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真田十勇士

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巻ノ十九 尾張その二

 幸村達は入った、一行は清洲城の城下町に入る前にだ。
 その傍の村を見てだ、こう言うのだった。
「凄いな」
「はい、実に」
「田が何処までも続き」
「どの田も見事です」
「米がよく実っています」
「これはかなりの米が採れますな」
「しかも」
 田だけではなかtyた、見れば。
 あぜ道にはだった、そこには。
「あぜ豆もあるな」
「それもよくある」
「畑もよいな」
「麦や色々な野菜がある」
「果物も多い」
「これはよい村じゃ」
「かなり豊かな村じゃな」
 その村の見事さにだ、家臣達も唸ってだ。
 幸村は村の家々や水車を見てだ、こう言った。
「家は大きく水車は新しい」
「そこも見ますと」
「違いますな」
「うむ、豊かな証じゃ」
 そうした家等も観て言うのだった。
「よき場所じゃ」
「前右府殿は善政を敷かれていたといいますが」
「その通りです」」
「これまで前右府殿のご領地だった場所を巡ってきましたが」
「どの国も見事に治められています」
「悪者も少なく」
「どの国もよい国となっております」
 その信長の領地にいた者も多いだけに確かな言葉だった。
「そのことから考えましても」
「前右府様はよき方だったのですな」
「非常によき政を心掛けておられていて」
「実際にそうされていた」
「民のことを考えておられた」
「そうした方だったのですね」
「そうじゃな、お膝元であった尾張を見てもわかる」
 信長が生まれ育った国でもあるこの国もとだ、幸村も言う。
「あの方は決してな」
「血を好む方ではなく」
「民のこと、天下のことを考えておられた」
「そうした方だったのですな」
「そういえば長島も」
 信長が幾万もの門徒達を焼き殺したその地もだった、彼等は尾張に来る前に寄ったその地のことを思い出していた。
「非常にですな」
「穏やかでした」
「かつてそうしたことがあったとは思えないまでに」
「よい状況でした」
「おそらく一向宗の者達を倒したのは事実じゃ」
 幸村もこのことは否定しなかった、そのことは彼も聞いていたからだ。
「しかしな」
「それはあくまで最低限のこと」
「一向宗に勝つ為に」
「その為のことであり」
「前右府殿はあくまで血を好まれる方ではなかった」
「むしろ善政を心掛ける方だったのですな」
「そのことがわかった、戦は避けられぬならやらねばならぬ」
 例えそれが多くの血を流すものになろうとも、というのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「流す血は最低限にして」
「普段は民の為の政を心掛ける」
「それが大事なのですな」
「そうじゃ、拙者もこのことがわかった」
 幸村はこう言うのだった。 
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