| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

初めての戦闘

 強い白い光が治まってくると、それは僕達の目でも認識できる形を表す。
 “まんどらごら”というものがどんな生物なのかと思っていた僕は、その響きに反して違うものが現れて一瞬凍りついた。
 そのマンドラゴラは植物である。
 なのでもっと硬いゴツゴツとした肌の“木”のようなものをイメージしていたのだが、

「ガァアアアアアアア」

 咆哮を上げるそれは、全身が白い毛で覆われた怪物だった。
 顔自体はトラのように見え、瞳は赤くらんらんと輝いている。
 その身長は僕達の二倍もあろうかというような背丈で、僕はそれを見上げた。

 まだ距離があるから大丈夫と僕は自分に言い聞かせて、先ほど取り出した炎の“魔法結晶石”を取り出す。
 魔力を注ぐイメージを浮かべて、炎の塊を周囲に三つほど生じさせる。
 あの怪物の目の前にいるのだからこの炎で見つかるなどと、考える意味は無い。

 だから呼び出した炎に、とりあえずは目の前の大きな怪物に向かうように命じる。
 風をきる音がしてその炎がその怪物へと飛んで行く。けれど、

「ガァアアアア」

 獣のような咆哮とともに、その怪物が前足というか腕の片方を横に凪ぐとあっさりと炎は消えた。
 毛のようなものをまとっている割に炎には強いらしい。
 耐火性の有る毛皮なのだろうかとふと思ったが、おそらくは魔法で防御しているのだろう……と思う。

 この世界は魔法があり、魔法を使う生物がいて、そしていかにも魔法っぽい魔法陣から出てきたのだからきっと魔法を使えるに違いない。
 などと混乱する頭で考えつつも、炎が駄目ならば、

「氷の“魔法結晶石”でいくか」

 そう呟いて青色のそれを取り出す。
 鋭い氷の塊を複数呼び出して、相手へと投げるもの。
 そういえば魔道書に載っていたのは飛び道具系のものが多かった気がする。
 
 確かに初心者に近い僕の場合は少し離れた場所で戦闘をするのがいいのかもしれない。
 近づいてあの腕で殴られたならその時点で終わりになりそうではあるし。
 それにそうなってしまえば元の世界に戻されるそうなので、僕は大丈夫だけれど……すぐ側にはレイアがいる。

 これを放置するのも問題が有る気がする。
 そこで投げた氷が何本もその怪物に当たる。
 再びその怪物はなぎ払うけれど、それは微妙に動きが遅い。

 氷の攻撃は効きそうだと僕は思う。
 けれどそこでその怪物がこちらを見て、そのまま大きな音を立てて地面を蹴り上げた。
 空高くその巨体が飛び上がるのを見てまずいと僕は思う。

 とっさに風の“魔法結晶石”を取り出して、風による防御も兼ねた吹き飛ばしを選択する。
 けれどそれでも初めての戦闘で焦っていたのかもしれない。
 魔力を通して魔法陣が現れるとともに“魔法結晶石”がばきっと壊れるように砕け散り、やり過ぎたと思う頃にはもう遅く。

 唸るような風が僕達の直ぐ側で吹き荒れる。
 それは斜め上空で落ちてくるその怪物に向かって放たれて、そのまま地面に落ちる。
 たたきつけられるような轟音が夜の草原に響いたのだった。
  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