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グランバニアは概ね平和……(リュカ伝その3.5えくすとらバージョン)

作者:あちゃ
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第38話:濃いめの恋

(グランバニア城・中庭)
ビアンカSIDE

夫と息子を前に私は大声で怒鳴ってる。
夫がオジロン大臣とチェスをしてると、突如息子が鬼の形相で斬り掛かってきたからだ。
日頃の鬱憤を爆発させ、遂に王位を奪いに来たのだと思ったが、この息子に限ってそれは皆無なので、夫も自身の安全を得る為に反撃に出たのだ。

古今異世界の大魔王ですら逃げ出す程の実力を持ってる夫と、神が与えた聖なる力を持つ天空の勇者とが相対すれば、側に居る普通の人間には堪まったモノではないので、一瞬停滞したのを見計らい、ここぞとばかりに怒鳴り散らす。

元々夫は被害者側だったので、息子さえ落ち着けば大人しく怒鳴られる。
しかし相当頭にきてる息子は、私に怒鳴られながらも夫への殺気を押さえ込まない。
なので息子の言い分を聞く為「ティミーは如何してあんな、父親以上の非常識行動をしたの?」と問いかける。

“父親以上の非常識”という言葉が堪えたのか、ガックリ項垂れながら事の経緯を話す息子。
その内容に驚き、目を見開いて夫を見詰める私。
視線に気付きながらも口笛を吹きそっぽをむいて恍ける夫。

「アナタ……父親として如何なのよ?」
「愛人が大勢居る僕に何が言える?」
その愛人が産んだ娘の頭を撫でながら、爽やかな口調で答える夫の神経が解らない。

ビアンカSIDE END



(サンタローズ・教会)
リュリュSIDE

「……って事があったのよ」
私はサンタローズの自宅へ帰り、今日の出来事をお母さんとフレイに教えてる。
夕食時に話す内容としては、少しばかりディープな気もするが、それでもこんな吃驚事件は放っておけない。

「あの()(リューナ)も不思議なとこがあったものね」
「でも極端すぎるわ。流石姉妹中で一・二を争う変態(ファザコン)女ね……ベクトルが違うだけで、お姉ちゃんと同じ迷惑さ加減ね」

「酷いフレイちゃん!(泣)」
相変わらずの辛口(シスター)に泣かされ、お母さん特製のミネストローネが塩っぱくなる。
でもこのニンジン美味し♡

「でも大好きな父親を困らせない為に頑張って恋人を作ってるのが泣かせるじゃない。……それに引き替え、何処かの娘ときたら」
ああん……母上の視線が痛い。

「私だって、お父さん以上の男性が居れば……」
「そんな男居る訳ないでしょ! リュー君を越える男なんて」
「いや居るでしょ……(失笑)」

お母さんが真理を突いた事を言えば、それを否定するのは冷静な妹君。
解ってない……アンタは何も解ってないわよ。
「何処に居るって言うのよ。もし居るのなら紹介して欲しいわね」

「さぁ? ほぼサンタローズから出た事のない私には判らないわ」
「何よ、知らないのなら適当な事を言わないでよぉ」
ちょっぴりムッときたので、フレイのミネストローネから一番大きいジャガイモをホークで奪い反論開始……の、つもりだったけど。

「ウルフさんなんか良いんじゃない? やり手だし、お父さんの……お二人の大好きなリュー君さんの絶大な信頼を得てるのだから」
選りに選って彼を引き合いに出しますか!?

「ダメよウルフ君は。だって彼女が二人も居るんだし……」
「お姉ちゃんが大好きな男性は、結婚してて愛人が複数居るはずですか?」
あう! 痛いところを突かれました。

「そ、それに……ウルフ君は生意気なのよ!」
「それは仕方ないでしょ……あの年齢(とし)で重責を担ってるのだし、ああ言うキャラでアイデンティティを確立させておかなきゃならないのよ」
例の事件で“ウルフ君とのフィアンセ”って立場を演じて以来、その噂が先行しちゃって既成事実化しそうだから嫌なのにぃ~!

「と、年下はお断りなの!」
「自分の年齢を考えなさいよ。グランバニアでは晩婚化が進んでる様だけど、他の国々では17.8歳で嫁入りするのが平均的なのよ」
あぅ~……何で私の周囲には口の達者な人達が大勢居るの?

「と、兎も角……まだ私も若いつもりなんですから、年上の男性でお願いします!」
「美人は得ね、男を選り好み出来て……」
選り好んでないしぃ~……

「じゃぁラングストンさんで手を打ちなさいよ。あの人もお姉ちゃんに惚れてるし、それを隠そうともしない。年上で、面白く、兵士としても優秀……お父さんの非常識にも動じる事のない人間なんて、そう見つかるモンじゃないわよ」

「えぇ~、ラングストン隊長~?」
「何よ、不満でもあるのラングストンさんに?」
不満がある訳じゃないのだけど、納得いかない表情で答えたら、私のミネストローネからニンジンを奪い憤慨するフレイ。

「まぁ確かにぃ~……真面目に仕事すればやり手だし、そこそこ格好いいけどぉ……」
「アナタの大好きなお父さんも、真面目に仕事する事が稀だと記憶してますけど?」
また痛いところを突かれた!

