...!」
「おっと、動くなよ?動けばこいつの頭は....。」
“グシャッ”と、もう片方の手で表す男は下劣な笑みを浮かべてそう言う。
他の奴らも、余裕綽々なのか、僕らを嘲笑っている。
「ひ、卑怯よ!」
「あん?卑怯だぁ?ハッ、手前で巻き込んでおいてよくそれが言えるなぁ、おい?」
「ぐっ....!」
かやのひめさんに対してバカにするようにそう言う。
「...戦いの場で、卑怯とかは言うつもりはないけど...。」
「ないけど、なんだ?」
ニヤニヤしながら僕を見てくる男。...うざいな。だけど今は我慢だ。
「人の妹に何してくれてんだ。この野郎。」
「ほう?てめぇの妹ちゃんか。...で、どうするんだ?」
未だにイラつくような笑みを張り付けてそう言ってくる。
....ああもう、なんていうかさ....。
「―――とりあえず、僕の妹舐めんな。」
「あん?」
「っ...うざったい!」
「ぐぅっ....!?」
頭を掴まれ、ぶら下がっていた緋雪が、いきなり掴んでいる腕を逆に掴み、体を振り子のように振って蹴りを男に叩き込む。
「なんだ...!?この馬鹿力は...!?」
「ああもう!髪の毛がぐしゃぐしゃだよ!直すの大変なのに!」
防御魔法の上からでも届いた威力に、戦慄する男と、髪がボサボサになって嘆く緋雪。
「緋雪の力を侮ったね。大方、小さい少女だと思って油断してたんだろ?」
「くっ....。」
緋雪を人質にするのなら、魔力で身体強化しておくべきだったからな。
「ちっ...管理外世界にこんなのがいるなんて聞いてねぇな...。だが。」
「きゃっ!?」
いきなり後ろから声が聞こえる。
「かやのひめさん!?」
「おっと、よそ見してていいのか?」
「っ....!」
つい後ろを向こうとして隙を晒してしまう。それを突いて男が斧型のデバイスで攻撃してきたのを、ギリギリ受け流して凌ぐ。
「うちには優秀な暗殺係がいてなぁ...。短距離転移なら防御魔法の中にも可能なんだよ!」
「くっ....。そう、言う事か...!」
攻撃をしながら男はそう言ってくる。その言葉に納得した僕は、かやのひめさんがやばいのだと心の中で大いに焦る。
「くぅっ!」
「ダメっ、久遠!」
「っ....!」
久遠がかやのひめさんを助けるために動こうとするも、神咲さんが人質に取られる。
「(まずい...!まずいまずいまずいまずい!!)」
一気に状況が悪化していく事に、僕はさらに焦る。
「そらっ!」
「しまっ...!ぐぅ...!」
さらに、受け流すのに少し失敗して、久遠のいる所まで後退する。
「終わりだ!」
「させないっ!」
体勢を崩し、隙だらけな僕を男はトドメを刺そうと斧を振う。だけど、それをなんとか緋雪が杖で防ぐ事で凌ぐ。
「(落ち着け!考えろ!状況は神咲さんが人質。かやのひめさんは戦力外レベルまで弱っている。薔薇姫さんは生死不明。久遠は神咲さんが人質に取られて実質戦闘不能。僕はそんな久遠のいる所まで追い詰められている。唯一奴らと対等に渡り合える緋雪も経験不足で多勢に無勢だ...!)」
一通り状況を確認し、一言に纏めると...。
「(絶体絶命の大ピンチ....!)」
第一に神咲さんが人質に取られている時点で僕らに勝ち目はない。どうすれば...!
「(“創造”の魔法でどうにか...できるのか?)」
辺りの地形と奴らの配置と知っているだけの特徴を照らし合わせ、打開策を練る。
「(いや、やるしかない。相手は生死構わずに襲ってきてるんだ。できるかできないかなんて気にしてられない!)」
悠長な事は考えてられない。最速で、最善で、脳を焼き切ってでもこの場を打開できる策を考えつけ!
