ぶそうぐらし!
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第8話「ほうしん」
前書き
遼が強すぎて、別に学校に篭る必要はないと思いますが、遼は大丈夫でも他の人が大丈夫じゃないのでまだまだ学校で暮らします。
=遼side=
「遼君入部おめでとー!」
「あーっと...ありがとう?」
なぜか歓迎会をされた。...籠城状態なのに、豪勢にしていいのか?
「...今更だが、入部だけでここまでしなくてもいいだろうに...。」
「なにを言うのさ遼君!せっかくの最初の男子部員なんだよ!?」
そう。正式に俺は学園生活部の部員と言う事になったのだが、なぜか丈槍の強い推しで歓迎会をする事になってしまったのだ。
「だとしても些細な規模でいいだろうに...。」
「何事にも全力!それが私のモットー!」
あ、そすか。...他の皆も苦笑いだし...。
「...ま、せっかく歓迎してくれるなら、楽しむか。」
こんな状況にも気分転換の一つや二つないとな?
「...なぁ、ちょっと聞きたくなったんだが...。」
「うん?なんだ?」
歓迎会も終わり、丈槍は疲れて眠った時に、恵飛須沢が話しかけてきた。
「家から学校に来るとき、街ってどうなってた?」
「街...か。」
屋上から街を見渡せるから、大体は分かるとは思うが...。
「...まぁ、まさにバイオハザードってやつになってたな。そこらじゅう、ゾンビだらけだ。」
「やっぱりか...。」
「...中でも、犬や猫がゾンビ化していたのは厄介だった。」
ナイフだけだと噛まれていただろう。
「ゾンビ化するのは、人間だけじゃないのか...。」
「少なくとも犬と猫は...な。」
それを聞いて難しそうな顔をする恵飛須沢。
「...街へ出るのはやっぱり危険か...。」
「犬や猫は体が小さい割に、人間よりも素早いからな。飛び道具がなければ危険だ。」
集団で襲ってきたら逃げるしかないしな。
「もっと、数をなんとかして減らすか、奴らの弱点ないし特徴が分かれば...。」
「どの道、しばらくは学校暮らしか...。」
どこかに籠城している生存者たちを助けたいものなんだけどな...。
「....車を使えば何とかならないかしら...?」
「それだ!その手があったよめぐねえ!」
先生がポツリと呟いた言葉に反応する恵飛須沢。
「先生。その車は何人乗りですか?」
「えっと...四人乗りで、詰めれば何とか五人...。」
「...武器も乗せる事を考慮すると、少しきついな...。」
せめて六人乗りなら何とかなったが...。
「学校と外出組で分断されるのは危険だし、かと言って無理に五人で乗るといざというときに対処できない...か。」
「車もダメね...。」
他の教師とかの車を使うっていう手があるけど、どこに鍵があるかわからないしな。
「...今後の方針としては、とにかく学校内での安全の確保が妥当だな。」
「そうだな...。まだ、バリケード張ってても安心とは言えないし...。」
先生が噛まれるような展開にまたなってしまう可能性があるしな。
「先生はどう思いますか?」
「...賛成...なんだけど、もうバリケードに使えるような物が少ないのよ...。」
「安全の確保も厳しいのか...。」
一階と二階の教室に壊された机と椅子の中に、綺麗に残ってるのあったか...?
