東方喪戦苦~堕罪編~
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~新八幕~獄王の名は伊達じゃない
阿形と名乗る大男は、全身真っ赤で手には矛らしきものが握られていた。
さながら巨壁の様な体格で、ただならぬ圧力を感じた。
奴の言動を聞く限り、阿形はあまり頭が回らないと見た。
なら奴を攻略する方法は簡単、正面から力で押しきるしかない
「楽しませてくれよ?」
阿形を睨み付け、一気に阿形との距離を零にする。
「これは挨拶の代わりだ」
そういって、拳を振るった。
俺の拳は阿形の頬を捉え、阿形は堪らず、仰け反った。
阿「貴公、なかなかの腕前と見た!」
その恐ろしい攻撃力と速度に恐怖することは一切なく、阿形は興奮していた。
俺は、阿形に距離をとられる前に、もう一発殴ろうとしたが、その時だった。
阿形の岩のような拳が左から、接近していた。
俺は呆気にとられ、阿形の拳が俺の左半身に直撃した。
抗えないほどの衝撃、身体がズタズタになりそうな程の圧倒的な破壊力。
俺の身体は右に、兄さんのいる方へ弧を描いて吹き飛び、地面によって減速され、俺の身体はやっと止まった
阿「その程度か?」
阿形が俺に一歩ずつ、ゆっくりと近づいてくる。
その瞬間、吽形が阿形を掴み、滅多うちにした。
どうせ兄さんの能力だ
「あーあ、こりゃもう駄目だな」
身体についた砂埃を手で払い、阿形をボコった吽形にとどめ刺した兄さんに向かって歩き出す。
「そこの二人、気絶してますけど····」
そう言うと、本来阿形と吽形が開ける筈だった門を兄さんが破壊た。
「···なんか前より滅茶苦茶になってません?」
そんな俺の言葉をよそに、兄さんは奥に進んでいく。
そこには、広い空間が広がっており、中央に椅子に座り、机に足を乗せた少年の横に、袴を来た、女性の様な人が立っていた
「おーい!おまえたちだろー?早くこいよー!」
椅子に座った小さな少年に誘われ、少年に近づく。
身長は低く、黒いTシャツにベージュ色のハーフパンツを履いた全く邪気の感じられない少年だった
「俺様が獄王だ!」
「は?」
俺と兄さんは顔を見合わせて笑いながら言う
「おまえが獄王?冗談は止してくれよ、お前みたいなのがか?」
獄「なっ···!?うるせーな!どうでもいーだろ!見てくれはよぉ!」
足を下ろし、椅子から立ち上がって机をバンバン叩きながら言う。
狂「信じるやついるのかよ?“こんなの”が獄王とかよ」
そう兄さんが発した瞬間、隣に立っていた。女性の様な人がいつの間にか、兄さんの喉元に刀の切先を向けていた。
狂「···!?」
俺と兄さんは唖然とした。
人並み外れたスピード、間合いを詰めるとともに刀を抜く身のこなし、だがそれ以上に驚いたことがあった
袴の外に出ている皮膚は赤く、手の先の爪は真っ白で長く伸び、額には、遠目で少しわかる程度に突起したものが一つ見受けられた。その長く白い髪に隠れていて今まで気付かなかったのだ。
「···口を謹め」
その声は低く、だが少し枯れているような声、こんな言い方は変かもしれないが、その声に『感情』を当てはめるのならば憎悪。奴からはそれがひしひしと伝わってくる。
「後俺は男だ····」
刀を鞘に戻し、定位置に戻った。
獄「悪いねぇ、こいつたまにこう言う事するからさ、許してやってくれや」
そう俺に向かって言うと、赤い男に目を向けて合図した。
「俺の名は韋駄天···見ての通りの鬼だ」
自己紹介を終えると、今度は少年が自己紹介を始めた。
獄「何度も言ってるように、俺が獄王だ!」
胸に手をあて、誇らしげにそう言った。
「だから、本当の事言えって!獄王はどこだよ!俺には時間が無いの!分かる!?」
そう言うと少年は呆れた顔で言った。
獄「···そんなに言うなら試してみるか?」
途端、少年の目から邪気を感じた。
「急いでるって言ってんのになぁ··わかったよ」
獄「そこの兄さん、いや、新月狂夜!ただ見てるだけだと暇だろうし、韋駄天と相手してやってくれや
こいつはかなりの手練れだ、こいつがここに来たときは、俺一人で抑えるのに十年近くかかったっけな」
獄「韋駄天が戦うのは確か70年ぶりか?生前、人類最強と呼ばれた新月狂夜と、その昔狂気の武神と謳われた韋駄天、どっちが強いのかねぇ」
そう言って、少年はイタズラっぽく笑った。
『人類最強』その言葉を聞いて韋駄天は殺気だっていた。それとは裏腹に狂夜兄さんは呆気にとられていた
「えっ···俺別に暇なんかじゃ···」
兄さんが言い終える前に、兄さんは韋駄天と共にどこかえ消えてしまった。
獄「さぁ、これで二人っきり、タイマンができるぜ」
「俺にゃ時間が無いんだよ、さっさとやろうぜ」
後頭部を掻きながら気だるそうな顔で言う。
獄「あぁ、ちょっと待ってな」
そういって少年は瓢箪を取りだして口に運んで何かを飲みだした。
そして、飲み終わったかと思うと少年の身体が膨張し始め、次第に3m位にまで巨大化した。
そこから段々と形が整って行くーーーーーーーーーー
巨大な身体に、隆々とした筋肉、先程の阿形や吽形を軽く越えるような言い知れぬ威圧感。
肌の色はオレンジ色に染まっていき、爪は赤く、染まっていく。
額には黒々とした、角が天目掛け伸びていた。目はつり上がり、黒く染まっていき、瞳孔だけが赤く染まっていった。
手首に鎖を巻き、服は、まるで裂けたような物で、辛うじて左肩から腰までだけが繋がっていて、腰から下は
まるでスカートのようになっていた。
腰には鎖が巻いてあった。
獄「これが獄王本来の姿だ」
あの化け物から、痛いほどのプレッシャーを感じる。
「クッソ、ここで獄王って気付いても、やめさせてくれなさそうだな···」
俺は獄王との距離を一瞬にして詰め、渾身の蹴りを放った。移動の速度と俺の最大の力を加えた蹴りだった。
獄「なんだ?そんなもんなのかよ?」
獄王は涼しそうな顔で俺を見下した。
「何てやつだ····」
獄「獄王って奴だよ···!!」
そういって獄王は俺の足を掴んで、持ち上げ、地面に叩きつけた。
俺が叩きつけられた地面が砕け、穴が開いた。
地面に叩きつけられたのと、足を乱雑に扱われた性で俺の体は既に悲鳴を上げ始めていた。
「へっ、獄王の名は伊達じゃねぇな、こりゃあ本気でいかねぇと帰れなくなっちまう」
To be continudー
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