蠢くもの
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2部分:第二章
第二章
「本当に」
「貴重な生き物なんだな」
「そうですよ。もう生きていること自体が奇跡ですから」
マネージャーはまた話した。
「まあ番組の目的はこれで果たされました」
「そうだよな。じゃあ後は」
「食べましょう」
マネージャーは笑顔で坂本に話した。
「南アフリカの料理を」
「どんな料理なんだ?南アフリカの料理って」
「実はここにも日本人がいまして」
「南アフリカにもかい」
「はい、いますよ」
こう坂本に話す。
「ちゃんと」
「そうか、俺達って色々な場所にいるんだな」
「そこでお刺身を食べるんですよ」
「南アフリカの和食か」
「どうですか?それで」
こう彼に話す。
「南アフリカの和食で」
「それも面白そうだな。じゃあそれにするか」
「はい、それじゃあ」
その食べるものも決まった。これも番組に収録されていることである。店も和風のものだった。欧風の街の中にそれはかなり目立つものだった。
寿司屋を思わせるその店の中でだ。坂本とマネージャーは番組のスタッフと共にあるものを食べていた。それが何かというとだ。
「こっちの川魚の刺身です」
「川魚?」
川魚と聞いてだ、坂本の顔が少し曇った。なぜかというとだ。
「ちょっとやばくないか?」
「虫ですか」
「それが怖いだろ」
彼が言うのはこのことだった。寄生虫のことなのだ。
「川魚はな」
「ああ、大丈夫ですよ」
「それはね」
だがここでだ。スタッフ達がにこやかに笑って彼に言った。
「ここのお店はそういうことはしっかりしてますから」
「わかってますから」
「そうなんだ」
坂本はそれを聞いて笑顔になった。
「そんなにしっかりしているんだ」
「ちゃんと養殖の衛生的にしっかりしたお店から仕入れてますから」
「大丈夫ですよ」
「よし、それじゃあ」
こう話してだった。その刺身や様々な和食を食べていく。
収録は無事終わった。坂本にとっては満足いく結果に終わった。
しかしである。それから暫く経ってだ。彼の右肩にあるものが出て来た。
それは瘤だった。五センチ四方の瘤がだ。彼の右肩に出て来たのである。
皆はそれを見てだ。怪訝な顔で彼に問うた。
「何処かにぶつけました?」
「それ何なんですか?」
「俺も気になってるんだけれどな」
当人も首を捻って言う。
「何時の間にかできてたんだよ」
「何時の間にか、ですか」
「そうなんですか」
「ああ、何だろうな」
また首を捻る。
「この瘤な」
「あまり気になるんだったら取りますか?」
「どうしますか?」
「別に痛くもないし別にいいだろ」
彼はそれはいいとした。
「特にな。それじゃあな」
「はい、それじゃあ」
「放っておきますか」
この時はそのままにした。それで終わりだった。
しかしである。数日後瘤は右肩から消えていた。だがここで。
「あれ、手の甲にですか?」
「瘤が移ってますよ」
「ああ、何でなんだ?」
彼自身わからないことだった。
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