貰った特典、死亡フラグ
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死亡フラグ貰いました。
5話:平穏の終わりは唐突に
前書き
4話については、後程投稿します。
外から鳥のさえずりが聞こえる。朝日が窓からわたしに向かって射し込んでいる。
「はむ~」
まだ、起きる時間には早い。もう少し寝ていようかなぁ。ダレンもまだ寝てるだろうし~。
「……あ」
そうだった。今日は早く起きようと思ってたんだ。昨日みたいにダレンの後に起きちゃうと、また裸見られちゃう。それは恥ずかしいよ~。
わたしは相変わらず上半身裸で起きていた。少し寒い。急いで脱いでいた上を着る。なんで、こんな癖がついちゃったんだろう?
「む~。んしょっと」
眠い目を擦りながら、ゆっくりと床に足を降ろす。音をたててダレンが起きてしまったら、意味がない。歩くときもゆっくりと。抜き足、差し足、忍び足。
そうして、ダレンの近くまで来ると、ダレンの寝顔が目に写った。まるで、小さな子供の様なその寝顔。つい、つんつんしたい衝動に駆られるがそこはグッと我慢。起こしてしまっては意味はない。昔、お父さんとお母さんとで3人で寝ていた頃、よくお母さんと一緒にお父さんの寝顔をつんつんしていたのが懐かしい。
わたしは、お母さん達みたいな結婚生活に憧れている。いつも仲良くて、時々喧嘩するけど、すぐ仲直り。そんないつまでも仲良しな夫婦。わたしも毎朝、旦那さんの寝顔をつんつん、なんてしたいなぁ~。
「わたしのこと、守ってくれるって誓ってくれたもんね~」
あ、その前に着替えないと。ダレンが起きる前に。着替えは、寒いしベッドの上でしよう。
●●
何か物音がする。それで俺は目が覚めた。しかし、まだ寝たりない。もう少し、寝ていたい。
(ダメだ、ダメだ! マリが起きる前に起きて、部屋から出ないとまた目撃してしまう!)
見なければいいだけの話かもしれないが、昨日みたいにマリが近づいてきたら困る。眠いが、ここは我慢して起きよう。
「とりあえず、マリを起こさないように……」
布団から体を出した俺。すると、どうでしょう。目の前にはなんと、今まさにベッドの上で、上着を着ようとしているマリの姿が。
マリが着ている姿がゆっくりと見えた。俺はその場から、動くことは出来なかった。マリに見惚れていたというのもあれば、この後に起こるであろう、惨劇に恐怖していたのだ。怒った女の子ほど、怖いものはないよね! 特にマリっ!
「ふ~~~」
完全に上着を着終えて、服から顔を出すマリ。そうして、バッチリと目が合う俺達。とりあえず、朝のあいさつかな?
「お……はよう」
マリが俺のあいさつに答えようと、一呼吸。
「にゃ~~~~~っ!!!?」
ところが、返ってきたのは悲鳴。そりゃそうだよね。マリは俺に向けてビシッと指を指し
「また! ダレン見た! 絶対見た! 何で起きてるのさ、この変態!」
「いや、俺早起きしようとしただけだし、見てねぇよ!」
ここは嘘をついておこう。正直に言って、昨日の様なことになりたくない。
「ピンク!」
ん? ああ、胸当て、俗に言うブラの色か? 違うな……、色は
「白だあぁぁぁぁぁぁあぁおぁおあべふっ!!!」
間違えていたからといって、訂正するべきではなかったらしい。答えた瞬間、背負い投げの様なことをされて、ベッドに叩きつけられた。マリは俺にのしかかって、顔を近付けて、凄んでくる。あのー、顔近すぎだと思います。
「やっぱり、見たんだ~。どうして?」
「いや、どうと言われましても……」
マリは俺の両腕を押さえ付けて、起き上がれないようにしている。痛い、力強すぎ。
「あのー、マリさん。なぜこの様な技をお持ちで?」
「お母さんに教えてもらったんだ~。地球って世界の“ジュドー”って競技」
ああ、“柔道”ね。俺、痛いから苦手なんだよね、あれ。それにしても、上手すぎだろ。
「2人とも、朝から何をしてるの? ご近所迷惑……あらあらあらぁ?」
騒ぎすぎたのか、サーシャさんが部屋にはいってきた。なぜか、物凄くニコニコして。なるほど、よく考えてほしい、今の俺とマリの体勢を。マリは俺の上にのしかかり、顔を近づけている。しかも、ベッドの上。マリが俺を押し倒している様に見えなくもないのか?
