Fate/EXTRA〜もう一人のアーサー王〜
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修行の賜物
前書き
お久しぶりです!
すみません、半年近く更新が遅れてしまい申し訳ありません!
次回の投稿もいつになるかはわかりませんが頑張って更新したいと思います!
練習を終えた後、俺はマイルームに戻り重りのような体をベッドに転がせた。どうにもならない程の疲労感を感じながら俺は意識をベッドに任せようとする。が、そうしようとしたのも束の間、バンッと頭にかかる衝撃に襲われた。
「イッ!?」
反射的に顔を後ろへと向けると、そこには両手を腰に当て呆れ顔で俺を見下ろすセイバーがいた。
(あぁ……やっぱり覚えておいでですか……)
心の中で呟いたこの言葉の意味は5時間前にまで遡る。
休憩が終わり、稽古が始まろうとするとき、俺は土の中から一冊の本を見つけた。本は隠すように埋められていたみたいだが俺とセイバーが派手に練習をしていたせいでどうやら土が抉れ、中身が見えた様子だった。
「……これって……本?」
埋もれた本を取り出し、土を払う。古ぼけた本でいかにも最近作られたような本ではないことが見ただけで分かった。こういう本は普通図書館にでも置いてあるはずなんだがどうしてこんな所に本が埋められてるんだ?
そんな疑問を感じていると、セイバーがこっちに近寄ってきた。
「どうかしたのか?」
「ああ、土の中に本があったんだよ」
「本?」
俺は手に持っていた本をセイバーに渡した。セイバーは本を受け取ると、ページを開き中身を読み始める。と言ってもちゃんとは読まず、大体流し読みで物の数秒で終わった。明らかに興味なさげだな…そう感じながら見ていると、セイバーは本をぽいっとごみを捨てるかのように俺に渡した。
慌ててキャッチする俺にセイバーはこう言った。
「それは航海日誌だ。それもずいぶんと古い」
「航海日誌?なんでそんなものが…………あっ」
途中、俺の脳裏にある人物がこっちにほくそ笑む海藻類の姿が浮かび上がった。
「そういうことだ。余程オレ達に知られたくないのだろう」
そう言いながら、セイバーは話を続ける。
「マスター、部屋に戻ったあと少し話に付き合ってもらうぞ」
「あ、ああ」
では稽古に戻るぞと言いながらセイバーは背を向けて歩いて行った。ついて行こうとする俺だったがふと自分の手にある本へと視線が移る。
「これ……どうしよう……」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして時間は戻り、今に至るわけだ。
俺はベッドに腰かけ眠気を抑えながら離れそうになる意識を留める。セイバーは椅子に腰かけ、腕を組んだ。その表情はとても機嫌の良いものでもなく、ただため息をついていた。このままでは悪い流れになると察した俺は急いで、口を開く。
「と、ところで話ってなんだよ!もしかしてライダーのことか!?」
セイバーは俺の口調に何か気に食わなさそうな感じでいたが、そうだと返事を返した。
「あの男が従えているサーヴァント、つまりライダーだが」
「フランシス・ドレイク」
「……!!」
さすがのセイバーもこれには驚いたみたいだ。いや、誰だって驚くか…。セイバーは少し目を見開かせたが次第にその表情が曇っていく。これには俺も迂闊に言うべきことではなかったと後悔した。
「知っていたのか?」
そう発したセイバーの声色は低く、俺への怒りがひしひしと伝わってきた。背筋に嫌な汗を感じながら俺は一生懸命弁解をする。
「いや、俺だって今日知ったんだよ!?今まで隠してきたわけじゃないよ!?」
「ではなぜ今日何も言わなかったのだ?」
「あの時はまだ確証がなかったからだよ!」
俺がライダーの真名『フランシス・ドレイク』に行きついた理由は今朝の図書館でのことだ。セイバーが他の場所で調べている中俺はライダーについて調べていた。相手はクラシックな二丁拳銃を使い、宝具は大砲。そして艦隊。推測として船乗り関連であることが可能性としては高い。そのワードを頼りに探していた。