「...壊れた机とかでも使う事はできる。バリケードや安全の確保に関しては俺に任せてくれないか?」
「.....どうするんだ?」
「技術室にある工具とかを使えば、色々と作れるだろう。」
これでも技術力はあると思っている。板で補強とかはできるだろ。
「でも...危険よ?」
「タイミングを見計らって、地道に進めて行くさ。全員で一気にやったりする方が危険だったりするしな。」
若狭の言葉に、そう答える。
「後は...奴らの性質がもっとわかればな...。」
「音に反応して、動きは遅い。でも頭を潰さないといけないし、噛まれたら一発でアウト。...後は力が強いのと、足が弱くなってるから高い所にはあまり上らない...かしら?」
「...結構分かってるんだな。」
尤も、俺も知ってた事ばかりなんだが...。
「...まぁ、バイオハザードみたいにクリーチャー的な化け物が出ないだけマシだな。」
「ゲームと同じようになってたら私達生き残ってないからな!?」
噛まれたら一発アウトに加え、武器は貧弱。突然変異や化け物が大量に出現...。うん、死ねるな。俺でも生き残れないわ。
「...だが、突然変異がいないとは考えにくいな...。」
「えっ?」
「今回起きたこのパンデミックは、ほぼ確実にウイルスによるものだ。そのウイルスが突然変異..もしくは感染者に適応したら....。」
そこまで言って聞いている三人が息をのむ。
「...まぁ、飽くまで可能性の話だ。警戒だけに留めておけばいいだろう。」
「いや、不安になるから。」
「何事も最悪を想定して行動するべきだからな。」
不安にさせてしまったのなら仕方ない。この話はもうやめるか。
「....さて、そろそろ寝るか。俺が見張りをするから、他は寝てていいぞ。」
「...って、まさか、ずっと起きているつもりか!?」
生徒会室改め、学園生活部室を出ようとする俺に恵飛須沢がそう言ってくる。
「こういうサバイバルで見張りも置かずに眠るのは危険だからな。」
地下の時はこの災害に備えたシャッターがあったから安心できたけど、こっちは机とかで作ったバリケードだからな。突破される可能性がある。
「だからって一人じゃ...。」
「大丈夫大丈夫。危険な真似はしないし、夜の間の奴らの生態も調べるべきだ。」
「...頼むから、バリケードからは出るなよ。」
分かってると手を振りながら俺は廊下に出る。
「(...まぁ、ゾンビに近い体質な俺からしたら、危険なんてあってないようなものだしな..。)」
そこまで考えてから気持ちを切り替え、近い方の階段へ向かう。
「...ま、よほど大多数じゃない限り、このバリケードも破られない...か。」
...ってか、今気づいたんだけど、このバリケードって下からくぐれるじゃん。
「一番下じゃないから、奴らは通れなさそうだが....。」
そう言いつつ、バリケードをくぐる。
...え?恵飛須沢の言った事早速無視してるって?...ソウダネ(目逸らし)。
「....あれ?数少ないな?」
恵飛須沢と一緒に荷物を持って上がった時はもう少しいたのだが。
「一階も様子見するか。...なに、ちょっとだけだ...。」
何かに言い訳するように俺は一階に降りる。
「......やっぱり少ないな。」
夜だから危険だと思ったが、それ以上に奴らの数が減っている。
「これは...要調査だな...。」
とりあえず、いったん戻るか。反対側のバリケードも調べておかないとな。
「夜だと少ない...か。収穫と言えるか?この情報。」
などと呟きながら一度生徒会室に戻る。
「二階の奴らは一通りやっておいたから、少しばかり眠っても大丈夫だろ。」
何かしらの性質を持っているとはいえ、態々群れを成してバリケードを破りにかかってくるとは思えない。さらに奴らは段差に弱く、二階の奴らは一掃しておいたからバリケードを破られる可能性は限りなく低い。
「...ま、見張りをすると言った以上、起きておくか。」
階段よりに生徒会室近くの壁にもたれかかる。
「...学校で戦時みたいな見張りをするとは思わなかったな...。」
実際にした事はないけどな。
「あいつらは...まだ起きてるな。」
先生に誘導されて寝室に移動はしたっぽいが、まだ起きている気配がする。
「...実際、軍人っぽい事をするのは、初めてなんだよな...。」
親父に鍛えられていたとはいえ、実践させられる事はなかった。...そりゃぁ、命の危険がそこらじゅうにあるのに、鍛える名目でできるわけないが。
「これも、いい経験に...。」
そこまで言って、はたと止める。