てか、これ普通逆じゃね? 女の子に押し倒されるってすごい負けた気がする。マリって以外と力強いんだね。
「これじゃあまるで、……マリがダレン君を押し倒しているみたいね!」
「ふぇ、え、は……いにゃああああああああっ!!」
サーシャさんに言われ、マリは今自分がどんなことをしているのか理解したようで、“翔翼”びっくりの速度で部屋から出ていってしまった。助かった。ていうか、叫び声か普通じゃなかったな。
「まあ、ダレン君。また、マリの裸見ちゃった系かしら~?」
「そうです。背負い投げされました」
「あらまあ、マリが? 教えたこと実践できたようね~。懐かしいわ~、私もよくアルさんに技をかけて、マウント取って、あんなことやこんなこと、え! そんなことまで!? をしたものよ~」
や~ん、とクネクネしているサーシャさん。良かったですね、あなたの血はマリに流れてますよ!
その後、マリを探すのに10分、顔を赤く染めたマリをなだめるのに13分かかったことを一生覚えておこう。この先、どうやってもマリの裸を目撃してしまいそうで怖い。
「おう、ダレン君。こっちに持ってきてくれ」
「わかりました!」
朝食後、俺が一宿一飯の恩義としてやっている仕事は家造り。ログハウスの様なものだ。この開墾地に建っているほとんどがそれである。いや、もう2宿2飯かな。
木材を担いで積み上げる。結構つらい。が、働くというのは良いものだ。
「ダレン君、こっちにも」
「はーい!」
ここの人達はとてま気さくで、いい人達ばかりだ。暖かい雰囲気、前世では味わったことはない。
「疲れてねぇか? ダレン」
「少し……」
この人はアルさん、マリの父親だ。筋肉もりもりである。最初見たときは絞め殺されるかと思った。娘に手を出しやがって! みたいな。でもそんなことはなく、逆に婿に来てと言われた。サーシャさんはアルさんとの惚気話をよくするしね。おもしろい人だ。サーシャさん、よくこんな人背負い投げできますね。
「じゃあそろそろ休憩にするか。昼も近いしなぁ!」
午前中からやっていて、もうへとへと。俺ってあんま体力なかったんだなぁと思う。中学校は運動部だったけど高校から帰宅部だったし、体力は落ちているだろう。
「ダレーン!」
マリがこっちに走ってきた。後ろにはサーシャさんもいる。提げているのはバスケットだろう。昼飯か?
ダレンというこの世界での俺の名前だが、時々忘れることがある。それこそ俺自身が意識していないと呼ばれても自分のことだとわからないこともある。
「マリ、転ぶなよー」
「大丈夫だひゃわぁ!」
「はっはっは! マリは慌てん坊さんだなぁ!」
アルさん、笑ってないで助けてあげましょうよ。
「ダレン、助けて~」
「あー、はいはい」
マリと俺との距離は10m程度。走ってくる必要もなかったと思うのだが。
「大丈夫か?」
「痛かった~」
体を起こすマリだが、服には泥が結構ついている。はらってやろうと手を伸ばすが
「っ!?」
ビクッとされた。もしかしてまだ朝のことを気にしているのだろうか? 2回目ですからね。でも完璧なる事故ですよ?
「いや、泥はらってやろっかなーって思ってたんだけど……」
「……それでも女の子の体にいきなり手を伸ばしたら誰だってビックリするよ。それに……」
もしかしたら、サーシャさんに言われたこと、まだ恥ずかしがっているのか?
「よくわからないけど、そういうもん?」
「そういうものなの!」
大体、ダレンは女心がうんぬんかんぬん言われるが、今はそれどころじゃない。早く、昼飯を!
「あらあら、マリ。そんなことしてたら時間が無くなっちゃうわよ? それにダレン君の為に作ったんじゃなかったっけ?」
なんですと! マリが俺の為に……。これが男の憧れる女の子の手料理ってやつですか? ならば早くしなければ!
