貰った特典、死亡フラグ
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死亡フラグ貰いました。
7話:建てたフラグはフッケバイン。見つけたものは生きる意味
俺がマリを殺してしまった。これは紛れもない真実。だが、俺はそれを受け入れることはできなかった。
「嘘だっ! そんなことできるわけねぇだろ!」
「嘘ではない。お前の本に聞いたらどうだ?記録しているかもしれないぞ」
そんなことを言われても信じることはできないが
「蒼……」
『Jud.記録映像を開示』
そこに映ったのは今はもう動くことのないマリと、俺の姿。
『ダレン!!』
マリが俺のことを抱きしめ。名前を呼ぶ。その時、俺が動き出した。
『Start Up』
『がぁぁあぁぁぁぁ!!!』
『ダ、ダレン落ち着っ?』
グチュッ
マリの胸から大量の血が吹き出した。その血は俺の顔に降りかかっている。マリは俺の方に倒れかかり、俺も倒れた。
『記録映像終了。もう一度再生しますか?』
自分の顔に手を当てる。そこはとても濡れていた。赤くて、紅い綺麗な色。そして、思い出すのはマリの背中から飛び出すディバイダーの刀身。
「そんな……だって、俺がこんな……」
「これでわかっただろう。その娘を殺したのはお前だ。その事実は歪めることはできない。一番親しい人間さえ殺してしまう。もはや、お前は人を殺さずには生きていられない。それがエクリプスに感染した者の宿命だ」
違う! そんなことあるわけがない! そんなことあっていいわけがない!
「どう足掻こうと、お前は世界にとって毒でしかない。私達の所へと来い。そうすれば、幾分かはマシになる」
サイファーが何か言っているが何もかも聞こえない。まるで時間が止まったかの様だ。
「何でアイツは俺にこんなものをくれたんだろうなぁ。神の試練ってやつかなぁ……」
「何を言っている? 言っておくが、神が、例えいたとしてもお前を救うことなどできんよ」
本当に何でこんなことになってしまったのだろうか。俺はあんなにも優しくしてくれたマリを殺してしまった。親しい人間さえ殺してしまうなんて、あんまりじゃないか!
――憎いか?
何が……
――マリを殺させた、お前にこんなことをさせた、“エクリプスウィルス”が。
憎い!
――こんな思いをもうしたくないだろう?
そうだ。こんな苦しいこと……
――お前が親しい人間さえ殺してしまうのなら、そんなもの作らなければいい。
作らない? そんなこと……
――そのままではいつか同じ過ちを繰り返す。ならば、そんなものは要らない。そうすれば、今の苦しみを二度と味わうことはない。
もう、こんな思いはしたくない。誰かを失うなんてっ!
――ならば、その手に武器を取れ。目の前の者を叩き潰せ、差し出された手は振り払え、邪魔するものは消し飛ばせ!
俺には力がある。これがあれば!
――そうだ、もう何かを失う苦しみを味わうことはない。憎悪の炎を身に纏え。目の前にあるものを全て破壊しろ。仲間なんて要らない、強者は独りでいい。まずは目の前の女を殺せ! 苦しむことはもう要らない!
そうだ、俺はあいつを…………殺!!!
「ぐおあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁおおぁ!!!!」
体の中から何かが吹き出した気がした。俺の体を包んでいく、鎧。その力で全てを、殺す!
『リアクト確認。ドライバーの補助要請を受諾。外敵因子を確認、攻撃体制に入ります』
「破壊、蹂躙、殲滅、壊す、滅す、殺す、滅ぼす!」
後にはもう、戻れない。
●●
(厄介なことになったな……)
目の前の男が目を覚ましたら、連れていこうと思っていたが、まさか暴走するとは思わなかった。時間を無駄にはできない。長居し過ぎると、管理局の連中が来るかもしれない。そうすると面倒だ。
「仕方がない。少々、本気でいかせてもらう。手足の1、2本無くしても恨むなよ?」
相 手は適合したばかりの初心者、私はまぁそれなりには長い。油断しなければ、負けはしないだろう。
だが、その考えは数分で間違っていたことに気づいた。
『翔翼展開。ブースター点火』
まずは、レアスキルかと思われる“翔翼”。速さは大したことはないが、なぜか相手に疲労が見られない。そして一番の問題はこの男の持つ得物。ランスの中に銃器を無理矢理突っ込んだ様な形の両手に持つ二本一対の武器。それだけならまだ良かった。しかし、これは“飛んでくる”のだ。
ヒュボッ!