「...チッ、俺もこんな事言ってなければ、こういう状況で正気を保てないって事か。」
今まで多数の街の人達が犠牲になっているのに、それを関係ないとでも言うような言葉を発していた事に気付いたのだ。
「あー..こりゃ、丈槍の明るさが必要になるわな...。」
精神安定剤みたいだな。丈槍の奴。
「肝心の丈槍自身が現実逃避をしてしまっているけどな...。」
苦笑いしつつ、俺はそのまま見張りを続けた。
「....異常なし....っと。」
窓から外を見ると、もう日が昇ってきていた。
ガチャッ
「...工藤君、お疲れ様。」
「あ、先生。」
先生が起きてきて、俺に挨拶をする。
「本当にずっと見張りをしていたの?」
「ええ、まぁ。...少しうたた寝したりしましたが。」
さすがにずっと起きているのは無理だった。
「っ....ごめんなさい。無理させちゃって...。」
「いえ....あ、でも少し仮眠させてください。」
徹夜に慣れている訳ではないから頭が痛い。
「ええ。お疲れ様。」
寝袋を置いてある校長室に入り、しばらく眠る事にする。
「....どれくらい寝たんだ?」
時計を確認すると、もうすぐ正午になる所だった。
「...結構寝たな...。」
しっかし、水で濯いですらいないから、体の汚れが....。
「どうにかできないものか...。」
とりあえず、生徒会室に向かう。
「あー、おはよう...いや、おそようか?」
「お、起きて来たか。」
生徒会室...これからは部室って呼ぶか。部室には、恵飛須沢と若狭だけしかいなかった。
「あれ?先生と丈槍は?」
「由紀にとっては普通に学校があるからな。授業に出てるんだよ。めぐねえはそれの付き添い。」
「なるほど。」
...先生、丈槍に話を合わせられるか?教室も結構ひどい惨状だから、丈槍に合わせて普通に授業を行うなんて難しそうだが...。
「...そうだ。聞きたいんだが、水浴びできる場所ないか?」
「水浴び?どうするんだ?」
「いや、体を洗っておかないとな...。」
俺がそう言うと、恵飛須沢は苦笑いしながら“そう言う事か”と言う。
「それなら、更衣室のシャワーが使えたはずだ。」
「お、この状況でも使えるのか。...そういや、ソーラーとかで電気を賄えてるんだったな。」
「そう言う事だ。」
なら早速向かわせてもらうか....。着替えの制服を持って...と。
「じゃ、行ってくる。」
「今からかよ!?」
「女子がいるのに汚れっぱなしは嫌だからな!」
俺自身、汚れをどうにかできるならしておきたいからな。
「....あー、さっぱりした。」
「お帰り。」
部室に戻ると、若狭がいなくなっていた。
「あれ?若狭は?」
「屋上の菜園。あれも立派な食糧源だからな。」
「なるほど。」
...と、なると俺は手持無沙汰な訳だが...。
「...そうだ。せっかくだし、今から取りに行くか。」
「ん?取りに行くって、何を?」
「バリケードを補強するための工具と材料。」
三階は丈槍が授業をしているから無理だとして、工具も取ってくるとなると一階だな。
「...一人で大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫。危険だったらすぐ戻ってくるし。」
「...なら、いいんだが...。」
それに、できるだけ奴らの生態を知りたいしな。
「若狭や先生が戻ってきたら一応伝えておいてくれ。」
「分かった。」
さて、作業時間は大体一時間から二時間でいいか。
「....ふぅ。これぐらいでいいだろ。」
二階の資料室に積み重ねた机や椅子の残骸を見ながら言う。ちなみに、一階の資料室にも同じように積み重ねてある。
「ここのはバリケードの補強に一部使って、一階のを安全確保に使う感じでいいか。」
机は脚の部分は曲がっていたりしたが、案外板の部分は割れている物が少なく、まだまだ活用できるものが多かった。
「工具もワイヤー、釘、金槌に...うん。これぐらいあればいいだろ。」
補強を行うための道具も充分に揃っている。
「さて、一旦戻るか。」
時間を確認すると、作業を始めてから一時間半経っていた。
「よ.....っと。」
バリケードを抜け、部室に戻る。
「ただいまー。」
「おっ、お帰り。」
「お帰りなさい。」
部室に戻ると、若狭も戻ってきていた。
「大丈夫だったか?」
「へーきへーき。気づかれないように移動していたし、最大限の注意を払っていたからな。」
第一、至近距離じゃないと襲われないからな。
「...で、あいつらの生態なんだが...。どうも、生前の習慣が染みついているみたいなんだよな。」