そして、その本は見つかった。それは名のある船乗りたちが紹介された本であり、もしかしたらと思い探したのがこの『フランシス・ドレイク』という人物。
イングランド人として初めて世界一周を成功させ、アルマダの戦いでは司令官として活躍し、敵であるスペインの無敵艦隊を撃破した。
本を読む限りではこの人物とライダーは一致する。唯一違うのがその性別だが、それは結局分からず終い。言うかどうか迷ったが、俺はあまり不確かな情報を与えてセイバーを混乱させたくなくてここは黙っていることにしたのだ。
そして俺はセイバーに全てを話した。なぜすぐに言わなかったのかの理由も添えて全部。
終始無言のまま彼女は俺の話を聞き、全て話し終えると彼女はただ一言。
「下らん」
そう切り捨てた。
「貴様がどんな風に気を利かせたつもりでもそれは大きなお世話だ。何か気になったことがあったら聞き、分かったのなら言え。二度言わせるなよ」
セイバーはこれ以上何も言わなかった。それにどこかしら口調が和らいでいるように聞こえた気がしたのだが……。
「セイバー?」
「なんだ?」
「どうかした?」
「は?」
質問の意味が分からないと、セイバーは顔をしかめた。
「なんかやけにあっさりしているというか優しいというか……」
「ふん、気のせいだろ。もう寝ろ。オレは疲れた」
そう言うとセイバーは横になり、背をこちらに向ける。しかし、まだセイバーの話とやらを聞いていない。
「お前が話したいことまだ聞いてないんだけど」
「お前が既に言ってしまった。奴の真名についてだ」
こちらの方を振り返らずそのまま彼女は言った。あぁ……これは空気の読めないことをしてすみません。土下座まではしたくないが平謝りなら普通に出来そうな気がする。俺は彼女に一言、ごめんと言っておくとそのままベッドに倒れ眠りについた。
―――――――――――――――――――――――――
翌日、今日もアリーナで俺はセイバーとの修行に明け暮れていた。
しかし、今回の修行は今までとは少し変わっていた。前まではこっちが攻めだったのが今回は俺が受け身という形でセイバーが攻めという内容だった。
「そら、足ががら空きだぞ」
「ッ!!」
剣を交じり合いながらセイバーが冷静な声色で俺に告げた。
瞬間、俺がそれに反応した時にはセイバーは自分の足を俺の足に絡ませ、そのまま持ち上げた。そのまま俺の体はバランスを失いそのまま後ろへと倒れる。
「まだ死にたいか?」
「ああ、あと何千でも死んでやるからお前から一本何が何でも取ってやる」
「ふん、言うじゃないか」
俺は再び立ち上がると、深く息を吸って精神を統一させる。
幾分かざわついた気分を穏やかにさせると目標をそっと見据え、ジッと剣を構える。それに対応するかのようにセイバーも自分の剣の構えを見せてきた。
――――――さぁ、もう一度だ!
こうして再び修行が開始される。
今日の修行が開始されて大体四時間ぐらいが経ったと思われる。
未だにセイバーから一本取れないのは悔しいが自分自身着実に成長していることが実感できた。特にそう思えたのはセイバーのあのトリッキーな動きに何度かついてこれたことだ。
どうやら少しだけ防御に関しては向いてるところがあるみたいだ。
攻撃についてはセイバーに当たる気配はないが、防御に回ったらセイバーでも少し手こずる程度には成長したと思う。
相手がどんな動きをするのかどうか、次の攻撃のルート等を速やかに推測し、それをいなす。この数日間での実戦で覚えたのはこの防御手段だけだがなんとか立ち回れるようにはなっていた。
まぁ、ほとんどがセイバーに一方的にやられたせいで身に付いた技なんだが塵も積もれば山となるとはこのことだ。
何事も努力が肝心だ、ということが再確認できた。
「くっ、はぁ……」
俺は大きなため息を吐いて、不意に右手にある礼装が消えるのを感じながら大の字でそのまま仰向けに倒れた。体から流れ出る汗は尋常じゃなく、頭から足のつま先まで雨に打たれたかのようにずぶ濡れだった。
