フランの狂気になりました
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第九話
前書き
よろしくお願いします
「めぇぇぇぇぇぇぇぇりん!!」
ズドォォォォォォン!!
「うわぁぁぁぁ!?ちょ!?何やってんですかフラン様!?」
私はめーりんの部屋に壁を蹴り破って侵入を決行した。
めーりん位なら私が来てたこと位わかってたと思うけど。まさか、扉を蹴破るなんて思っても見なかったんでしょうね。尻餅なんかついて、涙まで浮かべてこっちを見ていた。
だが、そのめーりんは普段のメイド服では無く、緑色の服を着ていた。
スカートのわきにスリットの入った、確かチャイナ服とかいう服を着ていた。
「フラン様。何やってんですか!?こんな時に変な事とかしてないで下さい!それと、ここは危ないので早くここから逃げ────」
「………めーりん。貴女が何をしようとしてるのか私が分からないとでも?」
なんて言ってみたけど、実際はめーりんの服にある。
あの服はめーりんの勝負服だ、文字通りの。
めーりん曰く『この服は私がこの舘に来た時、着ていた物で………まぁ、私の勝負服ですかね?あ、勝負服って言ってもそういうのじゃないですよ!?文字通り勝負する時の服です。この服、動きやすいんですよ?』
こう言っためーりんだが、普段からメイド服で戦ったりする事もあって、生半可な相手でもメイド服で倒した事もあった。
そんなめーりんが勝負服を着たっていうことは、それだけ本気で、十全の状態でないと危険だと言う事。
今ここに向かって来ている奴らの事は既に知っている。
「逃げろなんて………貴女一人で戦う気満々じゃない………」
「フラン様………気付いたんですか?」
「んーん、見てた。屋根でボーッとしてたら偶然……ね?」
私がそう言うと、めーりんは眉を潜めた。私が日が登り始めてたのにも関わらず外に出てた事の様だが、一歩間違えば大変な事になっていたと。私を心配してくれたのはいいが、その本人がたった今から死地に等しい所へ向かおうとしていたって事を忘れないで欲しい。
「兎に角!今すぐレミリア様と一緒に逃げ───」
「あら?美鈴?私だって今いるたった一人の従者に任せてノコノコ逃げるなんて事………するつもりは微塵も無いわ」
いつの間にかおねぇ様が私の後ろに居た。(正確には廊下にだが)
「………ひっじょーーーに不本意だけど……おねぇ様に同意するわ。めーりん?私はめーりんと最後まで一緒に居るよ?何て言われたって絶対に……」
「っ!?……………わ、私だってそうよ!?美鈴?フランなんかより私に頼りなさい?」
むっ!おねぇ様ったら調子に乗って?!
私が睨むと、おねぇ様も私をにらみ返す。
目が合った途端、まるで火花が散った気がした。
めーりんが仲裁に入ってくれたお陰で私とおねぇ様のガンの飛ばしあいが止められた。
めーりんは私達と目線を合わせる様に膝を曲げて話し始めた。
「いいですか?私はレミリア様とフラン様の従者です、従者である私はお二人を守る義務が有ります。守る理由が有ります。例え無様でも、泥臭くても、這いつくばってでも、生きることに全力になって下さい。私が足止めします、ですから、その隙にお二人には逃げて欲しいです」
めーりんは真剣な表情でそう言うと、ゆっくりと立ち上がり、「お願いします」と一言言って正面玄関まで向かってしまった。
その場には私と、おねぇ様が残された。
──────────────────────
門の前、私は妖怪達の大群の目の前に居た。
「おい!其処の貴様!其処の舘に居る二人の吸血鬼のガキを出してもらおうか!!」
大群の中の一人が前に出て来ると、私を指さして言った。
そいつの後ろに居た多数の妖怪達も便乗する様に、騒ぎ始めた。正直耳障りだ。
「………何故私が此処を通す必要があるんだ?」
私は敢えて不敵な笑みを作って言った。
これは相手の挑発、もしくは多少の警戒を抱いてらう為のものだ。
だが、まぁ警戒はしないだろう。数千対一の数の差、大抵は哀れみの目を向けられるだけだと思う。
相手には私の笑みはどう写っているだろう?