「そんな事ないのよフレイ。最近のリュー君は以前に比べ真面目に仕事してるみたいなのよ。なんせ逢いに来てくれる回数が減ったのだから……」
そう言えばティミー君も言ってたわ。“ウルフ君が来てから、父さんも真面目に仕事してくれる時間が増えた”って。

「お母さんの所に来てくれなくなったのは、歳をとって魅力が落ちたからでは?」
「酷いフレイちゃん!(涙)」
ションボリ項垂れるお母さんを見て、まだまだ美人だと私は思う。

「ちょっとちょっと、さっきから酷いんじゃないフレイ? お母さんはまだまだ綺麗だし、そんな理由でお父さんが遠ざかるはずもない! つーか恋愛をした事のないお子ちゃまには理解出来ませんか!?」
言ってやったりって感じですよ。

しかし、場の空気が不思議な感じに……
ションボリしてたお母さんも、私とフレイを交互に見て苦笑い。
何かしらこの雰囲気は?

「お父さんの娘で、恋愛経験のないのはお姉ちゃんだけよ」
「そ、そうね……リューナちゃんも、お盛ん(?)みたいだもんね」
ん? ……如何いう事?

リュリュSIDE END



(グランバニア城・外務大臣執務室)
ティミーSIDE

「もうビックリですよぉ。まさかフレイに彼氏が居るなんて……」
「へぇ~……フレイも彼氏が居たんだ。 ……ってか、複数居ないよな?」
前日のリューナの騒動でトラウマになった事を問い質す。

「大丈夫よぉ……フレイは真面目っ()ちゃんだから、彼氏も一人だけ。5年前にサンタローズに引っ越してきて、農園を営んでるマズラーさんとファムさんの息子さん。ファルマー君って言って、大根とかニンジンとかを育てて市場に卸してるの」

「ふ~ん……フレイと同い年なの?」
「うん。私も何度か会話した事あるけど、昔のティミー君みたいに真面目な男の子よ」
“昔の”って言い方が引っかかる。

「今でも僕は真面目だが?」
「ううん違うわ。昔のティミー君みたいに馬鹿が付くくらい真面目なのよ。今のティミー君とは全然違うのよ」
何だ何だ……今でも僕は馬鹿真面目なつもりなのに!

チラリと妻に視線を移すと、
「まぁ羨ましい」
と言って、目立ってきたお腹を擦りながら笑ってる。

「如何だかなぁ……その歳で不純異性交遊を嗜んでるのに真面目と言えるのですかねぇ? 僕なんかは大人になるまで待ったからね!」
「ティミー君はご自分を存じないのですねぇ……」
おいおい昨日のキレっぷりをみても、まだ僕が馬鹿真面目じゃないと言いますか!?

「よし見に行こう! 今日の仕事はここまでにして、これからサンタローズに見学しに行こう!」
そう言い手元の書類を片付け始めると、机仕事が得意では無いリュリュも嬉しそうに片付けだした。

「ちょ……良いの、本当に?」
「仕事? まぁ今日くらい半日で終わらせても大丈夫でしょう。でも一応ウルフ君には断って行こうね」
そう言って妻の手を取り外出を促す。



(グランバニア城・国王主席秘書官執務室)

「ウルフ君。大切な妹の一人であるフレイに男が出来たらしいから、頼れる兄として為人を見定めに行ってくるよ。緊急の用件があったらMH(マジックフォン)で呼び出してくれれば駆け付けるけど、それ以外の用件だったら君の方で対処を宜しく」

「ああ゛? おいアンタ……どっかの国王に似てきたぞ。仕事を途中で抜け出して、殆どを他人に押し付けるなんて……あぁ、息子だから仕方ねーか。行ってこいよ、じゃぁ!」
強烈な視線で睨まれたと思ったら、諦めの口調で溜息交じりに外出許可をくれる義弟。

「ロリコンのウルポンは気にならないんですか、私の可愛い妹に彼氏が出来たって事?」
「“ウルポン”とか呼ぶな! それに世のビッチが男遊びしてる如きで気を揉んでられねぇっての! 忙しいんだよ俺は……どっかの国王が、また仕事放置して逃げ出したから」
ロリコンは否定しないのかな?

「あぁ……きっとお父さんもサンタローズに居るのかもしれないわね」
「何で言い切れる?」
うん。ラインハットって選択肢もあるだろうに……

「昨日ね、最近お父さんがお母さんに逢いに来る回数が減ったって話になったら、フレイが『歳をとって魅力が落ちたからでは?』って言ったのよ。違うとは思うんだけど、一応お父さんに報告して、お母さんが気にしてるって……今朝言ったの」

「この馬鹿女、余計な事を言いやがって!」
「酷いウルポン!(涙)」
全く余計な事だとは僕も思う。だってシスター・フレアはまだまだ美しいから!

「急ぎの用があればMH(マジックフォン)で呼び出せば良いのに……」
「急ぎの用件だったらMH(マジックフォン)を使う前に俺が直接乗り込んでるよ。それでも国家の最高責任者だから、普通の書類仕事が溜まっていくんだ。解るだろアルルには……」

「なるほど……ごめんねウルポン」
遂に妻までも“ウルポン”と呼び始めた。
「ウルポンって呼ぶな、貧乳妊婦!」
人の妻を“貧乳妊婦”と呼ぶのも如何な物かなぁ?

「じゃぁサンタローズに父さんが居たら、一応声をかけておく事にするよ。それで良いかいウルポン?」
「良くない。ウルポンって呼ばれる事は全然良くない! それ以外は良いけど、ウルポン呼ばわりは認めない!」
取り敢えずは外出を認めてくれたので美女二人を伴って退出する事に……

でも誰も“ウルポン”って呼ぶ事を止めるとは言わなかった。
本人もそれは解ってるだろう……
今日から彼の渾名は“ウルポン”だ!

ティミーSIDE END



 
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