Tales Of The Abyss 〜Another story〜
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#26 襲撃のリグレット・アリエッタ
前書き
~一言~
本当に遅くなってしまってすみません……。アビス、ロザリオ、めだか に関しまして、アットノベルス様がいつの間にか、閉鎖されたらしく……、更新が出来ない状態でした。
たまたま、出てきたフラッシュメモリの中に この小説が入ってましたので どうにか 更新出来る事が出来ました。 これからも、何とか頑張ります。
じーくw
神託の盾 side
タルタロスを完全に占領している神託の盾騎士団だったが、流石に突然全ての機能が停止し、扉も全て閉じその上灯りまで落ちた事に動揺を隠す事が出来なかった。
「いったい……、何が起きているの?」
ライガに乗っている少女もそうだ。幼い故に という訳ではない。彼女も神託の盾騎士団の将の1人なのだから。
周りの兵士達も、現状が全く判らない。この状況の原因が。
「わっ わかりません! 何故か全ての機能が 停止してしまいました」
タルタロスにある制御室にて、原因の追究と復旧の操作を同時進行で行っていたのだが、復帰のめどが全く立たなかった。
「……うう、 どうしよう……閉じ込められちゃった……」
いつまでたっても、扉は開かれず、どうしようもなかったその時だ。
『グルルルル………』
乗っているライガが、少女の方を見ながら唸った。まるで、話しかけているかの様に。
「……えっ? 助けてくれるの?」
少女は ラルガの言葉が判る様だ。
ラルガの言葉を理解し、そう訊いたと同時に ライガは頷いた。そして、すっと立ち上がり、隔壁まで移動したのだった。
牢獄内に閉じ込められていたメンバー達も何が起きたのか判らなかった。ジェイド以外は。
「一体何が??」
「タルタロスの非情停止機構を発動させました。 左舷昇降機へ!! 非情停止するとあそこ以外は開かなくなります!」
そう早口にジェイドは言うと 牢屋の扉を開け、外へと飛び出した。非常停止機構を発動した故に、ジェイドの言う通り、全ての扉をロックされていた。
そのおかげもあってか、神託の盾の連中とは全く出会う事もなく、スムーズに外へと出る事が出来た。
そして、丁度その頃、タルタロスの外。
イオンを捕らえた神託の盾のメンバーが、タルタロスからの出迎えを待っていた。だが 一向に変化はなく、通信機で連絡も出来なくなっていた。
「妙だな……。静か過ぎる出迎えの兵もいないとは・・・タルタロス内部との連絡も途絶えたままか?」
先頭にいる女騎士が 部下の一人に聞くが、首を縦に振る事はなかった。
「はっ 申し訳ありませんリグレット様」
敬意を示しつつ、傅く。この女騎士の名は。
《六神将 魔弾のリグレット》
「…………フッ」
リグレットは何かを感じ取ったのか薄く笑った。そして 部下の1人に指示を出す。
「いいだろう 非常昇降口を開け!」
そして昇降口を開ける。その扉が開いたと同時に、何名か飛び出してきた。
「ジェイド!!ルーク!!アル!!」
イオンが、飛びかかってきた者達を見て叫んだ。
「ふっ やはり来たな」
リグレットは、自分が感じていた気配が間違いない事を悟ると、部下達を散開させた。
戦闘態勢に入ろうとした時だ。
「おらぁぁぁぁあ! 先手必勝だぁぁぁ! やれぇぇぇ ブタザル!!!」
ルークは、ミュウを 乱暴にむんずっ! と掴むと、ミュウもそれに反応して攻撃した。
「みゅううぅうううぅうううううぅううううぅぅ!! ファイアーーーーーーー!!!」
