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真田十勇士

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巻ノ十八 伊勢その四

「面白いものばかりですが」
「学ぶんではなくか」
「はい、そうした場所ですが」
「それがよいのじゃ」
「面白いと思うことが」
「面白いと思うと覚えるな」
「はい」
 その通りだとだ、猿飛は幸村に答えた。
「頭に入ります」
「だからよいのじゃ、面白いと思うことがな」
「学問と同じだけ」
「学問も面白いと思うからじゃ」
 それで、というのだ。
「するのじゃ」
「そういうものですか」
「十蔵を見るのじゃ」
 一行の中でとりわけ学識のある彼をというのだ。
「学問を楽しんでおるな」
「言われてみれば」
「御主は忍術を楽しんでおるな」
「心より」
 その通りだとだ、猿飛も答えた。
「そうしております」
「それと同じじゃ、何でも楽しんですることじゃ」
「学問もまた」
「そうじゃ、面白い楽しいものじゃからな」
「頭に入り身に着くと」
「そういうものなのじゃ」
 こう猿飛に話すのだった。
「世の中のものはな」
「では殿と十蔵は色々な学問をされてますが」
「その全てがな」
「面白いのですな」
「そして楽しい」
「ううむ、拙者学問は嫌いでござるからな」
 猿飛は右手を自分の頭の後ろにやって苦笑いになって述べた。
「楽しいとは」
「御主は忍術や生きもの達と遊ぶ方がじゃな」
「楽しいです」
「やはり御主は生きもの達と遊ぶことがか」
「一番楽しいです」
 実際にというのだ。
「そちらの方が」
「ならそれでよいと思うぞ」
「遊んでいることもですか」
「誰もが学問をして学問を修めねばならぬ訳ではない」
「そうしたものですか」
「何かを極めればそれでよい」
 こう猿飛に言うのだった。
「だからな」
「それがしは忍術や生きものと遊び」
「そちらを極めればよいと思うぞ」
「ではそれがし天下一の忍と木の術の使い手になり」
「そしてじゃな」
「生きもの達と誰よりも親しみます」
 そうもするというのだ。
「そして殿のお役に立ちます」
「そうしてくれるか」
「はい、殿は天下と真田家の為に動かれますな」
「その考えは変わらぬ」
「ではな。宜しく頼むぞ」
「それでは」
 猿飛は幸村の言葉に頷いた、そうした話をしている中で境内にいる鳥や馬達を見てだった。その生きもの達と話してだ。
 そのうえでだ、彼はこう言ったのだった。
「ふむ。天下のことですが」
「何かわかったのか」
「いや、獣達が気配で感じていることですが」
 清海に話すのだった。
「天下は一戦して大体決まるとのことです」
「一戦でか」
 幸村が応えた。 
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