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IS~夢を追い求める者~

作者:かやちゃ
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第1章:修正の始まり
  第8話「ユーリとドイツにて」

 
前書き
今回もリリなのキャラが出ます。(サブキャラですけど。)ご了承ください。 

 


       =桜side=



「ユーリちゃん、ついに完成したよー。」

「えっ?完成...ですか?」

  母さんが社員になってから一ヶ月程経ち、俺はふとユーリちゃんに話しかける。

「そうそう。ユーリちゃんの専用機。」

「私のですか!?」

「...と、言っても、実験機で合わなかったら変わるんだけどね。」

  ユーリちゃんの実験機に組み込んでいるのは、他のISには全くありえないモノだ。それは、優しいユーリちゃんなら使いこなせる...いや、仲良く(・・・)なれるかもしれない。

「じゃあ、ちょっと研究室に来てね。」

「は、はい。」

  あの二人(・・・・)がはっちゃけた結果の機体だからなぁ...。俺も少し不安だ。





「おーい、連れて来たぞー。」

「...そういえば、新たに何人か社員にしたんでしたっけ?」

「ああ。職を失っても研究心とかは失ってなかったからな。スカウトしてきた。」

  俺の呼びかけに白衣を着たいかにも研究者な人物が二人出てくる。

「やぁ桜君。ちょうど最終確認も終わった所だよ。」

「さぁ、これでいつでも乗れるよ!」

  優しい父親のような印象を持つ黒髪の男性と、テンションが高めの残念イケメンな男性。どちらも既婚者なのだが、職を失って好きな研究もできていなかったらしい。あ、夫婦仲は女尊男卑になる前と変わらず良いらしい。