「(制限時間は高く見積もって緋雪が戦闘不能になるまで。それまでに策を...!)」
辺りの状況と僕のできる事を照らし合わせる。
「(最優先で助けるべきなのは神咲さん。人質がいなくなれば一瞬でも時間に猶予ができる。次に優先なのはかやのひめさん。狙われているうえに戦闘ができない。今だってギリギリ逃げているみたいだし、早く助けないと...。)」
久遠と緋雪は最悪自分で何とかできると踏み、次にどうするか模索する。
「(この状況を打開できるとしたら、“創造”の魔法か未だよくわからない導王流...。)」
この際、魔力は切れてもいいと仮定してできる限りの事はする...!
「きゃあっ!?」
「っ、緋雪!」
ついに緋雪が一度こちら側に吹き飛ばされてくる。
...故意にこちらに飛ばしてきたという事は....。
「...ちっ、優位な立場だからって遊んでやがるな...?」
「おー、よくわかったなぁ?」
相変わらずこちら側をバカにしてくるな...。
「(...牽制に十本。神咲さんとかやのひめさんを助けるのにそれぞれ三本は必要...か。)」
目の前の男から意識を逸らさずに、この後どうするかを決める。
「(悟られたら全て台無しだ。最速...一瞬で投影をする!)」
僕の“創造”は所謂fateの士郎の投影魔術に酷似している。しかも、士郎のよりも投影できる種類は多いし、燃費も多分いい。だから、それを上手く利用して...!
「(創造開始....!)」
地上に降りている奴らにギリギリ当たらない角度に、神咲さんを人質に取っている奴の正面と死角に一つと二つ、かやのひめさんを助けるのに三本、一遍に剣を瞬時に投影する。
「っ!?なにっ?!」
「(今の内に神咲さんとかやのひめさんを...!)」
予想通り少しばかりの隙ができた。この隙に必ず神咲さんとかやのひめさんを助け出すために意識を集中させ、思考速度を極限まで加速させる。
―――刹那、景色から色が消えた。
「(っぅぅぅ....!?)」
頭が軋むように痛む。しかしその代わりにいつもより速く、そして早く動けるため、痛みを堪えて動く。
「(まず...神咲さん...!)」
周りも僕自身もスローで動く中、距離的に近かった神咲さんを助け出すため、魔力で身体を強化して人質に取っていた奴を無理矢理吹き飛ばす。
「(次...!っ、ぐ、ぁあ...っ!?)」
かやのひめさんを助け出そうとそのまま動こうとすると、思考を加速させたまま身体強化をした代償か、意識が薄れるほどの頭痛に見舞われる。
「(しまっ...!動きが...!)」
モノクロでスローな世界が元に戻る。僕の体の動きも完全に鈍っている。まずい...!
「ぐ、ぅうううう!!」
「きゃっ!?」
無理矢理体を動かし、何とかかやのひめさんを抱えて助け出す。
「ぐっ...がっ....!」
「あ、貴方....!」
しかし、少し間合いを離した所で、僕は朦朧とした意識と頭の痛みに耐え切れず、地面を転がるようにこけてしまう。
「緋雪ぃっ!!」
「っ、“ツェアシュテールング”!!」
僕の叫びに何をするべきか察した緋雪は、魔法を使って目暗ましをする。
「ぐ....くっ....!」
「貴方....。」
体にガタが来たかのように動きづらい。だけど、そんな体に鞭打って僕は立とうとする。
「....っ、かやのひめさん?」
「...力を失った私でも、支える事は出来るわ。」
今にも崩れ落ちそうな僕をかやのひめさんが支えてくれる。
「...ありがとう。」
「べ、別に何もできないのが悔しいだけで、貴方のためじゃ...。」
「とにかく、今の内に...。」
ツンデレ的な発言があったけど今は気にしている暇はない。
「―――どこへ行くんだ?」
「っ....!?」
移動しようとした瞬間、目暗ましとして立ち込めていた砂煙が切り裂かれ、リーダーの男が現れる。
「この程度の目暗ましで逃げられるとでも思ったか!」
「くっ....!」
斧を振りかざすのを見て、咄嗟に回避しようとするが...。
「ぐぁっ....!?」
無茶な動きをしたせいか、体が動かなくなる。
くそ...リヒトに無茶するなって言われたのにこの様か...!