ミュウのソーサラーリングによる攻撃。遠距離攻撃であり 先手を取るのには最適だ。ルークもそれを判っていたのか 或いはてきとうな行動だったのか、功を成す事になる。
流石はミュウ使い?だ。
「あちちちちい!!」
「ぐわわわわわわわ!」
結構効果は抜群みたい、少なくとも怯ませることは出来ていた。だが、同じく遠距離攻撃を主体とする、銃使い、リグレットには関係ない事だった。
「ふん!」
リグレットが銃を構えたその時だ。
リグレットの事をよく知っているジェイドが、槍を使い、リグレットの銃を弾き飛ばした。その力はよく知っているから。この場において、厄介な敵の内の1人だから警戒をしていたのだろう。
「流石は、死霊使いジェイド・カーティス。 貴様の譜術は封じたと聞いていたが、……やはり 一筋縄ではいかないようだ。」
「! 成る程。どうやらラルゴは生きていたようですね」
ジェイドの譜術が封じられている。その事を知っているのは、あの場にいた仲間達と、もう1人 仕掛けた本人である、あの黒獅子ラルゴしかいないのだ。だから そう結論するのは難しくなかった。
「……なぁ? ティア・グランツ!」
リグレットが、今度はティアの方を見た。リグレットとティア、2人は目を合わせた途端に、ティアは驚いていた。今 初めて リグレットの存在を知った様だ。
「あ……っ 貴女はリ……リグレット教官??」
いつも冷静なティアだが、今は動揺しているのがよく判る。そして、その背後から巨大な影が現れた。この形状の影は見た事がある。
「いけない!! ティアさん! そこから離れろ!!」
アルが 真っ先に 気づき、そう言ったその瞬間だ。その巨大な影は更に大きくなり、ティアに飛びかかった。獰猛な牙と爪がティアを襲う。
「ライガ!?」
ティアは、その攻撃を間一髪、躱す事が出来た。だが ここに、ラルガがいる理由が判らない。そう思っていた時だ。
そのライガの背に、誰かが乗っている。……その人物がいたのに気がついた。
「やっと出られた………」
巨大なラルガに乗っていたのは人だ。人間の敵とも言っていいラルガの背に。
「女のコっ!?」
そう、アニスと変わらないくらいの背格好の幼い少女が乗っていたのだ。それに アルは驚きを隠せられなかった。
「アリエッタ!」
「おっと…… 動くと危ないですよ?」
ラルガと共に、この少女。
《六神将 妖獣のアリエッタ》
その少女は、タルタロスに閉じ込められたままだったが、ここまで出てくる事が出来たのだ。その乗っているラルガのおかげで。
「この仔が隔壁を切り裂いてくれて何とかここまでこられたの……。 イオン様………」
アリエッタは、そう呟きながらじっとイオンを見つめていた。
まるで、何かを訴えている様に。
「敵、結構多いな……」
アルは、周囲にいる敵数にそう思う。
最も厄介だとされるリグレットがジェイドに封じられている状況だけど、そんな事アルが知っている筈もない。何人か撃退したのだが、それでも減った感じがしないのだ。
「……ここを突破しないと逃げられない!」
だけど、弱気な事を言う事なく、力を込めた。
更に更に、倒した数は増えていっているのだが、どうしても敵の絶対数が多い。
それでも、少数であっても決して倒れず撃退していっている姿は驚嘆だった。
「あの男、只者じゃないな………」
リグレットもその実力が判った様で、ずっとあの男を、アルから目を逸らさなかった。
「おや? 貴女は 彼に興味があるのですか? 見かけによらず年下がタイプなんですね」
ジェイドは、こう言う場面でも、いつもどおり軽口? ジョーク? 的なことを言っている。まだ敵が多く 仲間達が危険なのは変わらないが、それでも、落ち着いていられるのは 場数を踏んできた違いや、軍人だから、という訳だけではない。
彼の実力を知っているからだ。