「グランツさん、ジェイルさん、この子が操縦者です。」

「よ、よろしくお願いします!」

  ユーリちゃんはこの二人とは初対面だからな。ちょっと緊張しているか。

「紹介するよ。こちらが、グランツ・フローリアンさん。そして、もう一人がジェイル・スカリエッティさんだ。ちなみに、研究生時代の同期らしい。」

「いやぁ、職を失った時はどうしようかと思ったけど、運が良かったよ。」

「ククク...ここなら大いに研究ができるからね。」

  ちなみにジェイルさんの夢は世界征服らしい。...尤も、悪役的な意味じゃないけど。

「じゃあ、早速機体に乗ってみるか?」

「は、はい...。」

  俺がそう言うと、グランツさんが機体を出してくれる。白を基調とし、紫の模様がある機体だ。紫の模様には赤い炎のような模様も混ざっている。

「通称“番外世代”と呼ばれる機体、エグザミアだよ。」

「番外世代...?」

「ISに必要ではないものを搭載しているからね。今までの、そしてこれからの世代にもないような試みをするから“番外”なんだ。」

「なるほど...。」

  だからこそ、専用機ではなく実験機となっているんだよな。

「...あの、その搭載したものとは...。」

「乗ってみれば分かるよ。」

「は、はぁ...?」

  とりあえず、機体に乗るユーリちゃん。既に初期化は済ませてあるから後は最適化を待つだけだな。

「一応、オープンチャンネルにしておいてくれ。こちらからも上手く行くかが見てみたいんだ。」

「分かりました。」

  そう言ってISを装着し終わる。

〈装着が完了しました。〉

「...えっ?」

  すると、落ち着いた感じの少女の声が聞こえてくる。

〈操縦者検索....ユーリ・エーベルヴァイン様ですね?私はエグザミアに搭載されているAIの一人、シュテルと申します。〉

「AI...ですか?」

  AIの割には流暢に喋るシュテル。...ま、これがこの機体の特徴なんだけどね。

「そう!このエグザミアには、我々の技術の粋を集めた、最新のAIを搭載しているのだよ!」

  突然白衣をマントのように広げ、解説を始めるジェイルさん。

「自己学習能力を付け、操縦者をサポートする。さらには個性的な性格も付けてある!いつかは、そのAIを利用した装備も作って見せよう!」

〈ちなみに、既に私の他に二人搭載されています。お会いになりますか?〉

「あ、お願いします。」

  テンション高いなジェイルさん。シュテルとの温度差が凄い。

〈やっほー!ボクはレヴィだよ!ユーリ、よろしくね!〉

〈我はディアーチェと言う。そなたが盟主にふさわしいか、見極めてやろう。〉

「は、はい、よろしくお願いしますね!」

  確かに個性的だな。落ち着いた感じのシュテル、元気っ子なレヴィ、偉そうなディアーチェ。...ただ、少し気になるところが...。

「ちょっと聞きたいんだけど、どうして全員女性のAI?」

「あぁ、一応理由はあるよ。」

  あ、あるんだ。決して趣味とかじゃないんだ。

「個性的なのはジェイル君が考えたんだが、操縦者からすれば、女性のAIの方が付き合いやすいと思ってね。」

「...なるほど。操縦者は女性だから、同じ性別である女性のAIの方が何かと都合がいいと。」

  ユーリちゃんみたいな人見知りでも、同じ女性AIなら親しみやすいだろう。

「あ、そうそう。ユーリちゃん、その機体にはAIの仮想姿を映し出す機能があるんだ。使ってみてくれないか?」

「は、はい。....えっと...これ、ですね。」

  すると、ユーリちゃんのISを囲むように空中に三つのディスプレイが表示される。

  短めの茶髪に蒼い瞳、冷静な面持ちの少女がシュテル。水色の長めのツインテールに紫の瞳で、天真爛漫な雰囲気を持つのがレヴィ。短めの黒のメッシュが入った銀髪に碧眼で、偉そうにしているのがディアーチェだろう。

「...全員、ユーリちゃん達と同い年くらいの見た目だな。」

  少しジト目でグランツさんとジェイルさんを見る。

「い、いや、僕は容姿の設定はそこまで関わって...。」

「美少女の容姿の方が映えるだろう?」

  ...ダメだこの人、変態だ...。

「...とにかくユーリちゃん、動作チェックを済ませてくれ。」

「はい。」

〈装備や機能は私から説明させていただきます。〉

  会話していた間に最適化も終わり、一次移行が終了する。そして、ふわっと宙へと浮かび上がる。

「っとと...IS関係の仕事をしてたからか、飛ぶのは上手くできましたー。」

〈凄いですね。初めてとは思えない程です。〉

  ...うん。順調だな。



  こうして、しばらくエグザミアの動きを調べ、めでたくユーリちゃんの専用機となった。
  いくつか特殊な機能があったが、それはまた後述しよう。









「ドイツへ?」

「うん。さー君とあっ君、そしてゆーちゃんでドイツの研究所を潰してきてほしいんだ。」

  ユーリちゃんが専用機を使うようになってからさらに一ヶ月。束にいきなりそう言われた。

「違法研究所を潰すのは分かるが...なんで秋十君とユーリちゃんも?」

「うーん...そろそろ二人にも世界の裏側を見てもらいたくてね。ちょっとひどい事かもしれないけど、今回選んだ研究所は比較的防衛システムの水準も低いし、いざとなったらさー君が守ってくれるでしょ?」

  確かに、荒事は俺たちで受け持ってるからな...。そろそろ体験させるべきだが...いきなり違法研究所かよ...。しかもユーリちゃんの故郷。

「...2人がいいって言うのならいいが...。」

「あっ、二人ならもう許可は取ってあるよ。」

「いつの間に!?」

「さー君が作業に没頭してる時~。」

  ...はぁ。二人がいいのなら仕方ないか...。

「...分かったよ。だけど、安全第一な。」

「りょーかい!バックアップは任せて!」

  あーもう、どうしてこうなる...。







「....ふぅ。何とか終わったな。」

「はぁ~....。」

「.........。」

  研究所を潰し、俺はそう呟く。...秋十君も肉体精神共に疲労しているし、ユーリちゃんに至っては顔色が悪い。

「...やっぱ、早すぎたか?」

  二人共、年齢的にはまだ中学生だ。人間の黒い所を実際に見るのには精神的に強さが足りないのだろう。

「人体実験による“バケモノ”の製造。...被験者に生存者はいない...か。」

「ごめん....ごめんよ....!」

  束から貰ったデータによると、孤児などを攫って実験体にして、所謂キメラのような生物を誕生させようとしていたらしい。...失敗作しかできなかったようだが。
  残念ながら、理性も何もかもを失くした被験者しかいなかったため、殺すしかなかった。秋十君は、その子達を助けられなかった事を悔やんでいるようだ。

