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フランの狂気になりました

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第十四話

 
前書き
よろしくお願いします 

 
──闇──

何も見えず、何も聞こえない。時間の感覚も、何かに触れているのかさえ分らない。
そして、だんだん思考さえ………さえ……さえ、さぇ………………。










(あ、無くならないんデスネ?いや、無くなっても困るけどさ!
それにしても、俺ってどうしてたんだ?突然こんな………って)

『親殺し!』

(………そうだった、俺はフランの……。フランの両親を殺したんだ………。フランに合わせる顔が無い。
そうだ、そうなんだけど……)

ゆっくりと周りを見渡す。が、見えるのは黒、黒、黒。一面が真っ黒な闇に覆われている。何故か自分の腕などがはっきり見えている事に疑問は抱くがそんな事より大事な事があった。

(いやホント!ここ何処よ!?)

五感が全く感じられない『闇』それは正常な精神を蝕み、狂わし、“破壊”する。全ての恐怖の象徴と言っても差し支えないまでに、生き物に本能的な恐怖を植え付ける闇の中に五感も何も無い状態では彼────月華も“動揺”を隠しきれなかった。

(ちょ!ど、どうしよう?何も出来ないよ?ウソダドンドコドーン!!ちょ!?嫌だよ?シニタクナーイ!!シニタクナーイ!!)

だが、動揺しつつも何故こんな事になってるのか思い出そうとして………

(あれ…………?何だっけ?思い出せねぇ)

そう言って、月華は首をかしげた。彼の記憶には精神が壊れていた状態の記憶が無かった。
いや、正確には精神諸共壊れていたのだ。よって、月華にこの闇に至るまでの経緯は思い出せない。だって、そもそもその記憶自体が存在していないから。

例えるならば、ラジコンの入っていないおもちゃ箱から「ラジコンを探せ」と言われる様なもの。
例え、第三者から「月華はこうなっていた」とか「こうだったよ」などと言われたとしても、彼自身の記憶に引っかかる事は絶対に有り得ないのだ。

(………どうしよ、もう現状が掴めないよパトラッシュ………こんな所居たら精神的に持たないよ……主に俺の……)

「あら?それなら大丈夫じゃない?だって、此処は狂気の中だもの。私の中で有り、狂気の人格の中でも有る場所……貴方がどうこうされる場所じゃないわよ」

闇の中から声が聞こえて来た。だが、その声音は普段から聞いていたものであり。そして、月華の声音と“全く同じもの”だった。
闇に浮かび上がって来る一人の姿。その特徴的な羽のシルエットは、今まで何度も見てきた姿であった。

が、月華は大きくため息をついた。聞こえて来た声音、その声音によって紡がれた言葉、そして見えてきている羽のシルエット。
月華には既に何が出てくるのか解った様だ。

(おいおい、まさか『私が狂気の本当の人格よ!』とか言わないよな?今見えてきてるシルエット的にも流石に同じ様な外見のキャラは三人も要らないと思うよ?どうなの、そこんところさぁ!?)

「何で私は出てきて早々、存在否定されないとイケナイのかな?一応私は初登場だしもっと『何だお前は!』みたいな感じの反応してくれないと困るんですけど!?───え?!何その『うわぁ……こいつメンドクセェ』って表情!もっと敬えよ!初登場者敬えよ!」

(そうだ、フランはどうなった?それと、俺は何でこんな所に居るんだ?)

「無視か、そうなんだな?……ま、簡潔に言うとフランは───私を受け入れた。これがどういう事か分かるか?」

(………………『どういう事だ!』なんて言えたらどれだけ良かっただろうな?)

月華は声を低くしてそう答えた。
月華は解った。目の前のこいつはやはり“狂気”で、それを受け入れたと言うのはつまり、フランが狂気に飲まれる事を選んだと言う事なのだ。

(……で、その受け入れられた狂気が俺に何の用だってんだ。まさか今のを伝えるだけだったとかだったら性格くっそ悪いぞ、お前)

「お前に性格悪いとか言われたく無いから。ま、本題に移るよ?と言っても貴方なら解ってるかもね?」

月華は首をかしげた。月華には特に思い当たるものは無かった。よって、目の前の狂気が言った事はさっぱり解らなかった。

(…………あ、思わせぶりとかいらないんで。お帰りはあちらです)

「………話すだけなら簡単な話だけど………。狂気をフランから引きはがす。一言で言えばそういう事よ」

……………“引きはがす”
それを聞いて月華も納得した。「不可能では無い」と。妖怪は恐怖という概念から産まれた不確かな存在。それは心の持ち用で何度でも復活するしあっという間に存在が消えていく。

恐怖とは即ち妖力。

意識を妖力が覆い。それが形を成して妖怪の肉体を作り出す。こいつは“狂気”という意識を妖力で覆い、新たな妖怪としてフランから分離すると言っているのだ。

だが、それは容易な事ではない。
自然現象に等しい、妖怪の発生を意図的に行うのだ、その成功率は極めて低い。
目の前のこいつはそれを分かって言っている。そして本気と来た。

「今なら大量の妖怪が死んだ事で、外はかなりの妖力が渦巻いてるの。これは都合がいいのよ、今なら分離して妖怪になる確率はかなり高い。それこそほぼ確実に………ね?」

フランは狂気に飲まれている。そこから助けるには俺たちがフランから出て行く必要がある。

フランの中で目覚めてから少しして、フランを守ろうとする意志が強くなっていた月華。そして、今回もそれが働いた。

(解った…………やろう。そんで、フランと今度は精神世界じゃない、現実で顔合わせて馬鹿やってやるぜ!)

「いや、あれは完全にフランの損でしょうに……」

半眼で月華を睨みながらそう言った狂気。そして「だけど……」と、続ける。

「フランが楽しんでたのは事実でしょうね」

そう言って笑みを浮かべた。その笑みは狂気と呼ぶには全くふさわしくない優しい微笑みだった。





──────────────────────





(で、どうやって分離するんだ?)

月華はそう言った、月華にはそれが解らなかった。分離と簡単に言った所でそれをする為の方法が解らないでは意味がないのだから。

「簡単よ、能力を使えばいい。『──────程度の能力』を………ね?」

(?何で俺の能力知ってんだ?)

「そりゃあ………これは私の能力だもん。貴方が私の能力を使ったってだけよ?ま、この能力で私達とフランの繋がりを絶てばいいわけよ」

そう言って笑う狂気。月華は自分の能力だと思っていた物が実は別人の能力だった事に肩を落とした。
と、言っても月華は能力を使った途端に此処に来ていたという記憶がかなり飛んだ状態で此処に居るので、事実、そこまで未練は無かったりする。

「………さて、早速やるわよ?泣いても笑っても一回限りの懸けよ?さぁ、成功を祈りましょう?」

そして、狂気は能力を酷使した。 
 

 
後書き
|´-`)ゲッカサンオヒサー 
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