ウルゼロ魔外伝 GANTZ/ULTRASEVEN AX
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ちいてんをはじぬる
突如姿を現した謎の赤い巨人。
玄野たちはその姿に目を奪われていた。
ネギ星人の宇宙船から小さなカプセルが落とされた。そのカプセルが爆発すると、その中からネギ星人を圧倒的に上回る巨大生命体が現れた。
「グオオオオ!!」
その怪獣…『時空生命体ガルキメス』は赤い巨人に突出、円を描くようにキックを放ってきた。しかし、赤い巨人はそれを避ける。
「ハッ!タッ!ムッ!」
パンチで赤い巨人を殴り付けようとするも、いとも簡単に避けられ、受け止められてしまう。
「ダアッ!」
凄まじい力を込めた拳がガルキメスを突き飛ばした。そこにネギ星人の宇宙船が飛来し、巨人にレーザーを発射したが、巨人は腕を盾にしただけであっさりと防ぎきった。
「ムゥゥ…タアアアア!!」
巨人の宇宙ブーメランが投げられ、ネギ星人の宇宙船は回避したが、背後にいたガルキメスは真二つに斬り裂かれ、水のように弾けて消え去った。ブーメランがそのまま彼の頭に戻ってきたところで、巨人ははネギ星人の宇宙船を逃さず、額のビームランプから放った緑色の閃光を放った。
ネギ星人の宇宙船は、光線を受けて跡形もなく爆発し、塵と化した。
「すっげ…」
圧倒的強さを見せつけた巨人に、玄野は思わずそう呟いた。
巨人がネギ星人の宇宙船が消滅したのを確認したその時、
パン!
「!?」
巨人のプロテクターの一部が爆発で弾けた。痛みはなかったものの、なぜ攻撃をうけたのだろうか。地上を見ると、なんと西がこちらにXガンを向けているではないか。
「ん?」
だが、西は自分が頭から再び消えていくことに気がつくと、銃を下ろして消えた。その時こう呟いていた。
「ターゲットじゃなかったか…つまんねえ」
その口調は、敵意や殺意というよりも…娯楽の際に発するものだった。
すると、玄野と加藤、そして岸本も頭から消滅した。巨人はメガネをかけるように右目を軽く指先で挟むと、小さくなるように消えていった。
「ハア…ハア…」
加藤は肩を上下させ、大きく喘ぎながら黒い玉の部屋に姿を現した。
「え?あれ…?」
自分の姿を見て驚愕する加藤。あれほど血で濡れたはずの体が元の清潔な体になり、そして切られたはずの手首も元通りだ。
「どうして…?」
「時間内に生きてさえいたら、元通りになるのさ。腕をもがれてもね」
驚く加藤に対し、すでに部屋に戻ってきていた西が説明を入れた。人知を超えている現象に、加藤は自分の切られた手首を見ながら未だに戸惑いを見せていた。
わずかに遅れて玄野と岸本、そしてジンが転送された。
「…説明しろよ。これ一体なんなんだ?」
玄野が西を睨みながら身を乗り出す。
「その前に、ガンツが採点を始めるぜ」
西は黒い玉に顎をしゃくって見せた。
「ガンツ…?」
「俺がこの部屋に来る前からそう呼ばれてた」
ジンの言葉に西はそう言った。
キュイン!その音と共に、黒い玉、ガンツにいつからか表示されていた時間表示がゼロになっていた。
『それぢわちいてんをはじぬる』
怪しい日本語が表示されると、今度は電車の発車ベルのような音が鳴った。思わずぞっとした玄野と加藤。この部屋に来たときのトラウマとして残っていたのだ。すう…と時間表示が消え、今度は女の子の絵がメッセージと共に表示された。
巨乳
0てん
乳でかすぎ。
パンツ履かずにうろつきすぎ
「巨乳…って…」
ジンはなんとなく岸本の顔を見た。
「私!?」
「乳でかすぎ、パンツ履かずにうろつきすぎだって」
玄野がいたずらっ子みたいな笑みを浮かべる。
「なんかムカつく…」
ムスッとした声で岸本は呟いた。その画面が消えると、今度は加藤のものと思われる絵が表示された。
かとうちゃ(笑)
0てん
びびりすぎ
おおかとうちゃ(笑)死にかけるとわなにごとぢゃ
「…」
憮然とした表情でガンツを見た加藤。
「さぶ…」
「これ…絶対ウケ狙ってるよね」
ちょっと身震いした玄野と怪しそうに見る岸本。続いてガンツは目付きの悪い少年の絵を表示した。恐らく西だ。
西くん
3てん
トータル90てん
あと10てんで終わり
「ちっ…3点かよ」
小さく舌打ちの音が響いた。
玄野はちょっとドキドキしていた。一応彼も戦った身だ。もしかしたら…と思いきや、ガンツは玄野の予想を見事に裏切り、しかも恥ずかしいことを表示した。
くろの
0てん
巨乳見てチ○コ立ちすぎ
「え゛!?」
「巨乳見てチ○コ立ちすぎ」
西はバカにした顔で笑っていた。密かにやジンもププ…と笑いを堪えるのに必死だった。岸本は恥ずかしそうにそわそわして加藤の後ろに隠れた。玄野の視線がかなり気になってしまっていた。
そして最後にジンの顔と点数が写された。
ジン(?)