「くっ!」
柄の後ろからミサイルの様に火を吹き出しながら、飛んでくる。例え避けても、
『再点火』
私の後ろでクルリと半回転し、また飛んでくる。再点火は一回飛ばした後に一回だけという制約があるようだが、かなり厄介だ。
そして、鎧。ビルの様なものではないが、頭を口以外覆う構造で、鎧も動きやすいようにするためか面積はあまり大きくはない。
「お前、なかなかやるな」
「お褒めいただき、光栄至極なンだよねェ!」
そして、最初と違い意識もはっきりしてきたのか、動きの切れも良くなってきた。だが
(筋は良いが、雑だな)
やはり、初心者臭さは否めない。感染者同士の戦いは特殊な経験値が必要だ。しかし、この男にはそれが皆無。最後には経験の差がものを言う。段々と男は私の動きについてこれなくなっていた。
「はあぁぁぁぁ!!」
「おォォォォォ!!」
ガキィッ!ガッ!ギイィンッ!ガギッ!
(ここだ)
「左腕、貰うぞ」
ザシュッ!
「ふん、やはり甘い、なっ……!?」
おかしい、確かに斬ったはずだ。なのに何故、腕が繋がっている?切断する感触は確かにあったはず。
「らあァァァァァァァ!」
ガギッ!
「ならば、左腕!」
しかし、斬ったはずなのにやはり繋がったままだ。
(再生能力にしてはおかしい。ビルの病化も似たようなものだが、これでは速すぎる!)
エクリプス感染者にはかなり強い再生能力がある。そして、ビルの病化は“高速再生”。しかし、この男のはそれを遥かに越える。言うなれば“瞬間”
。
(少し、試してみるか)
『翔翼展開』
この男は私が距離をとると、“翔翼”を使い、すぐに近づいてくる癖がある。そこを狙う!
「ふっ!」
ザシュッ!ズシュッ!
今ので見えた。この男の病化は、恐らく回復系であることは間違いない。右腕を斬ったが、なんと斬った所からすぐに繋がっていた。これでは切断できるわけはない。血を流させて、意識を飛ばすこともできない。しかし、妙だ。病化は適合を終えてからすぐに始まるわけではない。個人差はあれどこの男はあまりにも速すぎる。
(殺す気で行かなければ、駄目だな……)
無敵に見えるが弱点はあった。今思い付いた。
「行くぞ」
男は突進してくるが、それを横に避ける。いくら速くても直線的であれば避けることは容易い。これも経験の差だろう。
そして、私は男に剣を突き刺す。そしてそのまま地面に縫い付ける。そう、突き刺したまま。
「なっ、くっ、抜けねェ!」
「やはりな。お前の病化が邪魔をしているんだ。そう簡単には抜けん」
一見、無敵そうな病化だが回復速度の速さ故の弱点はある。突き刺したままだと、傷を回復しようとして皮膚などが繋がろうとする。そうすると剣は繋がろうとする皮膚などが邪魔をして抜け抜けにくくなる。かなり力を入れれば抜けるだろうが、相応の痛みを伴うだろう。
「少々、てこずったがこれで終わりだ」
ガギンッ!
「くそっ!蒼!」
『防御体制に移行』
「遅い!」
ズドオォォォォォォォォォッ!!!
撃ってみたが、どうやら相手の防御は失敗したようだ。本の方もダメージを受けている。男は……気絶したか。
『ザザッドラジッバー、気絶。戦ザッ続行不ザザジッ自己防衛シジビッ移行』
そう言うなり、本は消えていった。
「しかし、初心者にしては良くやった方だな。鍛えればかなりの強さになるかもしれん」
それにしても、気絶してしまったからどうやって運ぼうか。バイクで来てしまったから連れていくことができない。
「仕方ない。アルでも呼ぶとするか」
とりあえずは、バイクの有る所までこいつを運ぶことにしよう。
『ザッ生体データジッインストール開始。記憶、人格データジビッコピー開始。管制人格の上書き開始ザザジップログラム体の作成ビジッ開始』
「ダレン」
あれ? 誰かが俺を呼んでいる気がする。俺がいるのは真っ白な空間。また、死んでしまったのだろうか?
