無慈悲なジングルベル
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第三章
「実際はどうか」
「ううん、まあそうだけれど」
「じゃあここはな」
「ホラーじゃなくて」
「ギャグって思えばいいだろ」
その様にというのだ。
「もうな」
「ギャグね」
「ああ、ホラーとか新兵いじめとかじゃなくてな」
「本当かどうかわからなくて」
「日本じゃないからな」
「そう思えばいいの」
「都市伝説だよ」
日本の話ではないがというのだ。
「そう思えばいいんだよ」
「そういうことね」
「都市伝説でも別に工作員が日本人拉致してるとかじゃないだろ」
「それ事実だったじゃない」
拉致のことはとだ、優は実にすぐに返した。
「というかその話都市伝説だったの」
「昔はそうした噂になってて特撮とかでも題材で使われたらしいな」
「そうだったの」
「けれどこの話はそうした話じゃないからな」
「いいのね」
「真実かどうかわからないし」
それにというのだ。
「日本のことでもないしな」
「しかもインパクトが強い」
「クリスマスとそうした話は普通重ならないしな」
「だからそこは笑うのね」
「それでいいだろ」
「そういうことね」
「ああ、トラウマ持つじゃなくてな」
それでというのだ。
「その新兵さんが除隊後でジングルベル聴いて大きい方までとかな」
「その話もなの」
「笑えばいいんだよ」
これが実のアドバイスだった。
「それでな」
「そういうことか」
「ああ、笑っていこうな」
「そうすればいいの」
「考え方を変えてな」
「じゃあもうね」
優は実の言葉に頷いた、そしてだった。
努力して視点と考え方を転換してみた、すると確かにだった。
いい感じに笑える様になった、その歌を聴いても。それで耳にイヤホン等をして街を歩くこともしなくなった。
だが、これはこれでだった。
クリスマスの街を歩いていてだ、いつもだった。
その歌を聴いてついつい笑う、その優に、実は言った。
「ちょっとな」
「だってね」
優は笑った後で実に返した。
「あの歌聴くと思い出すから」
「それでか」
「ついついね」
「笑うか」
「どうしてもよ」
「幾ら何でも思い出し過ぎだろ」
「インパクト強過ぎだから」
そうした話だからというのだ。
「思い出すのよ」
「ツボにはまったんだな」
「私にとってはね」
「そうなんだな」
「そう、だからついついね」
「厄介なことだな」
実は優からそう言われてやれやれといった顔になった、そしてこう言ったのだった。
「クリスマスのムードが台無しだな」
「というかあんまりな話だから」
「笑える意味でな」
「見方変えたらね」
そうなったというのだ。
「そうなったからよ」
「笑う様になったんだな」
「ちょっとクリスマス終わるまで大変ね」
「十二月二十四日までな」
実も苦笑いになって応えた。
「そうなりそうだな」
「笑えるクリスマスね」
「全く、どうしたものだよ」
苦笑いになって応える実だった、彼はその笑いでだった。
優と共にクリスマスはデートをすることになった、しかしそのクリスマス優は何度もその歌を聴いて笑いムードはあまりないものになってしまった。
無慈悲なジングルベル 完
2015・11・24
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