10てん
トータル10てん
あと90てんで終わり
「10点…?」
ジンは首を傾げた。
「いつの間に…」
玄野はちょっと悔しげにジンを睨んだ。
「おいあんた…他にいたネギ星人と戦ってたのか?」
西の言葉にジンはギクリとした。
恐らくガルキメスや宇宙船を落とした時の点数だ。
正体がバレた…?その恐れが彼を侵そうとした。もしバレたら…ジンは西を見た。自分の正体を知ったらさっきのように自分を襲ってくるのでは?と思っていた。
「ふん、まあいいさ」
西は玄関のドアに向かって歩き出した。
「おい、どこ行くんだ?」
加藤の言葉に西はきせるを返して玄野たち四人を見た。
「玄関開いてるぜ。帰りたきゃどうぞ」
「帰れる!?」
死んだとばかり思っていた玄野たちは半信半疑だった。
「ちょっと待てよ。こっちは聞きたいことだらけなんだぜ」
玄野は西を止めた。
「何?」
「お前、何者なんだ?」
やや間を置いて西は答えた。
「宇宙人」
ぎょっとなる玄野たちを見て西はぶっ!と吹き出した。
「ウソウソ。びびりすぎ」
「ふざけるな!」
加藤は怒鳴り散らした。
「他の人はどうなった?」
「見てたでしょ?殺されたよ」
西はガンツに歩み寄った。
「ガンツ…死んだ奴ら出してやれ」
すると、ガンツに「しぼう」の三文字が浮かび、それと入れ替わる
ように数多くの人の顔写真が映された。
「一番下、見てみなよ」
一番下には畑中ともう一人のヤクザと稲森、鈴木、そして山田の顔写真がある。
「こいつら全員、ガンツのミッションで死んでった奴ら」
ジンと加藤は顔をしかめた。数えきれない顔写真。一体どれだけの人々が犠牲になったのか。
「あのヤクザのおっさん派手にぶっ飛んでたよな。でももっとすごいの見てきたよ。一年前からここに始めてきてからずっとね」
恍惚に満ちた表情を浮かべる西。ジンは辛そうな顔をした。彼は人の死を見すぎてしまったのだ。
その西を睨みながら大股で加藤が近づく。今にも泣き出しそうな顔だった。
「ずっと黙ってたのか…わざと嘘ついてあいつらを星人と戦わせて…」
加藤の声が怒りと哀しみに満ちていく。
「そうだ!なんで教えなかった!?」
「そうよ!」
玄野と岸本も反発する。
「そうすると星人は油断するだろ」
全く反省の色を見せない西。むしろ楽しんでいたのだ。人の死を、そして玄野たちの反応を。
「なんで助けねえんだよ…人が殺されてんだぞ!」
ついに堪えきれなくなった加藤は西の胸ぐらを掴んだ。
「加藤さんダメだ!殴ったって…解決しない」
「…」
ジンの言葉に加藤の心はは少し揺らぎ、結局何もせずに下ろした。
「いるよね〜…あんたみたいな偽善者が。善意で教えてやってんのに、この扱い間違ってるだろ?そいつはよくわかってるよ」
西は相変わらず小馬鹿にするような目でジンに目をやる。
「今度は僕が質問していいか?」
ジンは西に近寄った。
「いいよ。何なりと」
「僕たちは、本当に生きてるのか?」
玄野たちもそれを聞きたかった。確かに自分たちは死んだはずだ。間違いなく…
「ああ、生きてるよ。ガンツに命を拾われたって考えたらいいさ。なら俺からあんたに質問していいか?」
「何だよ…」
「それで人間に化けたつもり?」
「…!」
絶句せざるを得なかった。加藤と岸本はまさか…と思ったが、ジンを見てそんなわけないかと少し安心した。しかし、ジンと同じように驚いていたのは玄野だった。なにせ、その証拠となりうるものを一度偶然にも見てしまったのだ。ポケットからはみ出していたあの
赤いメガネを…
(まさか…あいつ…)
西はそんなジンを嘲笑うように見ると、スーツのコントローラーに降れると、すう…と透明人間のように消えた。
「「「消えた!?」」」
「後、このことは話さない方がいいぜ。もしかしたら、頭に埋め込まれた爆弾で頭バアン!かもよ。まっ…さすがに誰も信じないだろうな。ククク…」
西はそう言い残して部屋を出た。
「「「「…」」」」
四人は何も言葉が出なかった。とりあえず部屋を後にし、それぞれの家に戻っていった。
「う…」
翌日、玄野はアパートの自室で目を覚ました。
「夢…だったよな?」
夢であって欲しかった。
だが、その願いは叶わないものだった。
学校鞄はなく、代わりにガンツスーツとXガンが机の椅子に置かれていた。恐らく地下鉄の駅に置いていったままだったのだ。
「…!」
夢のような日だった。だけど夢じゃなかった。
ガンツ
宇宙人
そして…
あの赤い巨人…
俺はこの現実をどう受け止めたらいいのかわからなかった。
そして、いつかまた始まるであろう戦いの日に導く、新しい朝が来た。
BY玄野計
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