あの町で、あの巨大なゴーレムに全く怯まず、戦い続けていた。そして、ラルガ・クイーンとの一戦もある。だから この程度の敵に遅れる訳がないと。
そして、何よりもリグレットを離さない事に、ジョークを言いつつも、集中していたのだ。……が、そのジョークは、流石に六神将であるリグレットには通用しないようだ。
「ふっ 成る程。……あの男には、何か秘密がありそうだ」
ジェイドの言葉を一笑し、アルの事を、観察をしていた。捕まっていると言うのに精神力が凄まじいのは流石の一言だろう。
そんな時だった。
「ルーク!! 下がって!! あなたじゃ、人は切れない!」
ティアの声が聞えてきたのは。
「っっ!!」
アルもその声に反応した。声の先には、ルークが戦っているのが見える。
「危ない! 今のルークじゃ!!」
距離が離れているが、直ぐにルークの場所へとアルは移動するが。
「死ねェェ!!」
すぐさま、兵が数人 取り囲むように遅いかかってきたのだ。敵が多い故に、分断されるのは仕方がない事だった。
「クソっ! こいつら!! 」
アルは、悪態をつきつつも、詠唱に入った。譜術の方が、単純な攻撃、通常攻撃よりも遥かに効果があるからだ。詠唱には時間がかかるのだが、何度も戦いを経験してきた故に、アルは、そのコツを掴んできた。
そして、何よりも 譜術はそれだけじゃない、という事も理解したのだ。
「気をつけろ! こいつの譜術は強力だ! 詠唱の隙を与えるな!!」
敵兵の1人が、そう叫ぶ。勿論 アルの譜術を何度も目の当たりにし、仲間達が吹き飛ばされているシーンも見ているからこそ、全員が理解していた。
「オラアアア!!」
「死ねえええええ!!」
だからこそ、詠唱をさせない様に、間髪いれず、襲い掛かってくる。
それを見て、アルはニヤリと笑った。
「……オレの詠唱を防ぐだけで、譜術を止めれると思ったら大間違いだ!」
そう叫ぶと、同時に、今度は指先で譜術の陣形を描いた。何もない空中に 光のラインが生まれ、形を成していく。
「何だ!? これは!!」
突然、目の前に現れた光に驚く兵士。だが、もう既に遅かった。
「熱いの一発いくぞ!? 覚悟しろ! 獄炎 イグニート・バースト!」
アルが、そう言うと同時にだ。光のライン。図形から 真紅の炎が迸り、敵兵士たちを包み込んだ。
「ぐわあああ!!」
「がはあああ!!」
その炎は柱となり、更にその高熱によって、上昇気流を生み出す。炎の渦だ。
その凄まじい火災旋風は、何人かを上へと吹き飛ばした。
「なっ!!」
リグレットも流石に驚いていた。譜術士に対しての戦術、セオリーをついた戦いを選択した、部下は 間違ってなかった。寧ろ 100点満点の戦術だ。詠唱させない様に攻撃をする事がだ。
だが、あの男は 詠唱を中断し、別の手段で攻撃をした。……見た事のない攻撃手段だった。その上 通常の譜術よりも遥かに早いのだ。
「また驚きましたね 速攻で譜術を。その上、これ程の威力、ですか」
ジェイドも、勿論驚いていたが、笑っていた。
それは嬉しい誤算だったからだ。譜術を使用する際は詠唱が必要、そしてそれは強力な術ほどに時間がかかるもの、それが常識だった。だが、その常識を覆した。
あの町で見た凄まじい威力の譜術を操ったアルだから、と妙に納得出来る事だが。
「さて、形勢はこちらに有り、ですね。では 早いとこ降伏をしてください」
ジェイドは、そうリグレットに告げた。だが、リグレットは頷かない。寧ろ笑っていたのだ。
「ふっ……、確かにあの男は大したものだ……が、 こちらの方の男は、そうでもないぞ?」
リグレットがそう言って見た先にはルークがいた。
「ぐぅ! がぁっ!!」