「(ISのようなものができても、こんな研究はあるのかよ...。)」

  研究者も狂ったような奴らばっかりだった。一応、逃げられないように捕縛して放置しておいたが。

「【...おい、束。】」

【....ごめん。私も早すぎたと思ってるよ。】

  さすがに束も反省しているのか、謝ってくる。

「【...とりあえず、何とかするから、お前は言い訳もしくはケアの準備をしておけ。】」

【りょーかい。...って、ちょっと待って!】

  二人を一時的にでも立ち直させようとすると、束が何かに気付く。

【今、そっちに複数のISが向かってるよ!これは...ドイツIS配備特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼ!?】

「マジかよ....!?」

  あのドイツのか!?...ってやば、俺の想起にも反応が出てる。

「すまんが二人共、今すぐ行動しなければ...!っ!」

     ビシッ!

  移動しようとした瞬間、俺たちの近くに弾丸が着弾する。

「(威嚇射撃か...!)」

「貴様ら!そこで何をしている!」

  あっという間に包囲される俺たち。さすが軍人。行動が早い。

「え、ちょ、桜さん、どうするんですか!?」

「...あまり不審な行動はしないようにな。」

  さて、突破する事自体は可能だが...。

【ラウラ・ボーデヴィッヒ....。...ごめんさー君、一度抵抗せずにじっとしててくれない?】

「【...?なんでだ?...って、何か考えがあるのか。分かった。】」

  束の指示通りするため、両手を上げて無抵抗のアピールをする。視線で秋十君とユーリちゃんにもそうするように指示する。

「...動くなよ?ISを使おうとすれば、即刻撃つ。」

「はいはい。」

  軽くボディチェックされた後、縄で拘束されて尋問される。

「さて、ここで何をしていたか聞かせてもらおうか。」

  そう言って銃を突き付けてくるのは銀髪に右目は赤目で左目は黒い眼帯の少女。

「何をしていたかって言われてもね...。研究所潰し?」

「ほう...。おい、調べてこい。」

「「「はっ!!」」」

  少女は他の隊員に指示を出し、研究所跡を調べさせる。

「(この身なりで隊長なのか...。クロエに似ているな...。)」

  銀髪なのと、容姿などがどことなくクロエに似ている。...まさか、彼女がラウラ・ボーデヴィッヒ?だとすると、束が待つように言ったのも納得だな。

「....遺伝子強化試験体...。」

「っ....!」

  俺がボソリと呟いた言葉に彼女は反応する。...これは当たりだな。

「貴様...それをどこで....!」

「なるほど。クロエに言わせてみれば、“成れなかった自分”って訳か。」

「答えろ!!」

  おお、怖い怖い。眼帯をしているのは、ヴォータン・オージェを隠すためか?

「別にただ、知ってる奴にあんたと似ている奴がいてさ、その子がそんな実験によって生まれた失敗作だったってだけの事さ。」

「...なに.....!?」

  自身と同じような境遇の人物がいる事に驚くラウラ。

「貴様らは一体....!」

「...一応、自己紹介しておこうか。俺は神咲桜。こう見えても男だからな。彼女はユーリ・エーベルヴァイン。そして、織斑秋十君だ。」

  軽く紹介をしておく。束が俺に留まるように指示したからには、何も情報を与えずにいるのは危険だしな。...想起が使えないから束のバックアップも使えないけど。

「...織斑...だと?」

「うん?...あぁ、そうか。」

  千冬は以前にドイツに教導しに行ってたんだっけ?洗脳されてる状態だから、例え秋十君の事をどうとも思ってなくても教導はしたんだな。

「貴様...まさか織斑千冬教官の弟だとは言わないよな...?」

「えっ...?」

  俺をそっちのけで秋十君に直接聞きに行くラウラ。

「答えろ。」

「....俺は...俺は、確かに千冬姉の弟だ。...だけどな、それ以前に“織斑秋十”って一個人だ!ただの付属品とかじゃない!」

「そうか。」

  秋十君は千冬が洗脳される前から比べられて、付属品のように見られてたからな...。だから、“織斑千冬の弟”という肩書きで見られたくなくてそう言ったのか。

     パァアン!