ガッシとマリの腕を掴んで立たせる。怪我はないな、バスケットは、よし無事だ。
「早く、食うぞ、マリ!」
「え、ああうん、そうだね! 早く食べよう! 手繋がれてるの気にしなくていいよね、あはは!」
テーブルのあるところに移動して、バスケットを開けてみるとそこには
「これは、サンドウィッチ……正にサンドウィッチ」
とりあえず、二回言ってみた。王道のBLTから玉子サラダのものまである。
「これをマリが?」
「そうだよ~。わたしだって家事は人並みにできるし、料理作るの好きだしね。あと、お菓子造りも最近やり始めた~」
「ダレンに食べてもらうんだって張り切ってたもんね」
「ちよっとお母さん!」
「あら、いいじゃない。青春って感じだわ~。私も昔はアルさんと……」
「そうだなぁ、懐かしいなぁ!」
そんな会話は耳に入らず、俺はBLTサンドを手に取り、一口。
「うまい!」
「本当!?」
「ああ、すごいなマリ。いいお嫁さんになれるぜ!」
「じゃあダレンのお嫁さんにしてくれる?」
「いや~、それはどうっぱは!」
今日二度目の失言。やっぱり俺は学習しないらしい。これが俺の悪い癖。
「やっぱりさ~、ダレンには女心のなんたるかをさ、一から体に叩き込んだ方がいいと思うんだけど、どうかなぁ~」
「まずは食ってる最中にみぞおち狙うのやめて欲しいです。食べられなくなったらどうする……」
「大丈夫~。口に突っ込むから」
「やめてー!」
サンドウィッチは全部食べました。途中食べきれなさそうなので、マリと半分こした。あと、アルさんにサーシャさん。口移し、口移しとはやしたてるのやめてください。超恥ずかしいです。
「俺のこと、ですか?」
午後、今いるのはマリの家のリビング。居間かな? どっちでもいいか。
「そうだ、ダレンは自分について覚えていないのか?」
一緒にいるのはアルさんとサーシャさん。マリは子供達と外で遊んでいる。良きお姉さんだなぁ、ドジだけど。俺がマリと一緒にいると子供達の――特に男の子――視線がこわい。メチャクチャにらんでくる。あれか、マリは子供達に大人気か。
「覚えてるのは自分の名前くらいです。どこの世界にいたのかまでは……」
転生どうのこうのの話は黙っておく。話したって混乱するだけだと思う。騙しているみたいで、心が痛む。こんなにいい人達に対してはさらに。
「そうか。なら提案なんだが……もしよかったら、ここで暮らさないか?」
「ここで、ですか?」
「ダレン君が良かったらだけどね」
俺は“エクリプスウィルス”に感染している。それは殺戮衝動を引き起こすし、周りに人がいると危ない。今はまだ発症していないが、もし症状が出てきたら俺はここからすぐ立ち去るつもりだった。俺にこんなにも優しくしてくれた人達を殺したくはない。
「管理局に行っても、もし親御さんが見つからなかったら、いや見つかって欲しいんだけど」
「でも……」
「マリそんなこと言ってたわね」
マリ。この世界に転生してから始めてできた友達。しかも女の子。前世で女子の友達はおろか話すらしたことはなかった。
「ダレン君は17歳?」
「はい、一応」
「マリもねぇ、同い年よ」
「ええ!」
これには驚いた。少なくとも2歳くらいは年下かと思っていた。背の高さのこともあるし、何よりドジっ娘というか雰囲気が年下だったのだ。
「マリはねぇ、実は結構人見知りなのよ? でもダレン君を見たときに、わたしが手当てします、って言ったの。ダレン君とは合うと思ったのかしら。それにマリは同い年の友達がいないのよ」
確かにここにはマリと同い年の子供がいない。2、3歳年下か年上はいるが本当の意味で同い年はいない。それに大人の方が多い。子供達に人気があるのはそのためだろうか?
「俺には人見知りしないからって、マリの部屋に叩き込んだんですか?」
「そんなことない訳じゃないが、マリだってまんざらでもなかったぞ? 案外お似合いなんじゃないか?」
「出会って2日すら経ってないのにわかるわけないじゃないですか」
「でも君はマリのこと、嫌いなわけではないだろう?」
「そりゃそうですけど……」
俺としてはどうなんだろう? 俺はマリのことをどう思っているのか。ドジな妹? 違うなぁ。
「まぁ、そこらへんをふまえて今夜2人っきりで話し合うといい。まさに逢い引きだな!」
「そうね、頑張ってねダレン君!」
なんだろう、めまいがしてきた。ホントに視界がぐるぐる回っている気がする。
「それで、君に話したいこと……どうした? ダレン」
「いや、なんか……」
そう言い、立ち上がろうとしたが、
ガダンッ!
力が入らず、逆に床に倒れてしまった。
「ダレン君!」
「熱がある。早く誰か呼んできてくれ!」
(やっちまった)
この発熱は恐らく“エクリプスウィルス”が発症した合図。このままでは周りの皆、そして俺自身も危ない。
「ダレン、どうしたの!?」
視線だけ向けるとそこにいたのはマリ。俺はこの娘さえ殺してしまうんだろうか?それだけは絶対に阻止しなければならない。
体を起こそうとしたが、力が入らない。そのまま、俺は意識を失った。
後書き
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