明らかにいつもよりキレの悪い動きをしている。身体のキレが悪い理由は明らかだった。戦いの場だと言うのに、深く自問自答を繰り返しているからだ。
「(こ、殺す……? また人を……?)」
そう、その事が、何度も頭に過る。一度、取り付いたそれは、まるで身体から離れないのだ。まるで悪霊の様に、呪いの様に。あの時殺した男の呪いの様に。
「(嫌だ……嫌だっ!! 怖い……怖いっ!!)」
怖いと強く感じてしまった。手に持つ剣にも力が入らない。
だからこそ、ルークは致命的なミスをしてしまった。怖いからこそ、目を閉じてしまったのだ。敵から目を逸らすと言う愚行を犯してしまうのだ。
それを見た敵側が手を緩める訳はない。だから、ルークに斬りかかろうとしたその時だ。
何かを斬る音がした。……だが、それはルークにではない。鮮血を散らせたのは……。
「!!!」
「……ばか……………」
地に倒れるのは、ティアだった。ルークを身を呈して庇ったのだ。
「っっ! ティアさん!!!」
傷がの程度は判らない。だが、倒れてしまった以上、決して浅くはないだろう。
「ちっ!」
ジェイドが槍を投げつけ敵を撃退したが、その代償で強敵であるリグレットを解放してしまったのだ。
その上、アリエッタが連れてきたライガ達も暴れている。
そして、こちらは1名、戦闘不能に陥ってしまった。彼女を人質に取られる可能性だって捨てきれない。最悪、攻撃される可能性も。
「っ! まずい!!」
アルは、急いで向かおうとしたが、最初の時同様に、敵がまだ多い。近づけない。
「ふっ……いかせんぞ」
そして、リグレットが銃を構えなおし、アルを狙おうとしたその時だ。
突然、頭上。タルタロス上部から誰かが 降りてきてイオンを取り囲んでいた兵士をなぎ倒したのだ。
「ガイ様 華麗に参上!」
突然の事に混乱を隠す事が出来ないのは、敵味方同じだった。突然現れた民間人と言う訳ではなさそうだ。イオンを助けてくれたんだから。
「さて、うちの坊ちゃんを捜しにきてみりゃ、一体なんの騒ぎだこりゃあ? とりあえず、皆まとめて返してもらうぜ」
ガイ、と名乗る彼が、そう言うと意味深に片眼を閉じて、ウインクした。
それの意図に気付いたリグレットだったが、時は既に遅かった。
「形勢……、再び逆転ですね?」
ジェイドが隙を見てアリエッタを捕らえていたのだ。
「うん。そう言うことだね。ティアさんも心配だし、もう大人しくして貰うよ」
アルも戻ってきた。
向かってきた神託の盾の兵全てを倒して戻ってきたのだ。
「リグレット……ごめんなさい………」
アリエッタは、ジェイドに捕らえられたまま、リグレットに謝っていた。魔物を操る術に関しては驚嘆だが、幼い少女故に力ではジェイドに敵うべくもない。譜術も扱う事が出来るが、それでもだ。捕まっている今は関係ないから。
「ちっ……、兵も 殺られたか………」
リグレットは、戻ってきたアルを見て その後ろで倒れている兵士たちを見て、そう呟く。
「ち、ちょっとっ 人聞きの悪いことを言わないでよ! 皆なら、無事だよ。邪魔してきたから、ちょっと眠ってもらって起きても、数週間はあちこち痛くて動けないかもしれないけど。命までとってないよ!」
そう苦笑しながらアルは言った。
アルの言う通り、敵は気絶をしている様だ。身体は 鼓動をし、動いているから。
「まあ それはともかく 武器を棄ててタルタロスへ戻ってもらいましょうか」
ジェイドが そう言うと、リグレットはもう観念したのか
「…………仕方ない、な」
手に持っていた武器を棄てて、そして 残った部下はそれぞれ倒れている兵を連れて、タルタロスへ入っていったのだった。
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