今まで精神を集中させていたこともあってか自然に呼吸を止めていて、窒息しそうだ。
つまりどういうことか、一言でまとめよう。
―――死にそう。
そんな時、セイバーが俺に近寄ってきた。
「そろそろ切り上げるかマスター。明日は初戦だからな、早めに休んでおいた方が良い」
「そうだな……」
これにはセイバーの考えに賛同だ。ここで無茶をして怪我をするのと、万全な状態で行くのとでは大きな違いがある。
もちろん万全を期して明日の勝負に臨むつもりでいるのだがその前に一つ問題があった。
「ところでセイバー……」
「ん?」
不思議そうに俺を見下ろすセイバー。
俺はちょっと言うのをためらったが、このままもじもじしていても仕方ないので重い口を開ける。
「手を…貸して…」
情けないことに全身の力はどこかへと消え、自力で動かそうとしてもまるで糸の切れた人形みたいに静止している。
さすがに四時間ぶっ続けでの練習は、自分の体では悲鳴を上げてしまうそうだ。今までは一時間ごとに休憩を少し挟んでいたが、今日は明日が対戦ともあってか休憩もなしでずっと続けていた。
「だらしがない……」
セイバーはそう言いながらも自分の剣を地面に突き刺し、俺を担ぎ上げる。
まるで布を肩に掛けるおっさんのように俺を軽々と肩に乗せると、軽快な速度で歩く。
自分より小柄な少女に担がれるというのはこれ以上ない不名誉だなと感じると共に他の誰かにこの光景を見られないよう必死に祈っていた。
が、
「あれぇ、そこにいるのってもしかして白羽?」
見られた!
特に見られたくない奴に見られた!
笑いを含んだ声が自分の耳に飛び込んでくる。
暗闇からそっと現れたのは相変わらずの笑みを浮かべた慎二。そしてその横にはつい昨日真名が判明したライダー『フランシス・ドレイク』の姿があった。
慎二はそこにいるのが俺だと確信すると、にやけた笑みが吹き出し大笑いへと変わった。
表情で不快感を表す俺をスル―し、慎二は尚も笑う。
「あっはははは!!なんだよその格好!サーヴァントに担がれて送ってもらってるのぉ!?もしかして明日の初戦恐くなって足腰立たなくなったぁ!?棄権したって良いんだぜ!?」
イラッ、俺の中で何かが切れた。いつもは相手の挑発に乗るような真似はしないのだが今回に関しては疲れているせいもあってか慎二の一言一言が癇に障った。
一言言い返してやろうと思い、口を開きかけた時だった。
「口が減らないのは相変わらずだなお前。もう少し言葉数を減らしたらどうだ?少しはその小物臭が消えると思うんだがな」
ふと俺の顔の隣でセイバーがそう返した。すると、格下のマスターのサーヴァントに貶されたことがよっぽど気に入らなかったのか、慎二の表情は怪訝なものへと変わった。
その時、
「何時化た顔してんのさ慎二ィ!こういう時は思いっきり笑ってこう返してやるんだよ!僕は一流の魔術師であり、一流の悪党だってな!」
慎二の隣にいたライダーが前に出て、二丁拳銃を取り出す。ライダーの表情には一切の曇りも焦りもなくただ笑みを浮かべるのみだった。
「誰が悪党だよ!僕はお前とは違うんだぞ!」
「あっはっはっ、そりゃあ悪いね!」
言い終えると銃をこちらへと構え始めた。
「ところで慎二。あの二人はこの場で殺るのかい?」
すると、慎二は両手を組んでこう宣言した。
「当然、やっちゃってよ。ライダー」
その言葉にライダーの口元が吊り上がった。
すぐさまセイバーは相手に聞こえない程度に俺に問いかける。
(マスター、この状態での戦闘になるが問題ないか?)
あまり理想的な考えではない為、拒否しようとも思ったが俺の体はまだ十分には動かない。たとえ床に降ろされたとしても無防備な俺に攻撃してこないとも限らない。
結局、選択肢は決まっていた。
(ああ、情けないがここは頼む)
その答えを聞くと、セイバーは静かに頷いた。
「では、ここで潰させてもらうぞ。ライダー!」
後書き
文字数的に少し短いですかね?
次回はもう少し量を増やしたいと思います!
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