目の前の数千の大群にはどうやらまあまあ頭の回転の良い奴も居るようだ。僅かながら瞳に警戒の色が浮かんでいる。だが、残りは嘲笑と哀れみの目が私に向けられていた。
そして、私に話しかけてきた妖怪も私をきょとんとした目で見ると、声高らかに笑い声を上げて笑った。
「がっはっは!!貴様、気でも狂ったか?我々と貴様、差は歴然であろう?その様な笑みを浮かべた所で、我々に危機感を与えるなど不可能な事よ!」
妖怪は、今度はまるで諭す様に言葉を繋ぐ。
「なに、心配するな。大人しく吸血鬼の場所まで案内すれば命は取らん。それに、我々の仲間に加えてやろう。どうだ?良い話だろう?」
妖怪はそう言って私に手を差し伸べてきた。
どうやらこの手を取る事がさも当然の事だと言わんばかりのドヤ顔を決め込んでくる。
「………解りました」
「うむ、懸命な判断だ。さて、さっさと吸血鬼の居場所をおし──────」
「あなた達と相容れない事が」
───閃光
私が先ほどから溜めて、練りに練った“気”が目の前の妖怪ごと、後ろの大群を分断する様に放出した。
そして、私の前方から妖怪が消え去った………。
「なっ…………」
残った妖怪達から狼狽の声が聞こえる。
取り敢えず、先手は頂いた………。
「か……かかれぇ!!あの妖怪を、殺せぇ!」
誰かがそう叫んだ。それと同時に残った妖怪達が私に向かって来た。
さっきので、かなり消耗してしまった。迫ってくる妖怪達、一体どれだけ裁けるか?
これで私は死ぬかも知れない。だけど、それで良い。私の目的はお嬢様達を逃がす事、例え私が死んだとしても時間さえ稼げればそれで良い。
力一杯拳を握る、心を落ち着ける、少しばかり乱れた呼吸を調えて、私はその身を翻る。
さぁ来い、一匹でも多く───
───殺してやろう!
直後、私と妖怪達の咆哮が辺りを埋め尽くした。
──────────────────────
どれだけ戦ったのか……?
もはや時間の感覚が麻痺してしまった。
妖怪も百や二百の枠には収まらない数を倒してきた。
私には返り血、そして己が血に染まり、真っ赤になっていた。
未だ何百居るかさえわからない妖怪達の前に、私はもう満身創痍、勝ち目など無かった。
「グォォォォ!!」
「………シッ!」
襲いかかって来たケモノ型の妖怪を一撃の元叩き潰す。
周囲は完全に地獄絵図。血塗れの私と、私を囲む沢山の妖怪達、周囲は血の海に浮かぶ妖怪の死体。
これを地獄絵図と言わずなんと言う?
「はぁぁぁぁぁ!!」
「………ふんっ……」
後ろから来た妖怪の頭に気弾を叩き込む。虹色の弾は妖怪の頭を弾けさせた。
「一斉にかかれ!奴はもう死に体だ、一気に終わらせろ!」
一斉に……か。終わったな、私。
お嬢様達は大丈夫かな?
あはは……こんな時まで自分以外の事を考えられるなんて………。
…………もっと生きたかったな……、いや、こうなったら最後まで抗ってやろう。いっそ、こいつ等なんか全員倒してやろう。
そう思ったら不思議と力が湧いてくる気がした。
最後の気力を振り絞り、構える。
「「「グォォォォ!!」」」
「うぉぉぉぉぉぉ!!」
叫んで気持ちを再び昂らせる、四方から来る妖怪達の攻撃を捌く、捌く、捌く、捌く、捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く捌く─────────捌く。
自分でも驚く程動けていたが………それも終わりを告げた。
膝から力がガクッと抜ける。
立とうにも力が入らない。迫る妖怪の拳がやたら遅く見える。
走馬灯は………見えない。走馬灯なんてガセだったのか?。そんな呑気な事だって考える余裕がある。
レミリア様フラン様………頑張って生きて下さい……。
そして妖怪の拳が私に届こうとした─────瞬間。
「『グングニル』!!」
「『レーヴァテイン』!!」
───突然飛来した槍と業火によって防がれた。
「「美鈴」」
目の前に現れた二人の小さな背中。
何で逃げていないのか?何でここに来たのか?問い詰めたくなった、だが。
「「助けに来たわよ!(助けに来たよ!)」」
───その小さな背中が大きく見えたきがした。
後書き
|´-`)スランプッテコワイネ
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