「っ....!?」

「そこだけは同感だな。私は貴様を教官の弟だとは認めない...!」

  すると、ラウラが思いっきり秋十君の頬を引っ叩いた。

「なんだと..?」

「教官の汚点である貴様を、私は絶対に認めない!」

  ...あぁ、そう言う事か。貰った知識と照らし合わせると、秋十君とラウラの関係は“原作”の一夏と少し同じような状態になっているのか。

「...そうかよ...!」

「っ!?」

     バシィッ!

  いきなり秋十君は立ち上がり、仕返しとばかりにラウラを引っ叩こうとする。さすがに相手が軍人と言うだけあって防がれたが。

「..お前に何が分かる。千冬姉と比べられ、蔑まされ、それでも必死に追いつこうとしてきた俺の気持ちが!お前なんかに何が分かる!!」

「ぐっ....!」

  ...あー、まぁ、秋十君にも思う所があって、ラウラは琴線に触れたって訳か。

「ストップ。ストップだ。」

「っ...すみません、桜さん。」

  いくら絶望の淵に立たされた事があったからって、やっぱり感情的な所があるんだな。秋十君は。

「...あー、そっちの隊長さんは、秋十君を認めたくない。対して秋十君は自分の気持ちが分かってない奴に好き勝手言われたくない....。...だったら、一勝負、してみる?」

「「はっ...?」」

  俺の言った事に素っ頓狂な返事をする二人。...案外息合ってるじゃん。

「もちろん、ISを使って...な。」

「はっ、何を言っている。男がISを使える訳が....。」

「秋十君、夢追起動して。」

「...分かりました。」

  俺の指示通り、秋十君は夢追を展開する。

「なにっ!?なぜ男である貴様がISを...!?」

「あー、隊長さんよ、俺の容姿で気づいておけばよかったな。」

  俺は束と区別をつけるために束ねていた髪を解く。

「ただ、そっくりさんじゃないって事にな...。」

「篠ノ之...束...だと....!?」

  俺の容姿を見て驚愕するラウラ。包囲している奴らも驚いている。

「束、俺の好きにしていいな?」

【あれ?もうばらしちゃうの?別にいいけどさ。】

「あぁ、ちょっとやりたい事があるからな。」

【そっか、あ、送っときたいデータがあるから送っとくね。】

「りょーかい。」

  切っておいた通信を繋げ、束に好きにしていいか聞いておく。

「...改めて、自己紹介しておこうか。俺は神咲桜。ISを創りだした篠ノ之束の親友にして、もう一人の“天災”だ。俺なら、男も使えるISを作るなんて、容易い。」

「なん...だと....!?」

  おー、驚いてる驚いてる。

「あ、容姿がそっくりなのはただの偶然だからな?そこの所、よろしく。」

「...桜さん、どうするんですか?ISを展開したのはいいですけど、ここで戦闘は...。」

「お?それもそうだな。じゃあ、場所を変えようか。...そうだな、シュヴァルツェ・ハーゼの演習場辺りがいいんじゃないか?」

  そう言って俺は立ち上がる。当然、包囲してる奴らは俺を警戒する。

「ユーリちゃんも、行くぞ。」

「えっ!?あ、はい!」

  一斉に飛び立ち、俺が先行して演習場を目指す。

「奴さんの弾は俺が撃ち落とす!二人は束の指示に従って先に行っててくれ。」

「わ、分かりました!」

【あっ君、ゆーちゃん、そのまままっすぐだよ!】

  追いながら撃ってくる奴さんの弾を相殺したり、ブレードで防ぎながら、秋十君とユーリちゃんを追いかけるように俺も演習場へと向かう。

「(さて、データ通りなら後は秋十君の頑張り次第で行動が決まるな!)」

  束から送られてきたデータを横目で確認しながら、今後の予定を決める。





  さて、もうすぐシュヴァルツェ・ハーゼの演習場だな...。





 
 

 
後書き
今回はここまでです。

ちなみにグランツさんとスカさんは一応イタリア出身という設定です。決してエル何とかな未来世界から来たり、管理世界で犯罪者をやってる訳ではありません。 
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