「こっちだよ、ダレン」
そう言われても、辺りは何もない。そして何処から声が聞こえるのかもわからない。
「後ろにいるよ、ダレン」
振り向いた先にいたのは、死んでしまった、いや、俺が殺したマリ。どうしてここにいるのだろう。もしかして、全ては夢だったのかもしれない。
「マリッ!」
ただ、手を伸ばした先にはもう、誰もいなくなっていた。
「マリッ!」
目を開ける。俺がいるのは真っ白な空間ではなく、色があった。だが、どちらかと言うと白が多かった。
「どこだ、ここ? 確かマリを殺した映像を見てそれで……」
そこからが全く思い出せない。ただ、憎しみの感情が渦巻いていた気がする。というか何で俺、イスに縛られてんの?
「やっと、起きたな。これ以上気絶などするなよ?」
そこにいたのはサイファー。なんとか動こうとするが、縛られているので動けなかった。
「おっと、抵抗はしないでください。殺さなくていいものを、殺さなければならなくなりますから」
どうやら、この部屋には二人いたらしい。この優男みたいなのは確か……フォルティスだったか。
「おはよう、いや、もうこんばんはですね。気分はどうですか?ダレン君」
「いいわけねェだろ。てか何で縛ってンだよ」
イスに縛られているのに最高に元気です! とか言うやつはいない。というか、身体中が痛い。鈍痛。体の鎧みたいなのが、ゴツゴツ当たる。
「縛っている点に関しては、我慢してください。仕方のないことです。僕はフォルティスといいます。隣はサイファー。はじめまして」
そんなことは前から知っている。その後は、EC感染者は人を殺さずにはいられないとか、フッケバインは犯罪組織でとか、僕達はウィルスを御する方法を知っているなど、マンガ言っていたことを色々説明された。
だ が、目の前のフォルティスという男は説明にさりげない嘘を混ぜることに定評がある。どこを信じればいいのかがわからない。
「どうやら、君はおもしろい力を持っているようですし、ひとつ提案があります」
「なんだよ?」
「僕達の一家に加わりませんか?」
やっぱりか……。主人公にも同じこと言ってたしな。
「エクリプス感染者は親しい人さえも殺してしまいます。しかし、僕達の仲間になりウィルスを制御すれば大丈夫です。同じエクリプス感染者です。僕達はダレン君、君を歓迎します」
そ う言って、俺に手を差し出してくる。この手を取って、仲間になれと言いたいのだろう。
だから、俺はその手を…………
取るしかなかった。
もとより、エクリプス感染者はろくな人生を遅れない。それは身をもって体験した。マリを殺したということで。
俺にはもう、失うものはない。そんなものは全て自分の手で殺してしまった。そして俺は前から思っていたが、この世界で“エクリプスウィルス”というものを造りだしたヤツを許せなかった。本の中のことに怒ることなど、おかしいかもしれないがそれでもだ。
そして、俺はこのウイルスを俺に感染させたアイツに抗いたいと思った。もしかしたら、俺のこの過ちを見て楽しんでるのかもしれないし、もしかしたら見ていないのかもしれない。だが、このまま死ぬことなど俺自身が許せない。マリを殺したのは俺だが、そもそも“エクリプスウィルス”がなければこんなことにはならなかったのかもしれない。
責任転嫁かもしれない。おかしいと思うなら笑えばいい。だけど俺はこの思いを胸にこの世界で生きていく。
そうして、俺は“フッケバイン一家”に入った。犯罪、人殺しにはなれると言っていたが、その通りだった。慣れなければやっていけない。文字通り、俺は人間を喰らう獣となった。
色んなことがあって、3か月後。俺はその時には、管理局員、民間人、犯罪者含めて26人の人間を殺した。
後書き
感想、アドバイスなどよろしくお願いいたします。
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