「(まずい.....!)」
既に回避は不可能。せめてかやのひめさんを逃がすために突き飛ばそうとして...。
―――ドンッ!
「「―――えっ...?」」
僕とかやのひめさん。二人揃って声を上げる。
誰かに二人共突き飛ばされた。それは分かる。なら誰が?そう思って寸前までいた場所に目を向けると...。
「...薔..薇.....姫....?」
絞り出すようにかやのひめさんがそう言う。
そう。僕らを突き飛ばしたのは、薔薇姫さんだった。
ボロボロで、生きているのか死んでいるのかすら分からないほどだった薔薇姫さんが、僕らを庇って斧に斬られていた。
「てめぇ、まだ生きていたのかよ...!」
「ふ、ふふふ...吸血鬼の頑丈さ。舐めないで...よ..ね....。」
そこまで言って倒れる薔薇姫さん。
「っ、くそがぁああああ!!」
脳が焼き切れんばかりの雄叫びを上げ、大気中の魔力と僕の魔力の全てを集中・圧縮。拳ほどの細さまで圧縮した砲撃魔法を放つ。
「なにっ!?これは...!」
爆発音が轟き、リーダーの男を吹き飛ばす事に成功する。
...まだ、やられてはいないだろうが。
「ねぇっ!薔薇姫!返事をしなさいよ!ねぇ....!」
かやのひめさんは倒れた薔薇姫さんに駆け寄り、必死に呼びかける。
...肩から腰までバッサリといかれたんだ。これじゃあ....。
「ごめ...ん....かやちゃ..ん...私、もう....。」
「嘘よ!死なないでよ!死んだら許さないわよ...!」
いくら吸血鬼でも、生命力そのものがなくなったら死んでしまうのだろう。...僕から見れば、彼女の生命力はまさに風前の灯だった。
....つまり、もう、助けられない....!
「お願いよ...!死なないでよ...!これ以上、友人を失いたくないのよ.....!」
「かや....ちゃん....。」
涙を流し、懇願するように言うかやのひめさん。
「大...丈夫....。あたしは...いつでもかやちゃんを、見守っているか...ら....。」
「薔薇姫?....ねぇ、薔薇姫...!薔薇姫っ!!」
力なく頭が垂れる薔薇姫さん。
―――誰かが目の前で死ぬのは、誰だって見たくない。
沸々と、怒りと悲しみ、そして悔しさの感情が湧き出てくる。
「嘘よ...う、そ....っ、ぁあああああああああっ!!!」
泣き叫ぶかやのひめさん。灰になって崩れていく薔薇姫さん。
―――そして、相変わらず僕らを嘲る“敵”。
「(助けられなかった悔しさ?間に合わなかった悔しさ?...違う。)」
もっと単純だ。人を踏み躙り、殺したこいつらが憎いだけだ...!
「....殺す.....!」
体の痛みなんて知らない。この場の魔力を尽くしてでもこいつらを...!
―――そう考え、動き出した瞬間。
「.....フザケナイデ....!」
「ッ―――!!?」
―――僕よりも瞳に怒りを宿した緋雪の魔力が、爆ぜた。
後書き
今回はここまでです。
創造開始…解析魔法と魔力変換資質・創造を合わせた特殊な魔法。イメージとしては士郎の投影魔術に似ている。
さらっと神速擬きを使っている優輝ェ....。せ、設定的にはチートスペックだからいいですよね?
ページ上へ戻る