「習慣が染みついている?」
「ああ。グラウンドでサッカーボールを蹴っていた。」
これは一階の玄関辺りからグラウンドの様子を見た時に思った事だ。
「体が覚えているというか...本能なのかもな。」
「そうか....。」
「まっ、まだまだ要調査だな。」
実際にそうだと決まった訳ではないし、もっと調べる必要もある。
「バリケードの材料の方は?」
「結構集まったな。今は各階の資料室に置いてある。」
ついでにそれなりの数のゾンビも倒していたけど、それは伝えないでおこう。心配されるし。
「後は地道に安全圏を広げて行くか...。」
「....無茶だけはしないでね。」
「分かってる分かってる。」
若狭に念押しにそう言われる。
「...っと、そうだ。」
おもむろに俺は立ち上がる。
「ん?今度はなんだ?」
「いや、バリケード内で行ける場所を全部知っておいた方がいいと思ってな。」
「...そういえば、屋上とか行ってなかったな。あんた。」
そういう訳で早速見に行こうか。
「今度はバリケードから出るなよー!」
「分かってるって。」
バリケード内の設備を見て回るんだからな。出る必要もない。
「更衣室はさっき見たから...まずは職員室だな。」
覗いてみると、案の定予想通りなほど、血で汚れて荒れた状態になっていた。
「窓も割れてる...。教室と同じような惨状だな...。」
特に気にする所もないので次に行くか。
「...これだけの設備であいつらよく生き残ってたなぁ...。」
三階を一通り見てみたが、特にこれといった設備もなかった。非常食は職員室とかにあったけど、それ以外は武器となるものも少なかったし、どの部屋も荒らされた後なのでお世辞にも快適とは言い難かった。
「この中で丈槍はどうやって現実逃避紛いな事をしてるんだよ...。」
どう足掻いても現実を見せられてしまうんだが...。
ちなみに、途中で丈槍と先生に会ったので、適当に会釈しておいた。
「最後は屋上だな。」
...そう言えば、スナイパーライフルを使う場所も探しておくべきかな。
「....お?屋上は荒らされてないんだな。」
一部分だけ血の跡があるけど、それ以外は綺麗だな。先生がここに最初は立て籠もってたって言ってたし、当然か。
「...菜園が使えるのは嬉しいな。」
なんとなく、屋上から街を眺める。
「...無事な場所なんて、ないんだな....。」
マニュアルによれば、この街だけ隔離されてそうだが...。
「.....先輩、恵飛須沢を命を張って守ってくれたそうですね。ありがとうございました。」
話に聞いただけだけど、恵飛須沢の言う通りならそう言う事になる。俺は全然知らないけど、感謝と追悼の言葉を述べておいてもいいだろう。
「ここなら、ちょうどいいかな。」
狙撃ポイントを見つける。...屋上よりも、三階からの方が狙いやすいな。
「後で三階でも探すか。」
....せっかく屋上に来たし、少しばかり寛がせてもらうか。
「.....ん....?」
「お、やっと起きたか。」
どうやら眠ってしまっていたらしい。目を開けると、目の前に恵飛須沢がいた。
「戻ってこなかったから心配したぞ。」
「悪い悪い。久しぶりに開放感のある場所に出たからな。」
バイオハザードが起きてからは、地下に居る事が多かったしな。
「そろそろ皆も部室に戻ってるし、行くぞ。」
「ああ、分かった。」
俺は恵飛須沢について行き、屋上を後にする。
―――帰り際に先輩らしき幻が見えた。...そんな気がした。
~おまけ・その頃の友人~
〈ガウッ!ガウガウッ!〉
「こっちくんなし!」
犬に追いかけられながら、そう叫ぶ。
〈ガウウゥ....!〉
「ああもう、しつこいなぁ...!」
そう言いつつ、どこかで手に入れた金属バットを構える。
「ホームラン!」
〈ギャウッ!?〉
そして、犬をかっ飛ばす。
「うん。犬は厄介。よーく分かった。」
ただし、簡単に対処できているらしい。
「...ここら辺の食料も尽きてきたなぁ...。」
適当に民家に寄っては食べられる物を食べて行く。駅沿いには歩いているが、途轍もなくマイペースだ。
「...じゃ、そろそろ行こうか。」
そして、また放浪するかのように、一応学校を目指していく。
後書き
今回はここまでです。(おまけはネタと言うより蛇足です。)
バイオハザードとか絶対、\(・ω・\)SAN値(/・ω・)/ピンチ!になると思うんですよね...。むしろ無事でいられるゲームの主人公たちがおかしい気が...。
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